プロローグ
『世界』というのは、宇宙全域、及びそこに存在する集落を意味する。
そしてその『世界』というのは一つだけではない。そんな感じの事を、青い
『異世界』。こちらから見ても、存在する理も、在り方も、技術も、住人も、同じだったり異なっていたりする。
細かい詳細は追々説明するが、そもそも世界と言うのも、『
そして、『在り方』や『世界観』等が全く異なる『世界』の事は、直接は認識することは出来ない。その代わり、書籍やゲーム等で語り継がれる。私たちが住む世界もその1つで、多くの世界に知られている世界の1つだともいう。……え、その『在り方』と『世界観』が似通っていたらどうなるって?そ、そこは追々説明するわ。
そんな、数多の世界。一まとめにして『時空』と呼称するソレでは、時に世界の垣根を越えて、異世界の
それが、『クロスオーバー』と呼ばれるもの。異なる物語が、境界線を越えて混じり合う事を指し、『もしもこのキャラクター達が出会いを果たしたら』、『このキャラクターとこのキャラクターが戦ったら』、等……ストーリーや分野などの要素が混じり合う。
数多の物語が交差する事となる物語。
そんなこの時空で、クロスオーバーが本格的に起こるような事件が起き始めた。それが『時空融合現象』。異なる2つの世界が混ざりはじめる異常現象だという。例えると、東京の町がファンタジーの世界、または遠く離れた外国に転送される感じ。
異世界同士の融合は、歴史改変どころか世界の消滅を意味するらしく、そう言ったものは、融合の原因となったものを取り除き、意地でも止めなければならないらしい。
時空融合現象は定期的に発生しているらしく、今になるまででも100件を軽く超えている。……つまりは、200を超える世界が融合しそうになったということになる。
今まではすぐに解決できる程度だったようだが、どうも手掛かりを得られない上に、最近は深刻さが増している。そんなタイミングで、私達の住む場所も巻き込まれることとなる。
そして、それは同時に――
約3か月前。
《幻想郷》
幻想郷。妖怪や神等、外の世界から忘れ去られた存在が暮らす、結界で隔てられている山奥の里。
それを、『スキマ』と呼ばれる空間から観察しているものが1名。通称『スキマ妖怪』とも呼ばれる大妖怪『八雲紫』だ。
「良くないわね、この状況……」
少し渋い顔をしてそう呟く彼女。とにかく徐々に発生してきているこの謎の現象。スキマを介してないにもかかわらず突如転移して来た、外界のものと思われる大きな建物。それを前々から『あった』ように認識している里の人々。
更には、人なのかも妖怪なのかも全く分からない存在の目撃情報が多数。どう言うわけか全く情報がつかめず、博麗神社の巫女『博麗霊夢』どころか、紫を含めた賢者たちさえもかなり手を焼いていた。
「外界の建物のハズだけど、一体どうしてスキマを介さずにここまで大きな建造物が……
……ここまで来ると、かなりマズい事になりかねないわ。こうなったら――」
紫は止むを得ないと言うように、幻想郷の上空に大きなスキマを作ろうとする。大方、建物をスキマの中に放り込むつもりだったのだろうが――
「おおっとストップストップ」
突然、スキマが何か、ファスナーのような物体に拘束されて、相殺された。
「なっ……!?」
それに驚いた紫。そこで、先程聞こえた声の方向を向いてみる。そこには、見慣れない服装の青年がいた。
「ったく、何も知らないと言えどそれやっちゃダメだっての。ポップンワールドの住人が困るんだから。」
青年の右手には、何か果物が象られた錠前……の玩具が握られている。
「貴方、何者なの?スキマをかき消すなんて……」
「誰かって?んー……何と言えば良いか。
別世界の神様みたいな感じ。」
*****
「ハァッ、ハァッ……」
一体全体、何が起こったのか。息を切らしながら人里を走り回っていた私は、およそ5秒の間に起こったことを、何度も頭の中で繰り返し再生していた。
鈴奈庵から借りたままだった本を返しに行こうとした時だった。離れた位置にいても、明らかに伝わる奇妙な気配……例えるのなら、おそらく『殺気』。幻想郷の人間を襲う事は禁じられているにもかかわらず、あからさまな殺気を向けて、一匹の野良妖怪が私に襲い掛かろうとした。
そして同時に、横から、何者かがその野良妖怪を派手に蹴飛ばした。
人間だった。目に見えないくらいの速さで移動し、野良妖怪を蹴飛ばしたその『何者か』は、人間の男だった。
