ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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長らくお待たせして申し訳ありません……私生活の方が忙しくなりまして……次はもう少し早く更新できるよう頑張ります。


ドン22話「ぼくらはヒトツになる」

 

holoxからソウゴが去って、早3日が経っていた……

 

「……どこへ行けばいいのかも、わからないなんて……」

 

ソウゴは街中を彷徨っていた。未練があるわけではない……頼る場所もない、他に頼れる人がいないソウゴは、どこに行けばいいのか迷っていたのだ。

結局、ホームレスの溜まり場や漫画喫茶などを利用して眠りにつくしかなかった。

 

(本当にダメだな、俺という人間は……)

 

そう思いながら、ソウゴはフラッと立ち寄ったアウトレットモール……そこの庭にあるテラス席の椅子に腰掛けた。

ふと辺りを見回してみると、他の客は皆楽しそうにしていた。恋人同士でランチを楽しむ者、仲間同士でバカ騒ぎしている組……それに比べて自分は一人ぼっち……ソウゴは孤独を感じていた。

 

(そうか……みんな仲間や恋人がいるんだな……それに比べて、俺は……)

「もしもし、そこのお兄さん。」

 

孤独感を感じていたところに、隣からソウゴを呼ぶ声が聞こえた。そこに顔を向けると、そこにいたのはチャイナ服を着た、仙人のような髭を生やした猫の獣人だった。

 

「ニーハオ♪」

 

猫の老人は気さくに挨拶すると、ソウゴの許可もなく向かいの席に座り始めた。

 

「……誰だ、アンタは……」

「いやいや、通りすがりのジジイじゃよ。1人で旅行に来たんじゃが、ひとりぼっちで飯を食うのは寂しくてのぉ……」

(ひとりぼっち……)

 

その言葉にソウゴは胸を締め付けられた。まるで自分に刺してくるような言葉だった。

猫の老人は手に持ったビニール袋をテーブルに置くと、袋から食べ物を取り出した。取り出したのは、ソウゴの好物でもあるタコ焼きだった。

 

「ほほ〜、美味そうなタコ焼きじゃのぉ〜♪」

「タコ焼き……」

 

また胸が痛くなるのを感じた。タコ焼きと聞くと、嫌でもこの前まで楽しかった時の記憶が蘇る。

対し、猫の老人はフー、フーとタコ焼きに息を吹きかけて冷まし口に放った。

 

「アチッ!アチチッ!じゃが……美味いの〜♪ところで……おぬし、なぜタコ焼きの中にタコが入っているか……考えたことはあるか?」

 

老人の言葉に、ソウゴは一瞬キョトンとしたがすぐに真顔になった。

 

「……それは、最初はこんにゃくが入っていたのが、時代の流れとともにタコに変わって……」

「いやいや、歴史的な話じゃなく精神的なものじゃ。ワシが見るに……ひとりぼっちのタコを他の具材が包みこんでいるように見えるのぉ。まるでおぬしの様じゃ。」

 

その言葉に、ソウゴは思わず「は?」と声を上げた。そのまま老人は話を続けた。

 

「ソース、マヨネーズ、小麦粉、かつお節、青のり……一つ一つの食材が、硬くて噛みにくいタコを温めて包みこんでいる様じゃないか?タコ自身も、それを望んでいる……おぬしはどうじゃ?」

 

そう言って、老人は爪楊枝にタコ焼きを刺しソウゴに差し出した。

 

「おぬし……心の中ではあの娘達のところに戻りたいと思っているのではないか?」

「……なんなんだアンタは!さっきから!」

 

いつもならタコ焼きの魅力に負けて食べるところだが、ソウゴは老人に食ってかかった。

 

「俺の心をざわつかせるようなことを……!何が狙いだ!」

「怒るということは、おぬし自身がそう思っているということじゃ。」

「貴様……!!」

 

