【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~ 作:初雪空
『牧島ゆあ』が示した隠し通路は、申し訳ぐらいに人工的な灯りが設置されている。
左右の壁、天井をぼんやりと照らして、冥府へ降りる道のようだ……。
幅は狭く、2人がすれ違えないほど。
(さーて、どうするか?)
確かに、ここで『ゆあ』が見張っていたのだろう。
しかし、この女子が売春グループの一味なら、疑ってかかるのが常道。
(ノコノコついていったら、キルゾーンで皆殺しもあり得る)
追い詰められたバカは、何をしても不思議はない。
この女子が自爆、生物や化学兵器、取り出した銃を乱射することまで、想定するべき。
俺の視線にうなずいた
「捜査一課の
「はい! ……惣流さんですか? おはようございます! 公安局、
俺も、
「
「……うん!」
睦実は、メッセージで送ったようだ。
『ゆあ』に焦っている様子はないが、ソワソワしている。
「あの!
俺は、動きやすい和装に変わった。
「
睦実も、俺と同じような和装へ。
目を丸くした『ゆあ』に構わず、征司が命じる。
「
「了解……。俺と希が先頭! 睦実は、最後尾で! 牧島さん、案内をお願いします」
俺に言われた『ゆあ』は、ビクッとしつつも、頷く。
「は、はい……」
『ゆあ』は男嫌いというか、異常に警戒していることに気づく。
売春グループで、色々あったのだろう。
(絶対に裏切らないよう、こいつも撮影されたか? 接待ぐらいは、あっただろうし)
ともあれ、慣れた様子で、暗がりへ入っていく。
妙な動きを見せないかに注意しつつ、俺も続く。
すぐ後ろで、希。
警官の男女、アンジェラ・フォン・コルナーロ、最後に睦実……。
地下に下りつつ、すぐに監視ルームのような部屋へ。
生活感があって、コンビニかスーパーで買ってきた弁当、カップ麺が食べ終わった後も置かれていた。
壁際に、安物のベッド。
ゲストハウスのいたるところが、ズラリと並んだモニターに映っている。
大部屋は、あらゆる角度から撮影されていた。
(ヤッている映像で、女子を買った奴らを脅すわけか……)
立ち止まった『ゆあ』が、振り向く。
「ここで、監視していました! 日上沢は、あなた達が帰ったあとに記録を見るつもりのようで……」
視線を向けられた征司が、注意する。
「下手な動きをするなよ? 証拠隠滅をしたら、ただの共犯として扱う」
「は、はい! 分かっています……」
やはり、卑屈だ。
(その場の権力者に、媚びへつらう……。こいつの処世術か)
さらに奥へ向かうと、急に雰囲気が変わった。
昔に作られた地下遺跡そのもので、左右の壁が削られて、ドミトリーの寝床のようになっている。
驚いたような、アンジェラの声が響く。
「カタコンベ!? 記録に残っていないところ……」
フラッシュライトを持っている征司たちが、壁で横に長い穴の群れを照らし出す。
「白骨もある……。だいぶ、風化しているな?」
「先輩、この先を見ておきませんか? 早く、現場を封鎖しないと」
梓の提案で、俺たちは先を急ぐ。
教会の墓場であるカタコンベを抜けたら、地下だが、人工的な空間へ。
「ここから、学校の施設っぽいな? ……何の部屋だ?」
征司が尋ねると、梓はドアノブに手を――
「待って! ダメ! 女は近づかないで!!」
雰囲気を変えた『ゆあ』が、絶叫した。
その声で動きを止めた梓は、顔だけ向ける。
「……コトリバコがあるの?」
「はい! だから!」
鬼気迫る『ゆあ』に、征司がホルスターから銃を抜きつつ、宣言する。
「俺が入る! 氷室、戻るまで頼む!」
「了解!」
両手で持った拳銃を下に向けている征司を見ながら、ドアを全開。
革靴の底をすりつつ、銃口を前に向けた征司が突入した。
女子グループが離れて待つ中で、征司はすぐに出てくる。
「誰もいない! お前らは、見ないほうがいい……」
後ろ手にドアを閉めつつ、征司は息を吐いた。
「出口から、地上へ戻るか!
冥府から地上へ戻った出口は、保健室だった。
正確には、勝手口のそば。
用務員が出入りしていそうな倉庫で、生徒や教職員を寄せつけない汚れと、乱雑さ。
久々に日光と新鮮な空気を味わっていたら、刑事ドラマでよく聞くサイレンの音が近づいてきた。
ホッとした様子の梓が、呟く。
「惣流さん、来たようですね?」
「現場を封鎖するぞ、百夜! 俺はゲストハウスに戻るから、そこを見張ってくれ!」
俺たちも協力する形で、ゲストハウスと秘密の出入口を押さえた。
警視庁の捜査員や鑑識がワラワラと来て、ようやく引き継ぎ。
証拠と、生き証人。
女子たちのアリバイも崩れて、事態は新たな局面に入る。