おい!この"選択肢"おかしいぞ!何とかしろ! 作:一般通過先生
気がついたら何も無い辺り一面真っ白な世界にいた。
何を言ってるか分からない?奇遇だな俺もだ。
さっきまでの俺は何をしていたのか……ああ、そうだった。バナナの皮を踏んで滑って転んでテーブルの角に頭をぶつけて死んだんだっけ?あれは痛かったなあ。
今頃の俺の葬式は笑いに包まれてるだろうか。いや恥ずかし。恥ずか死ぬ。実際のところ死んでるし。
──……私のミスでした
ん?なにか声が聞こえたような。気のせいか。こんな場所に俺以外に誰かいるわけもないし。
──私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況
と思っていたら真っ白な世界から一変、いきなり俺は電車に乗っていた。
なに、怖いよ。このまま行先は天国が地獄なの?出来れば天国に行きたいなあ。
……ところであなたはだあれ?
──結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……
あらヤダ、話聞かない人だわこの人。
目の前の席に座る少女。体からは血を流してる。それもかなりの量。
あの、大丈夫……ですか?
──……今更図々しいですが、お願いします
図々しいとかじゃなくてまずこっちの話を聞いてもらってもいい?
まず血をどうにかしよ。心配なるて。
──きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません
──何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……
──ですから……大事なのは経験ではなく、"選択"
んー、やばいなあ。話が見えねえや。
こっちの言葉聞こえてないっぽいしどうしましょう。マジで何の話状態。
──責任を負う者について、話したことがありましたね
いえ、初耳です。
──あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます
──大人としての、責任と責務……そして、その延長線上にあった、あなたの選択
──それが意味する心延えも
大人て……あたしゃこの前ハタチ迎えたピチピチなんですが?
……いや最近は大人の定義は18からなんだっけ?ほな大人かあ。
──……ですから先生、私が信じられる大人であるあなたになら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また先の結果を……
──そこへつながる選択肢は……きっと見つかるはずです
──だから先生、どうか───を…お願いします
お願いします言われてもねえ。
あれ?なんだか意識が……あ、これ目覚めるやつだ。とりあえずちょっとお名前だけでも……
「……んが」
目が覚める、体を起こす。
眠気まなこを擦りつつあくびがこぼれ、その後に伸びをすると骨が鳴った。
一息つき、そして頭にハテナが浮かんできた。
──あれ?俺寝てた?
最後の記憶はバナナの皮に足を滑らせテーブルの角に頭をごっちん。そのままポックリ逝ったと思ったら……そうだなんだか夢を見てたんだ。
なんの夢だっけ?なんか選択やら洗濯やらがどうたらこうたら……と、そこでふと気づいた。
「……ここどこ?」
そこは見知らぬ部屋。小綺麗にされた近未来感漂うような場所。
先程までいた自分の部屋とは全く違う間取りとインテリア。
「なるほど、まだ夢を見てるのか」
なるほどなるほど、それなら納得だ。つまり頬を抓っても痛くな……いや痛いな。普通に痛い。痛みを感じる夢か。悪夢じゃないことを祈ろう。
「──夢じゃありませんよ、先生」
「っ!?」
横から唐突にかけられた声にびっくり。
そっちを見れば顔が整ったスタイル抜群のメガネ美女がいた。なんてこった、こりゃいい夢だ……ん?夢じゃありません?
「お疲れだったようですね。こんなに熟睡されるとは」
こんがらがる頭のこちらを他所に独りごちるメガネの彼女。
これは今どういう状況なのか。頭を抑え頭をひねる俺に彼女は口を開いた。
「……ちゃんと目を覚まして、集中してください」
「あ、はい……ところで貴方はだあれ?」
「はい、私は"七神リン"。連邦生徒会所属の者です」
「はぁ、なるほどねぇ……ところでさっき俺の事先生って呼んだ?」
「ええ、貴方は私たちがここに呼び出した先生……のようですが」
……なるほど、全く記憶にございませんな。
てかなんでリンちゃんさんも"ようですが"って分かってないの?