ソウゴは怒りのあまり思わず殴りかかりそうになった。自分の心中を見抜かれたような感覚を覚え、不愉快な気分になった。

だがその時だった。

 

「見つけたぞ、鮫山!」

 

横から聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはグリムが仁王立ちでソウゴを睨んでいた……しかし、すぐに目を丸くしていた。

 

「なっ……!?ネコジジイ!?」

「おおっ、久しいのぉ〜グリム。」

 

猫老人とグリムは知り合いだったのか、ソウゴをよそに話し始めた。

 

「何してんだよジジイ!」

「おかゆちゃんのライブを見に来たんじゃ♪」

 

猫老人はそう言うとスマホを取り出し、ある画像を見せた。そこには薄紫色の髪に猫耳を生やした女の子、その下には「猫又おかゆ生ライブ!」と書かれていた。

猫老人はその画像を見るなりデレデレと鼻の下を伸ばした。

 

「おかゆちゃんはカワイイのぉ〜♡」

「色ボケジジイ……」

「知り合いか……?」

 

年甲斐もなくデレデレする猫老人を見て、呆れるグリム。その様子を見ながらソウゴが尋ねてきた。

 

「このジジイはマスター・シャーフー。俺に激獣拳と変身ブレスをくれた人……いや、猫だな。……で、何しに来たんだよジジイ。」

「ふむ……」

 

シャーフーはスマホを仕舞うと真面目な顔つきになってソウゴを見つめた。

 

「この世界に来たのは一ヶ月前じゃ。すぐにグリムに会おうと思うたんじゃが……先にこのソウゴを見つけた。その瞬間……」

 

その時、シャーフーの細い目が開かれ、瞳を見せた。

 

「この男の……底知れぬ闇を感じた。」

「闇……」

「そりゃあ、そうかもな……」

 

シャーフーの言葉を聞き、グリムはゆっくりとソウゴのことを、ウォルターに関することを全てシャーフーに話した。

すると、全てを聞きシャーフーはフーッとため息を吐いた。

 

「うーむ……これはややこしい……いや、由々しき問題じゃ。」

 

顎髭を撫で、シャーフーは自らの考えを2人に話し始めた。

 

「元々、ウォルターという男の中に闇はなかった。それが家族の裏切りによって、男の中に闇が生まれた……その後、記憶喪失になったウォルターは鮫山ソウゴとなった……じゃが、その記憶喪失が問題じゃ。」

「どういうことだよ?」

「記憶喪失になった瞬間、こやつの中にもう一つの人格が生まれた。それが、底知れぬ闇を持ったウォルターじゃ。」

「えっと……つまり、こいつの中にウォルターって闇の人格とソウゴっていう光の人格が生まれたってことか。」

 

話を聞いて、グリムはシャーフーの言ったことを総括した。シャーフーはコクリと頷き肯定した。

ソウゴの中に2つの人格が生まれている……それがシャーフーの考えだった。

 

「今までウォルターの人格は眠っていた。じゃが……クリスが現れたことでその人格が目覚めたのじゃ。そして今……その人格がおぬしを飲み込もうとしておる。」

「……分かるのか?」

「あの黒い姿が何よりの証拠じゃ。」

 

シャーフーの言葉を聞いて、ソウゴは黒くなったムラサメのことを思い出した。あれこそが闇の人格……ウォルターの人格が表に出始めた兆候……それが本当なら、このままではソウゴは闇に呑まれるということになる……

 

「……それならそれでいい。俺が最低な人間であることには変わらない……このまま闇の中で溶けてしまうのも……っ!?」

 

次の瞬間、グリムの拳がソウゴの頰に炸裂した。

いきなり殴られたソウゴは地面に倒されてしまった。

 

「な、何を……!?」

「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ……」

 

グリムはパキパキと拳を鳴らしながら、倒れたソウゴの胸ぐらを掴んで睨みつけた。

 

