ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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ソウゴ「前回までのあらすじ。ホロックスの総帥はラプラスという子どもだった。それだけでも意味がわからんのに、オマケに変な怪物まで出てきた……何もかも分からんが、とにかくまずは、これからどうするかだな……」




ドン3話「タカネのかんぶ」

この物語は、秘密結社ホロックスの世界征服立志伝!

ホロックスの新人、沙花叉クロヱと鮫山ソウゴ。2人はこの組織の活動内容をまだ知らない……

 

「うーん……」

「ソウくん、いいのあった?」

「ないな……やはり皆、経験者を欲しがってるようだな。」

 

ソウゴはソファに座りながら求人誌を読んでいた。このままホロックスにいてもちゃんと給料を貰えるか分からないため、バイトを探すことにしたのだが……なかなか見つからなかった。求人情報を見ても、「経験者歓迎」「資格取得者歓迎」と書かれていたため、ソウゴはため息をついた。

 

「……お前も探したらどうだ?沙花叉。」

「えー?それで上手くいってたらここに来てないもん。」

 

クロヱの一言に「確かに」と思いながら、ソウゴはまたため息を吐いた。

その時、入口のドアがガチャガチャ!と音を立てた。

その音を聞き、クロヱは思わずラプラスの後ろに隠れ、ソウゴは咄嗟に近くにあった孫の手を手に取り剣のように構えた。

 

「なになになに!?怖いんだけど……!」

「お、帰ってきたな。」

 

笑うラプラスをよそに、クロヱとソウゴに緊張が走る。そして、ドアが開き、入ってきたのは……

 

「ただいまーー!!待ったかねー?」

「かんぶーっ!」

『かんぶ?』

 

”かんぶ”と呼ばれたその女性は、ピンク色の髪に白い上着と黒いミニスカートとから伸びる黒タイツの美脚が特徴的な、大人っぽい女性だった。

 

「かんぶーっ!コーラ飲みたーい♪」

「はいはい。」

 

ラプラスが”かんぶ”と言っているのを見て、2人はその女性がホロックスの幹部、鷹嶺(たかね)ルイだとわかった。

 

(この人がルイさん!カッコいいお姉さんって感じだなぁ……でも、秘密結社の幹部だし、実は怖い人だったりするのかなぁ……?)

 

興味ありげに見ていると、ルイはこちらに気づき、顔を覗き込んできた。

 

「あなたが沙花叉クロヱで……そっちが鮫山ソウゴね。ラプラスから電話で聞いたよ。」

「は、はい!はじめまして!」

「……よろしく頼む。」

 

2人が挨拶をすると、ルイはニヤリと笑った。

 

「ホロックスは気に入ってくれたかね(・・・)!?鷹嶺(・・・)だけに!!」

『………はい?』

 

唐突に放たれたダジャレに、2人は反応できなかった。そんな2人の顔色を伺いつつ、ルイはウィンクをしてみせる。

 

(これはいったい何待ち!?)

 

どう答えていいか分からず、2人はただただ困惑した。すると、ラプラスはため息混じりに呟いた。

 

「あー、幹部お得意の寒いヤツだ。スルーでいいぞ。」

「えっ、そうなの?」

「え〜?ツッコミ欲しいんだが〜〜?」

 

ラプラスはコホンと咳払いし、改めてルイの説明を始めた。

 

「紹介しよう!こいつは鷹嶺ルイ!語学堪能で交渉ごとや財務管理もお手の物!面倒ごとはだいたい任せてる!!実質的な組織の司令塔ってわけだ!!」

 

ラプラスの説明を聞き、2人は妙に納得してしまった。ルイからは大人の余裕や色気が垣間見える。

すると、クロヱは恐る恐るルイに質問をした。

 

「あのー、ルイさんって”任務”に行ってたんですよね?いったいどんな任務を……?」

「……フフフフフ……それはね……」

 

クロヱからの質問に不敵な笑みを浮かべた……かと思いきやニコッと笑った。

 

「2人の歓迎パーティーの買い出しで〜す!高い食材揃えてきたよ〜〜!()だけに!」

「えーー!?いいんですかー!?」

「せっかくの新入社員だからね!今日は腕を振るっちゃうよ!!」

 

そう言ってルイはウィンクをしながら拳をぐっと握りしめた。

 

「なら、沙花叉も手伝いますよ!料理得意なんで!」

「ありがと!でも主役に手伝わせるのは……いや、それも親睦か。よし、一緒にやろうか!」

「はい!」

 

─────────────────────

 

「シチュー、ほぼ完成しました!」

「ありがと、後はハンバーグ焼くだけかな。」

 

クロヱとルイはキッチンで料理を作り、その後ろではソウゴが部屋の掃除をしていた。

 

