ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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サブタイトルは「水星の魔女」の主題歌「祝福」から取りました。
前回の次回予告で「前編」とは書かなかったのですが、思いの外長くなりそうだったので前後編とさせていただきました。




ドン34話「しゅくふくをキミに 前編」

 

「オラァッ!!」

 

相手の懐に飛び込み、ファイズはカトルの腹に拳を叩きつける。

 

「チッ!」

 

カトルはその攻撃を剣で防ぐも、力はファイズの方が強く、逆に押し返されてしまう。

押し返して体勢が崩れたところを、ファイズはカトルの肩を指が食い込むほど掴み、連続で腹に拳を叩きつける。

 

「ぐぬぅ……!!」

「兄者!」

 

攻撃を受けているカトルを見て、ザカはすぐさま助けようとした。

だが、

 

「おっと!」

 

その前にブラックコンドルが立ちはだかった。

 

「ブリンガーソード!」

 

ホルスターに下げた剣を抜き、飛びかかると同時にザカを十字に斬り、さらに回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「くっ……トリトリの分際で……!だあっ!!」

 

ザカは剣を振るうと同時に三日月の刃を3つ飛ばしてくる。

 

「バードブラスター!」

 

ブラックコンドルはもう片方のホルスターから鳥の頭を模した銃を抜き、光線を放って三日月の刃を撃ち落とした。

 

「セットアップ!」

 

ブリンガーソードを縮小し、バードブラスターの後部に合体させ、もう一つの銃口を展開する。

 

「バードボンバー!!」

 

合体させた銃から巨大な光弾を発射する。すかさずザカは剣の鍔についたギアを高速回転させ、剣を巨大化させた。それで光弾を切り裂こうとする。

 

「ぐっ……ぬぅぅぅ……!!ハァッ!!」

 

光弾の勢いに押されそうになるも、ザカは思い切り剣を振るって光弾を弾き飛ばした。

しかし次の瞬間、

 

「ドリャア!!」

 

ブラックコンドルは翼を広げて飛翔しながらザカに突進してきた。

 

「コンドルフィニッシュ!!」

「ぐぁぁぁぁ!!」

 

飛翔による高速突進とともに、剣ですれ違い様にザカを一閃し、吹き飛ばした。

 

「ハァァァァ!!」

 

ニンジャホワイトと戦っていたフランは、剣を勢いよく振り下ろした。

攻撃はニンジャホワイトの身体に食い込んだかと思いきや、ニンジャホワイトは煙のように姿を消した。

 

「!?」

 

慌てて辺りを見回すと、ニンジャホワイトは背後に立っていた。フランは再度攻撃するもまた姿を消し、今度は横に、かと思って攻撃するとまた後ろ、また攻撃すると、今度は少し離れたところに……と、フランを撹乱する。

 

「この……!さっさと負けろ、このババァ!!」

「人は歳取ればみんなおじいさんおばあちゃんになるのよ!自覚しなさい!」

 

激昂するフランを叱咤しながら、ニンジャホワイトは印を結ぶ。

 

「隠流忍法・花吹雪!」

 

両手を前に突き出し、手のひらから無数の花びらを放った。花びらが身体に着弾した瞬間爆発を起こし、フランを吹き飛ばした。

 

「キャアァァァ!!」

「隠流・くの字斬り!!」

 

そこに追い打ちをかけ、フランを「く」の字に切り裂いた。

倒れたフランだったが、すぐさま起き上がってザカとともにカトルの元に駆け寄った。

 

「お、お兄ちゃん……!」

「兄者…!」

「クソ……!グリムの分際で……!」

「よぉ……お前さっき、自分達がこの俺に一番トラウマを植えつけたとか抜かしてたな。」

 

言われたことを覚えていたファイズは、カトルに向かって指を差した。

 

「のぼせ上がってんじゃねぇぞ、タコ。確かに、お前らに親父を殺された時は……トラウマになったし、絶望もした。だけど……それ以上に得たものがあった!親父から受け取った意思、仲間からもらった力、そして……夢をな!!」

 

カトル達が知っている以前のグリムはいない。いつの間にかこんなにも強くなっていた弟の姿に、カトルは焦りを覚えていた。

だが、ファイズは慈悲など与えない。ベルトの横につけたポインターを取り外し、ケータイについたメモリを取り外してポインターに装着した。

 

《Ready.》

 