「俺はな……お前を元の世界に連れてかないで、この世界に残したままでいいと思ってたんだぜ。それはな……お前がこの世界で楽しそうに、幸せそうにしてたからだ!!」

 

民衆の目も気にせず叫ぶグリムの言葉に、ソウゴは唖然とした。それをよそにグリムは続けた。

 

「前に見たアンタは、まるで鬼みてーだった……冷酷で、怖くて……でも、滅茶苦茶カリスマ性があるって思った!そりゃあ、ガオの野郎もついて行くだろうなって思ったよ……でも、今のアンタは違う。冷たそうなのは相変わらずだったけど、それでも少し“柔らかそう“になってた!笑えるようになってた!!それはアンタが……クロヱちゃん達に一緒にいて、楽しいって思ってたからだろ!!」

「!!」

 

ソウゴは何も言えなかった。グリムが言ったことは事実だった。クロヱ達と一緒にいて、holoxにいてソウゴは確かに楽しいと思っていた。

だが、一度決めたことを曲げるわけにはいかなかった。

 

「ダ、ダメだ……!俺がいたら、アイツらを不幸にさせてしまう!俺は……アイツらの重荷になりたくないんだ!!」

「誰がそう言ったんだ!?一度でもアイツらが、お前のことを邪険に扱ったか!?」

 

その言葉に、ソウゴはまた何も言えなかった。クロヱ達はソウゴに対して傷つけるようなことは絶対にしない……ソウゴが去る時、クロヱが泣いていたのがその証拠だ。

 

「……おぬし、やり直したくないか?」

 

シャーフーは倒れたソウゴに語りかけてきた。その言葉は、ソウゴにとって救いの言葉に思えた。

自分の実の妹、メアリを殺してからどれだけやり直したいと願ったことか……そして、その願いを何度諦めたことか。

 

「……やり直せるのか、俺は……」

「おぬし次第じゃ。じゃが、ここはちと人目が多いのぉ……」

「移動すっか。」

 

グリムがソウゴを殴ってから、周りの民衆がこちらをみている。3人はそそくさとその場から立ち去った。

そして、3人が訪れたのは街から離れたところにある廃墟。そこに入り、応接室だった場所の古いソファにソウゴを座らせた。

 

「……何をするつもりなんだ、じいさん。」

「おぬしはこれから、夢の中で自分と戦ってもらうぞ。」

「夢の中で?どういうことだよ?」

 

シャーフーの一言に2人は首を傾げた。するとシャーフーは深く深呼吸しながら構えた。

 

「ふぅー……激獣拳秘技!夢想演舞!!」

 

シャーフーは両手の指を獣の如く尖らせ、それを前に突き出した。すると両手から光が放たれ、ソウゴはその光を浴びせた。

 

「うっ……!」

 

光を浴びたソウゴはうめき声を上げ、その場に項垂れた。

それを見て、グリムは慌て始めた。

 

「鮫山!?お、おいジジイ!何したんだよ!?」

「ワシの激気(ゲキ)を凝縮し、ソウゴに浴びせた。この術は、2つの人格を持つ者を夢の世界に誘い、闘わせて決着をつけさせる術じゃ。」

「すんげぇ限定的な技だな……」

「じゃが、自身の闇と戦うのは簡単なことではない……おぬしも分かるじゃろ、グリム……」

「……まぁな……」

 

シャーフーの術にかかったソウゴはそのまま夢の中へ……

 

「……ここは……」

 

夢の中で目覚めたソウゴは、真っ暗な暗闇の中にいた。

足元も空も黒で染まっていたが、自分の手や足はくっきりと見える。音も、視界もクリア。そして向こうから漂ってくる血の匂いも……

向こう側にいるのは、シャーフーの言う闇の人格……ウォルター。

 

「来たか……」

 

ウォルターは手に持った刀や着ている服、顔に血を付着させながら、ソウゴの方を睨みつけていた。

 

