ドン!ホロックスみーてぃんぐ!   作:ぴりもに

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ドン38話「しこうのタコやき」

 

「ハグッ……今日もタコ焼きは美味……」

 

この日ソウゴはタコ焼きの食べ歩きで近所のスーパーやアウトレットなどを回っていた。

 

「うーん、ここのソースは天日野菜を使ってるな……美味い。今度クロヱ達にも……」

 

その時、ソウゴの脳裏にクロヱ達の顔が浮かんできた。その後すぐに別の光景が浮かんできた。

それは、自分とクロヱ達が別れを告げる光景だった。

それが浮かんできた途端、ソウゴは足を止めた。

 

「……俺は、どうすればいいんだ……」

 

ソウゴは悩んでいた。クロヱ達と別れてこの世界から離れるべきか……それとも留まるべきか……

そんな時、

 

「鮫山ソウゴ!」

 

ソウゴを呼ぶ声が聞こえた。

ソウゴはハッと我に返り、声が聞こえた方向へ顔を向けた。そこにはおでんの屋台があった。そして、暖簾からチラリと顔を出してきたのは、ソノイだった。

 

「ソノイ!」

「奇遇だな。こんなところで……元の世界に帰ったのかと思ったぞ。」

「こっちの世界のおでんが中々美味でな……食べ歩いていた。」

「俺もだ。タコ焼きの食べ歩きをしていた。」

 

ソウゴはソノイの隣に座り、一緒におでんを食べ始めた。

おでんの具材であるタコを一口かじり、よく咀嚼する。

 

「おお……おでんのタコも中々だな。」

「出汁が染み込んでいるんだ。かつお出汁の汁に昆布巻とさつま揚げから出た出汁も混ざって良い味わいになる……」

「なるほどな……」

 

おでんを味わって食べ……ソウゴはフッとため息を吐いた。

 

「どうした?」

「いや……ちょっと悩みがあってな……」

 

ソウゴは苦笑いを浮かべ、自身の悩み事を打ち明けた。

この世界に残るべきか否か……ソノイに話した。

 

「なるほど……だが、私からはなんとも言えないな。」

 

所詮は他人事……とばかりにソノイは吐き捨てる。それはそうか、とソウゴはため息をついた。

しかし、ソノイは続けるように言った。

 

「私が何か助言をしたとしても、どちらの道を選んだとしても……必ず後悔が押し寄せる。それならば、最後まで悩んで答えを出すべきだ……違うか?」

 

ソノイの言い分に、ソウゴは思わず感心してしまった。

確かに、慌てる必要はない……いずれ別れは来るだろうが、それはまだまだ先のことだろう……

時間があるなら、ゆっくり考えればいいだけ……そう思ったソウゴはソノイに小さく礼をし、再びおでんを食べ始めた。

 

「いい顔した男が2人も揃って……湿っぽいこと話してるねぇ!」

 

その時、おでん屋の店主が突然声を上げた。

 

「おでんに湿っぽい空気なんて合わねぇ!お祭り気分で食わねぇと……やっぱ、あのタコが必要かねぇ……『スゲーナスゴイトパス』が……」

「なんだ、そのスゲー……なんとか。」

「スゲーナスゴイトパス!」

 

おでん屋の店主はそのスゲーナスゴイトパスというものを説明をしようと、どこからか紙芝居を取り出してきた。

 

「むかーしむかし……広い広いエデンの海のアトランティス海域にスゲーナスゴイトパスという全長2mを超える巨大なタコがいました。大きさもさることながらも味も食感も王様級……スゲーナスゴイトパスを使ったタコ焼き屋はたちまち繁盛し、100億の売り上げを出したという伝説を残しました……!」

 

紙芝居の絵を海の絵、タコを捕まえる漁師の絵、そのタコを調理して賑わう様子を順に見せていく。

 

「しかーし!スゲーナスゴイトパスは伝説ではありませんでした!」

 

店主はそう言うと次の場面を見せた。それは光り輝くタコの絵だった。

 

「なんと今日、港でスゲーナスゴイトパスが釣れて、明日競りに出されることになったんだよ!!」

「そんなスゴイタコが……港に……?」

「鮫山ソウゴ……」

 

ソウゴとソノイは互いに顔を見合わせ、コクリと頷いた。そしてカウンターに料金を置いて屋台を後にした。

 

「わかってるな……?」

「ああ……そのタコ…」

(タコ焼きに入れる!)

(おでんに入れる!)

