ルイ「前回までのあらすじ。最初はどうなるかと思ったけど、クロヱもソウちゃんもホロックスに馴染んでいけそう!でも……同時に私の仕事が増えそうな気がするのは……なんでだろう……」
ある日のこと……
「おはようございまーす!ラプラス、ルイ姉いる〜?」
元気よく出社したクロヱは、挨拶をするが目の前でクロヱに背を向けるラプラスとルイは返事を返さなかった。
「おーい、無視すんなよ〜!」
クロヱはラプラスの肩を叩こうと手を振るが、その手はスカッとラプラスの身体をすり抜けた。
「……あれ?」
クロヱが声を上げ、ラプラスとルイはクロヱの方を振り向いた。しかし、その顔に生気はなく、髑髏の顔がクロヱを睨んでいた……
「ギ……ギャアァァァァァァァァァァァァ!!!」
クロヱは驚きと恐怖のあまり雄叫びを上げ、腰を抜かして座り込んでしまった。
「なになになに……なんなのこれぇ!?」
クロヱはただただ困惑し、震えた。すると、
「いい顔するねぇ〜〜♪ふーっ♡」
「ひゃぁんっ!?」
突然耳に息を吹きかけられ、クロヱはビクッと身体を震わせながら変な声を出してしまった。
次の瞬間、部屋の押し入れがガラッと開いた。普段ならそこには荷物などが置かれているはずだが、そこにいたのはソウゴだった。
「沙花叉、何があった!?」
「いや、ソウくんが何してんの!?」
「それはこっちのセリフだ」とばかりにクロヱは声を上げた。
「いや、ここに住むことになったのはいいんだが、さすがにラプラスや鷹嶺と同じ部屋に寝るわけにはいかん……それで相談したら、この押し入れを部屋にされてな……」
(ドラ◯もん……?)
ソウゴの説明を聞き、クロヱはポケットから色んなものを取り出す青タヌキを連想してしまった。
「それより沙花叉、そこにいるピンク髪の女は誰だ?」
ソウゴはクロヱの隣にいるピンク髪の女性が何者なのか指摘した。ソウゴに言われて、クロヱはその女の方に顔を向けた。
「はじめまして、クロたんにソウきゅん?お二人の先輩でホロックスの頭脳〜〜!博衣〜〜こよりだよ〜〜!!こんこよ〜〜♪」
「せ、先輩……?」
ピンク色の髪に獣のような耳を生やし、白衣を羽織り、黒いミニスカートの腰元には何本かの試験管を下げていた。
「せ、先輩、それはいったい……!?」
クロヱは怯えながら髑髏姿のラプラスとルイを指差した。
「ホログラムだよぉ!本物のラプちゃんとルイルイはお出かけ中だよ。」
こよりがそう言うと、ホログラムのラプラスとルイはスーッと消えていった。
こよりは指をパチンと鳴らした。すると、こよりの目の前にパソコンモニターのような画面が浮かび上がった。
「それにしても、さっそくいいデータが取れたねぇ〜♪恐怖耐性なし、反応速度はなかなか……声量もいい感じだねぇ……」
こよりはその画面を見ながら怪しい笑みを浮かべている。
それを見て、クロヱは恐る恐る尋ねた。
「あ、あの……なんなんですか一体……」
「そ、れ、は〜……お二人の身体の研究なのです!!」
『……は?』
二人は声を上げた。
「クロたんの掃除屋としての資質と、ソウきゅんの戦闘力を見極める……のは建前で……」
「建前……?」
「本心は期待の新人ちゃんをこよの手で骨の髄まで調べ尽くしたいっていう……研究者の性だよねぇ……ウフフッ」
こよりは顔を赤らめ、恍惚とした表情で身体をくねらせる。
その姿を見て、ソウゴはドン引きし、クロヱは恐怖を感じていた。
すると、こよりは突然クロヱに掴みかかった。
「お願い!研究させて!!こよが開発……じゃない、才能を磨いてあげるから!」
「い、いや、そういうのいいんで……」
クロヱはこよりから目を反らしながら返答する。
「それに私、ラプラス達に用があっただけなんで……」
「あの二人ならまだ戻らないよ。助手くーん!」
こよりの冷たい一言が走る。すると、こよりの頭に乗っていた小さいロボコヨーテがテーブルの上に降りた。すると、ココロの目が光り、目の前に画面が映される。
「実は二人にはクロたんとは別に研究に協力してもらってるの。」
画面に映像が映し出される。そこに映っていたのは……
『はあぁぁぁぁぁぁ!!トレーナーがいつもと違う!だまされたぁぁぁぁぁぁ!!』
ラプラスは両手両足に重りをつけた状態でダンスレッスンをやらされていた。
すでに息が上がっているが、必死に踊り続けている。
『ラプちゃ〜〜ん!ちゃんとみんなと合わせて〜〜』
『はいっ、先生〜〜〜!!』
続けて映像が切り替わり、今度はルイが映し出される。
『うぐっ……うう、うぅ……辛い……な、なかなかやるじゃない……!』
ルイはラーメン屋で激辛ラーメンに挑まされていた。果敢に食べているが、かなり辛そうに見える。
『残したら罰金一万円だよ!』
『はいぃぃぃぃぃぃ!!』
映像はここで終わっていた。映像を見たクロヱはわなわなと震えていた。そして恐る恐るこよりに尋ねた。
「あ、あの……『だまされた』って言ってましたけど……」
「……それはまた、別の話だよぉ〜〜♪」
(怖い!!!)