(ウォルター)……」

「俺を……殺しに来たのか……?そんなことをしている暇があるのか?なぜ、クリス()を追わない?また会えたんだ……すぐに行こう、奴のところへ……刃をくれてやろうじゃないか。」

 

語りかけるようにウォルターはソウゴへとゆっくりと近づき、刀の切っ先をソウゴへ向けた。

その時だった。

 

「ソウくん。」

 

ソウゴの背後から声が聞こえ、振り返るとそこにはクロヱの姿があった。それだけでなく、ラプラス、ルイ、こより、いろはの

すると、ウォルターは刀の切っ先をソウゴからクロヱ達に向き直した。

 

「あの女達がいるからか?そんなに大切か?一度裏切られたのに。ノエルに似ているからか?自分が勝手に作った妹のぬくもりを、こっちの世界でも感じていたいからか?」

「違う!そんなことは……!!」

 

ソウゴがウォルターに意識を向けた瞬間、バタンと何かが倒れる音が聞こえた。恐る恐る振り向くと、そこには血だらけになって倒れるクロヱ達の姿が……ウォルターはさらに返り血を浴びており、刀も真っ赤に染まっていた。

 

「お前はもっと失うべきだ……失えば失うだけお前の怒りは増し、強くなる……力の糧にしろ……!!」

 

憎しみに身を燃やせ……ウォルターはそう言ってきた。憎しみ……それがウォルターの、ソウゴの……長い戦いを始めた動機。自分を強くしたのは怒りと憎しみ……それはソウゴ自身も分かっていた。

だが、ソウゴは首を横に振った。

 

「……俺は、もう何も失わない……奪わせない……!!」

 

ソウゴの答えは決まっていた。クロヱ達は、ソウゴにとってかけがえのない仲間。ウォルター(ソウゴ)は家族も、組織の部下も何もかも失ってきた。だが、今度手に入れたものは絶対に失いたくないと決めた。

 

「……それが、答えか……?なら……」

 

ソウゴの答えを聞いた瞬間、ウォルターはどこからか新しい刀を取り出し、ソウゴに向かって投げた。

投げつけられた刀を、ソウゴは動じることなく受け取った。

 

「お前を殺し……俺が主人格になる。」

「俺は……死なない……!!」

 

ソウゴは刀を腰に携え、居合の構えを取った。同時にウォルターの方も霞の構えを取り……両者は互いに刀を振った。

 

 

─────────────────────

 

ソウゴが夢の中にいた頃、holoxでは……

 

「ソウゴのこと……追いかけなくていいのか?」

「えー?なんで〜?」

 

ラプラスは気怠そうにゲームをしながら、大也の疑問に返答した。

 

「アイツが決めたことだろ。」

「……彼は自分のハンドルを見失ってる。それを放っておいて……組織のボスとして、それでいいのか?」

 

大也が言い終えると同時に、テレビから「ボーン!」とゲームの爆発音が聞こえ、ラプラスはゲームオーバーになった。

 

「……組織のボスだからだ。仲間が自分で決めたことは、尊重して受け入れなきゃ……送り出さなきゃいけないんだ!」

 

あくまでも、仲間の気持ちは尊重すべき……それがラプラスの考えだった。しかし、その考えを聞いて、大也はため息を吐いた。

 

「……どうやら自分のハンドルを見失ってるのは、ソウゴだけじゃなかったようだ。」

「なんだと!?」

「我が道を通して、みんなを引っ張っていく……それがラプラス・ダークネスという奴だと思っていたんだけどな……」

 

大也の言葉は的を得ていた。ラプラス自身も自分らしくないとは感じていた。

すると、大也はフッと笑った。

 

「今なら、まだ間に合う。ラプラスもソウゴも……自分のハンドルを取り戻す時だ。」

 

ラプラスと大也が話している頃、こよりはガレージの中で機械いじりをしていた。

 

