おい!この"選択肢"おかしいぞ!何とかしろ! 作:一般通過先生
「──いいですか!?もう絶対に二度と、二度と!あんなことはしないでください!分かりました!?」
「……はい」
ハスミちゃんに頭に包帯を巻いてもらってる間、藍色ツインテールちゃんからのありがたい説教を受ける時間。
俺だってね、やりたくてやった訳じゃないんだよ?体がね、勝手に動くの。もはや選択肢とかいう化け物に体を乗っ取られてるの。たしゅけて。
『……流血した姿を見せて萎縮させるなんてそんな発想普通なら出てきませんよ?』
「なんというかオブラートに包んで言わせてもらうと発想が狂ってます」
「追いかけていく姿はまさに狂気でした」
それはもうオブラートに包めてないのよ。いやまあそれほど馬鹿やったんだけどね?でも心はガラスなんだよ?
「ですが先生の活躍で障害は取り除けましたから……まあ褒められた行為ではありませんが」
「……返す言葉もごぜーません」
優しい手つきで治療してくれるハスミちゃん。
ごめんね、こんなのが先生で。
『そうですね。結果オーライと言うやつでしょう。先生の治療が終わり次第急ぎます。皆さん準備の方を』
「「「「了解」」」」
さて、そんなこんなで苦難と苦労を乗り越えてたどり着いた目的地。もはや俺の胃も精神もズタボロだ。休みたい、切実に。
入口の戸を開け中へと入る。中は薄暗くなんだかちょっと不気味。
他のみんなは入口で待機。こっからは俺一人とか心細くて涙が出ちゃう。だって男の子だもん。
歩き続けて幾ばくか。
そこにはさらにドアがあり……それのドアノブに手をかけ中へと恐る恐る。
誰もいないよね?お化けとかいたらヤだよ?
そろりそろりと入っていくと──
「うーん、これが一体何なのかまったく分かりませんね。これでは壊そうにも……」
──いや誰かおりゅうぅぅぅぅ!
狐の面をつけた着物姿の銃を持った女の子。
ふっ、死んだな、俺(諦め)
「……あら?」
あ、こっち向いた。
顔はこっち向けていいけど銃はやめてね?冗談じゃないしフリでもないよ?
【敵と接敵、戦闘態勢をとる(荒ぶる鷹のポーズ)】
【まずは話し合いだ。自己紹介をしよう】
戦闘なんてできません。
柔道とかならやったことあるけど銃持ってる相手になんて無理です。
しかも荒ぶる鷹のポーズってなんだよ。そのポーズのまま打たれて死んだら恥ずか死ぬよ。
まあここは無難に自己紹介だろう。無難にね。
話せばわかる。そうだろう?そうだと言って…!
「……貴方は」
「おっすオラ"先生"。木の葉の里出身でひとつなぎの大秘宝を探して旅する美食家だってばよ☆」
「…………」
「…………」
無難な自己紹介だって言ってんだろうがァッ!!
見てよあの顔、困惑してるって!……いやお面で見えないけどさ。
こんなん問答無用で銃乱射だろ。おいおい死んだわ俺。
「あ……ああ……!」
「………?」
「し……」
「し?」
「失礼しましたー!!」
【ええい!逃がさん!】
【俺を前にして無傷で逃げられるとでも?】
なんでだよ!失礼してくれようとしたじゃん!なんで自ら死にに行こうとするの!馬鹿なの!?……馬鹿なんだろうなあ。
「ええい!逃がさん!」
「ぴっ……!」
【さあ!このまま壁ドンだ!】
【よし行け!押し倒せ!】
ふざけんなよてめぇ!
フツメンオブザイヤーの俺がそんなことしようもんならもはや事故映像なの!銃持ってるやつにそんなことしたらハートを撃ち抜いちゃうゾ♡(物理)コースまっしぐらなの!
逃げようとした女を捕まえて襲うとかやってること犯罪者だかんね!?そこんとこ分かってるぅ!?
……はああああああああ(クソデカため息)
──ドン!
「……ひゃ…!」
選ばれたのは壁ドンでした。
で?こっからは?なんもねえのか?
