【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第46話 男って、いつも嘘つきね?(前編)

 切り裂かれた、車のルーフ。

 

 もはや自走できない車の運転席にいる黒田(くろだ)は、シートベルトを外すことも忘れ、ただ上を見上げるだけ。

 

 いっぽう、剣道着のような和装に青い翼をまとう氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)は、右手に脇差ぐらいの青いビームソードを握りつつ、低空に立ったまま。

 

高坂(こうさか)……。綾千侍(あやせんじ)(さき)が会いたがった男だ! どこにいる?」

 

 パンパンパンという、発砲音。

 

 我に返った黒田は、自分が助手席に置いていたセミオートマチックを連射したことに気づく。

 

 ところが、必中の距離にいたはずの駿矢は、苦笑するだけ。

 

「遊んでいる暇はない! さっきみたいな感じで東京を消し飛ばしたくなければ、とっとと教えろ! 綾千侍の封賀秋灯(ふうがしゅうとう)が、東京にいる人間を全て支配してもおかしくない」

 

 黒田は、思考停止のまま、 かろうじて銃口を下げる。

 

 けれど、本人の意思を無視した発言。

 

「人殺し……」

 

 ぼそっと呟いてから、シャワーと思えるほどの汗で全身が濡れる。

 

(間違えた!)

 

 案の定、いつでも殺せるだけの力を持つ駿矢は、機嫌を悪くした。

 

「よく言われる……。別に、お前でなくてもいい! 次が最後だぞ?」

 

 右手にある脇差の切っ先が、上へ。

 

 それを見た黒田は、助手席にハンドガンを投げ捨て、言葉をつむぐ。

 

 黙っている時間すらない。

 

 言いながら、考えていくのみ。

 

「こ、高坂は……分からん! 奴がいたら、俺が来るわけないだろ!? 俺たちはスパイだ! 今の顔と名前すら……。内閣治安維持局で問い合わせるしか――」

「首相官邸が占拠された! 駿矢、早く行ってよ?」

 

 雷のような轟音と共に、紫のスパークを纏った女子が1人。

 

 同じような和装と刀だ。

 

(こいつも、防人(さきもり)か……)

 

 そう思っている間に、男女が話し合う。

 

「分かった……。俺がやる」

 

「うん! ボクは、別のところへ行くよ」

 

 2人は、瞬間移動のように消えた。

 

 命拾いした黒田は、シートベルトで拘束されたまま、運転席で脱力する。

 

 切り裂かれたルーフから、青空を見た。

 

「ハ、ハハハハ! もう止めようかな、この仕事……」

 

 

 ――首相官邸

 

 よく手入れされた中庭に、綾千侍咲が立っている。

 

 しかし、何もない方向を見た。

 

 突風の直後に、氷室駿矢が立っている。

 

 当たり前のように微笑んだ咲は、静かに言う。

 

「待ってくれるんじゃないの?」

 

「時間切れだ!」

 

 肩をすくめた咲は、苦笑い。

 

「男は、いつもそう! 嘘ばっかり……」

 

「今の高坂は分からんそうだ! 逃げた黒田に聞いてきた」

 

 駿矢の発言に、咲はため息をつく。

 

「だと思った! 一緒に探してくれる……わけじゃないわね?」

 

 普通の刀身に伸ばしての構えに、咲も自分の御刀(おかたな)を構える。

 

「封賀秋灯が効かない以上、もう勝ち目はない! 私を……女を殺せるの?」

 

「ついさっき、大量に殺してきたばかりでな? 男女平等だよ」

 

 沈黙。

 

 地面が削れる音に、風切り音。

 

 駿矢は咲とすれ違い、彼女の体から噴水のような血。

 

 ガシャン、どさりと倒れる。

 

 血振りをした駿矢は、脇差に戻してから納刀。

 

 それを待っていたかのように、重装備の警官隊が全力疾走、あるいは、潜んでいた屋上からのラぺリングで、シューッと降下する。

 

「警察だ!」

 

「動くな! 少しでも動けば、発砲する!」

 

 駿矢にも銃口が突きつけられ、同時に倒れた咲をチェックする警官も。

 

「死んでます! 指示を!」

「……厳重に拘束して、外が見えない状態にして搬送!」

 

「銃を下ろせ! 彼に失礼だろう!?」

 

 男の声に、銃口を下げた警官たちが退く。

 

 駿矢が訝し気に見れば、偉そうな男。

 

「首相の森山(もりやま)だ! いやはや、見事な手並みだった! 君も防人だね? 今回の件は――」

「国土守護府まで、お願いします」

 

 事務的に告げた駿矢は、やはり一瞬で消えた。

 

 政治的に利用される前に、退散したのだ。

 

 

 ◇

 

 

『一連の事件は防人がやった、という意見もありますが……』

 

『しかし、死傷者は出ていません! そんな器用な真似ができるとは、とても――』

 

 高坂と呼ばれていた男は、東京の駅前で、モニターで放送される番組を見ていた。

 

(本当に、死傷者がいない……)

 

 他人を気にしない都心部で、誰もが自分の人生とドラマをつむぐ。

 

 その大半が、上京者。

 

 色あせた夢を捨てられないまま、地元へ帰るタイミングを考える。

 

 その群れに紛れつつ場所を変えた高坂は、カフェのカウンター席に座り、コーヒーを啜りながら思考する。

 

(カクリヨ神社にあった封賀秋灯は、行方不明……。防人の危険性を知らしめることも、死傷者がいない現状では無理)

 

 ふうっと、息を吐いた。

 

 政治的にも、内閣治安維持局は負けたのだ。

 

(封賀秋灯と一体化したあいつが死んだことで、さらに犠牲者が出る事態だけは避けられたか!)

 

 地上には、人工的な光があふれている。

 

 聞こえてくるのは、金を搾り取るために考えられたキャッチコピーや、宣伝。

 

 外に出て、人混みの中で歩く。

 

 けれど、ピタリと止まる。

 

 高坂は、迷惑そうに避けていく人々を気にせず、正面で立ち止まっている相手を見た。

 

 向き合っているのは、1人の女子。

 

 姫のような髪型で――

 

「久しぶりね、高坂さん!」

 

 それは、綾千侍咲だった……。




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