【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
「よろしければ、兄を紹介したいのですが……」
その一言から、地獄のような放課後が始まった。
俺が断っていれば、そのあとの悲劇は起こらなかっただろう。
中学での指導が終わり、ようやく一段落。
俺たちは東京
「全国防人剣術大会の校内予選か……。どうしたものかな」
自分の教室で、ぼそっと独白するも、疲れ切った感じ。
本日は、昼で終わり。
早い放課後になったことで、弁当を広げる奴らは、部活に急ぐ奴。
授業の課題や復習をする奴も。
その時に、スマホが震えた。
“
少し考えるも、急ぎの用事はない。
メッセージに返信したら、自動運転のタクシー代を払うので、そちらに乗って欲しいとのこと。
(あいつ、金持ちなのかな?)
そう思いつつ、スクールバッグを手にして、教室を後にした。
外の乗り場で後部座席に乗りこみ、スマホで個人認証をしたら、自動的に目的地が設定されて走り出す。
ナビの設定を見ると、高級住宅地のエリアだ。
――洋風の豪邸
いかにも高級ブランドの家具が並ぶ、広い注文住宅のリビング。
制服のままで訪ねた俺は、居心地が悪いままで、神宮寺
「希の兄である、神宮寺
「いえ……。同じ国武の先輩ですよね?」
俺の指摘に、柊真は首肯した。
「ああ! 2年で、生徒会にいる……。学校でも良かったが、お前は色々と人気があるようだから」
いつも、俺のところにいるからな……。
考えていたら、柊真は苦笑する。
「わざわざ足を運んでもらって、悪いな? 希が少し、悩んでいるようで……」
水を向けたら、本人が話し出す。
「刀剣解放をした中学生1人は、うちに入ることがほぼ内定です。私たちが指導した間の解放ゆえ、何かお祝いをしようかと……。男子が喜びそうなプレゼントを一緒に選んで欲しいのですが」
「あー! そういうことね……。予算は?」
「中学生が相手なので、私たちがカンパして合計3,000~5,000円。なるべく、普段使いをできるか、すぐ食べられる物がいいかと」
「なるほど……。お店は? ここでオンライン注文をするのか?」
俺の質問に、希は首を横に振った。
「今から、駅前のショッピングモールへ行きませんか? 行きと帰りは、自動運転のタクシー代を負担しますので」
「希も、まだ制服のようだし……。いいよ」
自宅なのに制服のままだった希を不審に思いつつ、家の前に横付けさせた無人タクシーに乗り込む。
シューンと走り出した後部座席で、横に座る俺たち。
「
神宮寺希の質問に、生返事。
「
「失礼いたしました」
すぐに謝罪した希に、声をかける。
「仲が悪いわけじゃないさ……。神宮寺――」
「希です。……このグループでは、もう名前で呼び合う約束でしたよね?」
ニコニコしている彼女に、改めて呼びかける。
「希の実家は、どうなんだ?」
「そうですね! 見ての通り、アッパークラスではありますが……。親族とはギスギスしていまして……。今は、兄との二人暮らしで気楽です」
そこで、スマホを見てから、こちらに視線を戻した。
「兄から、『ランチは自分で済ますから、そちらも自由にしてくれ』と連絡がありました……。駿矢さんがご迷惑でなければ、どこかで食事もしていきませんか?」
「予定はないから、別に――」
日光が差し込むウィンドウに、張りついている睦実の顔が映りこんだ気がした。
「ヒッ!」
俺の悲鳴と視線に、希が急いで振り向くも、そこには誰もいない。
「……日光がまぶしいですか? 暗めにしましょう」
気を遣った希は、俺の返事を聞かずに操作した。
全てのウィンドウが暗くなり、個室にいるような雰囲気に。
「いけないことをしている気分ですね? フフフ……」
車の外で、ドンッと叩くような音。
気のせいだろう……。
――駅前の総合施設
テーマパークのように店が集まっている、ショッピングモール。
高校生向けも多く、色々な制服が行き来している。
無人タクシーから降りて、若者に人気だが高齢者も許容できる菓子の詰め合わせとした。
神宮寺希は、贈答用の包装にしてもらった袋を下げながら、呟く。
「本当は、もっとこだわりたいのですが……」
「仕方ないさ! 予算が少ないし、日持ちしないと相手の都合が悪いだけで食えなくなる」
上品に肩をすくめた希は、ふと思いついたように提案してくる。
「そうだ! 最近オープンしたお店があるんですよ! 駿矢さんが、ご一緒してくれませんか?」
「いいよ」
そこは、陰キャが許されない空間。
真の男女平等を達成した店内。
いるのは、カップルだけ。
甘い会話とスイーツが並んでいる空間で、俺は森林でゲリラ戦をしているような緊張感に襲われた。
(油断すると……やられる!)
ここにあるのは、点と点だけ。
戦線と呼べるものはなく、あるのはカップルの数だけの愛。
それも、中高生ばかりだ。
つまり、敵に囲まれているのと同じ。
2人用のテーブルで向かいに座っている希が、微笑む。
「駿矢さんは、何にしますか?」