「……ああ。推測形でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです……混乱されてますよね。分かります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります」
あらヤダ、矢継ぎ早にそんな言わないでくれる?俺の頭追いついてないの。
まずは整理しよう。
俺は死んだ。そして夢を見て目が覚めたら見知らぬ場所。そしたらメガネ美女こと七神リンちゃんさんが現れて、俺の事を先生と。
でもリンちゃんさんもまた俺の事はよく分からずで……なるほどな、完璧に理解した(分かってない)
「それでは、行きましょう。着いてきてください、先生」
「あ、はい」
とりあえず流れに身を任せてみましょ。俺自身さっぱりだし。
寝ていたソファから立ち上がりリンちゃんさんの後を追う。
……にしたってこう見るとほんとにべっぴんさんですがな。驚きやで……てかなんか頭の上に天使の輪っかみたいなのない?何それ、俺も欲しい。
さて、そうして乗り込むエレベーター。
可愛い子と密室で二人きり、何も起きるはずもなくもなく。そんな度胸俺には無いしね。
「さて、"キヴォトス"へようこそ先生。キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」
「……おっけ!」
さっぱり分からん!
この俺が日本語を理解できない日が来るとは、生きてれば何が起きるかわからんね、ほんと。
「詳しくは後で話すとして──」
そうして、チン♪と音が鳴りエレベーターが止まった。
目的の場所についたようだ。
そうして扉が開けば──
「あ、やっと来たわね!」
──迎えてくれたのは一人の少女の声。
「……めんどくさいのに絡まれましたね」
「え?」
目を押え呟くリンちゃんさん。
大丈夫?疲れてる?話聞こか?
その場にいたのは4人の少女。全員もれなく頭の上に天使の輪っかを備えてある。さらに羽が生えてる人もいれば尻尾が生えてる人もいる。
……コスプレかなぁ?(現実から目逸らし)
「面倒臭いって何よ!それより、今すぐ説明を……って、その人は?」
「リンちゃんさん、こちらの方々はどなた方で?」
「この人たちは各学校の要人たちで、連邦生徒会の管理していたサンクトゥムタワーの制御が……まぁ、いいでしょう。先生、早く向かいましょう」
うぉーい、気になる終わり方しないで。
とりあえず諸々説明が欲しいゾ。俺は何をやらされるの?人体実験的なアレとかされんの?帰っていい?
「ちょっと!こちらの質問に答えなさい!」
藍色の髪を2つに纏めた少女の言葉にリンちゃんさんはため息をこぼした。
大変そうだね。ところで後で息抜きにお茶しない?
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余してる皆さん。こんな暇そ……大事な方々がここを尋ねてきた理由は、よく分かっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」
「そこまで分かっているなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!?数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
そこから始まるやいのやいの合戦。
……俺は置いてけぼり。あのぉ、寂しいんですけど。てかそろそろ説明が欲しいです。
……ダメだ。今、俺の姿は彼女らの目には入っていない。
拗ねちゃお。とりあえずしゃがんで地面に指で"ぬ"をいっぱい書いちゃお。
そこから聞こえてくる声は、やれ不良が暴れてるだの、やれヘリや戦車が流通してるだの、やれ矯正局から脱走だの、やれ連邦生徒会長は行方不明だの……なんかこの世界治安悪すぎん?怖くなってきたんだけど。
「──それでは、今の方法があるということですか、首席行政官?」
「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「っ!?」
「……っ」
「っ!」
「この方が…?」
「え?」
なんか唐突に話振られてワケワカメ。フィクサーってあれでしょ?問題解決者とかそういう意味だよね?
……え?あっしがですかい?
「はい、こちらの先生はこれからキヴォトスの先生として働く方であり連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃないの……」
こんがらがってきた?だって?奇遇だな、俺もだ。
俺たち気が合うな。どうやら俺たちはブラザーのようだ。
とりあえず話振られたし……じ、自己紹介でもしとく?
そうだなそうしよう。
そうして、口を開こうとした……その瞬間の事だった。
世界が止まった。
目の前の少女たちも動きを止め、時計の針も進まなくなり、音もせずに窓から見える空に浮かぶ雲は静止している。
さらに俺自身も動けなくなり、瞬きもできない。
……えーと…………何これ?
しばらくして、目の前の何も無いところの空間が歪み、そこから何かが現れた。
四角い横に長いそれ。それが上下に合計2つ。既視感のあるそれに書かれていたもの、それは──
【今日からお前達の先生になるものだ。気軽にヤンクミと呼んでくれ】
【今日からお前達の先生になるものだ、気軽にブラザーと呼んでくれ】
( ゚д゚)
(;つд⊂)ゴシゴシ
(; ゚д゚)
(;つд⊂)ゴシゴシ
(; ゚д゚)っ!?
なんじゃこりゃ!?