メモリを装着したポインタを右足に装着し、ファイズは右足に重心を乗せるように深く腰を落とし、ケータイを開いて「Enter」キーを押した。

 

《Exceed Charge.》

 

音声とともにベルトから赤く発光する光がベルトから右足、ポインタに流れ込んでいく。

 

「ハッ!」

 

その状態でジャンプして1回転し、空中でポインターをカトル達に向けた。すると、ポインターから赤く光るマーカーが発射され、カトル達を捕らえた瞬間赤い円錐に変化した。

 

「くっ……!お、お前ら盾になれ!」

「な、なにをするんだ兄者!?」

「いやっ!やめてよお兄ちゃん!!」

 

なんと情けないことか、カトルは実の妹と弟を盾にしようとしていた。そんな卑怯で下劣な者には、天罰が下る。

 

「ダアァァァァァァ!!」

 

ファイズは飛び蹴りを繰り出し、ドリルのように回転する赤い円錐状の光とともに目の前のザカとフランに命中する。

 

『がぁぁぁぁぁぁぁ!!』

「貫けぇ!!」

 

次の瞬間、ファイズの攻撃がザカとフランを貫き、そのままカトルの腹を貫いた。

 

「うっ……!?」

 

カトルがうめき声を上げたのと同時に、ファイズが地面に着地した。すると、カトル達の身体が灰になっていき、身体が砕けていく。

 

「き、貴様ぁ……!お、俺達はお前の兄妹だぞ……!!それを……!!」

「寝ぼけてんのか。」

 

この期に及んで情に訴えかけようとしたカトルだったが、ファイズはバッサリ切り捨てた。

 

「俺は最初から、お前らを兄妹なんて思ったことねぇ。それに……俺にとっての兄弟は、あの2人(・・・・)だけだ。」

「なに……!?」

 

その瞬間、3人の身体は完全に灰になり崩れ落ちる。同時に「Φ」の紋章が赤く浮かび上がった。

 

「……汚え死に様だな。後は……アンタの方だな、ソウゴ……」

 

────────────────────────

 

そのころ、ソウゴの方は白い空間の中で妹・メアリと対峙していた。

両者の剣は激しくぶつかり合い、火花が舞い散っている。

 

「フゥ……!」

「くっ……!」

 

両者は互角……否、ソウゴの方がやや押されていた。

覚悟を決めたとはいえ、やはり実の妹と戦うのは抵抗があるようだった。

 

「フフッ、どうしたねウォルター君。防戦一方じゃないか。」

「黙れ……!」

「やはり妹相手では本気を出せないかな?」

「黙れと言っている!!!」

 

鮫山の煩い声に、ソウゴはたまらず大声を上げた。しかしその隙を突かれ、メアリはソウゴの懐に入り込み剣を振るってきた。

 

「!!」

 

ソウゴはその攻撃を鞘で防いだ。

 

「私を殺せばいいじゃない。あの時みたいに……」

 

メアリのその言葉に、ソウゴの脳裏に過去の映像が流れる。メアリに裏切られ、メアリを殺した自分の姿……

 

「……!!」

 

その一瞬、ソウゴの身体の力が緩んだ。その隙を狙いメアリは剣を押し込んで突き飛ばした。

 

「くっ……!」

「ハァッ!」

 

突き飛ばされ、転んだソウゴに向かって飛びかかり、剣を振り下ろした。

しかし、ソウゴは瞬時に刀を鞘に納め、メアリに向けた。そしてトリガーを引いた。刀は弾丸のように飛んでいき、メアリを突き飛ばす。

怯んで着地したところを、ソウゴは宙を舞った刀を掴み、そのまま突きを繰り出す。

 

「!!」

 

寸前のところでメアリは顔を横に傾けた。ソウゴの一撃は頬をかすめただけで終わった。

 

(メアリはもう死んだ……!!今、目の前にいるのは俺の弱い心が生んだ幻影だ!!)

