【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第44話 封賀秋灯は一騎当千ではなく、千騎万軍!?

 周りは、見渡す限りの緑。

 

 山脈と言える場所で、整備された道から外れたところの開けた場所。

 

 武装した男たちが、それぞれの服装で、所属の官品やらを持ったまま、草むらに伏せたり、木々の後ろに隠れている。

 

 視線だけでも分かりそうだが、待ち合わせをしている綾千侍(あやせんじ)(さき)はボーッと立ったまま。

 

 後ろ手にソワソワしている様子は、微笑ましい。

 

(見たところ、武装はなし……)

 

 いつでも御刀(おかたな)を抜けるから、それまでに仕留められるか?

 

(あいつも、それは分かっているだろうに!)

 

 先に抜刀しないことが、不可解すぎる。

 

 防人(さきもり)の超人的な力を発揮するためには、それをしておくべき。

 

 逆に言えば、取り囲んでいる奴らが排除を急がない理由だ。

 

 俺が把握しているだけでも、女子高生1人を相手にするには大げさすぎる布陣。

 

 迷彩の戦闘服やらで、ガンベルトなどを身につけて、小銃を持っている兵士たち。

 あるいは、ショットガンや拳銃を持つ、紺色の制服を着た警官。

 

 テレビ局の撮影のように私服で立つ咲を見ていたら、違和感を覚えた。

 

 まったく、緊張していない。

 

(すごく、嫌な予感がする……)

 

 やがて、近くの山道で砂利を押しのけるタイヤの音に、エンジン音。

 

 封鎖していたバリケードが退けられる音や、掛け声も。

 

 どうやら、彼女が希望した男が来たらしい。

 

(男が来たか……。重役出勤だな!)

 

 同じ日本だろうが、軍と警察は呉越同舟。

 おまけに、俺たち防人もいる。

 

 いつ戦端が開かれるかも不明で、下手をすれば、近くにいる奴も襲ってくる状態。

 

 息を吐けば、周りに潜むグループも同じ気配だ。

 

 ともあれ、スーツ姿の若い男が歩いてきたことで仕切り直し。

 

 ずっと待たされた咲は笑顔……ではない。

 

(おいおい? ここへ来て、まだ何かあるのか!?)

 

 うんざりした気配は、周りも同じ。

 

 舞台となった開けた場所で、ドラマが始まる……。

 

 スーツ男は、咲がすぐに斬りつけられない間合いで立ち止まった。

 

 正面で向き合いつつ、会釈。

 

「お待たせしました! 私は、黒田(くろだ)と申します……。うちの高坂(こうさか)に会いたいとのご要望でしたが――」

「あなたは、どうでもいい! 結論だけ言って?」

 

 張り付けた笑みの黒田は、ズバリ言う。

 

「失礼……。我々は、内閣治安維持局です! あなたがどう聞いたのかは存じませんが、高坂も同じ所属」

 

「で?」

 

「カクリヨ神社の襲撃は、不幸な事故でした……。我々の目的は封賀秋灯(ふうがしゅうとう)で、今はあなたが所有、または取り込んでいると」

 

「彼は?」

 

「生きてますよ? ただし、あなたが聞いたカバーと異なるはず! 話を戻しますが、あなたは微妙な立場だ。かつて名家のご令嬢だろうと、今は同じ防人にすら荒神として命を狙われる……。我々に保護される気は?」

 

 脅しつつの交渉を始めた、黒田。

 

 けれど、小首をかしげた咲は、笑顔で問いかける。

 

「私は、高坂さんに会いたいの! ここでね? そう言ったはずよ」

 

 息を吐いた黒田は、付き合っていられないとばかりに、首を振った。

 

「ですから! 高坂に会わせるにしても、我々に従ってもらうと!」

「……話にならないわ! あなたはメッセンジャーになってもらうから、無事に返してあげる」

 

 物騒な発言に、黒田は緊張した。

 

 けれど、スーツの内側に手を入れず。

 

(防人、それも今は荒神にして、封賀秋灯がある……。豆鉄砲じゃ、逆効果だ)

 

 下手に刺激するだけなら、丸腰のほうがマシ。

 

 そもそも、交渉人が武器を持つな!

 

 抵抗する手段がなく、無意識に後ずさった黒田は、指摘する。

 

「ここは、警察と軍が包囲していますよ? それも重武装で、大勢の! あなたでも突破は――」

「ええ! だから、最高の状態なの!」

 

 笑顔で叫んだ咲は、パンッと、両手で叩いた。

 

 それを合図にしたのか、その体が殴られたように揺れる。

 

 タァ―ン! という、力強い発砲音も。

 

 しかし、踏ん張った咲は、両足を広げつつも、獰猛(どうもう)な笑顔だ。

 

「フフッ! 実弾ね……。いいわ、踊りなさい!」

 

 指揮者のように、何もない片手を振るえば、再びライフルの発砲音。

 

 しかし、咲に向けてではない……。

 

「お、おいっ! 何をしている!?」

 

 戸惑ったような声が、辺りに響く。

 

 そのスナイパーは、別の相手を撃ったようだ。

 

「やめろ! いったい、どうした!?」

 

 近くにいる味方が止めようとするも、次々に発砲音。

 

 悲鳴や倒れる音が続き、やがて応戦へ。

 

 バババと発砲音が重なり、近距離での乱戦になった。

 

 封賀秋灯の真の力は――

 

「そう! これは、人を傀儡(くぐつ)にする力! フフフ……ハハハハハハッ!」

 

 咲の宣言で、ここは戦場のど真ん中へ。

 

 殺気を向けられた俺は、走り出しつつ、両手で抜刀する姿勢へ。

 

「可哀想だが……死んでもらうっ!」

 

 踏み込みつつ、俺へ発砲している兵士への抜きつけ。

 

 止まらずに走り抜ければ、小銃を撃ち続ける兵士から血が噴き出す。

 

 片手で刀を持ったまま、その場で向きを変える。

 

 ほぼ同時に、バッタのような跳躍。

 

 直後、その地点に手榴弾が飛んできた。

 

 破片をまき散らす爆音に後押しされるように、俺は刀を振るう。

 

 今は、この場にいる全員が敵だ!




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