【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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原作の澪ルート。
それは、日本が滅びる道だった。
 
繰り返される悲劇に対して、それぞれが動くが……。
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第36話 伝説の制服デートの伝説

「よろしければ、兄を紹介したいのですが……」

 

 その一言から、地獄のような放課後が始まった。

 俺が断っていれば、そのあとの悲劇は起こらなかっただろう。

 

 

 中学での指導が終わり、ようやく一段落。

 

 俺たちは東京国武(こくぶ)高校で授業を受けつつ、たまに御刀(おかたな)を振るう実習を行うだけ。

 

「全国防人剣術大会の校内予選か……。どうしたものかな」

 

 自分の教室で、ぼそっと独白するも、疲れ切った感じ。

 

 本日は、昼で終わり。

 早い放課後になったことで、弁当を広げる奴らは、部活に急ぐ奴。

 授業の課題や復習をする奴も。

 

 その時に、スマホが震えた。

 

神宮寺(じんぐうじ)です。以前の中学生への指導で助けてもらったお礼を兼ねて、私の兄を紹介したいのですが”

 

 少し考えるも、急ぎの用事はない。

 

 メッセージに返信したら、自動運転のタクシー代を払うので、そちらに乗って欲しいとのこと。

 

(あいつ、金持ちなのかな?)

 

 そう思いつつ、スクールバッグを手にして、教室を後にした。

 

 外の乗り場で後部座席に乗りこみ、スマホで個人認証をしたら、自動的に目的地が設定されて走り出す。

 

 ナビの設定を見ると、高級住宅地のエリアだ。

 

 

 ――洋風の豪邸

 

 いかにも高級ブランドの家具が並ぶ、広い注文住宅のリビング。

 

 制服のままで訪ねた俺は、居心地が悪いままで、神宮寺(のぞみ)と雰囲気が似ている男子と向き合っていた。

 

「希の兄である、神宮寺柊真(とうま)だ……。希を助けてもらったようで、礼を言う」

 

「いえ……。同じ国武の先輩ですよね?」

 

 俺の指摘に、柊真は首肯した。

 

「ああ! 2年で、生徒会にいる……。学校でも良かったが、お前は色々と人気があるようだから」

 

 西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)のことか?

 いつも、俺のところにいるからな……。

 

 考えていたら、柊真は苦笑する。

 

「わざわざ足を運んでもらって、悪いな? 希が少し、悩んでいるようで……」

 

 水を向けたら、本人が話し出す。

 

「刀剣解放をした中学生1人は、うちに入ることがほぼ内定です。私たちが指導した間の解放ゆえ、何かお祝いをしようかと……。男子が喜びそうなプレゼントを一緒に選んで欲しいのですが」

 

「あー! そういうことね……。予算は?」

 

「中学生が相手なので、私たちがカンパして合計3,000~5,000円。なるべく、普段使いをできるか、すぐ食べられる物がいいかと」

 

「なるほど……。お店は? ここでオンライン注文をするのか?」

 

 俺の質問に、希は首を横に振った。

 

「今から、駅前のショッピングモールへ行きませんか? 行きと帰りは、自動運転のタクシー代を負担しますので」

 

「希も、まだ制服のようだし……。いいよ」

 

 自宅なのに制服のままだった希を不審に思いつつ、家の前に横付けさせた無人タクシーに乗り込む。

 

 

 シューンと走り出した後部座席で、横に座る俺たち。

 

駿矢(しゅんや)さんのご実家は、やはり神社の関係ですか?」

 

 神宮寺希の質問に、生返事。

 

氷室(ひむろ)家には……あまり顔を出していない。引き取られただけ」

「失礼いたしました」

 

 すぐに謝罪した希に、声をかける。

 

「仲が悪いわけじゃないさ……。神宮寺――」

「希です。……このグループでは、もう名前で呼び合う約束でしたよね?」

 

 ニコニコしている彼女に、改めて呼びかける。

 

「希の実家は、どうなんだ?」

 

「そうですね! 見ての通り、アッパークラスではありますが……。親族とはギスギスしていまして……。今は、兄との二人暮らしで気楽です」

 

 そこで、スマホを見てから、こちらに視線を戻した。

 

「兄から、『ランチは自分で済ますから、そちらも自由にしてくれ』と連絡がありました……。駿矢さんがご迷惑でなければ、どこかで食事もしていきませんか?」

 

「予定はないから、別に――」

 

 日光が差し込むウィンドウに、張りついている睦実の顔が映りこんだ気がした。

 

「ヒッ!」

 

 俺の悲鳴と視線に、希が急いで振り向くも、そこには誰もいない。

 

「……日光がまぶしいですか? 暗めにしましょう」

 

 気を遣った希は、俺の返事を聞かずに操作した。

 

 全てのウィンドウが暗くなり、個室にいるような雰囲気に。

 

「いけないことをしている気分ですね? フフフ……」

 

 車の外で、ドンッと叩くような音。

 

 気のせいだろう……。

 

 

 ――駅前の総合施設

 

 テーマパークのように店が集まっている、ショッピングモール。

 高校生向けも多く、色々な制服が行き来している。

 

 無人タクシーから降りて、若者に人気だが高齢者も許容できる菓子の詰め合わせとした。

 

 神宮寺希は、贈答用の包装にしてもらった袋を下げながら、呟く。

 

「本当は、もっとこだわりたいのですが……」

 

「仕方ないさ! 予算が少ないし、日持ちしないと相手の都合が悪いだけで食えなくなる」

 

 上品に肩をすくめた希は、ふと思いついたように提案してくる。

 

「そうだ! 最近オープンしたお店があるんですよ! 駿矢さんが、ご一緒してくれませんか?」

 

「いいよ」

 

 

 そこは、陰キャが許されない空間。

 

 真の男女平等を達成した店内。

 いるのは、カップルだけ。

 

 甘い会話とスイーツが並んでいる空間で、俺は森林でゲリラ戦をしているような緊張感に襲われた。

 

(油断すると……やられる!)

 

 ここにあるのは、点と点だけ。

 

 戦線と呼べるものはなく、あるのはカップルの数だけの愛。

 それも、中高生ばかりだ。

 

 つまり、敵に囲まれているのと同じ。

 

 2人用のテーブルで向かいに座っている希が、微笑む。

 

「駿矢さんは、何にしますか?」




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
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