ニコニコ笑いながら言うこよりに、クロヱは恐怖を感じた。
「それじゃあクロたん、動きやすいようこの検査着に着替えてね♪」
そう言ってこよりは服が入っている小袋をクロヱに手渡した。クロヱは怪しいと思いながらも、ここは従うしかないと思い、着替えることにした。
「……って、なんですかこれぇ!!?ぜったい検査着じゃな〜い!!」
クロヱが着た服は、とても検査着とは思えないものだった。肩が露出しているニットワンピで、下手をすると胸の谷間や下着が見えてしまいそうだった。
(目のやり場が……見ないようにしなければ……)
クロヱのその姿に、見てはならないと思い、ソウゴは背を向けた。
そして服を着せたこよりはというと、嬉しそうに笑っていた。
「こよの趣味でーす♡」
「趣味かい!!こんな格好で……いったい何を……」
その時、後ろからガチャン!という物音が響いた。クロヱとソウゴは音が聞こえた方に顔を向けると、そこには、ラプラスを模したであろう3mほどある巨大ロボが静かに立っていた。
「っ!!?」
「なにこれぇ!?」
「よくぞ聞いてくれました!これぞ、こよがこの日のために開発した身長・筋肉量、さらには虫歯の数まで瞬時に計測するマシーン!その名も、助手ラプくん!!」
こよりが紹介を終えると、助手ラプくんの腹がガバッと開き、そこから触手が伸びて二人に巻き付いた。
「二人のために3徹して作ったんだよ〜♪それじゃ計測開始〜♪」
「ギャアァァァッ!!なんかこんな拷問器具見たことあるんだけど〜〜!!」
「は、離せ……うぉぉぉぉ!!」
抵抗虚しく、二人は助手ラプくんの中に飲み込まれ、腹が閉じられた。
そして、その腹の中では……
「ちょっ……あはははははっ!くすぐったい〜〜!!」
二人は腹の中から出てきたマジックハンドに身体をまさぐられていた。クロヱはあまりのくすぐったさに笑い声を上げていたが、ソウゴは笑っていなかった。くすぐったいのに強い……というわけではなかった。
(……困った。胸が……当たってしまう……)
腹の中で二人は密着状態になっていた。そのせいでクロヱの胸がソウゴの身体に当たってしまっていた。オマケに谷間が見えてしまい、目のやり場にも困った。
「ぁん、ソウくん〜〜!なんとかしてよ〜〜〜ひゃんっ!」
(そうしたいが……いかんせん……)
ソウゴは先ほどからずっと目を伏せていた。
(まじまじ見て、沙花叉に恥をかかせるわけには……!)