 

2人は互いに暗い取引を成立させ、互いの目的のため……2人は港へと向かった。

 

───────────────────────

 

「はいっ!アジ、キロ5000!」

「買った!!」

 

翌日、港へ行くとすでに競りは始まっていた。あちこちで賑わう声が響く中、2人は目当ての物を探した。

スゲーナスゴイトパス……それはすぐに見つかった。

 

「はいっ!次は伝説のタコ……スゲーナスゴイトパス!!」

 

競り人は高らかに言いながら、例のタコを客の前に出してきた。

タコが出された時、客の多くが目を見開き感嘆の声を上げた。

 

「あれが……伝説のタコ……」

「スゲーナスゴイトパス……!」

 

それは燦々と輝いていた。目の錯覚なのか、本当に輝いているのか分からないが神々しく見えた。

2人は互いに顔を見合わせ、財布を取り出した。

 

「いいか?俺達の全財産をはたいてでも……!」

「わかっているとも……!」

 

2人は大枚はたいてでもスゲーナスゴイトパスを手に入れるつもりだった。そして、競りが始まった。

 

「えー…スゲーナスゴイトパス、キロ50万!!」

『なにっ!!?』

 

その値段を聞いて、2人は声を上げた。その値段はとてもじゃないが2人の持ち金では買えなかった。

 

「どうする……!?」

「さすがに50万は払えないぞ……!!」

 

2人が戸惑っていると……

 

「買った!!」

 

その時、市場には似つかわしくない可愛らしい女性の声が聞こえてきた。

 

「雪花ラミィ!そのタコ買います!!」

 

そう言ったのは、水色の長髪にエルフのように耳の長い女性だった。そのラミィという女性はカバンから札束を取り出し、競り人に突き出した。

 

「マ、マジで50万!?わ、わかりました!」

「よっしゃあ!!伝説のタコゲット〜〜〜!!あ、それ車に運んでくださーい。」

 

タコは大きめのクーラーボックスに入れられ、台車に載せられてラミィと一緒に車へと運ばれていった。

 

「……なさけない……」

「大の男がタコひとつ買えないとはな……まさにタコ野郎……」

「上手いこと言ったつもりか。……あの女性と交渉してみるか。」

 

ソウゴの寒いギャグにツッコミつつ、ソノイはラミィに交渉できないか呟いた。しかし、すぐに首を横に振った。

 

「いや、ダメだ!自分の欲望のために、あの女性からタコを奪うなど……!!鮫山ソウゴ、ここは諦めよう……代わりにスーパーで高いタコを……あれ?」

「すいません……そのタコ、譲ってもらえないだろうか…」

(行動が速い!!)

 

女性から横取りは良くないと首を横に振るソノイをよそに、ソウゴは単身ラミィに交渉しようとしていた。

 

「えー?嫌なんですけど〜?」

「そ、そこをなんとか……」

「はー!?こちとら何ヶ月も前から『食べたい食べたい』って思ってたの!!それを横から略奪しようとすんなっつーの!!」

 

至極当然のことを言われてソウゴは何も言えずに黙り込んだ。ラミィは「参ったか!」と言わんばかりに鼻息を鳴らし、車に乗り込もうとした……だがその前に車はラミィを置いて走って行ってしまった。

 

「えっ!?」

 

ラミィが声を上げると、走ってる車のドアが開き、ドライバーと思わしき男が放り出された。

 

「ドライバーさん!?」

「うっ、うう……急に知らない男が車に入ってきて……車を……!」

「カージャックか!」

 

どうやら車が奪われたらしい。このままではスゲーナスゴイトパスが車ごと奪われてしまう……そんな時、バイクのエンジン音が後ろから響いてきた。

振り向くと、そこにはサイドカー付きバイクに乗ったソノイがいた。

 

「二人とも、乗れ!!」

 

ソノイのその言葉にソウゴとラミィはコクリと頷き、ソウゴはソノイの後ろに、ラミィはサイドカーに乗り込んだ。

2人が乗り込んだのを確認し、ソノイはアクセル全開で車を追跡する。

 

─────────────────────

 

追走は一時間にも及び……ついに追い詰めた。

 

「ええい、しつこいネ!!」

 

追い詰めた採石場で、カージャック犯は車から降りて姿を現した。

出てきたのはチャイナ服、弁髪、ナマズ髭……絵に描いたようなエセ中国人だった。

 

「ワタシ、このタコ転売して大儲けするヨ!邪魔するなヨ!!」

「転売ヤーというやつか……人の物を盗んで金儲けとはみっともない。」

「しかもその格好……中国人をバカにしてるだろ……」

「う、うるさいヨ!ワタシはこのタコで大儲けして……大金持ちになるんだヨ〜〜〜!!」

 

