ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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ドン26話「ハートフルみゅーじっく」

 

夜の街を彩るネオン街……その一角にある小さなバー。そのバーに2人の男がいた。

 

「おまたせしました。」

 

マスターが差し出したカクテルを、2人はグイッ一飲みし、フッと一息ついた。

 

「まさか、お前とサシで飲む日が来るとはな……結城凱。」

「今の生活も悪いモンじゃないだろ?グレイ。」

 

結城凱とグレイ……かつては敵同士だった2人だが、今は共に酒を飲み合う仲……

グレイにとってこの時間は、とても大切なものだった。

 

「バイラムにいたときは想像もつかなかった……」

 

グレイは以前、「バイラム」という地球侵略を狙う悪の組織に属していた。

しかし、凱とその仲間……ジェットマンによってバイラムは滅び、グレイも凱に倒された。

 

「人生、何が起きるか分かんねぇな……竜と香なんて、結婚したからな……」

「レッドホークとホワイトスワンか。お前の方こそ、戦いの後はどうしたんだ?」

 

グレイがそう聞くと、凱は途端に口ごもった。

 

「俺は、まぁ……色々な……」

「そうか。」

 

グレイは特に追求しなかった。今はただ、この時間を楽しもうと思った。

もう組織もない、自由の身……自由気ままに生きてもいいだろう。しかし、グレイは何かが足りない、と感じていた。

その時、グレイの脳裏に白い様相の女性が浮かぶ。

 

(マリア……)

 

かつて、グレイには愛する女性がいた。マリアという、自分と同じバイラムの幹部だ。

しかし、マリアは殺されてしまった。そして、マリアは他の男を愛していた……

 

(今さら何を考えている……未練が残っているのか……?俺に……)

 

もう未練はないはず……と思っていたが、まだ残っていたことにグレイは自分を恥じた。

同時に、脳裏に浮かぶのはピアノを演奏するマリアの姿……できることなら、あの音色をもう一度聞きたい……

 

(……マリアはもういないんだ。諦めろ……)

 

なんとか諦めようと、グレイは首を横に振った。

その時、後ろの席から会話と……音色が聞こえてきた。

チラリと顔を向けると、テーブル席にカップルが座っている。カップルはスマホの動画を見ているようだ。

 

「んなたんカワイイ〜♪」

「カワイイ上に、エレクトーンの演奏も上手いんだよな〜」

(エレクトーン……)

 

どうやらカップルはエレクトーンの動画を見ているらしい。耳に入ってくる音色は心地よく、どこか安心を覚えるものだった。

グレイは思った。こんな音色を奏でられる者なら、マリアの演奏も再現できるのではないかと。

 

「そういえば、ルーナ姫ボディガード募集してんだって。」

「へぇ、リアルルーナイトでも探してんのかな。」

(ボディガード……)

 

その言葉を聞いたグレイは立ち上がり、会話をしているカップルにズカズカに近づいた。

 

「お、おい!グレイ!」

「キャッ!?」

「な、なんだよ!?」

「そのボディガードの話……詳しく聞かせろ。」

 

───────────────────────

 

グレイはボディガードの募集に応募することにした。

後日、試験会場であるとあるオフィスビルの会議室を訪れた。

 

(結構来ているのだな……)

 

応募したのは約20人ほど。普通にスーツを着た者もいれば、レスラー風の男や分厚い鎧を身に纏ったいかにも戦士といった者もいた。

時刻が10時を回った瞬間、試験会場にOL風の試験官が入ってきた。

 

「皆様、おまたせしました。これより姫森ルーナのボディガード選抜試験を開始いたします。まず最初に姫森ルーナからご挨拶を……」

 

淡々とした口調の試験官はそう言いながら、壁のスイッチをポチッと押した。すると、床の一部に穴が空き、その下からせり上がりでピンク髪の、姫のような様相の少女が姿を現した。

 

「んな〜〜〜〜!姫森ルーナなのら〜〜〜!!」

『んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!姫ェェェェェェェェェェ!!!』

 

ルーナが現れた瞬間、グレイ以外の受験者が大声を上げ始めた。

 

「んなた〜〜ん♡相変わらずカワイイのら〜〜〜♡♡♡」

 

OL風の試験官さえ、ルーナが現れた瞬間にメロメロになっていた。

グレイはその光景を異様に感じていた。

 

(こいつら全員、この女のファンだったのか……?こんな屈強な男達を虜にするとは……)

 

ルーナの魅力に取り憑かれた受験者……もといファン達を見ていると、ファン達は声を上げ始めた。

 

「ん、んなたん!俺、ルーナイト歴2年です!」

「それがどうした!俺なんて3年だぞ!」

「ぼ、僕なんてデビューして間もなくルーナイトになってるもんねー!!」

 

ファン達は自分がどれだけルーナの追っかけをしてきたかを自慢していた。

すると、ルーナはグレイのことを見つけ、指を差してきた。

 

「そこの人はルーナイト歴何年なのら〜?」

「……0年だ。そもそも、俺はお前のことをよく知らん。」

 

