ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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ドン25話「ちょこっといやされて」

 

人間の三大欲求……食欲、睡眠欲、性欲……恐らく、この三つの中で一番厄介なのは性欲であろう。

少なくとも、この男はそう感じていた……

 

「あーーー……」

 

グリムは部屋のソファに横たわり、クッションに顔を埋めていた。

 

「ちょっと、邪魔。」

 

ウダウダとソファに寝込むグリムの頭をかなたはペチペチと叩くが、グリムは起きようとしない。

 

「……ロゼッタ……」

「奥さん?もしかして奥さんに会えなくて寂しいとか?愛妻家だね〜、グリ兄は。」

 

かなたはグリムが寝込んでいるのが、奥さんであるロゼッタに会いたいからだと思っていた。もちろん、グリム自身もロゼッタに会いたいとは思っていたが……

 

「それもあるけど……癒しが欲しい……もっとド直球に言ったら……おっぱい……」

「グリ兄最低〜」

「お前……ロゼッタ舐めんなよ?Kカップのおっぱいに高い包容力……最高の女だ。それが……もう何日も触れられねぇ……ああっ……」

 

グリムはクッションに顔を埋めたまま、両手を上に上げて何かを揉むように指を動かした。

すると次の瞬間、グリムは飛び起きて叫んだ。

 

「あーーーっ!!もうロゼッタじゃなくていいからエッロイ姉ちゃんのおっぱい揉みてぇ!!キャラ崩壊とか言われてもいいからボインボインの姉ちゃんに甘えてーよ!!この小説じゃ言えないようなアレとかコレとかしてーーー!!」

 

色々溜まっていたのか、グリムは叫びながらいきなりシャドーボクシングを始めたり、地団駄を踏んだりと、自分でも何をやだているのか分かっていない状態に陥っていた。

そんなグリムを見て、かなたはため息をついた。

 

「もう……しょうがないなぁ、グリ兄は……」

 

かなたは何を思ったのか、上着を脱いで薄着になり始めた。そして、グリムの前で屈んでみせた。

 

「かなたそのおっぱい……使ってもいいよ♡」

「あー、もうそのテの店に行くかぁ……」

 

かなたはウィンクをしてみせたが、グリムは無視して出かける準備を始めた。それに対し、かなたはグリムの脳天に拳を叩きつけた。

 

「おぉいっ!!無視すんな人妻フェチ!!」

「イッテ!!誰がお前のまな板触るか!!」

 

かなたの胸は誰がどう見ても小さく、まな板レベルだった。グリムの好みのサイズではなかったため、グリムは声を上げて拒否するが、それを気に入らないかなたはバシバシと頭を殴る。

 

「んもうっ!勝手にしたら!?」

「言われなくても勝手にするっての!!」

 

結局、グリムは頭が血だらけになるまで殴られた後、ようやく外に出ることができた。

 

「……ったく、かなたその奴……めちゃくちゃ殴りやがって……」

(つーか、かなたそは分かってねぇんだよ。男の性欲ってのを……食欲や睡眠と違って腹が満たせりゃいい、寝れればいいってわけじゃねぇんだよ……)

 

グリムはブツブツと文句を言いながら街を歩き、「そのテの店」に向かっていた。しかし、出血のせいか頭が朦朧としていた。

 

(やべっ、なんかフラフラするな……)

 

一瞬、前のめりに倒れそうになったその瞬間、通りがかった女性が倒れそうなグリムを支えた。

 

「大丈夫?」

「ああ……悪い。ちょっとふら、つい…て……」

 

その女性を見た瞬間、グリムは固まった。

腰まで伸びたきれいな金髪、頭には悪魔のような角、白衣に胸元が大きく空いたシャツ、タイトスカートにガーターベルト、胸元にはハートに羽のついたタトゥー……そしてたわわに実った立派なもの……

グリムは一目で、その女性に心を奪われた。

 

(マブい……)

「大変……血が出てるじゃない…!すぐ近くに、私が診療所代わりに使ってるとこあるから、そこに行きましょう。いい?」

「おっぱい!あ、違う!おねがいします!!」

 

グリムは変なことを口走りながらも返事をし、そのまま女性に連れられていった。

 