その時、エセ中国人の目が光ると同時に身体が光に包まれた。するとエセ中国人は中国風の鎧兜や様々な球を混ぜ合わせた様な鬼「五星鬼」へと変身を遂げた。

 

「アチョーッ!!」

「やっぱりこうなるか……来い、ムラサメ!!」

 

ソウゴの呼びかけに答え、ニンジャークソードがどこからか飛んできた。

 

「アバターチェンジ!!」

 

ニンジャークソードを掴んですぐ、剣についたギアを回転させ、ドンムラサメに変身。同時に、ソノイも腕につけた腕輪を叩き、光に包まれながら鎧を装着した。

 

「いくぞ!」

「ああっ!」

 

二人は剣を構え、五星鬼に向かって突進。そして同時に剣を振るった。

しかし次の瞬間、五星鬼は身体をまるでタコのようにくねらせ、剣撃をかわした。

 

「なにっ!?」

「ホアチャッ!!」

 

さらにくねる脚で2人を蹴り飛ばし、さらに……

 

「アータタタタタタタタタッ!!」

 

タコの触手のような動きを見せたかと思いきや、連続で手刀を繰り出してくる。

 

「くっ!」

「ぬぅっ……!」

 

無限に繰り出される突きを防いでいくが、その勢いは凄まじく、だんだん後ろに下がってしまう。

 

「オアタァッ!!」

 

ふらついたところで発勁を繰り出し、2人を吹き飛ばした。

 

「なんだあの動きは……」

「ムッフッフッ……中国拳法には形意拳というものがあってネ……虫や動物の動きをマネした拳法で、強力な技を繰り出せるのヨ。私が今、使ったのはタコ拳!その名の通り、タコの動きを再現したのヨ!」

 

五星鬼は得意気に言うと腕や脚をタコのようにクネクネと動かして見せた。

 

「柔よく剛を制す……か?」

「ならば、やりようはある……柔が剛を制するならば……柔を制するのは……水の流れ……!!」

 

ソノイはそう言うと剣を構えず、剣先を下ろした。それを見て、ソノイの考えを理解したムラサメは同じく剣を下ろした。

 

「ん〜?降参?でも、ワタシは容赦しないヨ〜〜〜!!」

 

五星鬼は大人しく立ち尽くしている2人に向かって、腕を触手のように振るい、二人の顔面に叩きつけた……が、その攻撃は2人の身体をすり抜けた。

 

「へっ……?フンッ!」

 

五星鬼は再度攻撃するが、これも身体をすり抜ける。何度攻撃を繰り出しても、何度もすり抜けていく。

 

「こ、攻撃が当たらない!?これはいったい……!?」

 

五星鬼は思わず困惑した。だが、ムラサメとソノイが透明人間になったわけではない。攻撃が当たる直前、目に止まらぬ速さでよけただけだった。それがあたかも攻撃がすり抜けたように見えたのだ。

 

『ハァッ!!』

「ギャアァァァァァァ!!?」

 

五星鬼が困惑している隙に、2人は剣を振るい一撃を食らわせた。

 

「水の流れは水の生き物を制する……そっちがタコを真似たなら、こっちは水を真似ただけだ。」

「今度はこっちの番だ。ところで……知ってるか?鮫はタコの天敵だということを……!」

 

ムラサメは剣を身体の右脇に構える構え……脇構えを取った。

この構えは、剣の長さを隠し、相手に情報を提供しないことで、相手の攻撃を防ぎやすくすることができる。

脇構えのまま、ムラサメは五星鬼に向かって突進する。

 

「く、来るなーー!!アタタタタタタタタタタ!!」

 

五星鬼はムラサメを寄せ付けまいと連続で手刀を繰り出す。

しかし、様々な角度からの攻撃に対応できる脇構え……連続の手刀を次々と防いでいく。

 

「デヤァッ!!」

 

次の瞬間、ムラサメは下から五星鬼を切り上げ、

 

「ハァッ!!」

 

そこにソノイが追撃で上から剣を振り下ろし、さらに一撃を加える。

 

「トドメだ!」

「ヒ、ヒィィィィ!!」

 

恐怖した五星鬼は背を向けてその場から逃げ出そうとした。だが次の瞬間、足元から「パキパキ」という音が聞こえてきた。

 

「え……?な、なんじゃこりゃあ〜〜〜!!?」

 

目を向けると、五星鬼の足元が凍りつき、五星鬼は氷によって動けなくなっていた。

 

「あれはいったい……」

「なーんかよく分かんないけどー……とりあえず、凍らせてあげたよ。」

 