え……あ、もしかして夢の中で聞いてた選択うんぬんってまさかこれのこと…?
いや、にしたってヤンクミとかいつの時代なんですか。確かに立派な先生だけどさ。あとあの人女の人よ?俺男だから。
でもブラザーも意味がわからん。なんだこの選択肢。これ選べってか馬鹿じゃない?
……でも体動かないしな、まさか選ぶまでこのままがずっと続くとか?終わってんね!
てかどうやって選ぶのこれ。体動かせないから指で差せないよ?
ま、まあ選ぶなら……ブラザーかなあ…?意味わかんないけどね?
あ、なんかブラザーの方の選択肢が書かれた枠が点滅しだした。そのまま決定ってどうす……あ、ピコン♪って鳴ったな。
その瞬間、世界に動きが戻った。
そしてそのまま俺の口は勝手に開く。
「今日からお前達の先生になるものだ、気軽にブラザーと呼んでくれ」
「あ、はいよろし……え?ブラザー?」
「ぶ、ブラザーと呼べばよろしいんですか…?」
「え、えーと…?」
「とりあえず先生、なんですよね……?」
ほら、困惑させた。良くないって。普通に自己紹介じゃだめなの?
「……好きに呼んでいいよ」
「あ、では先生と」
「よろしくお願い致します先生」
「よろしく、先生」
「先生、これからよろしくお願いします」
みんな先生呼びか。ブラザー呼びが誰もいない。ちょっと寂しい。
「先生、おふざけの方はそこまでにして話を進めさせてもらってもいいでしょうか」
おふざけて……いやまあおふざけか。ごめんね。
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。"連邦捜査部S.C.H.A.L.E"……単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で各学園の自地区で制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」
「……ヨシ!」
何言ってっかさっぱりだね!
「……ほんとに分かってます?」
「分かってると言ったら嘘になるかもしれません」
「……はあ」
あ、頭を抑えた。ごめんね。
「ほ、ほんとに大丈夫なのかしら…?」
「少し……不安ですね」
「一気に不安になってきましたね」
「………」
いや、ほんとごめんね!
何回謝ればいいのだろうか。俺も先行き不安だよ。何するか分かんないし。
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令でそこの地下に"とある物"を持ち込んでいます。先生をそこにお連れしなければなりません」
「なるほど、それは理解でき……30キロ?」
クソ離れてるじゃん。え?移動は?歩きとか言わないよね?
【んじゃ散歩がてらみんなで歩いていこうか】
【んじゃジョギングがてらみんなで走っていこうか】
無理無理無理。30は無理。
なんで日常生活でフルマラソン1歩手前までのことしなきゃいけないの?馬鹿なの?
てかこの選択肢はほんとに何?なんなのこれは?死んで異世界に来た時に貰える特殊能力的なあれなの?ゴミすぎる能力なんだが?
え?マジでコレ選ぶの?嫌すぎるんだけど。
ふざけてんね、くたばってどうぞ。
「……んじゃ散歩がてらみんなで歩いていこうか」
「「「「!?」」」」
「……先生、無茶を言わないでください。今ヘリを手配しますから」
ヘリ!?マジで!?そんなの乗れるの!?ひゃっふぅー!俺初めて乗るわ!やったぜ!
……てかヘリなら歩き無しだよね?大丈夫だよね?
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
タブレットを操作するリンちゃんさん。
するとホログラム映像のように青い光が投影され、そこにピンク色の髪をした気だるげな少女が映し出された。
うわあ、近未来的ー、しゅげー。
『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ…?」
『矯正局を脱走した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』
ふーん、戦場ねえ……えぇ?
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
とんでもねえな。何だこの都市?世紀末か?
治安悪すぎ、帰りたい(切実な願い)
『まあでもとっくにめちゃくちゃな場所だし別に大したこと……あ、お昼のデリバリー来たからまた後で連絡するね。じゃねー』
あ、通話切れた。自由な子だねえ。
………えーと、で?ヘリは?まさか無理とか言わない?ほんとに歩き?
「………」プルプル
ヤバい、リンちゃんさんが震えてる。正しく西野カナ状態。
ブチ切れじゃん。触らぬ神に祟りなしってね。そっとしとこ──
【ここは和ませるために変顔を披露しよう!】
【ここは和ませるためにリンちゃんに変顔させよう!】
おい!この選択肢やっぱりおかしいぞ!誰か何とかしろ!
原作まんまで話進めると文字数がえぐいということを知った。