─────────────────────

 

「……よし、これでいい。」

 

古びた診療所でグリムは女性から治療を受けていた。治療の間、グリムはチラッ、チラッと女性の大きく開いた胸元を凝視していた。

 

「あ、ありがとう……お、俺……グリムっていうんだ。」

「私は癒月ちょこ。みんなは『ちょこ先生』って呼んでるわ。」

「ちょこせんせー……」

 

ちょこに見惚れていると、ちょこはプラスチックのボトルに入った錠剤を差し出した。

 

「これ、市販の痛み止めね。あくまで応急処置だから、ちゃんと病院行かないとダメよ?」

「だ、大丈夫!俺、回復力高いから……こんなの3日で治っちまうよ!」

 

そう言うと、ちょこはクスクスと笑い始めた。

 

「そんなわけないでしょ。バカなこと言わないで病院行きなさい。」

「へ、平気だって!じ、じゃあ、もし3日で治ったら……お、俺とデートしてくれ!!」

 

グリムは思わず口走ってしまった。自分でもいきなり何を言ってるのか理解できなかった。対し、ちょこはキョトンと目を丸くしていた……かと思うとすぐに笑い始めた。

 

「あははっ!あなた……何歳?」

 

ちょこはその場から立ち上がるとグリムに近づき……右手の人差し指でグリムの首元につけ、そのままツツツ……と顎の方に移動させていく。

 

「へっ!?あ、あっ……!」

 

首元と顎に来るくすぐったさに戸惑ったが、グリムは声を振り絞る。

 

「は、20歳(ハタチ)ッス……!!」

「じゃあ、もう大人ね。なのに……まだまだ坊やなのね。」

 

ちょこはクスリと笑い、グリムの耳元に顔を近づける……

 

「かわいい♡」

「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!?」

 

耳元に囁かれた瞬間、天国に昇るような感覚を味わった。その時には、グリムはちょこに骨抜きになっていた。

 

「じゃあ、3日後にまた来てね。でも、約束破ったら……デートはお•あ•ず•け♡」

「は、はーい……ちょこてんて〜♡」

 

すっかりちょこの虜になったグリムは、診療所を出た後、すぐさま自宅へ戻った。

 

「あ、おかえりー」

「……かなたそ、回復力高めてくれる食べ物教えてくれ!!」

「は?」

 

それから3日間、グリムは傷の治療に努めた。自然治癒力を高めてくれる食べ物を食べまくり、朝•昼•晩にエナジードリンクを10本飲み、そして寝まくり……そのおかげでグリムの頭の傷はほとんど完治した。

元々、回復力は高い方なのでそれがさらに高まった結果といえよう。

 

「よし……いくか!」

(そんで、ちょこせんせーと……ムフフッ……)

 

よからぬ妄想をしながら、今にもスキップしそうな足取りでちょこがいる診療所へ向かった。

 

「ちょこせんせー!!頭治ったー!!」

「え、ホントに!?」

 

診療所に顔を出したグリムに思わず驚いたちょこ。しかし、すぐにフッと笑い、グリムの頭に手を置いた。

 

「フフッ……約束したもんね。いいわ、デートしてあげる♪えらいえらい♪」

「ん“んっ……!!こ、子ども扱いしないでくれ……」

 

頭を撫でられたことにグリムは口では恥ずかしがりながらも、内心喜んでいた。

 

「じゃ、行こっか!」

「お、おう!」

 

そして2人は待ちに待ったデートのため、街へと向かった。

 

───────────────────────

 

「はーい、お待たせ!」

 

街へ繰り出した2人は買い物をしたり、ゲームセンターで遊んだり、一緒にカラオケにも行った。

その後2人は近くのキッチンカーでチュロスを買い、食べながら歩くことに。

 

「おっ、美味そう。いただきま……」

 

チュロスを食べようとした瞬間、グリムは腕に何か柔らかい感触が走るのを感じた。

 

(こ、この感触は……!?)

 

恐る恐る腕を見てみると……なんと、ちょこがグリムの腕にしがみついていたのだ。それによって胸が腕に当たっていた。

 

「ち、ちょこてんてー……?」

「デートなんだからこれぐらいは……ね?」

(こ、小悪魔……でも、いい……!!)