「鷹嶺、他に掃除するところはあるか?」

「ありがとね、ソウちゃん。けっこう細かいとこまでキレイにしてもらって……」

 

ソウゴは床や窓だけでなく、カーテンレールやタンスの隙間など、普段なら掃除しないような場所まで掃除していた。

 

「……どうやら俺は、部屋が汚いのは我慢ならんらしい。チリが少しでもあれば掃除をしたくなる。」

 

ソウゴはそう言いながら、チラリとソファに横たわっているラプラスの方を見た。ラプラスは部屋が汚くなっている原因の一端を担っているのだが……

 

「はへへ……ママァ……耳が、耳が妊むぅ…♡うへへ……」

 

ラプラスは耳にヘッドホンをしてASMRを聞きながら寝ていた。その光景に、ソウゴはドン引きするとともに苛立ちを覚えていた。

 

「お前も掃除しろクソガキが……」

「……ルイさん、聞いてもいいですか?」

 

ラプラスをチラリと見て、クロヱはルイに尋ねた。

 

「……私、実はまだ怖いんです。この会社が……ラプラスの言ってた”世界征服”……あれって本当なんですか?それにいきなり掃除屋なんて言われて……沙花叉、なにしたらいいか分からなくて……」

 

クロヱの表情自体は真顔だったが、言葉の節々から不安が隠しきれていない。不安なのはクロヱだけではない。顔には見せていないが、ソウゴも不安だった。

 

(ほんの少しだけだが……)

 

すると、ルイは静かに口を開き、答え始めた。

 

「そうだね。まず答えると、世界征服は必ずやるよ。それは本当。」

「そ、そうなんだ……」

 

ルイは質問に答えると、後ろを振り向き、ラプラスの方を見た。

 

「世界征服はね、ラプラスの夢なんだ。」

「えっ!?それってただのビッグマウスじゃないんですか!?あのお子ちゃまの!」

 

すると、ルイは急に笑い出した。

 

「あははは!あんなだけど、実はラプって何億年も生きてるんだよ。」

「えっ!!?億!!?」

 

何億年というとんでもない年月に、クロヱは思わず声を上げた。何億年も生きている生物など、ありえないからだ。

 

「私とラプは……もう数千年前に知り合ったんだけど……」

 

さらりと自分も超年上であることを明かしつつ、ルイはラプラスと会った時のことを少し話し始めた。

ルイの脳裏に浮かぶのは、薄暗い天気の中、丘の上でルイのことを睨むラプラスだった。

 

「ラプラスって最初っから偉そうで、なのにどこか寂しそうな子だった。最初はほっとけないって理由だけで一緒にいたの。」

 

その時、ルイはフフッと笑った。同時にルイの脳裏に浮かんだのは、笑顔を向けてくるラプラスの姿。

 

「でも、努力家で涙もろくて肝っ玉がつよくて、なにより優しいあの子のことを、いつの間にか大好きになってたの。で、ある日……」

 

『我輩、世界が欲しいっ!!』

 

「……って言われちゃってさ。最初は意味わかんなかったけどね。でも、気づいたらラプの夢が私の夢にもなってたの。他の二人のメンバーも同じ気持ちだよ。」

 

そう言ったルイの顔はとても楽しそうに見える。すると、ルイはまたもフフッと笑った。

 

「ちなみに世界征服っていっても、ラプもよく分かってないから。」

「えっ!!?」

「ただ楽しいことをして世界一になりたいの、あの子は。支配とはほど遠い考え方だよ。」

 

そう言うと、ルイはクロヱに顔を向ける。

 

「だからクロヱちゃんもソウちゃんも、ここで自由にしたらいいよ。自分が思う”掃除屋”と”雑用”になってくれたらそれでいいの。」

「……ありがとうございます!」

 

キョトンとするクロヱだったが、ルイに頭を下げた。

するとクロヱはラプラスの方に近づき、その柔らかい頰を指で突いた。

 

「ふふっ、おめぇ〜よぉ〜♪口下手すぎだろ〜〜♪」

「……ふんっ」

 

ニコニコ笑いながら頬をつつくクロヱに対し、ソウゴは呆れ気味に鼻息を鳴らした。

すると、クロヱはそんなソウゴの傍らに立つと、背伸びをして耳打ちを始めた。

 

(がんばろうね、ソウくん!私達なりに役に立てること探してみようよ。)

(……まぁ、拾ってもらった恩があるからな。)

 

二人はとりあえず、このホロックスで役に立てるように頑張ろうと決めたのだった。

と、その時だった。

 

「俺が!俺こそ最速なんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

外から雄叫びが聞こえてきた。ソウゴは咄嗟に窓から外を眺めた。そこには、蒸気機関車のような姿をした鬼”烈車鬼”が暴れていた。

 

