【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
(さて、どうしたものか?)
勝てるか? と言われれば、勝てる。
ただし、この東京でどれだけ被害が出るのか、不明だ。
(少なくとも、市の1つは消え失せるだろう)
時間はない。
和装のまま、両手で構えた切っ先を下げる。
夜の都市部にある雑居ビルの屋上。
欲望を具現化したような明かりに照らされつつ、結論を出す。
「猶予を与える! 次に会ったら、殺す」
咲は、身構えたままで、フッと笑う。
「助かるわ!」
それでも、俺を見据えている。
構わずに、右手で刀を下げたまま、床を蹴った。
瞬間的に視界が変わり、空中や屋上、床を蹴りつつの高速移動へ。
(あいつとは、斬り合うことになるだろう……)
不思議と、そんな予感がした。
翌日の朝には、警察に大きな被害が出たことが、ラブホの画像を背景にニュース。
モザイクがかけられているものの、すぐに特定できるレベルだ。
香奈葉に調査を依頼しつつ、俺は全国防人剣術大会に備える。
◇
刀剣解放ありの部門で、俺は試合に出た。
初めての東京開催ゆえ、広い会場を押さえつつ、急いで結界を張っての手探り。
東京
元々、選手層が厚く、スポンサーが多いことから練習経験も豊富。
俺たちが割り込み、へまをした剣術部が出場枠を減らされた。
けれど、名家の女子がランクSSSの荒神になったうえ、東京が滅びるかもしれない。
学校の名誉もかかっており、さすがに絡んでこない。
『国武1年、
広い会場に響き渡ったアナウンスで、和装の俺は立ち上がった。
付き添っている
「頑張れ、
「ご武運を……」
「ああ……」
お前らも、自分の試合があるだろ? という言葉を呑み込んだ。
ワァアアアッ! という声援が高まり、主に対戦相手の名前を呼ぶ。
(嫌われたもんだねー! まあ、女子2人を侍らせて、香奈葉が婚約者だしな?)
おまけに、御神刀を持っていると……。
左腰のある
正面で向き合いつつ、アナウンスによる指示で抜刀。
お互いに正眼の構えだが――
「プッ! 本当に脇差かよ!? 今のうちに降参したほうがいいんじゃねえか? ハーレム君?」
「お前にかけている時間はない」
短い刀身で、両手による構え。
ビ――ッ!
『始めっ!』
「つぁああああっ!」
大上段に構えた奴が、そのまま踏み込んできた。
右手だけで平凪を握り直しつつ、前へ踏み込みつつの半身。
進路を譲るような構図で、相手の刀が下へ振り抜かれた。
一連の動きのまま、踊るように右手でなぞって斬る。
「ぐあっ!? このっ!」
浅く斬られた奴は、激高しながら横へ薙いだ。
その時に、俺は相手を見たままで下がっている。
顔を真っ赤にした奴が、いよいよ刀剣解放。
「舐めるなよ? 月まで届け、
刀から長い槍へ変化するも、刀身を伸ばした俺の突きが正面から突き刺さった。
両手持ちで弾かれにくく、刃を上にしている。
ご自慢の槍を両手で持っている奴は、穂先を横にしたまま。
「あっ……」
痛みよりも、驚きのほうが勝っているようだ。
魚を捌くように、俺は両手で握っている柄を背負うように上へ振り抜く。
胸から頭に至るまで縦に切り裂かれた奴は、言葉もなく倒れ伏す。
ガランガランと、遠槍が落ちた音。
ビ――ッ!
『それまで! 氷室選手の勝利!』
バシュッと、結界の中がリセットされた。
俺は元の刀身に縮め、鞘に納める。
開始位置に戻って、礼。
相手の顔を見ずに、背中を向けた。
五感を奪ってくるスキル。
炎や氷で攻撃してくる選手。
それらを倒しつつ、いよいよ決勝リーグへ。
ここからは、総当たりだ。
さすがに、刀身が伸びるだけではキツくなってきた。
(最低限のノルマは、こなしたけどな?)
香奈葉の母親、天賀原
(国武は、新人部門とはいえ3位以内が欲しいか……)
ところが、好事魔多し。
裏で進行していた、綾千侍咲が男と会う日時が決まったのだ。
俺は、そちらへ顔を出さなければならない。
生徒会長の
低空をハイスピードで走れば、警察と軍の特殊部隊が取り囲んでいた。
外周には一般の部隊が配置されて、警察のパトカーも目立つ。
(警察と軍が一緒にいると、違和感がすごいな?)
裏で、どんな話し合いになっているんだか。
ともあれ、メインイベントになった咲の話し合いへ。
和装のまま、空いているスペースへ突っ込んだ。
殺気と視線が向けられるも、困惑した様子。
あまりに混在しているため、明らかに敵でなければ撃てないようだ。
(今は……だな?)
混戦になれば、自分たち以外を撃つに違いない。
状況を整理している中で、開けた部分にスーツを着た男が1人、やってきた。
ドラマは、今から撮影開始のようだ。
どういうジャンルかは、知らんけど……。