 

腕に当たる胸の感触とちょこの小悪魔な一面にグリムは興奮していた。

 

「この後お昼食べに行かない?オススメの定食屋があるの。」

「定食屋?」

 

ちょこの言葉に、興奮気味だったグリムは声を上げた。ちょこのイメージとは少し違うような気がしたからだ。どちらかと言えばオシャレな喫茶店のイメージがある。

ちょこはグリムの腕を引いて、行きつけの定食屋へと連れて行った。

 

「ここは……」

 

たどり着いた定食屋は、「もりもり屋」といういたって普通の、絵に描いたような店だった。「大盛り無料!」ののぼりが目立つぐらいだ。

グリムはちょこに手を引かれて恐る恐る中へ入っていった。

 

「いらっしゃい!おっ、ちょこ先生!また来てくれたのかい!」

「こんにちは〜、店長!」

「いや〜、相変わらず美人だねぇ!小鉢サービスしちゃおうかな。」

 

席に座ると店長は笑顔で2人に水を差し出した。

 

「今日は何にする?」

「そうね……からあげ定食のレディースサイズにしようかな!それとウーロン茶も。」

「あいよ!そっちの兄ちゃんは?」

 

さっそく注文を決めたちょこをよそに、グリムはメニューを見て吟味し……

 

「えーっと……じゃあ、オムライス大盛り!」

「あいよ!」

 

店長は元気良く返事をすると店の奥の厨房に消えた。料理を待つ間、グリムは改めてメニューを見た。

 

「ここ、すげぇ安いな……定食全部500円じゃん。それで大盛り無料……」

 

メニューを見ると、定食は全て500円、丼物やカレーなどは600円だった。

 

「こんなに安くて採算取れんのか……?」

 

グリムはその安さに思わず首を傾げた。それを不思議そうに見るちょこの視線に気づき、グリムは声を上げた。

 

「俺の友達、喫茶店やっててさ……俺、そこで働いてたんだ。そいつから店の経営とか教わってんだ。原価率とか、利益率とか……」

 

元の世界ではグリムは喫茶店の店員……その喫茶店の店長であり、友人である男からグリム経営のノウハウを学んでいる。

それを説明している間、店長が戻ってきた。

 

「はい、からあげ定食のレディースサイズとウーロン茶!おまちどうさま!」

 

店長の一声とともに料理がテーブルに置かれた。運ばれてきた料理はレディースサイズとは名ばかりで、普通に2人前はありそうな量だった。

 

「こ、これでレディース!?普通のサイズより多くねえか!?」

「先食べてるね、いただきます♪」

 

ちょこは手を合わせて一礼し、定食を食べ始めた。その量に臆することなくパクパクと食べ進めていく。

 

(ちょこせんせー、意外と大食い……?)

「はい、オムライス大盛りおまちどう!」

 

続けてグリムが注文した料理が運ばれてきた……が、グリムはその量に目を見開いた。

 

「なんだこの量!?枕!?」

 

そのオムライスの大きさは枕か何かと見間違えるほど大きかった。見た目だけで判断すると4、5人分くらいはありそうだった。

 

「これで500円で大盛り無料だろ……?おっさん、採算取れんのかよ?」

 

グリムがこぼした一言に、店長は笑い始めた。

 

「はははっ、採算なんて取れないよ!毎日赤字だよ!明日はどうなってるかわからんねぇ!」

「えっ!?じゃあ、なんでこんな大安売りを……」

「そりゃあ、みんなに腹いっぱいになって欲しいからさ!」

 

笑顔で店長がそう言うと、グリムは目を丸くした。すると、店長が語り始めた。

 

「俺、昔貧乏でねぇ……ガキのころはいつも腹を空かしてたんだ。今の時代、そういうガキや若者はいっぱいいるだろ?俺は今の若者に、昔の俺みたいに腹空かしてほしくないんだよ。だから少しくらい生活苦しくても、安い値段で腹いっぱいになって欲しいんだよ。」

 

店長の語るその言葉に、グリムは胸をキュッと締めつけられそうだった。

そして、思わず呟いた。

 