「奴は……!」

「前にラプラスが変身したヤツに似てるよね!?」

「ここからは”雑用”の仕事だ。」

 

ソウゴは窓を開けると、飛び出していった。

 

「行っちゃった……まぁ、ソウくんなら大丈夫かな。あれ?ルイさん……?」

 

その時、クロヱはルイの姿が見えないことに気がつき、探し始めた。

ルイはすぐに見つかった。部屋の隅で救急箱を取り出して、指に絆創膏を貼っていた。

 

「!」

 

ルイは料理が得意……そんな彼女が料理で怪我をするはずがない。そう思ったクロヱはキッチンに戻った。

 

「あ、やばっ!ハンバーグ!」

 

その時、ルイは焼いているハンバーグが焦げてしまうことに気づき、すぐさまキッチンに戻った。

するとそこには、ルイの代わりにハンバーグをフライパン返しでひっくり返しているクロヱがいた。

 

「ありがとうクロヱちゃん!でも大丈夫だよ、後は私がやるから!」

「あとちょっとなんで、沙花叉がやっときますよ!ルイさんは休んでてくださいな!」

「でも……」

 

主役であるクロヱにそこまでさせるのは気が引けるのか、ルイは引き下がろうとはしなかった。すると、クロヱは言った。

 

「いいんですよ、頼ってくれて!だって沙花叉は掃除屋ですよぉ?あなたの”悩み”も……掃除しちゃうぞ♪なーんてね♪」

「おっ、ナマイキ〜〜♪」

 

ウィンクしながら言うクロヱに、ルイは笑いながら頭を撫でてやったのだった。

 

─────────────────────

 

そのころ、外の方では……

 

「答えろ!貴様の目的はなんだ!?」

「俺こそ最速だぁぁぁ!!」

 

ドンムラサメに変身したソウゴと烈車鬼が対峙していた。

ムラサメは烈車鬼に対し、何の目的で街を襲っているのか問いただすも、話が通じていないようだった。

 

(ラプラスの時と同じだ……何かに取り憑かれているみたいだ……!)

「出発進行ーー!!」

 

烈車鬼は叫びとともに身体から電車のレールを発射してくる。

ムラサメは剣でそれを弾いていくが、数が多く凌ぎきれない。

その時……

 

『アルターモード……』

「!?」

 

頭の中に声が響いてきた。

 

『アルターモード……アルターモード……』

 

男とも女とも分からないその声は、ひたすらに「アルターモード」と呟いてくる。同時に、ムラサメの脳裏にそのやり方が流れ込んできた。

 

「これか!」

 

ムラサメはニンジャークソードをギターのように持ち、トリガーを押しながらギアを高速回転させた。

 

《マッシュアップ!》

「アルターチェンジ!!」

 

ギアの高速回転とともにドンムラサメの身体が水の波紋のようなエフェクトに包まれていった。

その身体はだんだん小さくなっていく……

 

《アーク!ダーク!ジャーク!シャーク!》

《ドンムラサメアルター!Wow!サメニンジャ!!》

 

ムラサメはサメとロボットを掛け合わせたような小さいロボットへと姿を変えた。

 

「これがアルターモード……ドンムラサメ、参るッ!!」

 

姿を変えたムラサメは、右腕に装備した鋸「ビッグソー」を向けながら突進していく。

 

「烈車が参りまーす!!」

 

烈車鬼はレールを発射してくるが、次の瞬間、ムラサメは変形した。足を尻尾に、右肩を背中に、左肩を胸に、右腕が上顎に、左腕が下顎に変形し、サメの姿に変形した。

サメに変わったムラサメは、飛んでくるレールの上を滑り、烈車鬼に突っ込んでいく。

 

「くらえっ!!」

 

ムラサメはサメの顎を使って烈車鬼の鼻に噛みついた。

 

「グガガガガガ!!?」

 

サメの鋭い歯が食い込み、烈車鬼は痛みのあまり慌ててムラサメを剥がそうとするが、その前にムラサメは人型形態に変形し、自分に伸びてくる手に傷をつけていく。

 

「ウガッ!!」

「今だ!!」

 

烈車鬼が怯んだ隙に、ムラサメは元の姿に戻り、剣の連撃を浴びせていく。

そして、ギアを2回回転させる。

 

二鮫(にシャーク)暴鮫(ハヤサメ)!!》

 

剣の先からアンカーを発射し、烈車鬼の身体に巻きつけた。そして、そのまま上空に放り投げた。

 

「終わりだ……!!」

 

ムラサメも上空に飛び上がり、そのまま烈車鬼を真っ二つに切り裂いた。

 

「グギャァァァァァァ!!」

 

