【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
「この後は、どうなります? うさぎ亭に村人が押しかけるんですか? それとも、警察を呼ぶ?」
俺の質問に、正面で向き合っている老婆が訊ねる。
「うさぎ亭?」
「この村にある、温泉旅館です! 俺たちも泊まっています」
少し考えた老婆は、頷く。
「今は、そう呼んでおりますか! 近づかないよう、言うておいたのですが……。姫さまがお越しになられたので、この神社も終わり。ところで、あなた様のお名前をお伺いしても?」
「わたくしが身を寄せております、
「氷室
正座のままで両手をついた老婆が、頭を下げた。
「姫さまをお護りくだされしこと、かたじけなく、言葉もござらぬ
俺が圧倒されていると、紗良のフォロー。
「氷室様にございますれば、そのようなこと、当然とお思い召されておりまする。どうぞ、
「ハッ!」
スッと、上体を起こした老婆。
(姫様みたいだ……)
そういえば、紗良は自分を大名の娘と言ってたな?
老婆が、俺を見た。
「結論から申し上げれば、ワシらは何もいたしませぬ……。姫さま! お家に戻りたければ、この神社にお越しくださいませ! たまひ神社は、そのためにあります」
困惑した紗良が、問いかける。
「そなたは――」
「もう1つ、申し上げたい義がございます! 良いですか? 最後の最後まで、諦めてはなりませぬ! その件で、お耳に入れたいことが」
老婆が立ち上がり、紗良の耳元で囁く。
「……!?」
息を吐いた紗良は、動揺した様子で、俺をチラチラと見ている。
離れた老婆は、元の位置に座り直しつつ、念を押す。
「ワシも、全てを知りませぬ……。ですが、必ず意味がある! もし追い詰められたら、このババを思い出してくだされ」
◇
うさぎ亭へ戻れば、ランチタイムを過ぎたぐらい。
広い玄関で、ちょうど番頭の
「お帰りなさいませ! この村は何もなく、申し訳ございません」
上機嫌の藤堂紗良が、陽気な声で応じる。
「いえ! たまひ神社で歓迎されました」
びっくりした表情の久住は、口が半開き。
「たまひ神社……ですか?」
「はい! どのような由来で……」
紗良は、悩んでいる久住を見て、黙り込んだ。
我に返った彼は、笑顔を作る。
「ハハハ! 村の支えでは、あったんですけど」
あった?
俺は、その言い方に引っかかった。
いっぽう、久住は、おずおずと尋ねてくる。
「あなた方は、神社で何を?」
「宮司の方と――」
「頂上を目指したついでに、見学しただけです。立入禁止であれば、知らずにすみません」
紗良が、俺の顔を見た。
空気を読んで、何も言わず。
俺たちを見比べた久住は、息を吐く。
「いえ、危険だから近づかないほうが良いというだけで……。ご無事で、何よりです! ところで、お昼はいかがいたしましょうか?」
「まだ残っていれば、お願いできますか? 夕飯の仕込みに入っているでしょうけど……」
俺の謝罪に、久住は頷く。
「大丈夫です! 2名様で、よろしかったでしょうか? 準備ができましたら、食堂へどうぞ」
会釈した久住は、立ち去る。
俺たちも、それぞれの大部屋に戻り、すぐに食堂へ。
厨房に大勢がいる気配と声の中で、どんぶりに入ったカツ丼と、漬物、味噌汁。
向かいに座った紗良は、上品に食べていた。
よっぽど美味しいらしく、面白いほどに表情が変わる。
「氷室さま? 召し上がらないので?」
「食べるよ!」
遅めの昼食が終わり、いつもの組み合わせで、交代の夕飯。
氷室ハーレムと名付けられて、もはや定着しつつある。
ともあれ、ようやく馴染んできた温泉旅館。
修学旅行のような雰囲気だが、男女が同じ部屋で談笑しつつのカードやボードゲームという、あり得ない光景へ。
俺の側室と見なされている女子3人と、それ以外の男女という、見えない線のような区分けはあるが……。
眠くなったら、女子が自分たちの部屋へ帰るだけ。
翌日の朝に、変化が起きた。
「どーなってんだよ、この宿は!?」
朝日が眩しい食堂に入ったら、若い男が番頭の久住に怒鳴っていた。
ネットの配信者の一行が集まっていて、他のやつらも責めるような視線。
聞いていると、昨日の夜に怪奇現象が起きたそうだ。
「俺たち、寝られなかったんだよ! これで金とるのか!? あんたらも、ちゃんと言ったほうがいいぞ?」
怒鳴っていた若いイケメンが、俺たちに気づいた。
ズカズカと歩み寄り、俺に訴える。
「昨日の夜、お前らも眠れなかったろ?」
「……落ち着いてください! 何もなかったと思いますが」
言いながら、後ろにいるグループを見た。
男女が混じっている高校生たちは、誰もが首を横に振る。
上半身を前に戻したら、納得できないイケメンが足踏み。
「んなわけ、ねーだろ!? まさか、こいつに金をもらって――」
「違います! 俺たちは、メシを食いに来たんで! 時間があるのなら、その後に話し合いませんか? 少なくとも、俺は事情を聞きますよ?」
俺の説得で、ハッとするイケメン。
「わ、わりぃ! そうだな……。1階に団らん用のリビングがあんだろ? そこで待ってるから……。お互いに全員で集まるのはアレだから、俺たちか、多くても4、5人で話そう」
「分かりました。俺が食べ終わったら、すぐに行きます」
イケメンは、ようやく落ち着いた。
けれど、久住に謝ることなく、全員分の朝食を要求する。