「……俺と同じだ。」

「え?」

「いや……俺もガキのころ貧乏でさ……いつも腹空かしてた。でも、俺の親代わりになってくれた人や、仲間が俺を腹いっぱいにしてくれた。だから、その恩返しじゃねぇけど……俺も誰かを腹いっぱいにしてやりたいって思ってる。それが俺の夢だ……」

 

誰かを腹いっぱいにする……それがグリムの夢。それを聞くと店長はニコッと笑った。

 

「そうか……じゃあ俺は、兄ちゃんの夢の先輩ってワケだ。」

「へへっ、かもな。」

 

自分と同じ夢を持つ人間がいる……その事実にグリムは嬉しくなり、目の前にあるオムライスを頬張り始めた。

 

「う〜〜んウマッ!!」

「ははっ、いっぱい食べな!」

 

オムライスの味は格別に美味かった。チキンライスのケチャップの混ざり具合、具の味付け、玉子の焼き具合……どれも格別で、店長の腕の良さが伺える。

しかし、美味いのは店長の腕だけではなかった。それは、夢を持つ者だけが持つ、特別なスパイスというべきか……

グリムがオムライスを味わっていると、他の席から声が聞こえてきた。

 

「おいっ!一味足りねぇぞ!!後、ソースも!」

「ああ、はいはい。」

 

小太りの男が怒鳴り声を上げるが、店長は動じることなく新しい一味とソースを持って男に手渡した。

 

「お客さん、そんなにかけたら身体に悪いよ。」

「うるせえ!どんな風に食おうが勝手だろ!」

 

小太りの男はトンカツを食べていたが、その食べ方が奇妙だった。ソースをトンカツが見えなくなるほどジャブジャブかけ、さらにその上に一味唐辛子をこれでもかというほどかけていた。

その異様さに周りの客もドン引きしていた。

 

「うわっ、何アレ……」

「きもっ……」

 

小太り男の食べ方を見て、周りの客はドン引きするだけでなく、食欲が減退していたようだ。

すると、

 

「あーあ、きったねえなぁ。飯がまずくなるよ。」

 

周りに聞こえるような声で、グリムが声を上げた。その一声に小太り男は怒りを滲ませて顔を向けた。

 

「おいっ、なんか言ったか!?」

「汚ねぇって言ったんだよ、ボケが!」

 

グリムと小太り男……両者は大声とともに立ち上がり、お互いに睨み合った。

それを見て、慌てて店長とちょこが止めに入った。

 

「ちょっとグリムくん!」

「お、お客さん!揉め事は……!」

 

止めに入る2人を無視し、グリムは小太り男に向かって叫んだ。

 

「てめぇ……親父さんが作った料理、そんな風にしていいと思ってんのか!?そんなにソースやら一味やらかけやがって!!」

「俺は濃い味が好きなんだよ!!そうだ、もっと……!もっと濃い味をぉぉぉぉぉぉ!!」

 

次の瞬間、小太り男は光に包まれ、姿が変わり始めた。プリズムをイメージした菱形の鎧を纏った鬼「超新星鬼」に変わった。

 

「鬼になりやがったか……!」

「味濃いもの……!ソース!醤油!塩コショウ〜〜〜!!」

 

超新星鬼はソースまみれになったトンカツをまるで犬のように貪り食う。それが終わると、今度は近くにいた客が食べていた生姜焼きに手を伸ばそうとした。

 

「いい加減にしやがれ!」

 

その瞬間、グリムは超新星鬼の胸ぐらを掴み、そのまま持ち上げた。

 

「ドア開けろ!!」

 

グリムの叫びに、店長は慌てて店のドアを開けた。開かれたドアに向かってグリムは持ち上げた超新星鬼を投げ飛ばし、外へと追い出した。

 

「スピリットオン!」

 

グリムも外に出ると同時にスピリットレンジャー•エレファントレンジャーへと変身し、鎖付きハンマーを片手に追い出された超新星鬼に殴りかかった。

 

「チィッ!くらえ!」

 

超新星鬼は目から光線を放つが、エレファントレンジャーはハンマーでそれを弾き飛ばし、顔面に一発、ハンマーを食らわせた。

 

