【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
うさぎ亭に、夜が訪れた……。
俺たちは臨戦態勢で、仮眠もとっている。
前に感じた、深海の底にいるようなプレッシャーが温泉旅館を満たしていき――
『はい! レンでーす! 今日は何と、ホラースポットに来ちゃいました!』
場違いに明るいレンの声が、最低限の足元灯ぐらいの真っ暗な屋内に響いた。
(あいつら、本当に配信をするのか……。いや、収録だけで、都合が悪い部分は編集でカットする?)
プロ意識が高い。
呆れつつも、そう思った。
ここの番頭である
見返した俺は、無言で首を横に振った。
(あいつらの自己責任! 後で俺たちのせいにすることは、絶対にさせない)
必要なら、あいつらのチャンネルごと潰す。
(
実際、前にも似たようなことをやったし。
こんな山奥の所轄ぐらいは、話を通せるに違いない。
(まあ、何でもかんでもとはいかないが……)
実際に異常を見て、助かるチャンスも与えた。
選んだのは、配信者グループ。
あいつらは、たぶん死ぬ。
全滅だ!
俺たちは、久住を守りつつ――
ガキィイイイン
金属同士がぶつかる、甲高い音。
火花も散って、そちらが微妙に明るくなった。
「敵だよ、
和装で
上手く足を抜き、バランスを崩した忍者を一瞬で斬り捨てた。
短い呻きだけで倒れ伏す、忍者。
瞬く間に紫電が屋内を走り抜けて、棒立ちになった忍者どもが次々に崩れ落ちる。
(こいつの刀剣解放は、相変わらず、使い勝手が良すぎるな……)
バチバチと光っている睦実が、こちらを見た。
「久住さんを守りつつ、退避しろ! あとは、俺たちだけでいい!」
「村から離れて、一気に街へ降りちゃうよ?」
「構わん!」
うなずいた睦実は、久住の奥襟をつかみつつ、一瞬で消えた。
彼の悲鳴が、だんだんと小さくなる。
俺も、左腰から脇差を抜いた。
緊張している
「い、いかがいたしましょうか?」
「突破する! 目的地は……たまひ神社!」
息を呑んだ紗良は、自分の
「な、何だよ、お前ら!?」
「やめろ! やめろって、言ってんだろ!?」
隠れていた部屋を飛び出せば、板張りの広いエントランスでは、粗末な武具に身を包んだ武士の集団が配信者グループに襲いかかっていた。
一部がこちらに気づき、いかにも安物で使い込んだ刀や短い槍を向けてくる。
「こちらにも、いるぞおおっ!」
「女もいる!!」
「オイラ達のもんだあああっ!」
叫びながら、襲ってくる奴ら。
その汚れ、雰囲気から、とても撮影スタッフには思えない。
刀身を伸ばすことで串刺しにしつつ、ノータイムで縮めての連打。
技術もへったくれもない突進にぴったりで、声もなく、板張りの上に倒れ伏す。
俺が不思議がっていると、紗良による説明。
「足軽です! 装備がしっかりしているため、どこかの軍勢では……」
「とにかく、神社へ! 外へ出るぞ!!」
俺の宣言に、紗良が応じる。
「はい、あなた様!」
そこに、聞き覚えのある、男たちの声。
「お、おい? 何なんだよ、これは!?」
「お前ら、
配信者グループの生き残りに構わず、俺はうさぎ亭の外へ飛び出した。
そこには、松明による明かりを持った、先ほどよりも高価な装備を身につけた武士や、馬上にいる鎧武者たち。
うさぎ亭を囲んでおり、まるで戦国時代の戦だ……。
俺たちに視線が集まった中で、馬上の鎧武者の顔色が変わった。
同時に、紗良の、あっ!? という呟き。
馬上の鎧武者は、辺りの空気を震わすような大声を上げる。
「いたぞおおおおっ!
飛び上がった俺の膝蹴りが、立派な鎧武者の顔面に当たった。
顔を歪ませつつ、馬から落ちる男。
ガシャンと重そうな音に、周りの武士どもが俺を見た。
パチパチという、松明の音だけが、闇夜に響く。
俺は元の位置に着地しつつ、隣に言う。
「行くぞ、紗良!」
「……はいっ!」
2人で、一気に走り出すも――
「「「ウ゛ア゛ア゛アアアアッ!」」」
殺気立った武士どもが、一斉に押し寄せた。
一瞬で前へ飛び込みつつ、その相手を吹き飛ばした勢いで止まり、横にいる相手の首を切った。
その勢いで回転しつつ、長巻による刃をかわす。
別で振り下ろされた長巻ごと、カウンターで相手を切り捨てた。
俺が手ごわいことで、周りの動きが止まった。
両足の位置を決めつつ、伸ばした刀身で横薙ぎ。
正面に見えていた武士どもが血しぶきと共に倒れたことで、俺たちを包囲することに切り替えたようだ。
じりじりと、距離を取る。
俺も相手を見たままで後ずさりつつ、紗良に命じる。
「御刀を仕舞え! 俺がつれていく」
正眼に構えていた紗良は、戸惑いつつ、俺の顔を見た。
けれど、観念したように納刀。
「あなた様に、この身の全てをゆだね申します……。どうか、よろしく頼み奉りまする!」
おおげさに言った紗良を抱きかかえつつ、死角から襲ってきた武士の頭と武器を飛び越えるように、夜空へ舞う。
下からの驚く声が重なりつつ、それとは違う、鋭い風切り音。
「弓かっ!」
空中で、横っ飛び。
矢の雨が、星をめがけて飛び去った。
下のやつらの叫びを無視して、山頂にある『たまひ神社』を目指す――
「も、燃えている!?」
紗良の声を聞きつつも、その巨大な明かりを見る。
「行こう……。たぶん、あそこが終着点だ」