視界に映った時のその姿は、水色の目をした、橙色の目隠れ髪の男。服装も白く薄い上着と黒いズボン。見た限り、人里の人間ではなかった。
「にしても、怪しい動きをしてた奴を蹴っ飛ばしたらトジル魂があっさり見つかっちまうってなると、何か少し拍子抜けしちまうな。」
蹴とばされた野良妖怪は、奇妙な、宝石のような丸い物体を落とした。……それを、男は拾い上げたかと思うと、足元に落として思いっきり踏みつぶした。
彼は何をやったのか。少女はその男の挙動を見ていた。
「さーて。その内元に戻るんだろうし、さっさと帰るか。
……って言いたかった所なんだがな。」
男は、私とは別の方向を見る。
「えっ……これって……!?」
私もその方向を見てみ。すると、数え切れないほどの野良妖怪(中には鬼も混じっている)が、不可解な殺気を向けながらその男の前に立ちはだかっていた。
この時点でかなりおかしい。さっきも言ったが、妖怪たちは人里に入ること自体はまだしも、少なくとも人里内にいる人間を襲わないように決められていた。
なのに、あの妖怪たちは、『そんなこと知ったこっちゃない』と言いそうな表情で、誰でも分かるくらいの殺気を向けている。捕食本能でもなく、特定の人物に対する恨みから生まれた怨念と言うわけでもない……何というか、『兵器』と言う言葉が物凄く当てはまるような……
そうこう考えていると、野良妖怪たちが男の方に突っ込んできた。
「ったく、お構いなしってわけだか。……まあ、どれも大したことないようだが。」
その言葉を聞いて、私は正気を疑った。さっきみたいに不意を突くのはともかく、妖怪、それもあれだけの数と戦うのは自殺行為に等しい。
そうこう考えてる内に、妖怪たちが男に襲い掛かる。
「暴走しまくってるせいでお粗末だな。」
男は、何やら構える。……そして、妖怪の内一体を、かなりの速さで蹴った。
その瞬間、妖怪の群れの大半が、一気に吹き飛んだ。
私は唖然した。あれだけの数を、男がたった1人で削ったしまったから。
するとその時、今度は一番後ろにいた鬼が、男に襲い掛かる。
「まだ残ってたか。まあ、こういう時は……ドドゲザン、『アイアンヘッド』!!」
男は腰元につけていた球体を、鬼の方に投げる。そしたら何と、武将の様な見た目の、大きな刀のような頭部を持つ生物が出て来る。頭突きのような攻撃をし、鬼を突き飛ばし――
「サンキューっと。んで……しゃらあああああああああっ!!!」
そして、橙髪の男がトドメと言わんばかりに、鬼を思いっきり蹴飛ばした。蹴とばされた鬼は、遠くまで吹っ飛び、転がり落ちた。
「はい、お終いっと。」
私はまた唖然とした。鬼すらあっさりと倒してしまったから。
「で、あとは……」
すると、周囲の、石造りの大きな建物が透明になって行く。一体全体どういうことなのか、私には分からない。
それを確認してうんうんと頷くその男は、さほど気にせずに回れ右して一人呟く。
「つーか、作者はまだ八雲紫だとかともめてるのか?まあ摩多羅隠岐奈との話はついてるし、幻想郷各勢力の交渉とかは任せるとして……とりあえず、カービィに連絡入れとかねーと。霧の湖だとかに行ってたんだっけなー……そんで……」
男は、困惑真っ最中の私の方をチラッと見つめていた。
「さっきから何困惑しながら見てたんだよ。…いや、理由はなんとなくわかるがさ。
……まーなんつーか……案外肝が据わってると見たよ。ちょっと興味が出た。とりあえず、名前くらいは聞きたいんだが、いいか?」
「な、名前……じゃあ……」
少女は、壁際から出て、橙髪の男に姿を見せる。
「私は、『稗田阿求』。この『幻想郷』にある記録を、幻想郷縁起に書き記す役割を持つ『御阿礼の子』。その九代目です。」
「へぇ……風格からして、もしやと思ったが……結構重要な役割持ってんのな。
……じゃ、俺の方も名乗っておくか。」
名を聞いて何故か少しニヤついていた橙髪の男は、『元に戻りつつある2つの世界』を背景に、右目を隠していた髪をかき上げて、こう名乗った。
「俺の名前は『祷大地』。
出身地は……まあ、今回幻想郷と同様に巻き込まれた、『ポップンワールド』って世界の方の東京都……。って言えばいいか。」
『稗田阿求』と、『祷大地』。
この2人の出会いが、幾多の世界を巻き込む異変『時空融合現象』を巡る物語が。出会いもシリアスもカオスもそれなりにありそうな、そんな
今、始まるのだった。