「ぐえっ!!」

「まだまだ!」

 

ハンマーの根元を持ち、そのままグローブのように扱って超新星鬼の顔面にガンガン叩きつける。

 

「せっかくの料理を台無しにするその腐った性根……同じ飲食店の従業員として、叩き直してやるぜ!!」

「そ、そんなの客の自由だろ!注文した料理をどうしようが……!!」

「うるせえっ!!」

 

超新星鬼が何か言おうとしたが、エレファントレンジャーはそれより大きな声で遮った。

 

「この店の料理は、店長の夢が詰まってんだ!!てめぇのやってることは、それを貶めてんだよ!!」

「ぐぬっ……」

「俺は、人の夢を守る……その手始めに、てめぇをぶっ飛ばす!!」

 

叫んだエレファントレンジャーは、ギアを水色の物に変更し、回転させる。

 

「スピリットチェンジ!!」

 

エレファントレンジャーはシャークレンジャーへと変わり、2本の剣を抜いた。

 

「料理の技術、見せてやるよ!」

 

2本の剣を手に、シャークレンジャーは超新星鬼の懐に入り込んだ。

 

「桂剥きぃ!!」

 

目にも止まらぬ速さで剣を振るい、超新星鬼のプリズムのような菱形の鎧を切り刻み、剥がしていく。

 

「みじん切り!アタタタタタタタッ!!」

 

鎧が剥がれたところを、剣で小刻みに振るって身体をきざむ。そして、ハイキックを繰り出して超新星鬼を空中に蹴り上げる。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!?」

「トドメ……!」

 

シャークレンジャーは2本の剣の1本を超新星鬼に向けて投げ、突き刺した。

剣が刺さったと同時に空中へ跳び上がった。

 

「十字斬り!!」

 

もう一本の剣に水色のオーラを纏い、そのまま真っ二つに切り裂き、さらに刺さった剣を掴んで横に一閃して十字に斬り裂いた。

 

「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁ……!!」

「調理……完了!」

 

超新星鬼は断末魔を上げ、爆発した。シャークレンジャーは地面に着地してその爆発を背にした。

 

 

───────────────────────

 

「いや〜、ありがとうねお兄ちゃん!」

「いいってことよ。オムライス美味かったよ。また食いに来るからな!」

「お兄ちゃんには超大盛り、用意しておくよ!」

 

すっかり店長と仲良くなったグリムは、ちょこと一緒に店を後にした。

 

「……ちょこせんせー、悪いな。俺の正体隠してて……」

 

帰る道中、グリムは自分がスピリットレンジャーであることを隠していたことをちょこに謝った。しかし、ちょこは首を横に振った。

 

「ううん、いいの。それに、さっきのグリムくんカッコよかったよ。それに……素の状態の君を見れた気がしたし。」

「えっ?それってどういう……」

 

グリムは声を上げた。すると、ちょこはグリムの耳元に顔を近づけ、耳打ちを始めた。

 

(グリムくん……最初に会った時、ちょこのおっぱいチラチラ見てたでしょ。)

(え“っ!?)

 

その瞬間、顔が真っ赤になるのと同時にサーッと血の気が引くのを感じた。まさか、バレていたとは夢にも思わなかった。

するとちょこはフッとため息を吐いた。

 

「それからのグリムくんって、私に気に入られようとしてるのが見え見えだったの。グリムくん自身は気づいてないでしょうけど。」

「ち、ちょわぁぁぁ……!!」

 

恥ずかしさのあまりグリムは変な声を上げた。もう穴があったら入りたい気分だった。

しかし、ちょこは笑った。

 

「でも、さっきのグリムくんは素の状態で、すごくよかったよ。夢を持ったグリムくんと、夢を守ろうとするグリムくん……どっちも素敵だったよ。」

「………」

 

グリムは思わず無言になった。しかしすぐに照れくさそうに笑い始めた。

 

「へへっ……試されてたってことか。それで?ちょこせんせーから見て、俺はどうだ?」

「うーん……後10年したらタイプかも♪」

「へっ……いい女だな、ちょこせんせー。」

 

