【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
朝が訪れた。
警視庁の捜査員である男女は、始発でやってきたと思しき時間帯に、
眠そうな教職員が応じて、すぐに通用門が開けられた。
「ご苦労様です……」
「ご対応、ありがとうございます」
「……すみません。こんな朝早くから」
ゲストハウスへ行くことを告げると、その教職員はマスターキーで正面を開錠してから立ち去った。
訪問者と話し合うためのラウンジを兼ねた、エントランス。
そこに立った
「あいつらを叩き起こすぞ?」
「……はい!」
就寝できる二段ベッドが集まっている、大部屋。
高校生たちの割り当てを知らず、梓がノックをして、声掛けからの入室。
そもそも、ゲストハウスに宿泊することは少ないようで、2つ、3つの大部屋だけ。
(学校の交流会で使うぐらい?)
そう思いつつ、梓は中からの返事が女子であると気づく。
「先輩! 私が入ります」
「……頼む」
こちらが女子部屋と踏んで、征司は別の大部屋へ向かった。
梓は、返事があった大部屋のドアが開く音で、そちらへ向き直る。
「おはよう! 悪いけど、すぐに起きてね? ……あなただけ?」
眠そうに顔をのぞかせたのは、
他に人の気配や音がしないことから、梓が尋ねる。
「ええ……。おはようございます……」
「とにかく、着替えて? 他の人を起こしてくるから」
「はい……」
大部屋のドアが、閉められる。
深呼吸をした梓は、引率している教師の気分になりつつ、違う大部屋へ――
「うわぁあああっ!?」
征司の悲鳴で、梓はホルスターから出ている拳銃のグリップに手をかけた。
「先輩!」
とっさにホルスターから抜き、大部屋から飛び出した人影に銃口を向けるも、ギリギリで識別した。
両手を上げて、その場に立ち止まった人物が、叫ぶ。
「俺だ! 撃つな!!」
征司だ……。
梓は、人差し指をトリガーから外して、両手で構えたまま、銃口を下ろす。
「何が?」
「銃を仕舞え! 必要ない……」
呆れたように呟いた征司は、肩を上下させた。
困惑した梓が、暴発しないよう、慎重にホルスターへ戻す。
スーツの上着を直した後で、征司のほうを向く。
「何を見たんですか? 他の子たちは?」
自分が飛び出してきた大部屋のドアを指さした征司は、ポツリと言う。
「入れば、分かる……。俺は、コーヒーを飲む」
疲れた様子で、フラフラと談話室へ向かう。
頭の中に疑問符が浮かび続ける梓は、征司が出てきた大部屋に足を踏み入れる。
「入るわよ? いったい、何が……」
そして、固まった。
なぜなら、二段ベッドの下段でアンジェラ・フォン・コルナーロが上体を起こしていたから。
「おはようございます……。寝るのが遅かったもので」
長い金髪が、両手で引っ張る上掛けとの対比になっていて、美しい。
それだけなら、別におかしくないが――
端に寝ていたアンジェラの反対側で、
それを指さしながら、梓が突っ込む。
「ああああ、あなた! どういうつもり!?」
自分のことだと思ったのか、アンジェラが答える。
「私、寝る時には裸のほうが落ち着くので――」
「完全に、事後じゃない! 氷室くん、婚約者にどう説明するのよ!?」
けれど、足音と共に、別の人物が入ってきた。
「これは、どういうことですか!? ウチの生徒と淫行をするとは、
怒り心頭に発していた
視線の先にいたアンジェラが、手で上掛けを引っ張ったまま、微笑む。
「おはようございます、先生……」
我に返った日上沢は、冷徹な雰囲気へ。
「コルナーロさん……。あなたには、失望しました! 上へ報告しますから、ここにいられるとは思わないように――」
「昨夜は、何もなかったよ? ボクが見張っていたから」
駿矢のほうの奥には、
むっくりと上体を起こして、可愛らしいパジャマで説明する。
「そこ! ビデオカメラがあるでしょ? ずっと撮影していたんだ」
指さした方向には、三脚でセッティングした機材。
近づきかけた日上沢が、周りの視線に気づいて、立ち止まる。
「とにかく! あなた方が同じ部屋で過ごしたうえ、コルナーロさんは疑われるような格好であることは事実! あなたには、法的措置や警察への告発も検討します。覚悟してください!」
駿矢をにらんだ日上沢に、大人の男の声。
「その前に、答えてくれ! お前はどうして、牧島と言った? この金髪の女子の顔と名前を知っていたのに」
全員が振り返ると、開いたままの出入口から征司が顔をのぞかせていた。
ヒステリックなまま、日上沢が言い返す。
「言ってません! だとしても、それが何か!?」
「何か知っているなら、話を伺いたい……。ウチの取調室で、ゆっくりとな?」
ビクッとした日上沢は、さらに激怒。
「これだから、男は! あなた! 同じ女性を見捨てるんですか!?」
縋りつかれた梓は、肩をすくめただけ。
ダンダンと床を踏み鳴らした日上沢が、喚く。
「警視庁や弁護士に、訴えますよ!?」
「好きにしてくれ! ちょうど、ゲストハウスを調べるキッカケが欲しかった! 鑑識がサッカーをできるぐらい押し寄せて封鎖するから、よろしくな? あんたも、事情聴取だぞ?」
日上沢は、痙攣しているかと思えるぐらい震えた後に、無言でドカドカと正面玄関へ向かっていく。
両開きのドアを荒々しく開けたまま、出ていったようだ。