いかにも仲間になりそうな敵美少女キャラ   作:草おいちい

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表の世界

 “善悪”の概念分離、これによって多くの者は廃人と化した。いや、適切な表現ではなかったかもしれない。少なくとも“善”の世界、すなわち表の世界においては表面上問題なく人々は活動している…………酷く歪な形で。

 

 一般的に悪とされるもの全般が今の世界には存在しない。悪と善なんて見る角度の問題でしかないのだが。少なくとも犯罪はゼロになったし、一般的に悪いこととされる「怠惰」などもなくなった。みな決まった時間に起き、よく食べよく働き、そしてまた決まった時間に寝る、そんな人間ばかりになった。

 

 表面上、何も悪いことはないように思える。

 

 しかし活力のない、生気の失われた顔で日々を送る彼らはまるでロボットのように見える。その胸中を満たすものは虚無か、あるいは…………

 

 

()()()()表の世界に来てみると何とも気持ちが悪い。まぁこの惨状を作り出したのは僕たちなのだが。

 

 

 そう、今僕は表の世界を歩いていた。

 

 

 例の潜入任務のためだ。主人公のように、禁術の影響を逃れた者、彼ら風に言うなら正常者のふりをして裏の世界で待機することも考えた。だが残念ながらそれをするには既に遅すぎた。

 

 もう世界がこうなって3週間近く経つ。3週間もこんな少女が裏の世界で生き延びてるなどあり得ない。

 

 故に表の世界に残った正常者の振りをすることにした。本当に表で見つけて貰えるのか、とも思うが手は考えてある。

 

 取り敢えず今は表で生活できるように準備だ。何と私は戦闘服しか持っていないので、表の世界でも堂々と生活できるように衣類の調達その他諸々が必要なのである。

 

 現在は認識阻害の術式が刻まれたコートを着ている。その上から更に僕自身で術を重ねがけする二重体制だ。この状態なら僕から声を掛けたりしない限り、基本的に周囲に認識すらされないだろう。声を掛けたとしても一般人は僕の存在を記憶に留めておけないはずだ。

 

 そんな状態で表を散策しながら適当に目に入った服屋に立ち寄る。

 

 

 だが入ったところでピシッと固まった。目に入る婦人服の数々。

 

 よく考えたら当然僕が女性用の服について知識があるはずがなかった。盲点である。普段着ている戦闘服は仲間達が勝手に用意してくれていたし、研究所にいた頃は基本的に貫頭衣のみだった。

 

 僕が女性服を選べるはずがなかった。既に18年も女性として生きている癖に何とも情けないものである。

 

 ちなみに今の僕は18歳にしては小さい、中学生程にしか見えない容姿をしている。そもそも生まれた時からこの容姿なので、もう成長することはないのだろう。

 

 僕を含め、同じ施設にいたホムンクルスはみな中学生ほどの体格だった。もしかしたら制作者はロリコンなのかもしれない。もう仲間も制作者もみな等しく焼けたが。

 

 そんなことを考えつつ、再起動した僕はよくわからないので目についたものを適当に買い漁った。特に、何も考えずに着られそうなスキニージーンズと無地のシャツをメインにカゴに入れて行った。

 

 沢山買いすぎてとんでもない金額になっていたが、まぁ問題はないだろう。予めマスターに大量に渡されている。

 

 

 服を買い終えた僕は仮で用意された家に向かう。聞いていた場所に向かうと古いアパートが目に入った。そこの2階、203号室が僕の部屋らしい。

 

 何と、ただのホムンクルスである僕の戸籍がいつの間にかマスターの手によって用意されていた。まぁ魔法を駆使すればその程度なんてことはないのだろうが。今は存在しない少女、綿貫(わたぬき)刹那(せつな)という扱いとなっている。

 

 基本的にゲームの登場人物は皆カタカナ名であったが、一応この世界にも漢字名は存在する。SCS(Silent Catharsis)を僕はそこまでやりこんでいたわけではないのであまり詳しい設定は知らない。おそらく魔法族は魔法によって言語の垣根を超えているため漢字ではなくカタカナ()として名前が伝わっているのだろう。

 

 ヒロインの一人である黒崎玲も、作中では基本的にレイという表記だ。

 

 

 部屋に入ると、最低限の生活用品、家具は既に用意されていた。クローゼットの中には空の衣装ケースがある。正直服も用意しておいてくれてもいいのにと思った。

 

 マスターが「これで服を買うように」と言いながら特に説明なくお金を渡してきたが、実は服くらい自分で選べるようにという気遣いだったのだろうか。

 

 いや、マスターがそんな気遣いを見せるわけがないか。特に僕はただの都合の良い道具だし。

 

 謎は深まるばかりだが、どうでもいいことなので一旦置いておこう。

 

 

 取り敢えず買ってきた服を衣装ケースに入れてから用意してもらったスマホを起動する。

 

 わざわざ契約も済ませてあり、組織の本気度がわかる。ただちょっと邪魔されただけなのに何故ここまで、と思わなくもない。がよく考えたらあの禁術の影響を逃れて活動する組織だ、マスターが警戒して当然なのかもしれない。

 

 

 このスマホは今回の作戦の(かなめ)だ。用意されていた電話番号を使ってGoog○eアカウントを作り、そのままツイ○ターのアカウントを登録する。

 

 少しだけ調べ物をしたのち、ツイッ○ーでとある呟きをする。

 

 

『この世界はどうなっちゃったの!? みんな、どうして……誰か助けて』

 

 

 これで、狙い通りなら釣れるはずだ。表情が死んでいるせいで頬は動かなかったが、心の中でにやりと笑った。

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