【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第50話 仲良しの2人による、ガールズトーク

 自宅の風呂で、いきなり降ってきた少女。

 

 俺は溺れないように彼女を抱きかかえたまま、普通にドアを開けてきた西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)を見る。

 

駿矢(しゅんや)……」

 

「急に、こいつが風呂の上に現れたんだ」

 

 まったく慌てずに説明したおかげで、睦実は首をかしげた。

 

「んー? 確かに、ボクが家にいた……」

 

 当たり前のように、人の家へ入るな。

 

 心の中で、突っ込んだ。

 

 ため息をついた睦実は、スタスタと近づいてきた。

 

「とりあえず、渡して? こっちで着替えさせたら、事情を聞く」

 

「頼む……」

 

 俺が気絶した少女を渡したことで、睦実は落ち着いたようだ。

 

「ゆっくり入ってね? どうせ、こっちの着替えもあるし」

 

 自分の両手で抱きかかえた少女を警戒しつつ、風呂場から出て行く。

 

 

 予想外のトラブルで、せっかくの風呂が台無し。

 

 しかし、丸投げするわけにもいかない。

 

(俺の自宅だしな?)

 

 そう思いつつ、リビングへ戻れば――

 

「謹んで、氷室(ひむろ)様にご挨拶申し上げます! わたくしは、駒乃藩(こまのはん)の藩主である藤堂家(ふじどうけ)の娘、紗良(さら)です。この度は……そ、粗相をしてしまい、お詫びのしようもございません!」

 

 最後のほうで、あの時のシーンを思い出したらしく、顔を真っ赤にしたまま。

 

 背中を伸ばしたままの正座から、順番に手をつけての礼。

 

 顔面を床にこすりつけるような、最も敬意を示す形だ。

 

 待っていると、紗良は床と一体化したまま。

 

 その体が震えている気がする。

 

 やがて、睦実の視線。

 

(早く、許してあげなよ?)

 

 そう問われて、ようやく気付いた。

 

「藤堂さん? 俺は、気にしていないから……。顔を上げてください」

 

 ゆっくりと頭を上げた紗良は、パアアッと、明るい顔に。

 

「あ、ありがとう存じます! しかし、わたくしは……」

 

 悩ましい顔になった紗良に、俺と睦実は顔を見合わせる。

 

 ピリリリ♪

 

「ひいっ!?」

 

 まさに飛び上がった紗良は、キョロキョロと、周りを見た。

 

 その反応を見ながら、俺はスマホの着信を見てから、画面にさわる。

 

「今は、立て込んでいるから――」

『そなたの悩みを解決して差し上げますー!』

 

 天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)の声。

 

「自宅に盗聴器とか、仕掛けていないよな?」

『……用件を伝えるので!』

 

 ヤバい。

 

 こいつ、否定しなかったぞ?

 

『その珠姫(たまひめ)は、本物です! 時空の乱れか何かで、ここに流れ着いたのでしょう』

 

 いちいち疑う香奈葉にしては、妙に素直だ。

 

 普通なら、自分が姫様と思い込んでいる異常者か、そういう設定で近づいてきた刺客かスパイと疑うのに……。

 

「俺は、どうすればいい?」

 

『珠姫が本物と偽者のどちらにしても、そなたの自宅に閉じ込めるわけにもいかないのでは?』

 

 こいつにしては、正論だ。

 

 昔の姫様にとって、スマホなんぞ、正気を失うエイリアンを見たのと同じ。

 

 来訪者がいれば、育ちの良さで素直に応対するだろう。

 

 偽者なら、どういう仕掛けをされるか、分かったものじゃない。

 

(見慣れぬ女子を自宅に閉じ込めていると近所の奴らに噂されたら、通報されかねない)

 

 世間知らずの姫様 VS 国家権力

 

 俺を除いた後で、勝手に戦え!

 

『東京国武(こくぶ)高校に編入させるから、睦実(むつみ)と珠姫に付き添って欲しいので!』

 

 何だかんだで、西園寺(さいおんじ)睦実と仲がいいな?

 

 お前の代理人として、他に適任がいないことも大きいだろうが。

 

「了解……。どっちにせよ、人の目は多いほうがいいか!」

 

『彼女の面倒を見るために、カードを使っていいです……。このまま、睦実に代わって欲しいのでー!』

 

 スマホを片耳から離して、睦実に差し出した。

 

(ん? 盗聴していたとしても、なぜ珠姫と……)

 

 あれでも、長い歴史がある名家のお嬢様だ。

 

 名前から、すぐに結びつけたのだろう。

 

 

 ◇

 

 

 西園寺睦実は、氷室駿矢からスマホを受け取った。

 

 通話中の表示を見た後で、片耳へ。

 

「どうするの?」

『国武で、そなたと同じクラスに編入させます。監視と世話を……』

 

 正座をしたままの藤堂紗良をチラ見した後で、答える。

 

「ハイハイ……。注意することは?」

『紗良は、昔にいた珠姫です! 間違いありません』

 

 天賀原香奈葉は、聞いている者が寒気を感じるほどに断言。

 

 睦実が、すぐに突っ込む。

 

「斬首のうえ、無縁仏でしょ? 冗談にしても、笑えないけど?」

 

 紗良が、ビクッとした気配。

 

 いっぽう、香奈葉が問いかける。

 

『わたくしの発言を信じられませんか?』

「……真偽は、どうでもいいよ! 放り出すわけにもいかないから、引き受けるけど。費用と報酬は?」

 

 スマホで、フフフと笑う声。

 

『だから、そなたを手放せない! 前に預けたカードを使いなさい。報酬は改めて……。そうそう! ないとは思いますが、駿矢が珠姫に欲情して止まらない場合は、そなたが代わりに相手をしなさい! わたくしが許します』

 

 あまりの発言に、睦実は息を呑んだ。

 

「そういう言い方、あまり好きじゃないんだけど?」

『……駿矢に、「珠姫とヤリたくて我慢できなくなったら、睦実の穴を使いなさい」と言えば、良かったので?』

 

 剣呑な雰囲気になった睦実が、言い返す。

 

「それ言ったら、お前の大事なところに御神刀を奥まで突き刺すからね?」

『……むろん、言わないので! 珠姫を頼みます』

 

 まったく動じない香奈葉は、別れを告げた。

 

 ツーツーと、電話が切れた音。

 

「人に頼む態度じゃないね……。もう、終わったから!」

 

 呆れたように呟いた睦実は、スマホを返しつつ、首を横に振った。




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