【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。

「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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第6話 小学校で経験した睦実の怒り

 ――5年前

 

 1人の少女が、小学校の中を駆け抜けている。

 

 赤いペンキがぶちまけられ、足の踏み場もない箇所もある廊下を。

 

 統一された装備の兵士が、銃口と一緒に、そちらを向いた。

 

「Who's .... shoot!(誰だ……撃て!)」

 

 乾いた発砲音が重なる。

 昼の、どこか暗がりを感じさせる内廊下で、光がいくつか。

 

 けれども、次の瞬間に、その少女が通り過ぎていた。

 

 剣道着を思わせる、(あい)色の小袖と黒袴(くろばかま)

 腰に巻いた帯の左側に、(さや)が差してある。

 

 右手には小太刀(こだち)を下げており、空中に血の線を描く。

 

 遅れて、両手で構えていた兵士たちに赤色が加わり、次々に倒れた。

 

 彼女は、1人の男子を探している。

 

駿矢(しゅんや)を自由にさせた結果が、これか……」

 

「Scre――(くたばれ!)」

 

 死角から突風のように襲い掛かってきた兵士。

 

 片手のナイフで、急所を突こうとするも――

 

 やはり一筋の光が走って、熟練の技を見せる機会もなく、両膝から倒れ伏す兵士。

 

「まあ、アレだね? この世界は駿矢をゆっくりさせる気がないんだ……」

 

 躊躇なく敵を殺した西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)は、武装勢力に占拠された小学校で、まだ小学生の氷室(ひむろ)駿矢を探した。

 

 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・

 ・

 

 東京国武(こくぶ)高等学校にある、避雷針。

 

 その上に立っている女子は、この学校の制服を着た女子だ。

 

「ふ―――っ!」

 

 空手の息吹(いぶき)のように動いた直後――

 

 ダンッ!

 

 何もない空中で、破裂するような音が続いた。

 

 眼下にある、氷室駿矢と風紀委員会のにらみ合い。

 

 それを見たまま、西園寺睦実はかつてのような和装に変わった。

 

 足元は、今の彼と同じ白足袋(しろたび)草鞋(わらじ)

 

『カアァアアアッ!?』

 

 彼女の霊圧に押されたカラスどもが、たまげたように飛び立った。

 

 バサバサバサ

 

 それに構わず、両手で左腰に差した御神刀を抜いていく。

 

「まただよ、千雷(せんらい)……」

 

 片手の小太刀は、冷たい金属の輝き。

 

 それは、放電しているような輝きを放ちつつ、紫色をまとった。

 

「ああ……。また……」

 

 独白した睦実は、両膝のバネだけで高く飛んだ。

 

 

 ◇

 

 

 俺と向き合っている兵士たちが発砲する前に、紫色の光が通り過ぎた。

 

 直後に、奴らが両手で構えている小銃が半ばから切り飛ばされる。

 

「なっ?」

「どこから!?」

「くそっ!」

 

 役立たずのアサルトライフルを捨て、腰の拳銃を抜こうと――

 

『警備は下がれ! あとは、こちらでやる!! 全員の刀剣解放を許可!』

 

 ゴツい男子の命令で、制服に腕章をつけた風紀委員が刀を両手で握る。

 

 一触即発だが、瞬間移動のように現れた女子の姿で止められた。

 

『……1年主席の西園寺か? どういうつもりだ!』

 

 ジャリッと向きを変えた西園寺睦実は、おそらく風紀委員長であろう男子を見た。

 

「見ての通りだよ? 駿矢の敵は、ボクの敵だ……」

 

『お前は入学早々に、退学する気か!? ……やむを得ん。手足の一二本は覚悟して――』

「そこまでにしていただけませんか?」

 

 落ち着いた、女子の声。

 

 全員がそちらを見れば、別のマークをつけた制服だ。

 

『これは、風紀委員会の管轄だぞ?』

「生徒会として、正式な要請です。御神刀、それも二振りとの戦闘は許可できません」

 

 いかにも育ちが良さそうな佇まい。

 

 青色の瞳に、長い黒髪。

 上品な仕草で、両手は下げたまま。

 

 傍には、兄か弟と思われる男子がいる。

 

 こちらは刀を構えたまま。

 

 風紀委員会のリーダーが、応じる。

 

『生徒会が責任を持つ……。その認識でいいんだな、神宮寺(じんぐうじ)?』

「はい! こちらで預かります」

 

 ため息をついた男子は、風紀委員に命じる。

 

『納刀しろ!』

 

 俺たちを半包囲している男女は、警戒したまま、左腰に切っ先を納めた。

 

 そのまま、刀が消える。

 

 全員の視線にさらされたことで、片手で振った脇差を納刀した。

 

 横目で見ていた睦実も、それに(なら)う。

 

 俺たちが元の制服に戻ったことに驚いた面々が、小さな声を上げた。

 

 いっぽう、場を仕切っている女子は微笑む。

 

「はじめまして! 1年の神宮寺(のぞみ)です……。生徒会の事務局員となりました」

 

 まるで、社交場にいるみたいだ。

 

 そう思いつつ、ドッと疲れを感じる。

 

 希が提案する。

 

「詳しい話は後日……と言いたいのですが。会長から『連れてくるように』と厳命されています。このままでは風紀委員会との溝にもなるため、生徒会室までお越しいただければ幸いです」

 

 横に立っている睦実の視線を感じながら、答える。

 

「お茶ぐらいは、出るんだろうな?」

 

「ええ……。そのつもりですよ?」

 

 

 ――生徒会室

 

 ミーティングに使うためのテーブルについた面々。

 

「――以上です」

 

 気まずい雰囲気のまま、神宮寺希が報告を終えた。

 

 一緒についてきた風紀委員会のゴツい男子は、腕を組んだまま。

 

 上座にいる生徒会長、伊花(いばな)鈴音(すずね)が、俺たちを見た。

 

「先に、あなた達の言い分を聞くわよ? 先輩の後だと、話しにくいでしょ?」

 

 横に座っている西園寺睦実のアイコンタクトで、口を開いた。

 

「騙して呼んだ先輩5人にリンチされそうになったうえ、全員に抜刀されたから、自分の身を守った! あとは、そこの風紀委員がよく知っているだろう?」

 

 首をかしげた鈴音が、指摘する。

 

「風紀委員に逆らった理由は? ウチの希ちゃんには、素直に従ったのよね? 好みだったから?」

 

「俺は、入学したばかりだ! 風紀委員をよく知らんし、騙し討ちにあった直後」

 

 頷いた鈴音は、納得する。

 

「ああ……。顔見知りがいれば別だけど、ってことね? 鎮圧用のゴム弾とはいえ、いきなり銃口を向けられれば、ちょっと厳しかったか! ……別に、そっちを責めているわけじゃないわよ?」

 

 責める視線になった風紀委員の男子に、慌ててフォローする鈴音。




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