【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第六章 全ては箱の中
第63話 コトリバコという、現代の呪物


 クラシックな、欧州の建物。

 高い天井のホールには、多くの長机と椅子がある。

 

 上からシャンデリアが吊るされている、荘厳で広い空間。

 

 そこには、紺色のシスター服のような制服を着ている女子が目の前に置いたトレイにある食事を口に運ぶ光景。

 

「ねえ、聞いた?」

「また犠牲者が出たんでしょ?」

 

「誰が、贈っているんだろう……」

「怖いよね」

 

 中高生らしき女子だけ。

 どこか、世間ズレした雰囲気。

 

 それも、そのはず。

 

 古めかしい食堂から出れば、高い塀で囲まれた敷地には大勢の生徒が暮らす寮もある。

 

 全寮制の女子校だ。

 

 欧州で貴族の子供が通いそうなパブリックスクールに似ており、礼拝堂なども……。

 

 その中でも、高等部1年を示す紫のリボンを胸元につけている女子が、友人か取り巻きに囲まれて、食事中。

 

 明るい緑の瞳に、長い金髪。

 白い肌と相まって、ヨーロッパの血筋だ。

 

 豊かな胸で、両肩には小さなマントのような白い布を羽織っている。

 下に降りている端のほうに金色の線が2つあり、いかにも特別。

 

 周りに座っている女子が、声をかける。

 

「聞きました、アンジーさん?」

 

 顔を上げた、アンジェラ・フォン・コルナーロ。

 

 気だるそうに、応じる。

 

明花女学院(めいかじょがくいん)で、コトリバコを贈られた女子がまた死んだ……。食事中の話題じゃないわね?」

 

 ビクッとした女子が、謝る。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「別に、いいわ……。気にしないで」

 

 片手をヒラヒラとしたアンジェラに、責める様子はない。

 

「それより……。あなた達も気を付けるように――」

「あらあら! コルナーロさんは、余裕ですわね?」

 

 アンジェラ達が見ると、高等部2年を示す、赤のリボンが首元にある女子たち。

 

 どうやら、上の学年にいるグループのようだ。

 

 代表して、アンジェラが尋ねる。

 

「何の御用ですか?」

 

 同じく、リーダーらしき女子が言い捨てる。

 

「あなたがウチに来てから、この騒ぎよ? 例のコトリバコ、あなたが贈っているんじゃない?」

 

 立っている高等部2年の取り巻きが、リーダーに合わせて、笑った。

 

 食卓についている1年女子は、気色ばむ。

 

 けれど、片手で制したアンジェラが、冷静に返す。

 

「違います……。他に、御用は?」

 

 涼しい顔のままのアンジェラに、2年のリーダーはつまらないようだ。

 

「早く、イタリーに帰ることね? あんたがいなくなれば、きっと事件も終わるわ!」

 

 言いながらも、背中を向けて、取り巻きと一緒に遠ざかる。

 

「何よ、あれ……」

「許せない!」

 

 激怒する1年女子だが、アンジェラは我関せず。

 

 スッと、制服のポケットに手を入れて、スマホを取り出した。

 

 片手で持ちながら、慣れた手つきでスクロール。

 

 すぐに、仕舞った。

 

 息を吐いたアンジェラが気になった女子が、尋ねる。

 

「どうしました?」

 

「ここに、男子が来るらしい……」

 

 密かに聞いていた女子を含めて、音がやんだ。

 

 重苦しい雰囲気の中で、尋ねた女子は続ける。

 

「えっと……。な、なぜ?」

 

 肩をすくめたアンジェラは、淡々と説明する。

 

「さあ? コトリバコの犯人が女子で、男子に口説かせる気じゃない?」

 

 無表情で言っているため、冗談かどうかも不明。

 

 けれど、刺激に飢えている全寮制の女子校とあって、次の瞬間に、食堂を震わすような女子の声が響き渡った。

 

 

 ◇

 

 

「コトリバコ? あの都市伝説の?」

 

 俺の質問に、隣の住宅で1階のリビングにいる天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)が頷いた。

 

「そうなのでー! 間引いた子供の血や一部を入れて呪う、あのコトリバコ!」

 

 聞けば、ミッション系の私立、明花女学院で数人の女子が、それによって死んだそうだ。

 

「俺が行ったら、マズいだろ?」

「……最悪、敷地ごと消し飛ばすのでー! 前は、わたくしが実行しましたよ?」

 

 魔術書で生徒たちが乱交をしていた学校は、香奈葉の完全解放で消し飛んだ。

 

 それを思い出して、息を吐く。

 

「まさか、俺1人で?」

 

睦実(むつみ)をつけます! 良いですね?」

 

 西園寺(さいおんじ)睦実は、頷いた。

 

「うん! でも、大義名分は? 連続殺人なら、警察の捜査一課も出張っているんじゃ?」

 

「明花が嫌がったことで、警察は最低限の捜査……。常駐しているか、担当の女刑事はいるでしょう! なるべく、殺さないように」

 

「言い方が、怖いぞ?」

 

 俺のツッコミに、香奈葉はもう1人の女子を見る。

 

(のぞみ)……んんっ! 神宮寺(じんぐうじ)さんは、どうしますか? 東京国武(こくぶ)高校の生徒会で1人いると、だいぶ助かります! 婚約者の立場を譲る気はありませんが、駿矢(しゅんや)との仲も考えさせていただきますが?」

 

 神宮寺希は、少し悩んだ後に、首肯した。

 

「国武として受ける以上、誰かが見届ける必要があります……」

 

「そなたに感謝を! 悪いようには、いたしません」

 

 頷いた香奈葉は、俺たちを見回す。

 

「教会サイドも、すでに動いているはず……。そなた達が行くのは、敵地と心得よ!」

 

 

 ――数日後

 

 俺たちは、西洋の城を思わせる正門の前に立つ。

 

 しばらく滞在できるだけの大荷物をスーツケースやクラブバッグに詰め込んで……。

 

 インターホンからの返事で待っていたら、スーツ姿の教職員と、数人の女子が正面に伸びている車道のようなスペースを歩いてきた。

 

「ようこそ、明花女学院へ……」




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