声が聞こえた方に目を向けると、そこにはラミィが膝をついて手のひらを地面につけていた。手をついた地面からは氷が現れ、それは五星鬼に向かって伸び、動きを止めていた。

 

「今のはお前が……!?」

「こう見えて、氷を自由に扱えるんだよね〜!さっ、早くトドメさしちゃって!!」

 

ラミィの一言にムラサメは頷き、ギアを4回転させる。

 

四鮫(よんシャーク)流鏑鮫(ヤブサメ)!》

 

するとニンジャークソードとムラサメが鮫のような紫色のオーラを纏っていく。同時に、周辺が夜中のように真っ暗になっていく。

 

鮫牙大刀(こうがだいとう)……鳴噛(なるかみ)ッ!!!」

 

鮫のオーラとともに突進し、オーラが地球鬼に噛みつくと同時にムラサメが剣で切り刻む。そして最後に剣による一閃で五星鬼を真っ二つに斬り裂いた。

 

「お…大金持ちに、なりたかった〜〜〜〜!!」

「成敗……」

 

五星鬼は断末魔とともに爆散し、元のエセ中国人の姿に戻り、倒れた。

 

───────────────────────

 

その後……

 

「うわっ、なにこれ!?」

「めちょスゴそうなタコじゃん!」

 

エセ中国人からタコを取り返したお礼として、ソウゴはラミィからスゲーナスゴイトパスを分けてもらい、ホロックスの皆とタコ焼きパーティーを始めていた。

 

「フフッ、苦労して手に入れたタコだ……絶対美味いはずだ。」

「それじゃあ……」

『いただきまーす!』

 

出来上がったタコ焼きを皿に乗せ、その上からソース、マヨネーズ、青のり、かつお節をかけ……食べる。

 

「こ、これは……!うーまーいーぞー!!」

 

タコ焼きを食べた瞬間、あまりの旨さにラプラスは口から光線でも出そうなほど叫んだ。

他の皆も、

 

「なにこのタコ……コリコリで、モチモチで、ジューシー……!」

「しかも中から普通のタコにはない出汁が溢れてくるでござる〜〜」

「生きてて良かったよ〜!」

「ありがとう、ソウくん!」

 

今にも泣きそうなほど、タコの味に感動していた。そしてソウゴ本人も……

 

「あぁ……美味い……思わず昇天してしまいそうだ……」

 

そう言ったソウゴはタコの旨さのあまり口から魂が抜け、霊体になりかけていた。

 

「いやマジで昇天してますけど!?」

「あっ、母さんと父さん……メアリも見える……」

「三途の川見えてんじゃねぇか!!渡るな渡るな!!」

 

一方そのころ、ソノイの方もタコを楽しんでいた。

 

「う、うめぇ!!これがスゲーナスゴイトパスか!」

 

昨日のおでん屋にタコを渡し、それでおでんを作ってもらっていた。

味見で一足先に食べたおでん屋の店主は、その旨さに驚愕した。

 

「そんなにか……では、私も……」

 

ソノイもおでんになったタコをパクリと一口食べる……その瞬間、口の中にこの世の物とは思えない旨味が口の中に広がった。

 

「ああ……!なんという旨さだ……!もう死んでもいい……!!」

 

そう言ったソノイはソウゴと同様、旨さのあまり口から魂が抜け、霊体になりかけていた。

 

「いや、死にかけてるけど!?」

 

魂が抜けかけているソノイを見て、店主は慌ててソノイを蘇生させようとし始めた。

こうしてソノイとソウゴの2人は、心ゆくまで伝説のタコを味わったのだった……

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なに!?“パンドラの箱“が開かれた!?」

「何故だ!?アレは我ら脳人の技術力の全てを集めて作った堅牢な牢獄……!!」

 

そのころ、脳人の世界では元老院の2人が声を荒げていた。

報告に来た伝令兵も慌てた様子で伝えていた。

 

「それが、内側から開けられていて……!」

「なんだと……!?まさか、“封印“されている間に……学習したのか!?“パンドラの箱“の仕組みを……!!」

「このままでは、脳人の世界だけでなく、全ての世界が……灰色に変わってしまう……!!ソノレイ(・・・・)によって……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ソウゴ「じかーいじかい。ドンモモタロウ……貴様に決闘を申し込む!お前を倒さなければ、俺は前に進めない……って、お前らは呼んでいない!!ドン39話『マジなけっとう』!」
ドンモモタロウ「さぁ、楽しもうぜ!」

──────────────────────

最終章への道筋が見えてきました……後何話で終わるかは分かりませんが、夏頃には終わるかも……


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