「こんなとこにいたのか……こより。」

「あ、ヤンマきゅん?ごめんねー、今手が離せないんだ〜」

 

こよりはヤンマに顔を合わせることなくそのまま機械いじりを続けていた。

 

「ソウゴの奴……探さなくていいのか?」

「………」

 

こよりは何も言わず、作業を続けていた。ヤンマは続けて問いかける。

 

「このまま帰ってこなくなってもいいのか?」

「………」

 

こよりはまた何も言わなかった。その反応に、ヤンマは怒りを覚え、壁を強く蹴りつけた。

 

「おい……このスカポンタヌキ!なんとか言えや!ダチを見捨てんのか!?」

「見捨てないもん!」

 

ヤンマの怒号に対し、こよりも大声を上げて振り返った。その手には、“あるアイテム“の設計図が握られていた。

 

「っ!こいつは……!?」

「役に立つアイテム!ソウきゅんがいつ戻ってもいいように……」

 

こよりは何も考えていないわけではなかった。こよりが作っていたのはソウゴが使う用の変身ブレス……ソウゴはいつか戻ってくる……それを信じて作っているのだ。

それを理解したヤンマは、フッと笑った。

 

「なんだよ……ちゃんと考えてんじゃねぇか。」

「えへへ……ヤンマきゅんも手伝ってよ!」

「その話、俺も乗ったー!」

 

その時、ガレージの窓が開き、そこからブンドリオが顔を出した。

 

「ブンちゃん!」

「バクアゲなことやってんな!俺が協力すれば作業スピードは2倍だぜ!」

「いや……俺様が入れば3倍だ。」

 

3人は互いに変身ブレスの製作を協力することを誓い、それぞれ手を合わせた。

 

「やるぞ!」

『えい!えい!おーーー!!』

 

さらにその頃、いろはがいつも剣の訓練で訪れている山の中では……

 

「ハッ!」

「ダァッ!」

 

いろはとソウジは木刀を使って稽古をしていた。生身である2人の剣の腕は拮抗していた。

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

いろはが雄叫びとともに突きを繰り出した。しかし、ソウジは逆手に持った木刀で突き出された剣先を絡め取り、空中にいろはの木刀を弾き飛ばした。

 

「!!」

「はっ!」

 

呆気に取られるいろはの脳天に木刀を振り下ろす……が、頭に当たる寸前で手を止めた。

 

「どうしたの、いろはさん。いつもだったらあんな攻撃……」

「拙者……自分を不甲斐なく思っているでござる……」

「えっ?」

 

いろはの言葉にソウジは首を傾げた。

 

「拙者がもっと強ければ……ソウゴ殿を止められたかもしれないのに……何もできなかったでござる……!!」

 

自分に力があれば、ソウゴを止められたかもしれない……そう思うとやりきれない……いろははそう思っていた。

 

「それは……いろはさんが気にすることじゃないと思うよ。」

「でも……!」

「キングなら……」

 

いろはが反論しようとした瞬間、ソウジがそれを遮った。

 

「僕達キョウリュウジャーのリーダー……キングって言うんだけど、そいつならこう言ってるよ。」

 

『お前ばっかが抱え込むなって!俺達みんなの問題だ!みんなで解決しようぜ!』

 

「……って言うと思ってね。だから……いろはさんだけが抱え込む必要ないよ。」

「……ふふっ」

 

ソウジの言葉に、いろはは笑った。

 

「キング殿……デカい男なのでござるな。」

「うん、なんたって僕らのリーダーだからね。」

 

いろはとソウジは互いに笑い合った。ソウジのおかげで、いろはは少しだけ元気を出すことができたのだった……

その頃、ルイの方は買い物へ出ていた。

 

「よし……こんなモンかな。」

「よぉ、お嬢さん。」

 

買い物を終えて帰ろうとしたところに、結城凱が声をかけてきた。

 