グレイのその一言にルーナはキョトンと目を丸くした。それと同時にファン達が声を上げた。

 

「はぁっ!?ルーナイトでもないのにこの試験受けに来てんのか!?」

「どういうつもりだテメェ!?金目当てだろ!!」

 

グレイに向かって罵詈雑言を浴びせてくるファン達。小うるさくて堪らないと思ったグレイは、少し黙らせてやろうと銃を構えようとした。

しかし、

 

「みんなそんなすぐプッチンプリンしちゃダメなのら!カルシウムが足りてねぇのら〜!」

「で、でもんなたん……」

「これからルーナのこと知ってもらえればいいのら〜!」

「確かに……姫の言う通りだ!」

 

ルーナの言い分に、皆は納得したように頷きグレイのことを受け入れ始めた。

 

「すまなかったな、新参者。」

「これから立派なルーナイトになれよ!」

「……ああ。」

 

有無を言わさぬ雰囲気に、グレイは何も言えなかった。揉め事にするのも面倒だったので、その場は触れないことにした。

その後、試験官は受験者達を椅子に座らせ、説明に入った。

 

「実は最近……みんなのカワイイカワイイんなたん♡がストーカーの被害に遭っていまして……」

『な、なんだってー!!?』

「犯人は分かっています。『パタパタン』というハンドルネームの男です。我々と同じルーナイトでしたが……ある日を境に厄介ファンになりまして……」

「その厄介ファンを始末するのがボディガードの役割か。」

 

グレイがそう言うと、試験官は首を横に振った。

 

「そんなことをしたら、捕まるのは我々です。ボディガードの役目は、命に代えてもんなたんを守ることです。それが試験です。」

「どういうことだ。」

「これからんなたんは某有名お菓子メーカーの新作お菓子の食レポをしに行きます。恐らくパタパタンはそこを狙ってくるでしょう。そこで試験を行います。」

 

試験官は眼鏡をキラリと光らせ、高らかに叫んだ。

 

「試験内容は、食レポが終わるまでにルーナ姫を守り抜くこと!それだけです!その中で一番ボディガードにふさわしい人を、ルーナ姫が判断します!」

「みんな、ルーナを守って欲しいのら〜〜〜!!」

『御意っ!!!』

 

───────────────────────

 

その後、ルーナと試験官、受験者達は某お菓子メーカーへ向かった。

 

「おまたせしました、こちら新作の……抹茶ババロア餅です!」

「うわぁ、美味しそうなのら〜♡いただきまーす!」

 

出されたお菓子に目を輝かせ、ルーナは美味しそうにお菓子を食べ始めた。

その間、受験者達は物陰に隠れていた。いざという時に備えるために。

 

「あっ!あれルーナ姫じゃない!?」

「本当だ!カワイイ〜♡」

 

食レポは外で行われていた。そのため、何人か野次馬が集まってきた。

 

「はいはい、下がってくださーい!」

 

ボディガードとは別に、会社が用意したガードマンが何人かついていた。そのガードマン達は野次馬達を通せんぼした。しかし……

 

「んなたーんっ!!」

 

野次馬の中に、眼鏡をかけた小太りの男がお菓子を食べているルーナに向かって叫びまくった。

 

「コラ、アンタ!離れて!」

「うるさい!んなたんは……俺と結婚するんだーーー!!」

 

その時、小太り男の身体が光に包まれた。小太り男は巨大な鳥の頭部の骨とカラスが寄せ集まった様な黒い翼を持つ鬼、「鳥人鬼」へと姿を変えた。

鳥人鬼が現れた瞬間、野次馬もガードマンも恐れおののき、腰を抜かした。

 

「んなた〜〜〜ん!今行くよ〜〜〜!!」

 

鳥人鬼は両腕の翼を広げて大空へ舞い、そのままルーナに向かって一直線に突っ込んだ。

 

「させるか!」

「姫は俺達が守る!!」

 

受験者達はファンとしてルーナを守るために立ち塞がった。しかし、鳥人鬼の素早い突進には敵わず、逆に吹き飛ばされてしまう。

 

『うわぁっ!?』

「俺は無敵だ〜〜〜!!今いくよ姫〜〜〜!!」

「んなぁ〜〜〜!!?」

 

鳥人鬼はまっすぐルーナに向かって飛んでいった。しかし次の瞬間、ガキンッ!という金属音が響いた。

 

「あっ……!?」

「お、お前なんだ……!?」

「俺は……グレイ。」

 

鳥人鬼がルーナに直行した瞬間、グレイが盾になりルーナを守ったのだ。

グレイは鳥人鬼の顔面を掴むと、そのまま上に持ち上げる。

 

「ががががが……!!」

「フンッ!」

 

手を離すと同時にもう片方の手で拳を作り、鳥人鬼に叩きつけて殴り飛ばした。

さらに右腕についたマルチショットガン「ハンドグレイザー」を向け、乱射した。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!?」

「逃さん……」

 

グレイは銃弾を浴びせながら突進し、間合いに入った瞬間に拳を叩きつける。さらに何度も拳をガンガンと叩きつけ、最後に回し蹴りで蹴り飛ばした。

 