 

目の前にいる妹は本物ではない。ただの幻影だと心の中で叫び、ソウゴはただ無心で刀を振るう。

次の一瞬、互いに剣がぶつかり合った瞬間、ソウゴは切っ先を回転させながらメアリの剣を上空に弾き飛ばした。

 

「デヤッ!」

 

続けてソウゴはメアリを鞘で殴り飛ばした。

 

「トドメだ……!!」

 

倒れたところに、トドメを刺そうとソウゴは刀を振り上げた。だがその瞬間、どこからかオルゴールのような音色が聞こえてきた。

音が聞こえた方に視線をやると、そこには懐中時計が落ちていた。おそらく、メアリが懐に入れていたものだろう。

 

「これは……」

 

ソウゴはその時計に見覚えがあった。それは……ソウゴがまだウォルターだった頃、メアリの中学校入学祝いにプレゼントしたものだった。

 

『メアリ、入学おめでとう。』

『えっ、お兄ちゃんが私に……?』

『店の窓越しにコレを見てただろ。それに……お前、好きだったろ。「人魚姫」。』

 

時計には童話「人魚姫」に登場する人魚とその周りに一緒に泳ぐ魚達が彫刻として彫られていた。メアリはこの童話がとても好きだった。

 

『私、生まれ変わったら人魚姫になりたいなぁ……ううん、人魚じゃなくても、魚でもいい!海の中なら……きっと自由だよね……』

 

メアリは寂しそうにそう呟いていたのを思い出した。日々の生活から、こんな異常な家から抜け出したいと、毎日思っていたのだろう……それを理解していたウォルターはこう言った。

 

『……だが、海は広い分、敵も多いぞ。だから……俺は生まれ変わったら……そうだな、鮫がいいな。』

『鮫……?』

『ああ。鮫だったら強いし、人魚になったお前のことを守ってやれるよ。』

『じゃあ……約束だよ!』

『ああ。』

 

そう言って、オルゴールの音色が鳴る中で2人で指切りをした。

どうして忘れていたのだろうか……忘れていなければ、ずっと覚えていて、約束通り守ってあげていれば、何かが変わっていたかもしれない……

思い出した瞬間、ソウゴは両目から涙を流した。

 

「メアリ、やれ。」

 

ソウゴの動きが止まったのを見て、鮫山は命令を出した。だが、メアリは動かなかった。それどころか、メアリまでも涙を流していた。

 

「なにっ!?泣くことなどできなかったはず……!?」

 

どうやら鮫山にとって想定外のことが起きているらしく、戸惑っていた。

すると、メアリは剣をその場に捨て、立ち上がってソウゴの前に立った。

 

「お兄……ちゃん……」

 

メアリは泣きながらソウゴに語りかける。

 

「───────」

 

その一言に、ソウゴは目を見開いて驚いた。

そして、目から滝のような涙を流す……

 

「……そうか。それが、お前の望みなんだな……」

 

同じく涙を流しているメアリは、コクリと頷いた。

 

「お兄ちゃん…ごめんね……」

「俺も……ごめんな……」

 

2人は互いに謝り合い、ソウゴは手に持った刀を強く握りしめ……その刃でメアリの胸を貫いた。

 

「…ありがとう……」

 

メアリの身体から血は出なかったが、その身体は粒子状になってどんどん消えかかっていった。

刀を引き抜き、ソウゴはメアリのことを抱きしめようとしたが……その前にメアリは消えてしまった。

 

「………!!」

 

ソウゴは泣きながら、その場で膝をつき泣き崩れた。

 

「データだけの存在に、心が芽生えたか……?これはなかなか興味深い……」

「っ!!」

 

この男は、どこまで自分のことを優先するのか、研究のことしか頭にないのか……人間としての情や心はないのか……

ソウゴは怒りに震えた。

 

「鮫山ァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

その時だった。まるでソウゴの叫びに呼応するように空間が2つに割れた。そして、その中から一つの刃が飛び出した。

それは……ニンジャークソードだった。

 

「ニンジャークソード……シンイチか!?」

「はぁぁぁぁ!!」

 

ソウイチは鮫山の懐まで近づくと、ドンムラサメの姿に変わり雄たけびとともに剣を振り下ろした。

不意を突かれた鮫山は顔面に一撃を食らった。

 

「ぐっ……!」

 

鮫山が怯んだ隙に、ソウイチはクロヱを抱きかかえ、ソウゴの元へと連れて行った。

 

「ソウイチ……!」

「遅くなってごめんなさい。ぼく……決めました。」

 

ソウイチはソウゴと少し話すと、ニンジャークソードを鮫山の方へ向ける。

 

「あの人と戦う!これ以上……ぼくと同じ人を増やさないために!」

「……そうか。」

 

ソウゴはフッと笑った。自分のおかげかどうかは分からないが、前に進むことを決め、戦う覚悟を決めたソウイチをソウゴは嬉しく思っていた。

 

