【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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原作の澪ルート。
それは、日本が滅びる道だった。
 
繰り返される悲劇に対して、それぞれが動くが……。
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第37話 氷室駿矢が浮気したときの末路でもある

 カップル専用となったカフェの中で、俺は運ばれてきたパフェを見た。

 

 なるほど、パフェだ。

 しかし、その大きさは1人用にあらず。

 

 さらに、同じようにドリンクのグラスも……。

 

 ストローが2つ、ありますね!

 分けるためのグラスは、ないです!!

 

 ここで、俺の視線を見ていた神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)が聞いてくる。

 

「お嫌でしたら、駿矢(しゅんや)さんに別のメニューを――」

「いや、これでいいよ」

 

 というか、男女が楽しく味わうメニューしかないじゃん……。

 

 こんな巨大なグラスを どん! どん! と置いたままで、俺だけ業務用レトルトのハンバーグランチでも頼む?

 

 ええい、冗談ではない!

 

 悪目立ちにも、程があるだろう!?

 

 すると、向かいに座っている希が、ジッと見てきた。

 

「今だけ……恋人の振りをしてくれませんか? 駿矢さんの事情はお聞きしています。私は、あなたを奪いたいわけではなく……。睦実(むつみ)さんが見逃されているのなら、私も同窓生の距離でいることを黙認されたいなと」

 

 冷えた部分のグラスに触った希は、その指でテーブルをなぞる。

 

「離れた場所にいる許嫁(いいなずけ)と睦実さんに挟まれて、大変でしょう? 都合がいい時に、愚痴を言ってください。私は、いつでもお聞きしますから! 生徒会の動向についても、教えられますし」

 

 暗い店内でにっこりと微笑んだ希に、思わず脱力する。

 

「……分かった」

 

「嬉しいです! 今だけ、楽しみましょうか?」

 

 笑顔の希は、カップル用のストローを差し出した。

 

 

 ◇

 

 

 東京国武(こくぶ)高校の生徒会室で役員机にいる伊花(いばな)鈴音(すずね)が、満面の笑み。

 

氷室(ひむろ)くん……。保険に入っておいたほうがいいわよ? 刺された傷に手厚い保証があるやつで。生涯有効なら、なお良いわ!」

 

「いきなり、何を言っているんですか……」

 

 呆れた俺が返したら、咳払いをした生徒会長が話し出す。

 

「黒魔術のサークルがあった私立高校だけど、もう手遅れ! 最終手段をとったから、氷室くん達はもう気にする必要はないわ」

 

「……と言うと?」

 

「剣術部が、中途半端に処理したのよ! 表向きは主犯の女子が刺殺された結末で、これ以上はウチで介入できず! 魔術書と他人に成りすました黒幕を消すように、依頼済み」

 

「どこに?」

 

 息を吐いた鈴音は、視線をそらした。

 

「氷室くんに頼むのは筋違いだし、西園寺(さいおんじ)さんも同じ! 残り1人よ……。もう、手段を選んでいる余裕がないの」

 

 また息を吐いた鈴音は、俺の顔を見た。

 

「中学生への指導中に、刀剣解放が1人。さらに、異界での討伐……。確率論でもあるけど、驚くべき成果よ? これをもって、氷室くんを全国防人剣術大会の刀剣解放の部門で、新人の個人戦に出します!」

 

「俺1人の成果ではありません……。グループにいた他の者は?」

 

 俺の質問に、鈴音はハッキリと告げる。

 

「剣術部の枠を削ってでも、考えます」

 

 どうして、そこまで……。

 

 俺の考えが伝わったのか、生徒会長は苦笑した。

 

「あの私立高校は……もう廃校になるわ。横取りした剣術部にも、責任をとってもらわないと」

 

 

 ◇

 

 

 黒魔術サークルがあった私立高校は、飛び降りから殺人事件の余韻がなくなった。

 

 けれど――

 

 闇夜に包まれた敷地の、まさに(ほし)芽里維(めりい)が刺殺された地下に並んだ部屋では、多くの男女が絡み合っていた。

 

 駿河沢(するがざわ)三花(みか)は、昼と同じく大人気。

 

 外に通じている入口から、制服を着た女子が1人。

 コツコツと歩いてくる様子に、水鏡(すいきょう)十太(じゅうた)が気づいた。

 

 くすんだ灰色のロングで、明るく薄い茶色の瞳。

 清楚系の可愛いアイドル、といった感じだ。

 

 警備をしていた男子も、一緒にいる。

 

「おい! なぜ、通した!? 見張っていないとダメだろ?」

「構わねーよ! これだけの女子は、うちにもいないしな? 人気者だった駿河沢は、あんなんだし……。いつでも抱ける」

 

 その視線の先には、男に群がられている三花の姿。

 

 十太は、視線をそらした。

 

「ともかく――」

粟島(あわしま)さんは、どこに?」

 

 女子の質問に、付き添いの男子が答える。

 

「何だ、有加(ゆか)の知り合いか? あいつなら……あそこだ!」

 

 そちらを見た女子は、1人で歩き出す。

 

 見覚えのない女子の登場に、警戒する人間も。

 

 けれど、歩きながら制服を脱ぎ出したことで、包囲しかけた男どもが立ち止まる。

 

 ニヤニヤしながら、女子のストリップを眺めた。

 

(確殺まで、あと30、20、10……)

 

 パンツまで床に落ちたときに、歓声が上がった。

 

 この時点で、粟島有加も気付く。

 

「そいつ――」

滅尽炎々摧火(めつじんえんえんさいか)

 

 次の瞬間に、一糸まとわぬ天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)から火山のような業火が噴き出した。

 

 状況を把握する前の奴らを巻き込んでいき……。

 

 私立高校の敷地の半分以上が、溶岩に呑まれたような惨状になった。

 地面ごと抉られ、建物は更地へ。

 

 高温から一気に冷やされ、いたるところで白い煙が立ち上り、新たに設立された黒魔術サークルは物理的に消滅。

 

 原因となった魔術書を含めて……。

 

 瞬間移動のように空中に立った和装の香奈葉は、完全解放をやめた八面玲火(はちめんれいか)を片手で下げたまま、ポツリと呟く。

 

「出力の加減ができないのが、本当に面倒なのでー」

 

 そのまま、シャッと消えた。




過去作は、こちらです!
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