【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
真っ暗なエントランスを通りすぎて、カウンター奥にあるドアで、横のインターホンを押す。
ビーッと電子音が鳴り響き、やがて物音。
内鍵を外す音の後で、ギィイッと開く。
「はい! ああ、
寝ぼけた様子で応じた
「結論から言うと、配信者のやつらは事実を言っていた! 俺たちの大部屋は安全だから、避難しませんか?」
悩み始めた久住は、腕を組む。
「えっと……。す、すみません! いきなりの話で……」
思考停止した久住に、選択肢を提示する。
「そちらは安全なようですから、施錠して朝を待つか、俺たちと一緒に夜を過ごすか」
「……合流して、良いですか? ここは、外から鍵をかけられるので」
俺が了承すると、久住は中に引っ込んだ。
バタバタという足音が続き、じきに出てきた。
ドアを閉めて施錠しつつ、応じる。
「お待たせしました!
「俺が見てきます! 2人は、久住さんを護衛しつつ、大部屋に戻れ!」
抜刀したままの
「分かりました!」
「……ご武運を」
3人が足早に去ったのと入れ違いに、若い男の悲鳴が響く。
「うわああああっ!」
「おい、ショウタ! 待て!!」
ユーマーの声が、続いた。
走ってきた人影は、声からも、希をナンパした男だと分かる。
靴を履かないままで、正面玄関の引き戸を横へ動かす。
「あ、開いたぁああっ!」
止める間もなく、全力で走り去った、ナンパ男。
遅れて、ユーマーが走ってきた。
俺に気づいて、急停止。
「お? おおおっ……。あんたか! ショウタは!?」
「外に走り去った奴なら、いましたよ?」
「……そいつだ!」
叫んだユーマーは、外へ飛び出そうとするも、ピタリと立ち止まる。
「
「飛び出していった男を連れ帰れば、いいんですね?」
「……そうそう!」
何度も頷くユーマーに、俺は動き出す。
「じゃ、連れてきます」
一瞬で視界が変わり、夜の道を走っているショウタを見つける。
そのまま追い越して、行く手を塞ぐ。
「ギャアアアッ!?」
「……よっと!」
ラリアットの要領で押しつつ、うさぎ亭の中まで引っ張る。
ドタンッと、板張りの床に倒れ込む、ショウタ。
「ひいいいっ!? に、逃げないと――」
「落ち着け! 俺だ、ユーマーだ!!」
肩をつかんでの説得に、ショウタは正気に戻った。
「あ……。で、でも……」
「あんたらは、どうなんだ!?」
振り返っての問いかけで、俺はため息をついた。
この状況で、お前らは自分の部屋でしのげ、というのはマズい。
「朝まで、俺たちの大部屋にいませんか?」
考え込んだユーマーに対して、ショウタが笑顔に。
「あの子も、いるんでしょ? よし、行こう!」
立ち上がったショウタは、善は急げと言わんばかりに、俺たちの大部屋に通じている階段を駆け上がる。
じきに、悲鳴。
息を吐いた俺は、大部屋に戻る。
後ろから、ユーマーがついてくる気配。
板張りの廊下から光が漏れていて、開いたままのドア。
男子の大部屋に入ると、俺と同じ和装をした
俺に気づいた睦実が、怒りマークのついた笑顔で告げる。
「希に抱きつこうとするから……。お帰り、
「ああ……。ユーマーさん、一緒に良いですか? 他の人も連れてこないと」
「分かった! すぐに行こう!」
廊下に駆け出したユーマーを追いかけて、階段を下りてから、別の階段を上る。
幸いにも犠牲者は出ておらず、大部屋に集まった。
疑心暗鬼にならないため、あえて同じ部屋。
スペースがなく、壁を背にしての座り込みばかり。
まんじりともしないまま、朝日が差し込み、鳥の鳴き声。
廊下に出てみるも、冥界のような雰囲気は感じられない。
1階の朝食で、あり合わせのメニューを食べながら、ユーマーが口火を切る。
「久住さんにも、ご理解いただけたと! 悪意があったとは思えないから、宿泊料をタダにすることで俺はいいぜ? 土砂崩れですぐ帰れないのも、しゃーない」
配信者の撮影チームを見回せば、異議を申し立てるメンバーはいないようだ。
しかし、レンが反論する。
「こんなチャンス、滅多にない! 今日の夜、ライブ配信から動画にするぞ?」
沈黙のあとで、ユーマーの発言。
「マジで、言ってるんすか?」
「……大マジだ! たまにでかいネタをぶっこまないと、飽きられるだけ! それとも、同じぐらいのネタがあるのか?」
腕を組んだユーマーは、黙り込む。
光人月こと、レンが、俺たちを見た。
「君たちも、帰るに帰れないだろう? 僕たちの護衛をよろしく!」
「……お断りします」
再び、沈黙で満ちる。
少し顔を引きつらせたレンが、メガネの位置を直しつつ、脅す。
「防人には、市民を守る義務があるよね? 犠牲者が出れば、大問題になるよ?」
「……そう仰るのであれば、こちらも遠慮しません! 東京
淡々と述べたのは、真剣な顔をした希。
国武の生徒会にいるだけあって、堂々とした主張だ。