【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
切り裂かれた、車のルーフ。
もはや自走できない車の運転席にいる
いっぽう、剣道着のような和装に青い翼をまとう
「
パンパンパンという、発砲音。
我に返った黒田は、自分が助手席に置いていたセミオートマチックを連射したことに気づく。
ところが、必中の距離にいたはずの駿矢は、苦笑するだけ。
「遊んでいる暇はない! さっきみたいな感じで東京を消し飛ばしたくなければ、とっとと教えろ! 綾千侍の
黒田は、思考停止のまま、 かろうじて銃口を下げる。
けれど、本人の意思を無視した発言。
「人殺し……」
ぼそっと呟いてから、シャワーと思えるほどの汗で全身が濡れる。
(間違えた!)
案の定、いつでも殺せるだけの力を持つ駿矢は、機嫌を悪くした。
「よく言われる……。別に、お前でなくてもいい! 次が最後だぞ?」
右手にある脇差の切っ先が、上へ。
それを見た黒田は、助手席にハンドガンを投げ捨て、言葉をつむぐ。
黙っている時間すらない。
言いながら、考えていくのみ。
「こ、高坂は……分からん! 奴がいたら、俺が来るわけないだろ!? 俺たちはスパイだ! 今の顔と名前すら……。内閣治安維持局で問い合わせるしか――」
「首相官邸が占拠された! 駿矢、早く行ってよ?」
雷のような轟音と共に、紫のスパークを纏った女子が1人。
同じような和装と刀だ。
(こいつも、
そう思っている間に、男女が話し合う。
「分かった……。俺がやる」
「うん! ボクは、別のところへ行くよ」
2人は、瞬間移動のように消えた。
命拾いした黒田は、シートベルトで拘束されたまま、運転席で脱力する。
切り裂かれたルーフから、青空を見た。
「ハ、ハハハハ! もう止めようかな、この仕事……」
――首相官邸
よく手入れされた中庭に、綾千侍咲が立っている。
しかし、何もない方向を見た。
突風の直後に、氷室駿矢が立っている。
当たり前のように微笑んだ咲は、静かに言う。
「待ってくれるんじゃないの?」
「時間切れだ!」
肩をすくめた咲は、苦笑い。
「男は、いつもそう! 嘘ばっかり……」
「今の高坂は分からんそうだ! 逃げた黒田に聞いてきた」
駿矢の発言に、咲はため息をつく。
「だと思った! 一緒に探してくれる……わけじゃないわね?」
普通の刀身に伸ばしての構えに、咲も自分の
「封賀秋灯が効かない以上、もう勝ち目はない! 私を……女を殺せるの?」
「ついさっき、大量に殺してきたばかりでな? 男女平等だよ」
沈黙。
地面が削れる音に、風切り音。
駿矢は咲とすれ違い、彼女の体から噴水のような血。
ガシャン、どさりと倒れる。
血振りをした駿矢は、脇差に戻してから納刀。
それを待っていたかのように、重装備の警官隊が全力疾走、あるいは、潜んでいた屋上からのラぺリングで、シューッと降下する。
「警察だ!」
「動くな! 少しでも動けば、発砲する!」
駿矢にも銃口が突きつけられ、同時に倒れた咲をチェックする警官も。
「死んでます! 指示を!」
「……厳重に拘束して、外が見えない状態にして搬送!」
「銃を下ろせ! 彼に失礼だろう!?」
男の声に、銃口を下げた警官たちが退く。
駿矢が訝し気に見れば、偉そうな男。
「首相の
「国土守護府まで、お願いします」
事務的に告げた駿矢は、やはり一瞬で消えた。
政治的に利用される前に、退散したのだ。
◇
『一連の事件は防人がやった、という意見もありますが……』
『しかし、死傷者は出ていません! そんな器用な真似ができるとは、とても――』
高坂と呼ばれていた男は、東京の駅前で、モニターで放送される番組を見ていた。
(本当に、死傷者がいない……)
他人を気にしない都心部で、誰もが自分の人生とドラマをつむぐ。
その大半が、上京者。
色あせた夢を捨てられないまま、地元へ帰るタイミングを考える。
その群れに紛れつつ場所を変えた高坂は、カフェのカウンター席に座り、コーヒーを啜りながら思考する。
(カクリヨ神社にあった封賀秋灯は、行方不明……。防人の危険性を知らしめることも、死傷者がいない現状では無理)
ふうっと、息を吐いた。
政治的にも、内閣治安維持局は負けたのだ。
(封賀秋灯と一体化したあいつが死んだことで、さらに犠牲者が出る事態だけは避けられたか!)
地上には、人工的な光があふれている。
聞こえてくるのは、金を搾り取るために考えられたキャッチコピーや、宣伝。
外に出て、人混みの中で歩く。
けれど、ピタリと止まる。
高坂は、迷惑そうに避けていく人々を気にせず、正面で立ち止まっている相手を見た。
向き合っているのは、1人の女子。
姫のような髪型で――
「久しぶりね、高坂さん!」
それは、綾千侍咲だった……。