断末魔を上げた烈車鬼は爆発し、そのまま地面に落ちる。すると、烈車鬼の姿が人間に戻っていき、そこにはランニングウェアに身を包んだ細身の男がいた。

 

「おい、起きろ!」

 

ソウゴは変身を解き、細身の男の頬を叩き、無理矢理起こした。

 

「うう……ここは……?」

「お前は化け物に取り憑かれて暴れていたんだ。何か覚えていないか……?」

「うーん……僕、もうすぐ大会があって……それでもっと速く走ってタイムを縮めたいと思って……そこから記憶が……」

 

細身の男の話を聞き、ソウゴは推理した。

あの化け物は人の欲望に反応する。この細身の男であれば「速く走りたい」、ラプラスならば「世界征服」……だが、何故人の欲望に取り憑くのか分からない……

 

(考えても答えは出ないか……)

 

答えは出ず、ソウゴはひとまずホロックス本社に戻ることにした。

 

───────────────────────

 

「うっま〜〜〜〜♪まじうめ〜〜〜♪待った甲斐があったわ〜〜!!」

 

歓迎パーティーが始まり、ラプラスは嬉しそうに、美味しそうにハンバーグとシチューを食べている。

 

「うむ……美味い……」

 

ソウゴもハンバーグをしみじみと味わっていた。

それを見て、クロヱとルイは互いに顔を見合わせ、微笑みあった。

 

「今日は手伝ってくれてありがとね、”クロヱ”!」

「どういたしまして、”ルイ姉”!」

 

その様子をハンバーグを食べながら見ていたラプラスは一言呟いた。

 

「……なんかお前ら仲良くなってね?」

 

今日一日で二人の仲は進展した。ルイはクロヱのことを呼び捨てし、クロヱはルイのことを”ルイ姉”と呼んでいた。

 

「え?まぁ……」

「いろいろあってね〜」

「ラプラスには教えてあげなーい!」

「なぬ〜〜?」

 

そこからクロヱとラプラスはじゃれ合い始め、それをよそに、ルイはソウゴの隣に移動し、耳打ちを始めた。

 

(あのね、ソウちゃん。クロヱはね、私が疲れてることも、指を怪我しちゃったことも……いつの間にか気づいてフォローしてくれたんだよ?)

(そうだったのか……優しいんだな、沙花叉は……)

(フフッ、クロヱがホロックスはもっと面白くなる!もちろん、ソウちゃんもね。)

 

ルイはそう言って、下からソウゴの顔を覗き込みながら笑顔を浮かべた。

ソウゴはそっぽを向きながら、静かに返答した。

 

(……ああ。)

「あっ、ソウちゃんテレてる?」

「照れていない。」

 

こうして時間は流れ……パーティーは終わりを告げた。

このまま幸せなまま終わればよかったのだが……

 

「な、なにこれ……!?」

 

愕然とするルイの前には、シンクにグチャグチャに放り込まれた、汚れた食器と調理器具があった。

 

「ごめ〜んルイ姉。ちょっと散らかしちゃった。」

「いや、ちょっとどころじゃないだろコレ。」

 

シンクを汚しまくった張本人、クロヱは笑いながら謝っていたが、ルイはもう怒るどころではなくなっていた。

 

(もしかして……私の仕事、増えてない……?)

 

まるで魂が抜けたかのように口を大きく開け、ルイはその場に膝をついた。

 

「わーっ!?ルイ姉しっかりしてー!!?」

「幹部ーーーっ!!」

 

膝をついて絶望するルイに、二人は叫んだ。すると……

 

《ニンジャークソード!》

「さ、か、ま、たぁぁぁ……!」

「ソ…ソウくん……?」

 

いつも以上に低い声を上げるソウゴに、クロヱは恐る恐る顔を向ける。そこには、ニンジャークソードを手にするソウゴの姿が……

 

「さっき言ったはずだ……俺は少しでも部屋が汚いのは我慢ならんと……!!」

「ソ、ソウくん!それしまって!それ怖い!!」

「掃除しろ沙花叉ァァァァァァ!!」

「やぁ~ん!!ソウくん怖いよーーー!!」

「待てぇっ!沙花叉ァ!!」

 

珍しく声を荒げて、ソウゴは逃げ惑うクロヱを追いかけ回した。それを見ながら、ラプラスはため息を吐いた。

 

「やれやれ……まだまだ困りごとは続くな……」

 

ホロックスの困難はまだ始まったばかり……

 

 

 





「じかーいじかい!あれ〜?ちょっといない間に、知らない人が増えてる。えっ?1人は記憶喪失!?よーし!それじゃ、こよの頭脳をお貸ししましょう!ドン4話『ずのーなコヨーテ』というお話し♪」

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