「ソウくぅん……んあっ……助けてぇ……」
艶めかしい声を出してしまうクロヱに、ソウゴは早くなんとかしなければ、という気持ちになったが、どうすることもできない……
「ふむふむ……」
そんな二人をよそに、外ではこよりが二人のデータを測定していた。
「クロたんは運動能力はないけどリズム感は良し!IQもよし……これは任務に活かせるなぁ。後、アツいのが苦手で通常より皮脂が多い……そういう種族なのかな。ソウきゅんの方は……運動能力が常人の2、3倍……筋肉の付き方も、まるで軍人さんみたい!後、なんといっても面白いのが……あのサングラス!」
こよりが手に取ったのは、助手ラプくんに取り込まれる直前、ソウゴが落とした紫色のサングラス。
「かけた時にだけ見える別の世界……色んな場所に通じるドア。でも一番不思議なのは、これのメカニズムだよねぇ〜。かけただけで別世界が見えるサングラスなんて、少なくともこの世界の技術じゃないし、こよにも作れないなぁ……」
こよりがサングラスを分析していた、その時……
「も、もう無理ぃ!!」
クロヱは叫び、思わず中から助手ラプくんを蹴り飛ばした。その瞬間、助手ラプくんがビーッ!ビーッ!という音を立てた。
「異常事態発生!!エマージェンシーモード起動。本機は60病院後に爆発します!」
「わわわ……やっばーい!!」
助手ラプくんから警告音が鳴り響き、同時に腹が開き、2人が排出された。
「クロたん!ソウきゅん!」
「お、俺は大丈夫だ……沙花叉、無事か?」
「ま、まだ余韻が……」
くすぐられた余韻が残っているのか、沙花叉はピクピクと身体を痙攣させながら脱力していた。
「いったい何が起きてる!?」
「機密データが人の手に渡らないように、ちょっとしたエラーで爆発するようプログラムされてるの。」
「なんでそんな作りにしてるんだ!!?データ削除でもいいだろうが!!」
「47…46……よ、よ、よ……!」
その時、秒読みを始めていた助手ラプくんに異変が起きた。
黒い光りに包まれて、助手ラプくんは姿を変えた。コウモリの翼の様な赤い裏地の黒マントやタキシードの上着等、まるでアルセーヌ・ルパンのような怪盗の服装で構成された鬼、”怪盗鬼”へと姿を変えた。
「データ〜〜〜!!データ守る〜〜〜!!」
「か、変わった!?」
(鬼……!鬼は機械の欲望まで叶えるのか!?)
「データ〜〜〜!!」
怪盗鬼は窓を突き破り、外へ飛び出していった。
「逃がすか!」
《ニンジャークソード!》
ソウゴは後を追って窓から飛び出した。それと同時にニンジャークソードが飛んできた。
「アバターチェンジ!!」
《ドンムラサメ!切り捨てソーリー!》
剣を手に取り、落下と同時にドンムラサメへと変身したソウゴ。
着地とともに剣を構えた。
「ドンムラサメ、参るッ!!」
「ソウきゅんが変身した……!アレがラプちゃんが言ってたドンムラサメ……」
窓からこよりが戦いを見守る中、ムラサメの剣と怪盗鬼の剣がぶつかりあった。すると、
「かあっ!」
怪盗鬼の右眼についているモノクルから眩い光が放たれた。
「うっ!目が……!」
至近距離から目眩ましをくらったムラサメは思わず怯み、片手で目をかばった。さらに怪盗鬼はモノクルから光弾を発射し、ムラサメを吹き飛ばした。
「うわっ!?くっ……!」
吹き飛ばされ、倒れるムラサメだが、立ち上がって剣を構えなおす。
怪盗鬼はもう一度目眩ましを食らわせようと、モノクルを向けた。しかし、
《
ギアを一回転させ、剣を地面に突き立てた。ムラサメの身体は地面に吸い込まれ、怪盗鬼が放つ光を回避した。
「ハッ!」
そして足元から飛び出し、怪盗鬼を剣で斬る。もう一度地面に潜り、死角からもう一撃を食らわせる。
「ウガッ!!」
「トドメだ……」
ムラサメは静かに呟き、ギアを3回回転させた。
《
地面を斬りつける事で、3つの斬撃をサメの如く地中に潜行させる。それを見て、怪盗鬼はすぐに逃げ始めたが無駄なことだった。
「三枚おろしだ。」
斬撃は怪盗鬼を捉え、怪盗鬼を3つに切り裂いてしまった。そのまま爆発が起こり、助手ラプくんは元の姿に戻った。しかし……
「30…29…」
助手ラプくんは起き上がり、秒読みを続けていた。
「自爆が解除されていない!?」