「凱くん。」

「覚えててくれたのか……嬉しいねぇ。」

 

名前を覚えてもらったことに気を良くしたのか、「ヒュウ♪」と口笛を吹き、隣を歩き始めた。

歩きながら、凱はルイが手に持っているビニール袋に目を向けた。中に入っていたのはパーティ用料理に使う食材ばかりだった。

 

「なんだこりゃ……パーティでもすんのか?」

「もうすぐクリスマスだからね……その準備。」

「でも、あの鮫山って奴出ていったんだろ?」

 

凱の一言に、ルイの足が止まった。すると、ルイは笑顔でその疑問に答えた。

 

「大丈夫!ソウちゃんは帰ってくるから。」

「なんでそう思うんだよ?」

「ソウちゃんはなんていうか……ラプラスに似てるの。」

 

その言葉に、凱はキョトンと首を傾げた。ルイは笑いながらその続きを話し始めた。

 

「性格とか仕草が似てるとかじゃないけど……なんというか、“心根“とか“芯の部分“が似てるの。」

「なるほどね……でもよ、それが帰ってくることに繋がってんのか?」

「そのへんはまぁ……年の功ってヤツ♪」

 

少し言葉を濁し、ルイは片目を閉じてウィンクをしてみせた。それを見て、凱はまた口笛を吹いた。

 

「へぇ……ますますいい女だ……」

 

さらにその頃、クロヱの方は……前にソウゴが暴走した時に訪れた公園に訪れていた。

 

「ソウくん……」

 

公園のブランコに揺られながら、あの日の騒動を思い返していた。

獣のようになってしまったドンムラサメ……他のヒーロー達が必死に止めようとする中で、何もできず隠れて見るだけだった自分……

 

(なにもできなかった……私、ソウくんに何もしてあげられなかった……!!)

 

そう思うと涙がこぼれ落ちた。それからクロヱは子どものように泣きじゃくってしまった。

すると……

 

「どうしたの?」

 

そこにクロヱを気遣う声が聞こえてきた。振り向くと、そこにいたのは鶴姫だった。

 

「鶴姫さん……」

「隣いい?」

 

鶴姫は了解を聞く前にクロヱの隣のブランコに腰掛けた。

 

「泣いてる理由、当ててみようか?ソウゴくんのことでしょ?」

 

クロヱは何も言わず、コクリと頷いた。

 

「それはそうよね。あんな姿になったんだから……怖かったでしょ。」

「確かに怖かったです……でも……」

「でも?」

 

クロヱは何か言いたげに口をモゴモゴと動かして口ごもった。すると、鶴姫はクロヱの背中を優しく撫でた。まるで「安心して」と言っているようだった。

 

「……本当に怖かったのは、怖がっていたのは……ソウくんだと思うんです。」

「どうして?」

「ソウくん……自分の記憶を取り戻したいって思うのと同時に、記憶を取り戻すのを怖がってる感じがしたんです……たぶん、私達に迷惑をかけたくないって思ってるから……!」

 

その時、クロヱは話しながら、また両目からボロボロと涙をこぼし始めた。

 

「ソウくんは優しいから……!出ていったのだって、私達にこれ以上迷惑かけたくなかったから……!」

 

泣きながら嗚咽し、クロヱは何も言えなくなっていた。ソウゴがholoxから抜けた理由を理解してしまったからこそ、悲しさがこみ上げてきたのだ。

すると、そんなクロヱを慰めるように、鶴姫は背中を撫でた。

 

「……クロヱちゃん。あなたが一番したいことは何?」

「……ソウくんともう一回会いたい。そんでもって……絶対に連れ戻す!」

「そう……だったらやることは決まったじゃない!!」

 

鶴姫は声を上げると、優しく撫でていたクロヱの背中をバシンッ!と強く叩いた。

 

「イッタ……!!はいっ!」

 