グリムはフッと笑い、ちょこに手を振って別れようとした。しかし、ちょこは突然グリムの手をつかんだ。

 

「待って!」

「へっ?」

「カッコよかったから……ご褒美あげちゃおうかな♪」

「ご褒美?それって、なん……」

 

次の瞬間、ちょこはグリムをグイッと引っ張り、

 

「ギュ〜〜〜〜ッ♡」

「むぐっ!?」

 

ちょこはグリムを抱きしめ、その豊満な胸に顔を押しつけた。グリムの顔面に柔らかい感触が走った。

しかし、その幸せな瞬間はすぐに終わった。ちょこはグリムを抱きしめるのをやめてすぐに離れた。

 

「おっ……♡お……♡」

 

一瞬だったとはいえ、グリムはちょこの胸の感触に酔いしれ、口からヨダレが垂れていた。そんなグリムを見て、ちょこはクスクス笑っていた。

 

「ちょっと刺激強すぎた?それから……これ。」

 

ちょこは谷間に指を入れると、そこから1枚の紙切れを取り出し、グリムのコートのポケットに入れた。

 

「私、ASMRの配信やってるの。メモにURL書いてるから……聞きたくなったら聞きにきてね♡」

「は〜い……♡ちょこてんて〜♡」

 

─────────────────────

 

その後……

 

「おっ、おおっ……♡」

 

グリムはパソコンでメモに書かれたURLを検索し、ちょこのASMRを聞いていた。

 

「すげぇ……ファンの奴ら、いつもこれ聞いてんのか……メンバーシップ入ろうかな……へ、へへへ……♡」

 

グリムはすっかりちょこのファンになってしまい、チャンネル登録までしてしまったようだ。

それを見て、かなたは引き気味になっていた。

 

「もう〜、すっかりちょこ先生に骨抜きになっちゃって……あれ、そういえば……」

 

かなたはあることを思い出し、押し入れを開けた。その下の段に入っていたのは銀色のアタッシュケースだった。

それを開けると、中に入っていたのはガラケーとベルトらしきもの……

 

「これ、グリ兄のだよね……聞きたいけど……」

 

かなたはチラッとグリムの方を見て、聞こうか迷ったが……デレデレするグリムに顔をしかめた。

 

「……キモいからやめよ。」

 

かなたはボソッと呟いて再び押し入れの中にしまった。

 

 

 

 

 

 




おまけ「その後の連絡」

ちょこの動画を堪能していたグリムのケータイに着信が入った。

「なんだよ、今いいとこなのに……はい、もしもし。」

ブツブツ文句を言いながら、グリムは動画を止めて電話に出た。

『ダーリン〜〜〜♡久しぶり〜〜〜♡』
「ロゼッタ!?」
『やぁん♡ダーリンの声聞きたくてぇ♡電話しちゃった〜〜♡』

電話をかけてきたのは、元の世界に置いてきたグリムの妻、ロゼッタだった。ロゼッタは甘えるような声でグリムに話しかける。

「なんだよ、寂しかったのか?」
『寂しいよ〜〜!タスクちゃんが傍にいるけどぉ、やっぱりダーリンとイチャイチャできないと寂しい〜♡』
「俺も……ロゼッタと離れ離れで……寂しいよ。」

すると、グリムはロゼッタの耳元に囁くような甘い声を出した。するとロゼッタは甲高い声を上げた。

『キャーーーーッ♡♡♡ダーリン好き好き好き好き〜〜〜〜♡♡♡』
「子どもが生まれても変わんねぇなぁ……お前は。」

変わらない自分の嫁に、グリムは笑い声を上げた。同時に脳裏にちょこの姿とそれにデレデレする自分の姿がよぎり、冷や汗をかいた。
もし、このことがバレたらロゼッタはなんと言うか……

(ロゼッタ……このことは墓まで持っていくからな!!)

────────────────────────

グレイ「じかーいじかい……音楽……それは誰かの心を癒すもの……誰にでも必ず心に響く音楽がある……俺にもある……だが、その曲を引ける者はいない……誰が俺を癒してくれる……?ドン26話『ハートフルみゅーじっく』というお話し……」


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