【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第68話 いつも駿矢を見ている、睦実ちゃん

 朝が訪れた。

 

 警視庁の捜査員である男女は、始発でやってきたと思しき時間帯に、明花女学院(めいかじょがくいん)の正門でインターホンを鳴らす。

 

 眠そうな教職員が応じて、すぐに通用門が開けられた。

 

「ご苦労様です……」

 

「ご対応、ありがとうございます」

「……すみません。こんな朝早くから」

 

 ゲストハウスへ行くことを告げると、その教職員はマスターキーで正面を開錠してから立ち去った。

 

 訪問者と話し合うためのラウンジを兼ねた、エントランス。

 

 そこに立った不知火(しらぬい)征司(せいじ)が、相棒の百夜(ひゃくや)(あずさ)に告げる。

 

「あいつらを叩き起こすぞ?」

「……はい!」

 

 就寝できる二段ベッドが集まっている、大部屋。

 

 高校生たちの割り当てを知らず、梓がノックをして、声掛けからの入室。

 

 そもそも、ゲストハウスに宿泊することは少ないようで、2つ、3つの大部屋だけ。

 

(学校の交流会で使うぐらい?)

 

 そう思いつつ、梓は中からの返事が女子であると気づく。

 

「先輩! 私が入ります」

「……頼む」

 

 こちらが女子部屋と踏んで、征司は別の大部屋へ向かった。

 

 梓は、返事があった大部屋のドアが開く音で、そちらへ向き直る。

 

「おはよう! 悪いけど、すぐに起きてね? ……あなただけ?」

 

 眠そうに顔をのぞかせたのは、神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)

 

 他に人の気配や音がしないことから、梓が尋ねる。

 

「ええ……。おはようございます……」

 

「とにかく、着替えて? 他の人を起こしてくるから」

 

「はい……」

 

 大部屋のドアが、閉められる。

 

 深呼吸をした梓は、引率している教師の気分になりつつ、違う大部屋へ――

 

「うわぁあああっ!?」

 

 征司の悲鳴で、梓はホルスターから出ている拳銃のグリップに手をかけた。

 

「先輩!」

 

 とっさにホルスターから抜き、大部屋から飛び出した人影に銃口を向けるも、ギリギリで識別した。

 

 両手を上げて、その場に立ち止まった人物が、叫ぶ。

 

「俺だ! 撃つな!!」

 

 征司だ……。

 

 梓は、人差し指をトリガーから外して、両手で構えたまま、銃口を下ろす。

 

「何が?」

 

「銃を仕舞え! 必要ない……」

 

 呆れたように呟いた征司は、肩を上下させた。

 

 困惑した梓が、暴発しないよう、慎重にホルスターへ戻す。

 

 スーツの上着を直した後で、征司のほうを向く。

 

「何を見たんですか? 他の子たちは?」

 

 自分が飛び出してきた大部屋のドアを指さした征司は、ポツリと言う。

 

「入れば、分かる……。俺は、コーヒーを飲む」

 

 疲れた様子で、フラフラと談話室へ向かう。

 

 頭の中に疑問符が浮かび続ける梓は、征司が出てきた大部屋に足を踏み入れる。

 

「入るわよ? いったい、何が……」

 

 そして、固まった。

 

 なぜなら、二段ベッドの下段でアンジェラ・フォン・コルナーロが上体を起こしていたから。

 

「おはようございます……。寝るのが遅かったもので」

 

 長い金髪が、両手で引っ張る上掛けとの対比になっていて、美しい。

 

 それだけなら、別におかしくないが――

 

 端に寝ていたアンジェラの反対側で、氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)が上体を起こしている。

 

 それを指さしながら、梓が突っ込む。

 

「ああああ、あなた! どういうつもり!?」

 

 自分のことだと思ったのか、アンジェラが答える。

 

「私、寝る時には裸のほうが落ち着くので――」

「完全に、事後じゃない! 氷室くん、婚約者にどう説明するのよ!?」

 

 けれど、足音と共に、別の人物が入ってきた。

 

「これは、どういうことですか!? ウチの生徒と淫行をするとは、国武(こくぶ)に正式な抗議をしますよ? 牧島(まきしま)さん、あなたからも……」

 

 怒り心頭に発していた日上沢(ひかみざわ)は、ポカンと口を開けたままに。

 

 視線の先にいたアンジェラが、手で上掛けを引っ張ったまま、微笑む。

 

「おはようございます、先生……」

 

 我に返った日上沢は、冷徹な雰囲気へ。

 

「コルナーロさん……。あなたには、失望しました! 上へ報告しますから、ここにいられるとは思わないように――」

「昨夜は、何もなかったよ? ボクが見張っていたから」

 

 駿矢のほうの奥には、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)もいた。

 

 むっくりと上体を起こして、可愛らしいパジャマで説明する。

 

「そこ! ビデオカメラがあるでしょ? ずっと撮影していたんだ」

 

 指さした方向には、三脚でセッティングした機材。

 

 近づきかけた日上沢が、周りの視線に気づいて、立ち止まる。

 

「とにかく! あなた方が同じ部屋で過ごしたうえ、コルナーロさんは疑われるような格好であることは事実! あなたには、法的措置や警察への告発も検討します。覚悟してください!」

 

 駿矢をにらんだ日上沢に、大人の男の声。

 

「その前に、答えてくれ! お前はどうして、牧島と言った? この金髪の女子の顔と名前を知っていたのに」

 

 全員が振り返ると、開いたままの出入口から征司が顔をのぞかせていた。

 

 ヒステリックなまま、日上沢が言い返す。

 

「言ってません! だとしても、それが何か!?」

 

「何か知っているなら、話を伺いたい……。ウチの取調室で、ゆっくりとな?」

 

 ビクッとした日上沢は、さらに激怒。

 

「これだから、男は! あなた! 同じ女性を見捨てるんですか!?」

 

 縋りつかれた梓は、肩をすくめただけ。

 

 ダンダンと床を踏み鳴らした日上沢が、喚く。

 

「警視庁や弁護士に、訴えますよ!?」

 

「好きにしてくれ! ちょうど、ゲストハウスを調べるキッカケが欲しかった! 鑑識がサッカーをできるぐらい押し寄せて封鎖するから、よろしくな? あんたも、事情聴取だぞ?」

 

 日上沢は、痙攣しているかと思えるぐらい震えた後に、無言でドカドカと正面玄関へ向かっていく。

 

 両開きのドアを荒々しく開けたまま、出ていったようだ。




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