やることは決まった……とばかりに、フンッとクロヱは鼻息を荒くした。

次に会った時……その時は必ずソウゴを連れ戻すことを、クロヱは誓ったのだった。

 

 

───────────────────────

 

そのころ、夢の中でソウゴはウォルターと戦いを繰り広げていた。

黒い空間の中で、刀と刀がぶつかり合い、火花が散る。

 

「シャッ!」

「チッ!」

 

両者の実力は拮抗していた……だが、わずかにだがウォルターの方が勝っていた。

2人のわずかな差は……憎しみ。ウォルターには積もりに積もった憎しみがある。その憎しみこそが強さの糧だった。

 

「全てを失え、(ソウゴ)……それが、憎しみだけが……!!」

「俺は!」

 

ウォルターが言い切ろうとした瞬間、ソウゴは腰に携えた鞘を手に取り、逆手持ちしてウォルターの頰を殴った。

 

「俺には憎しみなんて……いらない!!」

 

ソウゴはそのまま刀と鞘の疑似二刀流で攻撃を繰り出した。

ウォルターは攻撃をかわし、刀で防いでいく。するとソウゴは右手に持った刀で突きを繰り出した。

しかし次の瞬間、ウォルターも腰に携えた鞘を手にし、穴が空いている方を突き出した。すると、ソウゴが突き出した刀が、ウォルターの鞘に収まった。

 

「!?」

「お前の手はすでに汚れている……!!今まで、何人の人間を殺してきたと思ってる!」

 

その言葉は正しかった。ソウゴは、ウォルターは実妹のメアリから……否、その前から、秘密警察の構成員として何人もの人間を殺してきた。「ブラックセレナ」のリーダーとなってからも、周りを巻き込んで、大勢を苦しませた。

 

「そんな汚れた手で何ができる?またあの女達の傍にいられると思うのか!?」

 

その通りだ。人をたくさん殺して汚れきった自分を受け入れてもらおうなど、虫が良すぎる……そう思った次の瞬間、

 

「うぬぼれんな、悲劇の主人公ぶりやがって!」

 

ソウゴに向かって怒鳴る声が後ろから響いてきた。振り向くと、そこにいたのは髪をポニーテールに結った中華系の男だった。

 

「ガオ……!」

「俺が組織に入ったのは、自分がいい思いをしたいってだけじゃない……純粋にアンタに惹かれたからだ!その強さと信念にな!」

 

その男は、ブラックサレナで自分の部下だったガオという男だ。すると、ガオに続いて眼鏡をかけたひ弱そうな男が現れた。

 

「グイン……!」

「生きてください……私は、もう若い人達が死ぬのは見たくないんです……!!」

 

その男もガオと同じくウォルターの部下だった男だ。

2人とも、性格や体格は違うがソウゴに……ウォルターに忠誠を誓ってついてきてくれた部下だった。

そして、最後に女性が1人姿を現した。

 

「あ……」

「お兄ちゃん。」

 

その女性は、新しく妹になった女性、自分がそうさせてしまった女性……だがそれでも、自分のことを「兄」と呼んでくれる心優しい妹……

 

「ノエル……」

「私……お兄ちゃんと会えてすごく幸せだったよ。そりゃあ、最初に会った時は怖かったけど……お兄ちゃんは、家を無くした私を救ってくれた。そのおかげで、私は素敵な人達と出会えたんだよ。ガオさんもグインさんも……きっと、お兄ちゃんと出会えて幸せだった……」

 

その言葉に、ソウゴの目から自然と涙がこぼれ落ちた。

自分の人生は確かに血塗られたものだったかもしれない……だが、その中で救われた人間がいた。

自分の人生に意味があった……そう思った瞬間だった。

ふと見ると、3人の姿は消えていた。アレは幻覚だったのかは分からない。だが、それはソウゴを前へと進ませてくれる……

 

「ガオ……グイン……ノエル……!俺は、俺は生きるよ。」

 