「くそっ……!ころころタマゴ爆弾!」

 

鳥人鬼はもう一度宙を舞い、空からタマゴ型の爆弾を投下し始めた。数は大量……もう見境などしないようだ。

 

「ターゲット……ロック」

 

グレイは右腕のハンドグレイザー、背中に背負った重火器「グレイキャノン」を左手に構えた。

ピピピピ……とグレイの目がタマゴ爆弾に狙いを定める。

 

「……こういう時、技名を言うんだったか……ならば、マズルラッシュ!」

 

その時グレイは、かつての敵ジェットマンが自分達の装備や技名を叫んでいたことを思い出し、それに習って自分も叫び、銃を一斉掃射した。

放たれた大量の弾丸は落ちてくるタマゴ爆弾に向かって飛んでいき、爆弾は一つ残らず空中で爆発した。

 

「バ、バカな!?とりあえず逃げないと……!!」

「どこへ逃げても無駄だ……」

 

逃げる鳥人鬼に対し、グレイはボソッと呟きさきほど使った物とは違う銃弾を取り出し、グレイキャノンに装填した。

 

「……ホークスナイプ!」

 

銃を両手で構え、鳥人鬼に狙い……一気に引き金を引いた。放たれた弾丸は獲物を狙う鷹の如く、鳥人鬼を狙い……一気に胸を貫いた。

 

「!!」

「後は……警察に任せるか。」

 

静かに呟きながら、銃を背中に背負い背を向ける。すると背後で爆発が起き、鳥人鬼は地面に墜落した。墜落と同時に元の姿に戻った小太り男……厄介ファンのパタパタンは気絶した。

倒れたパタパタンにガードマンが集まり、警察が呼ばれたが、グレイはそれを無視し、ルーナの元へ歩み寄った。

 

「もう、大丈夫だ……」

 

ルーナは怖かったのか腰を抜かして尻もちをついていた。そんなルーナを安心させようと、グレイは彼女を抱き上げた。

 

「……名前、なんなのら?」

「グレイだ。」

「グレイ……合格なのらっ!」

 

そう言って、ルーナは笑顔を浮かべながらグレイにギュッと抱きついた。

それを見た他のファン達は項垂れていた。試験に合格できなかった悔しさもあるが……

 

「ううっ、ルーナ姫ぇ……」

「あんなの見せられたら、勝てねぇ……」

 

グレイがルーナに抱きつかれていることに一番ショックを受けているようだった。

 

「今日からルーナのボディガードなのら♪」

「ああ……だが、その前に頼みがある。」

 

──────────────────────

 

「本当にルーナでいいのら?」

「ああ……かまわない。」

 

その後、グレイはルーナにエレクトーンの演奏を頼んだ。曲はもちろん、マリアが弾いていたあの曲だった。

グレイはこんなことがあろうかと、楽譜を書いて取っていた。

 

「もう一回言うのらけど、ピアノとエレクトーンじゃ音が違うのら。」

「……それでもいい。」

 

そのグレイの願いを聞き、楽譜を開いてルーナは演奏を始めた。

ルーナの言う通りピアノとエレクトーンでは細かい音が違う。完全再現とは行かなかった。だが、今のグレイはそれでも満足できた。

 

(……マリア……)

 

その時、ツーッ……と目から一滴の水滴がこぼれ落ちた。

中の燃料が漏れたのか、それとも………

 

それから、グレイは姫森ルーナのボディガードとして働くことになったのだとか……

 

 

 

 

 




おまけ「刺さる」

「まさか、3人で飲む日が来るとはな……」

グリム、凱、グレイの3人は近所のスナックで飲んでいた。すると、後ろの方から歌声が聞こえてきた。見ると、他の客がカラオケマシンで歌を歌っていた。

「ここ、カラオケ出来んのか……俺、歌おっと!」

グリムはそう言うと、その客と交代してカラオケを歌い始めた。

「曲は……これにするか。『しあわせならいいや』!」

幸せならいいのさ かまわねえさ
苦しみよぅ 憎しみよぅ ドンと来い!
幸せなら 幸せなら 幸せならいいさ
だからねぇ その涙拭きなよ

幸せならいいのさ かまわねえさ
せっかくのベッピンが 台無しさ
幸せなら 幸せなら 俺はかまわねえ!
何度だって何にだって 祈ろう

「………なんか、歌詞が刺さるんだけど。」
「……奇遇だな、俺もだ。」

グリムが歌う歌の歌詞が、なぜだか自分の心に突き刺さった気分を味わった凱とグレイだった。その後、グリムも改めて歌詞を見直し、2人と同様歌詞が心に刺さったらしい。

───────────────────────

ソウゴ「じかーいじかい……転機というものは誰にでも訪れる。ホロックスにもそんな転機が……なに?カバンを無くした女?よく分からんが、手伝ってやろう!ドン27話『ぶれいぶにゅーわーるど』というお話し。」


──────────────────────

おまけの歌詞は龍が如く極2の楽曲から。
「この曲合うんじゃない?」とメールをいただいたので……


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