……あとは丸投げなんですね。そろそろくたばってくれ。
「…………あ、あの…?」
「……………」
「〜〜〜〜!す、すみませんでしたぁ〜!」
腕をするりとくぐり抜け出口へと向かっていく狐のお面ちゃん。
バタンと閉まるドア、部屋には俺一人。
やったぜ、あまりのキモさに敵が退散していきやがった。
でも何故だろう。殺されることなく無傷で敵を退けたのに……涙が止まんねえや。
「……あの先生。なぜ泣いてるんですか…?」
「男として…!何かを失ったことによる悲しみだよリンちゃんさん…!」
「は、はぁ……」
なんてタイミングで来るんだリンちゃんさん。
悲しみに暮れる俺の背中を戸惑いつつも摩ってくれる。なに?あんた女神様なの?ちょっと惚れてもいいですか?
「とりあえず話を進めても…?」
「あ、はいどうぞ」
悲しい出来事はあったが切り替えてかないと。リンちゃんさんに迷惑はかけられない。
「ここには、連邦生徒会長が残したものが保管されています」
「へー、そうなんだね──」
【まさか!俺宛ての恋文☆TE☆KI☆NA☆!?】
【ベッドの下とかに隠されてる秘蔵の書みたいなやつだな?】
でしゃばんないでくれ…!頼む…!話進まねんだ…!
もうこの際これに関してはどっちでもいいや。適当に。
「まさか!俺宛ての恋文☆TE☆KI☆NA☆!?」
「違います」
「あ、はい」
【じゃあベッドの下とかに隠されてる秘蔵の書みたいなやつだな?】
【工口本……ってコト?!】
1回死んだら?話進めさせろって言ってんの。
ほんとにさ……ほんっとにさぁ…!
「じゃあベッドの下とかに隠されてる秘蔵の書みたいなやつだな?」
「違います」
「あ、はい」
もう可哀想だよ。俺よりリンちゃんさんが。
こんなのに付き合わせてごめん。いやほんとに。
そんなことを気にすることなく……いや、もはや呆れて無視してるのかもしれない。そんなリンちゃんさんはデスクの引き出しを開けた。
そこから取りだしたのは──
「タブレット?」
「はい……幸い傷一つなく無事ですね。受け取ってください」
そう言われ受け取るが…まあ一見普通の端末だな。
「これが連邦生徒会長が先生に残した物……"シッテムの箱"です」
箱?どちらかと言うと板じゃない?
まさか…!ウィーンガシャンガシャンする系の変形型タブレット…!?ロマンの塊じゃん!
「普通のタブレットに見えますが実は正体のわからない物です。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明」
え?何それ怖。オーパーツ的な?……それはそれでロマンの塊か。
「連邦生徒会長はこの"シッテムの箱"は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。私達では起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させることができるのでしょうか?それとも──」
いや、なんか責任重大じゃない?やめてよ。
俺にそんな責務は務まりません。やめてください。
なんてことを思っていたら画面に光が。
はわわわ、なんか起動したよ…!?俺なんか押したかな…!?壊した…!?
青い画面の中央に浮かぶ"S"の1文字。
「……少し、離れていますね」
え、待って。1人にしないで。不安でいっぱいなの。
こっから何?俺はどうすればいいの?
──……Connecting to the Crate of Shittim
──システム接続パスワードを入力してください。
パスワードだぁ?んなもん知らんがな。
【……我々は望む、七つの嘆きを】
【……我々は覚えている、ジェリコの古則を】
なんか厨二病的な選択肢出てきたぞ。
え?どっち?
ふえぇ…分かんないよぉ……間違えたらどうなるのかも分かんないのにどうすればいいの?
【……我々は望む、七つの嘆きを……我々は覚えている、ジェリコの古則を】
【さっさと入力しろボケ】
やだ何この子。自我あんの?怖。
てかどっちもなの?ほんとにこれで合ってる?引っ掛けとかじゃなくて?
「…………」
と、とりあえず打ち込んでみようか。
選択肢を選び、勝手に動く指が端末にパスワード……らしきものを入力。
読み込み処理を経て、次に現れたテキスト。
──接続パスワード承認
──現在の接続者情報は────、確認できました
わーい、合ってたっぽい。
……いやなんで俺の個人情報がわかるの?俺こんなの登録した覚えないんだが?やばい、怖くなってきた。
──"シッテムの箱"へようこそ、先生
──生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します
それを見た瞬間に視界が一瞬にして真っ白に。
体が浮くような感覚を経て……次の瞬間には体の感覚も視界も戻ってきた。
そうして気がついたら──
「……どこなのここぉ?」
──見知らぬ教室に俺はいた。
なに?また別の異世界にでも来た感じ?
元ネタに比べて選択肢がマシ?
まあまだ始まったばかりだしね。