ソウゴは誓いを胸に秘めた。だがその時、後ろからウォルターが振るう刃が襲いかかった。

しかし、ソウゴはすぐさま振り返り、白刃取りでその刀を掴み取った。

 

「!?」

「俺は生きる……!!生きて、俺の罪を背負い続ける!!そして……胸を張ってノエルに会いに行く!!」

「そんなこと……できるものか!!」

 

ウォルターは力を込めて刀をそのまま押し込んだ。その力にソウゴは押されそうになるが、なんとか耐える。

 

「生き続けても、所詮お前は人を殺し続ける!!お前の中の凶暴性は、絶対に抗うことはできない!!」

「俺は……!もう誰も……!!もう人を殺さない!!」

 

その叫び声とともに、ソウゴはなんと片手で刃を握りしめた。そして、もう片方の手で手刀を作って振り下ろした。そのまま刀を根元から叩き折った。

 

「!!」

 

折れた刃を、ソウゴは両手で掴み取った。

 

「今こそ呪われた過去を……断ち切るっ!!」

 

手が切れてしまうことも厭わず、ソウゴはそのままウォルターの脳天めがけて刀を振り下ろした。

よける間もなく、ウォルターはその一撃を食らった。カチャン!とウォルターは折れた刀を落とした。

 

「俺の……勝ちだ……」

「……ああ、さすがは(ソウゴ)だ。」

 

ウォルターの顔は笑っていた。まるで憑き物が落ちたようだった。

 

「……お前、消えるのか?」

 

その顔を見て、ソウゴはもう1人の自分は消えてしまうのではないかと邪推した。しかし、ウォルターは首を横に振った。

 

「消えないさ……俺は、ずっとここに居る。」

 

ウォルターは笑ってソウゴの胸を指差した。心の中にいる……ソウゴはそう理解した。

 

「お前という存在が続く限り、俺という存在は消えない。」

 

ウォルターはそう言うと、ソウゴの横を通り過ぎて去ろうとした。

ウォルターはソウゴにとって、罪を映すための鏡だった。ウォルターにとっても、ソウゴは自分を映す鏡だった。

 

「……俺が必要になったらまた呼ぶといい。なんせ俺は……お前だからな。」

「……ああ。ありがとう。」

 

ウォルターは消え去った……否、一つになった。一つの身体に二つの魂を持つ者は、一つに戻った。

それは、ソウゴのこれからの人生を形作るだろう。

 

「目の前が……明るい……」

 

黒い空間の中に、光が差し込んだ……

 

 

 

 

 

「ん……」

「鮫山!」

「おおっ、目を覚ましおったか!」

 

ソウゴは目を覚ました。目の前にはグリムとシャーフーの姿があった。

すると、グリムは慌てた様子でソウゴに掴みかかった。

 

「目が覚めたばっかで悪いけど、ダイダスが……クリスが喧嘩ふっかけてきやがった!」

「なんだと?」

「おまけに……グレイの奴を人質にしやがった!相変わらずコスいことばっか考えやがる……!!」

「どっちにしても……これ以上クリスの思い通りにはさせん……!!」

 

ソウゴは戦いに向かった。三度、クリスと決着をつけるために……

 

 

 

 





ソウゴ「じかーいじかい。俺は俺に戻った……今度こそクリスに引導を渡す……!俺の誓いにかけ……」
ラプラス「なに真面目なこと言ってんだ!」
こより「もっと肩の力抜いて〜!」
いろは「おかえりでござるソウゴ殿〜!」
ルイ「戻ってきたらクリスマスパーティだからね!」
ソウゴ「まったく……騒がしい連中だ……」
クロヱ「最後はみんなで行くよ!せーの!!」

みんな『ドン23話「とこよにリペイント」というお話し!!』

────────────────────

サブタイはテイルズオブジアビスの主題歌「カルマ」から引用しました。

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