【第六章 全ては箱の中まで完結!】弾丸より速く動ける高校生たちの切っ先~荒神と人のどちらが怖いのか?~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第71話 コトリバコが押収されて、世はこともなし

 部外者を寄せ付けない女子校は、騒然となった。

 

 特に、秘密の通路が見つかったゲストハウスと、その出口である保健室の内外は、黄色と黒のバリケードテープで封鎖され、警察官が2人以上で立つ。

 

 警察無線やスマホで話し合う男の声が重なり、建物の中から覗いている女子たちはビクビクしている。

 

 俺たちは、現状の立ち合いを済ませたら、不知火(しらぬい)征司(せいじ)たちの拠点である公安局へ移動。

 

 刑事ドラマでお馴染みの取調室ではなく、意外に普通の小会議室。

 

 そこで話し合った後に、捜査一課の男の刑事が言う。

 

「我々が引き継ぎます! お手数かけて、申し訳ありません」

「……お役に立てて、光栄です。あとは、お願いします」

 

 征司が社交辞令で言えば、スーツ姿のゴツい男は頭を下げ、部下らしき男と主にキビキビと出て行った。

 

(まあ、捜査側だし……)

 

 聞きたいことや立ち合いが必要なら、また連絡する。

 

 ありがたい言葉をいただき、俺たちはようやく解放された。

 

 

 ――1週間後

 

 再び公安局に集まった、俺たち。

 

 小会議室で中央にある長机を囲んで座り、学校の部活のようだ。

 

 不知火征司が、紙コップのコーヒーを飲んだ後に告げる。

 

「お前らには、世話になった! 間違っても他に聞かれるわけにはいかないから、ここに集まってもらった。すまんな?」

 

 その隣にいる百夜(ひゃくや)(あずさ)が、微笑む。

 

「あなた達も気になっているだろうから、どうなったのかを教えてあげる……。本来は捜査情報だから、ネットや友人に話すのは止めてね? 東京国武(こくぶ)高校の生徒会としても、記録に残さないで」

 

「はい! 生徒会長などの役員に、口頭で報告したいのですが?」

 

 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)の質問に、梓は頷く。

 

「ええ、いいわ! 氷室(ひむろ)くんも、婚約者の天賀原(あまがはら)さんに言っていいけど、捜査情報が漏洩した場合は罪に問われる可能性があるわよ?」

 

「肝に銘じておきます……」

 

 落ち着いた空間で、いよいよ本題へ。

 

 征司が、息を吐いた。

 

「捜査一課は、明花女学院(めいかじょがくいん)にいた沢佐羽(さわさわ)上鬼(じょうき)を逮捕した! コトリバコの制作を自供したうえ、当時に女子と関係を持っていたことも吐いたから、連続殺人をついでに被ってもらうんだろ」

 

「コトリバコの制作については『牧島ゆあ』さんも自供したし、それぞれの女子寮の部屋に置いたのも彼女らしいけど……」

 

 言葉を濁した梓に、征司が続ける。

 

「俺たちに全面協力で、自白の扱い! 捜査一課でも素直らしく、『沢佐羽に脅されていた被害者』という筋書きだ! 自供はすれど、罪状に該当する書き方をしなかったんだろ? 不起訴か、検察で事情を聴かれるだけ」

 

 気になった俺が、質問する。

 

「牧島は、明花女学院(めいかじょがくいん)で殺されません? 主犯の日上沢(ひかみざわ)は野放しで?」

 

「それな? 残念だが、捜査一課は知ったうえで無視するようだ……」

 

 梓が、フォローする。

 

「売春まで広げると、明花がウチを訴えてくるか、政治的な圧力に踏み切る恐れがあるの! そもそも、全寮制の女子校じゃ、コトリバコの連続殺人の立証も難しい。まして、売春なんて……」

 

 残ったコーヒーを飲み干した征司が、言い捨てる。

 

「そっちは、生安(せいあん)(生活安全課)の仕事だ! やりたきゃ、勝手にやってくれ……。牧島は嫌がらせや口封じをされないよう刑事が付き添い、転校するという名目で手続きを済ませたようだぞ?」

 

 ホッとした希が、感想を述べる。

 

「良かった……。いえ、これから大変でしょうけど」

 

「日上沢は、売春を斡旋していた……。いいの?」

 

 西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)に言われて、梓は困り顔。

 

「私だって、いい気分じゃないわよ? だけど、売春のシステムを潰したから、少なくとも学校の中では無理」

 

「次にやれば、担当の部署が逮捕するだろう! やつも、それは分かっているはず……。どうした、氷室?」

 

 全員に見られたままで、答える。

 

「牧島に、余裕があったことが……。コトリバコは、どう扱っています?」

 

「押収して、証拠品の扱いだぞ? あいつが言っていたし、万が一に備えて、女子供は近づけていないが……。オカルトに凝っているんだろ」

 

 肩を上下させた梓も、同意する。

 

「報告書に『コトリバコが女子を殺した』と書いたら、すぐに左遷か、辞めるしかない! 呪いを否定しきれないのが、嫌なものね」

 

 睦実が、冷静に突っ込む。

 

「牧島が触っていた時点で、ただの思い込みじゃない?」

 

 捜査員2名は、苦笑する。

 

「まあ、そうだな……」

「中高生の時は、色々ありますから」

 

 本当に、そうだろうか?

 

 あんな極限状況で、教師とボスを兼ねている日上沢を裏切る。

 

 裏切者に対する制裁は、警察の取り調べの比ではないはず。

 

(並大抵の決断ではない!)

 

 警察が調べたことで、日上沢に口封じされて、そのまま犯人にされる恐怖が勝ったのだろうが――

 

「終わった話だ! 忘れろ! 可愛い後輩に、俺たちが奢ってやるから!」

「今日は奮発しちゃうから、何でもいいわよ?」

 

 2人の発言で、我に返った。

 

 ウキウキする女子たちに交ざった状態で、俺は思考をやめる。

 

(日上沢は、売春の主犯として詰められず……)

 

 あのヒステリー女は、閉鎖された敷地から出てこない。

 

 出てくれば、今度こそ警察に確保されるだけ。

 

駿矢(しゅんや)、早く行こう? スイーツ店とディナーの店だから、すぐ動かないと!」

 

 睦実に腕を引っ張られて、俺も立ち上がる。

 

 コトリバコ連続殺人事件は、何とも言えない結末だ……。




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