【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第45話 安全装置が3つもある、光の終わり……

 乾いた発砲音が、あらゆる方向で響く。

 

 明るい山中は、突如として戦場になった。

 

(このままでは……あらゆる所属の殺し合いだ!)

 

 歯を食いしばった俺は、刀を持ったままで、周りを感じとる。

 

 犠牲者もさることながら、封賀秋灯(ふうがしゅうとう)で洗脳できる範囲が心配だ。

 

 刀の柄を握りしめつつ、俺は今後を憂う。

 

(ダメだ! すぐに止めなければ! こんなこと、やっちゃいけない!)

 

 命は、大事なものだ。

 

 かけがえのない――

 

「死ねぇええええっ!」

 

 ババババという銃撃が四方から響き、俺の主観で時間が止まった。

 

(あ、これ死んだわ!)

 

 普通の刀と言えるほどに伸ばした刀身のまま、無意識に背中から青い双翼が伸びる。

 

 片手で握っていた脇差からは、青い光。

 

 体の向きを変えながら、それを投げれば、回転しつつ、周りの敵をどんどん切り裂いていく。

 

 一瞬で上空へ飛び上がった俺は、完全解放による蒼穹光々翼(そうきゅうこうこうよく)で、戻ってきた青い刀を握った。

 

光終(こうしょう)……」

 

 その一言で、背中の双翼と青いソードの色が変わる。

 

 白い。

 

 俺は、もう一度、繰り返す。

 

「これは、光の終わり……」

 

 噴き出す白い光が激しくなり、地上にいる兵士や警官、低空のヘリまで注目する。

 

「撃て! あいつを撃てぇええええっ!」

 

 三次元で撃たれるも、そのライフル弾や榴弾はことごとく白い光になるだけ。

 

 ヴゥウウウウウッ!

 

 ヘリの下部にある機関砲が火を噴き、凄まじい音と衝撃に襲われるも、同じ結果だ。

 

 直進するだけのロケット弾が殺到して、俺は爆風に包まれた。

 

「や、やったか!?」

 

 地上にいる誰かの声が、不思議と響き渡った。

 

 けれど、何事もなかったように空中で立つ俺に、誰もが黙り込む。

 

 さっきまで殺し合いだった奴らは、俺を見上げるばかり。

 

 目を開けた俺は、静かに告げる。

 

「次だ……」

 

「あと1回で、お前らは消えるぞ?」

 

 その時に、誰かが絶叫しつつも発砲。

 

 俺は、最後のセーフティーを解除する。

 

「全ては、光の中へ――」

 

 あふれるように、白い光が周りに満ちていく。

 

 一瞬で、攻撃していた戦闘ヘリが消える。

 

 キンキンと甲高い音が発生しつつ、その範囲はあっという間に広がっていく。

 

「た、助け――」

 

「嘘だ――」

 

 一斉に撃ってきた装甲車の砲弾が消え去り、そのエネルギーがさらなる効果へ繋がる。

 

 白の絵の具で塗り潰されるように、消える。

 

 消えていく……。

 

――死にたくない!

 

――やめろ!

 

――この、人殺しがあああぁっ!

 

――化け物め!

 

 

 気がつけば、俺が見下ろしている景色は、一帯が造成工事のように抉られたまま。

 

 青色に戻った青いビームソードのような刀の柄を握りしめた。

 

 そもそもの発端である男女。

 黒田(くろだ)綾千侍(あやせんじ)(さき)は、いない。

 

 しかし、さっきの白い光に呑み込まれたわけではない。

 

 それぞれ、逃げたのだ。

 

「時間を与えた結果が、これか……」

 

 フーッと息を吐いた後で、展望台のような山の景色でその一角を見据える。

 

 

 ◇

 

 

 車を運転する、スーツ男。

 

 黒田は、両手でハンドルを握りつつも、全身から汗をかいていた。

 

 山をぐるりと回る、先が見えない車道。

 

 そこを、サーキットのように高速で走っていく。

 

 空へ飛び出しそうな景色から、先が見えないカーブの先へ。

 

「くそっ! くそっ! 綾千侍を説得できず、こんなザマとは!」

 

 誰も座っていない助手席には、乱暴に放り出したセミオートマチックが一丁。

 

 その形に切り取ったようなホルスターに収まったままだ。

 

 咳き込むようなエンジン音と、アスファルトで削られて悲鳴を上げるタイヤ。

 

(市街地まで逃げて……姿を消そう! 顔と名前を変えるのが間に合うか……)

 

 片手でハンドルを叩く。

 

「ちくしょおおおおっ! 高坂(こうさか)の野郎、女子高生1人も口説きそこねやがって! 自分のケツぐらい、自分で拭け!!」

 

 無意識に、泣いていた。

 ズボンの前もずぶ濡れで、足元まで気持ち悪い。

 

 小なりとはいえ、軍の部隊がいたのだ。

 

 それが、まさに一瞬で消え失せた。

 

 存在して良い力ではなく、知らずに最終兵器のトリガーを引かされた気分。

 

「冗談じゃねえええっ! 冗談じゃ――」

 

 円盤のように回転する青い物体が、前方から車を左右に分断するように近づいてきた。

 

 皿を縦にしたようで、ギロチンに思える。

 

「ぐっ!?」

 

 とっさに反応した黒田は、それでも空中へ飛び出すことを避け、山肌を固めた反対側にハンドルを切る。

 

 車道を半分で区切るように削った死神を避けつつ、走っている車は助手席のほうが嫌な音を立てて、火花を散らしながら凹んでいく。

 

 タイヤが破裂して、左半分が低くなった。

 

 そのまま爆発するように思えた車だが、何とか停止。

 

 ハンドルにかじりついていた黒田は、肩で息をする。

 

「た、助かった? とにかく、逃げないと――」

 

 金属が溶断されるような、耳を塞ぎたくなる音。

 

 同時に、車内が妙に明るくなった。

 

 風切り音がするほうを見上げれば、車の屋根を切り裂いた張本人の姿。

 

 低空に立っているのは、青少年。

 

 青い円盤のように回転していた刀をキャッチした氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)は、戦闘機の翼にも見える一対の青い光を放出していた。

 

 ドスの利いた、低い声。

 

「黒田くぅ――ん? ちょっと、聞きたいことがあるんだけどね?」




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