【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第51話 武家への侮辱は一族郎党との敵対

『すっごい、大きい!』

 

 縦に細長い画面で、鮮明な画像。

 

 それを言ったのは、カジュアルな私服だが、明らかに計算されたファッションの男だった。

 

 オシャレな眼鏡をかけた、悪く言えば、陰キャの顔立ち。

 

 ジャケパンだが、目立つシャツは丸首で、カジュアルの印象。

 

 自宅にしてはプロがいる厨房のようなシステムキッチンから運ばれてきたウェディングケーキの親戚のようなデザートに、オーバーリアクションを示す。

 

 それを運んできた人物は、その眼鏡よりも若い男2人だ。

 

 そのうちのイケメンは、ネクタイを締めたスーツ姿。

 

『どーもー! ユーマーです! 今日はレンくんの誕生日ということで、奮発しましたぁ!』

 

 可愛い系のイケメンも、そのユーマーの反対側に陣取る。

 

『ショウタっす! レンくん、おめでとー!』

 

 パアンッと、クラッカーが鳴る。

 

 中央にいるレンが、カメラ目線で話し出す。

 

『どもー! レンでーす!』

 

 そのレンに、伸ばした人差し指がふれた。

 

 騒がしい誕生日パーティーは、時間停止。

 

 ふうっと息を吐いた藤堂(ふじどう)紗良(さら)は、手にしていたスマホをしげしげと眺める。

 

「……同じ日ノ本とは、思えませぬ」

 

 

 ――東京国武(こくぶ)高校

 

 1年1組。

 

 まだ着慣れぬ制服を身につけた藤堂紗良は、上品に頭を下げた。

 

「よろしくお願い申し上げます……」

 

 西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)と同じクラスで、彼女が面倒を見る。

 

 奥ゆかしいことで、女子ウケも悪くない。

 

 そして、放課後。

 

 フリーの大和撫子とあって、剣術部の男子が粉をかける。

 

「藤堂さん? 俺たちが、刀剣解放まで指導してあげるよ? 女子もいるから、斬り合いでも困らない」

 

 眉を上げた睦実が、立ちはだかる。

 

「待ってくれる? ボクたちが、先約なんだけど!」

 

 ニヤニヤしている男子が、言い返す。

 

「クラスメイトとして、学校に慣れるまでのフォローだぜ? ちょうどいいから、お前も来るか? あんなグループにいたら、首席のお前もバカにされるぞ?」

 

 ここぞとばかりに、他のやつらも追撃する。

 

氷室(ひむろ)のやつは、全剣(ぜんけん)――全国防人剣術大会――の刀剣解放で決勝リーグに出ながら棄権しやがったし!」

 

「知らんところでボロボロになるって、どんだけ自覚がないんだよ? ハハハ!」

 

 氷室駿矢(しゅんや)を貶されて、睦実が反論しようと――

 

「お気遣いいただき、誠にありがとうございます……。されど、わたくしは西園寺さまのお世話になっている身ゆえ、お構いなく」

 

 深々と頭を下げての重苦しい返答に、剣術部の男子が茶化す。

 

「藤堂家として、不義理はできないって?」

 

「左様でございます……。西園寺さまがお断りしたのであれば、わたくしも同様。わざわざのお誘いにこのような返答になりましたこと、大変申し訳ございません」

 

 再び頭を下げた、紗良。

 

 それを見た剣術部の女子が、説得する。

 

「あの……。そういうのも大事だと思うけど、少しは自分で考えたほうがいいよ?」

 

「うん! 氷室は、婚約者とは別に、女子を侍らせているし。藤堂さんも手を出されるって!」

 

 心配しているのは、本当だろう。

 

 紗良は、一瞬で見抜きつつ、考える。

 

(ここが未来の日本なら……。わたくしに選ぶ権利はありません)

 

 見初められ、側室として寵愛を受けるなら、願ったり叶ったり。

 お手付きになる可能性が高いことは、朗報だ。

 

(幸いにも、まだ処女)

 

 後は自由にしてくれ、と放り出されるほうが、よっぽど困る。

 

 だからといって、自分から服を脱ぎ、どうか抱いてくださいまし、と土下座をするようでは、藤堂家の名折れ。

 

 もはや、自刃するしかない。

 

(価値観が、あまりに違い過ぎる……)

 

 これ以上の話し合いは不毛、と結論を出した。

 

「今のわたくしは西園寺さま、氷室さまの一族郎党と、ご理解くださいませ! 藤堂の名を汚すわけには参りません」

 

 剣術部の男子が、声を上げる。

 

「お、大げさだって! 戦国時代じゃあるまいし……。それとも、同姓同名の弾姫(たまひめ)に成り切っているの?」

 

「斬首のうえで墓もないお姫様と違うのだから、もっと楽しく過ごそうぜ?」

 

「俺たちだったら、あんな末路にさせないから! 安心して」

「そうそう! 藤堂家も、大名のくせにダラしない」

 

 その軽口で、紗良の雰囲気が変わった。

 

 上品に立ったまま、声が低くなる。

 

「藤堂を……愚弄なさるのですか?」

 

 紗良の足が、ポジションを確認するように床をすった。

 

 微妙に、両膝を曲げる。

 

 体は正面を向いたままで、左手が腰に伸びて、見えない鞘を握っているような形へ。

 

 右手は、指をそろえたまま開かれ、ダラリと下がったまま。

 

「一度だけ、お尋ねします……。今の発言を撤回なさってください」

 

 触れただけで切れそうな気配。

 

 しかし、男子の1人は、状況を理解していない。

 

「氷室についていったら、その珠姫と同じように――」

「藤堂さん? 連絡事項があるから、私と来てください」

 

 女子の声だ。

 

 御刀(おかたな)を抜こうとしていた紗良は、上から吊られるように、姿勢を戻す。

 

「承知いたしました……。西園寺さま?」

 

 息を吐いた睦実が、首肯する。

 

「もう少し待って、希」

 

 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)は、惨劇を防げたことに、廊下で息を吐いた。

 

「はい、待っています」




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