「ソウきゅんっ!助手ラプくんの背中に3つボタンがあるの!それをタイミングよく押して、絵柄を揃えて!そうすれば緊急停止させられる!」
「だが、今からではとてもじゃないが……!」
残り30秒もない……加えて高速回転するルーレットの絵柄を揃える必要がある。ソウゴは戦闘の才能はあっても、ルーレットの才能はない。ここは逃げるしかない……と思った次の瞬間、何かがムラサメの横を通り過ぎた。その正体は、クロヱだった。
「クロたん!?」
「よせ沙花叉ーっ!!」
静止を振り切り、助手ラプくんの背後に回ったクロヱは、意識を集中させ、一気に背中のボタンを3つ押した。その結果……絵柄は揃った。
「……システムダウン……エマージェンシーモード、解除……」
助手ラプくんはプシューと音を立て、そのまま沈黙した。
最悪の結果は回避できた。すると、クロヱは静かに呟いた。
「……爆発なんてダメ。みんなの大切なアジトだし、それにせっかく作ったこのロボットだって、壊れたらもったいないもん。」
「沙花叉……お前、あんな恥ずかしい目にあって……」
「そりゃあ……男の子の前であんな目にあったのはめちょ恥ずかしかったけど……」
思い出したのか、クロヱは顔を赤くしながら指と指を合わせてモジモジし始めた。しかしすぐに笑顔を見せ、話を続けた。
「でも、こより先輩が沙花叉のこと知ろうと思って作ったんだから……それ自体に悪気はないと思う!だから沙花叉、こより先輩を許すし、逆に先輩のこと知りたいっ!」
「……お人好しだな。俺だったらたたっ斬っているところだ。」
「それはソウくんが暴力的なのーっ!」
2人が話しているのをよそに、こよりはというと、クロヱを見てポーッと頬を染め、見惚れていた。クロヱ自身に……というより、クロヱが言っていたことに惚れたのだ。
(クロたん……あんな目にあっても、こよのこと許してくれるなんて……この新人……やりおるっ!)
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「……なるほど、我輩達がいない間にそんなことが……」
「あったわけね……」
地獄のダンスレッスンと激辛チャレンジを終えてラプラスとルイはアジトに戻ってきた……が、疲れ切って死にかけていた。
「筋肉痛がやべぇ……い、いてぇ……」
「私もずっと口の中ヒリヒリしてる……」
弱々しくなっている二人を見かね、クロヱは声をかけた。
「二人とも災難だったねー、嫌々実験に付き合わされて……」
「えっ?別に嫌々じゃないぞ。我輩、なんだかんだダンス好きだし……だから今日は楽しかった。」
「私も激辛料理大好きだから……死ぬほど辛かったけど、美味しかった!」
辛そうな様子とは裏腹に、二人は楽しそうに笑っていた。その様子に、クロヱとソウゴはキョトンと目を丸くした。
「じゃあ、みんなドッキリじゃなかったの!?」
『いや、ドッキリではあった。』
「無理やりやらされたからな……」
その時、クロヱは一つの考えに思い当たった。そのことをソウゴに耳打ちで伝え始める。
(ソウくん……こより先輩、みんなの好みを分かった上でやってたんだよ。多分、こより先輩なりのサービスなんじゃないかな。)
(それは買い被りすぎじゃないのか?俺はまだ信用しきれん。)
(頭かたいな〜〜)
まだ疑心暗鬼になるソウゴを笑い、クロヱはこよりに近づき、手を差し出した。
「こより先輩、今後ともよろしくお願いします!」
クロヱが握手しようと手を差し出すと、こよりは笑ってそれに応えた。
「先輩なんてつけなくていいよ!好きなように呼んでね!」
「じゃあ、こよちゃん!よろしくね!」
こよりも手を差し出し、二人はギュッと握手をかわした。
それを見て、ソウゴはため息をつきながらも笑った。同時に、この場にまだいない人間のことを考えた。
(そういえば、後一人いないんだったな……確か、風真いろは……だったか。)
残る仲間は”用心棒”風真いろはのみ……
またまた波乱の予感が近づいてくるだろう……
「じかーいじかい。拙者は用心棒、サムライ……とっても強いでござる!でも拙者……実は人見知りなのでござる!新入り2人と上手く話せる気がしないでござる!!接し方を教えてほしいでござる〜〜〜!!ドン5話『いろはにゴザル』というお話し、でござる!」