【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
周りは、見渡す限りの緑。
山脈と言える場所で、整備された道から外れたところの開けた場所。
武装した男たちが、それぞれの服装で、所属の官品やらを持ったまま、草むらに伏せたり、木々の後ろに隠れている。
視線だけでも分かりそうだが、待ち合わせをしている
後ろ手にソワソワしている様子は、微笑ましい。
(見たところ、武装はなし……)
いつでも
(あいつも、それは分かっているだろうに!)
先に抜刀しないことが、不可解すぎる。
逆に言えば、取り囲んでいる奴らが排除を急がない理由だ。
俺が把握しているだけでも、女子高生1人を相手にするには大げさすぎる布陣。
迷彩の戦闘服やらで、ガンベルトなどを身につけて、小銃を持っている兵士たち。
あるいは、ショットガンや拳銃を持つ、紺色の制服を着た警官。
テレビ局の撮影のように私服で立つ咲を見ていたら、違和感を覚えた。
まったく、緊張していない。
(すごく、嫌な予感がする……)
やがて、近くの山道で砂利を押しのけるタイヤの音に、エンジン音。
封鎖していたバリケードが退けられる音や、掛け声も。
どうやら、彼女が希望した男が来たらしい。
(男が来たか……。重役出勤だな!)
同じ日本だろうが、軍と警察は呉越同舟。
おまけに、俺たち防人もいる。
いつ戦端が開かれるかも不明で、下手をすれば、近くにいる奴も襲ってくる状態。
息を吐けば、周りに潜むグループも同じ気配だ。
ともあれ、スーツ姿の若い男が歩いてきたことで仕切り直し。
ずっと待たされた咲は笑顔……ではない。
(おいおい? ここへ来て、まだ何かあるのか!?)
うんざりした気配は、周りも同じ。
舞台となった開けた場所で、ドラマが始まる……。
スーツ男は、咲がすぐに斬りつけられない間合いで立ち止まった。
正面で向き合いつつ、会釈。
「お待たせしました! 私は、
「あなたは、どうでもいい! 結論だけ言って?」
張り付けた笑みの黒田は、ズバリ言う。
「失礼……。我々は、内閣治安維持局です! あなたがどう聞いたのかは存じませんが、高坂も同じ所属」
「で?」
「カクリヨ神社の襲撃は、不幸な事故でした……。我々の目的は
「彼は?」
「生きてますよ? ただし、あなたが聞いたカバーと異なるはず! 話を戻しますが、あなたは微妙な立場だ。かつて名家のご令嬢だろうと、今は同じ防人にすら荒神として命を狙われる……。我々に保護される気は?」
脅しつつの交渉を始めた、黒田。
けれど、小首をかしげた咲は、笑顔で問いかける。
「私は、高坂さんに会いたいの! ここでね? そう言ったはずよ」
息を吐いた黒田は、付き合っていられないとばかりに、首を振った。
「ですから! 高坂に会わせるにしても、我々に従ってもらうと!」
「……話にならないわ! あなたはメッセンジャーになってもらうから、無事に返してあげる」
物騒な発言に、黒田は緊張した。
けれど、スーツの内側に手を入れず。
(防人、それも今は荒神にして、封賀秋灯がある……。豆鉄砲じゃ、逆効果だ)
下手に刺激するだけなら、丸腰のほうがマシ。
そもそも、交渉人が武器を持つな!
抵抗する手段がなく、無意識に後ずさった黒田は、指摘する。
「ここは、警察と軍が包囲していますよ? それも重武装で、大勢の! あなたでも突破は――」
「ええ! だから、最高の状態なの!」
笑顔で叫んだ咲は、パンッと、両手で叩いた。
それを合図にしたのか、その体が殴られたように揺れる。
タァ―ン! という、力強い発砲音も。
しかし、踏ん張った咲は、両足を広げつつも、
「フフッ! 実弾ね……。いいわ、踊りなさい!」
指揮者のように、何もない片手を振るえば、再びライフルの発砲音。
しかし、咲に向けてではない……。
「お、おいっ! 何をしている!?」
戸惑ったような声が、辺りに響く。
そのスナイパーは、別の相手を撃ったようだ。
「やめろ! いったい、どうした!?」
近くにいる味方が止めようとするも、次々に発砲音。
悲鳴や倒れる音が続き、やがて応戦へ。
バババと発砲音が重なり、近距離での乱戦になった。
封賀秋灯の真の力は――
「そう! これは、人を
咲の宣言で、ここは戦場のど真ん中へ。
殺気を向けられた俺は、走り出しつつ、両手で抜刀する姿勢へ。
「可哀想だが……死んでもらうっ!」
踏み込みつつ、俺へ発砲している兵士への抜きつけ。
止まらずに走り抜ければ、小銃を撃ち続ける兵士から血が噴き出す。
片手で刀を持ったまま、その場で向きを変える。
ほぼ同時に、バッタのような跳躍。
直後、その地点に手榴弾が飛んできた。
破片をまき散らす爆音に後押しされるように、俺は刀を振るう。
今は、この場にいる全員が敵だ!