「なら……一緒にいくぞ!!」

「はい!」

 

ソウゴもソウイチとともに剣先を鮫山へと向けた。

対し、鮫山は顔を押さえながら2人を睨みつける。

 

「貴様、親に向かって……!ふん、まぁいい……!貴様ら2人、まとめて私の研究成果の生贄だ!!」

 

鮫山は叫び、空中に半透明のキーボードを出現させ操作を始めた。すると、鮫山の背後に大量のニンジャークソードが出現した。

それを見て2人は身構えた。鮫山は大量のムラサメトルーパーを呼び出そうとしたのだと思ったからだ。

しかし次の瞬間、無数のニンジャークソードは一斉に鮫山に突き刺さっていった。

 

『!?』

 

2人は思わず驚いた。だが、まだ鮫山の行動は続く。

 

「アバターチェンジ……!!」

 

その鮫山の一声とともに、身体に刺さったニンジャークソードのギアが一斉に回転を始めた。すると、紫色の竜巻が鮫山を包み込み、ニンジャークソードが鮫山の身体に飲み込まれていった。

 

《カオス!ムラサメ!!》

 

異様なまでに低い声が響き、紫色の竜巻が消え去った。そこには、ムラサメ……しかし、その姿は異様だった。

 

「フーッ……!ムラサメカオス……これが研究の末にたどり着いた、最強のムラサメの姿だ!!」

 

肩、胸、腹、脚、腕……身体のあちこちにムラサメのマスクが張り付き、両手の爪がニンジャークソードの刃と同じものになっているムラサメ……否、ムラサメの名を冠しただけの化け物だった。

 

「父さん……そんな姿になって……!ぼくや母さん……他の大勢の人を巻き込んだ結果が、そんな化け物なの!?」

「クハハハハハハハッ!!笑わせるな、研究には犠牲はつきものだ!今日にまで至る医療技術や薬に目を向けてみろ。あれこそ数多くの人体実験の末に完成したものだ!私は生物……いや、ありとあらゆるものをデータ化し、保存することで永遠の命と繁栄をもたらすのだ!尊い犠牲……君なら分かるだろう?ウォルター君……」

 

ムラサメカオスとなった鮫山はソウゴに語りかけた。自分と同類とでも思っているのかもしれない。ソウゴは俯きながら静かに口を開いた。

 

「……くだらないな……」

「なに……?」

「永遠の命と繁栄……?余計な御世話なんだよ……!!」

 

ソウゴはムラサメカオスを睨みつけながら、霞の構えで刀を構えた。

 

「データだから何を犠牲にしてもいいのか……?それが、大事な仲間や家族を犠牲にすることになってもいいのか……!?」

「それがなんだというのだ?データなのだから、何度でも蘇らせることができる……!何度犠牲になったとしても問題ない。」

「……そうか、安心したよ……お前が、最低のクズ野郎だってことにな!!」

 

その時、ソウゴは刀を構えたままムラサメカオスに向かって走り出した。それに続いてソウイチも剣を逆手持ちにしながら駆け出した。

 

「凡人には……理解できんかっ!!」

 

走ってくる2人に向かって、ムラサメカオスは両手を前に突き出した。すると、ニンジャークソードの刃になっている指がミサイルのように発射され、2人に向かって飛んでいった。

しかし、2人はとんできた剣を足場代わりにして進んでいき、ムラサメカオスの頭上へ飛んだ。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

「ハァァァァァァァ!!」

 

2人は同時に剣を振り下ろした……だが、ムラサメカオスの両腕から刃が生え、攻撃を防いだ。

 

「ムンッ!!」

 

ムラサメカオスは腕を大きく振るい、2人を投げ飛ばした。2人はすかさず着地し、剣を構え直し睨みつける。

決着をつけるため、過去の因縁を清算するため……2人(・・)の鮫は怪物に挑む……

 

 

 

 





ソウゴ「じかーいじかい。とうとう決着をつける時がきた……ソウイチ、お前も俺も……前に進む時だ。逃げずに進めば、掴めるものがたくさんあるはずだ!!ドン35話『しゅくふくをキミに 後編』!」
???「さぁ、楽しもうぜ!」

────────────────────────

長くなった「レプリカ計画編」ももうすぐ終わりとなります……最終回はまだまだ先となりますが。


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