今回で最終話……これで本当に終わりです。
戦いが終わって1週間……この世界を守るために来てくれたスーパー戦隊達は1組、また1組と少しづつ去っていった。
その別れ際、グリムは知ることになる。結城凱が消えたことを。
「凱が……本当は死んでた……!?」
凱は昔、ジェットマンの戦いが終わった後、竜と香の結婚式に向かう途中で引ったくりに刺されて死んだ……
その事実にグリムは驚くことしかできなかった。
そんなグリムに対し、レッドホークこと竜はグリムの肩を叩いた。
「君は、凱の友達でいてくれたんだろう?……ありがとう。きっと凱の奴も、君みたいな友達を持てて光栄に思っているはずさ……」
「……そうだといいけどな……」
(バカ野郎……さよならぐらい言わせろよ……!!)
グリムは悔しさのあまり拳を握りしめた。どうして何も言ってくれなかったのか、どうして凱の異変に気づけなかったのか……あまりの歯痒さに歯軋りを立てるぐらいしかできなかった……
そしてグリムは、大切なことを伝えなければいけない。ルーナにグレイが消えたことを……
「……グレイ、死んじゃったのら?」
「ああ……元々死んでたアイツは、一時的に蘇っただけで……時間切れだったんだ……」
戦いが終わり、ジェットマンと別れた後、グリムはこのことをルーナに伝えた。
ルーナは驚く……というよりは落ち着いた態度を見せていた。
「……情けないのら。ルーナイトのくせに……」
「ルーナちゃん……」
ルーナはポケットから1枚の写真を取り出した。その写真はグレイと他のルーナイト達の集合写真だった。写真に写っているグレイはルーナイト達が作った特製のハッピとハチマキを身に着けていて、お世辞にも似合うとは言えなかった。
「それは?」
「最後に会った時、ルーナに渡してくれたのら……『俺の宝物だから預かってほしい』って言ってたのら。」
取り出した写真をキュッと握るのと同時に、口元もキュッと紡いだ。
表情こそ変わっていないが、きっと悲しんでいるのかもしれない。決して泣くまいとしている様にも見える。
「……“次“に会ったらお説教して、ルーナの好きなお菓子たくさん買わせてやるのら……!」
「……強い子だな、ルーナちゃんは。」
きっとグレイは死んでいない。生まれ変わってどこかでひっそり生きているかもしれない。ルーナはそう考えていた。それを理解したグリムはフッと笑った……
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「レイジ、お客さん来たよ。」
「はい。いらっしゃいませー。」
喫茶どんぶらに従業員が一人増えた。青年の名は「園田レイジ」……この男、前はソノレイとしてソウゴ達と敵対していた男だった。
だが、あの戦いの後、ソノレイは消滅しなかった。代わりに白い髪は黒に変わり、肌も白から人間味のある肌色に変わった。
『ぼくは……誰?』
そしてどういうわけか、ソノレイはすべての記憶を失っていた。自分の名前、過去、自分がやったことを覚えていなかった。
あの“虹の光“を受けた後遺症だろうか、それとも鎧が砕けた結果だろうか……どちらにせよ、ソノレイは脳人から普通の人間になった。
記憶がなくなったソノレイに、どんぶらのマスターは園田レイジと名付け、住み込みの従業員として働かせることになった。
「レイジ、そろそろお昼にしよう。賄あるよ。」
「ありがとう。」
レイジとなったソノレイは、ソウゴとドンモモタロウからあるものをご馳走された。
それは2人の好物、タコ焼きとおでんだった。
「はふっ……やっぱり、美味しいな……タコ焼きとおでんは……」
初めて食べた時から、その2つが好物になったレイジ。そして、好きなものはもう一つ……
レイジは絵を描くことが好きで、よく描いているのはスーパー戦隊とホロックスの絵だった。
「上手く描けてるかな……」
いつ会ったのか、そもそも何故自分は彼らのことを知っているのか、名前を知らない彼らを何故好きになったのか分からない……だがこれだけは分かる。
スーパー戦隊もホロックスも、人のために行動できる者達だということだ。
「また会いたいな……」
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「これからソノレ……レイジはどうなるんだろうね?」
「さぁな……少なくとも、前よりはマシだろ。さてと……行くか。」
アパートを引き払い、荷物をまとめたグリム。この世界との別れの時だった。
見送りにはかなたとちょこが来てくれた。
「世話になったな、かなたそ、ちょこ先生。」
「帰っちゃうんだね……なんだかさみしいね……」
「何言ってんだ。永遠にお別れってわけじゃ……わっ!?」
さみしそうにするちょこを見て、笑って慰めようとするグリムだったが、突然ちょこはグリムを自分の胸元に引き寄せギュッと抱きしめた。
「お、おおっ……!」
「また来てね?君のことは結構気に入ってるからね。」
「は、は〜い……♡も、もうちょいこっちにいようかな〜♡」
胸の感触に一瞬でデレデレになって決心が揺らぎかけるグリム……その時かなたは声をかけた。
「グリ兄……さよならなんて言わないからね。」
「かなた……」
かなたの一言を聞いて、グリムはちょこから離れてかなたの手を取った。
「俺がいなくなって、寂しくねぇか?」
「自惚れすぎ!ぼくには同棲してる女がいるから!」
「へー、じゃあお別れのキスはやめとくか。」
2人は互いに笑い合った後、眉をひそませた直後互いに抱きしめ合った。
「……元気でな、かなた。」
「うん……またね、“グリム“。」
最後に2人は愛称ではなく本名で呼び合った。そしてグリムは2人から背を向け、ヤンマが作った「ワールドジャンパー」を起動させた。
目の前にワームホールが現れ、グリムはその中に消えていった……
「行っちゃったね……かなたそ、いいの?」
「……だって、グリ兄は奥さんと子どもいるし……」
「……好きだったんでしょ?グリムくんのこと……」
ちょこの一言を聞き、かなたは身体を震わせた。かなたは密かにグリムに好意を寄せていた。だが、グリムの故郷に残された嫁さんと子どものことを考えると、一線を越えることなどできなかった。
だからこそ気持ちを抑えてグリムを送り出したのだ。
(グリ兄……大好きだったよ……!)
(かなたそ……お前のこと、結構好きだった……)
グリムはまた背負う。家族の死だけではなく、この世界で出会った仲間の死、少女の想いを……
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そして、別れはもう一つ……
「……世話になったな、みんな……」
ソウゴも別れの時が近づいてきた。
「……終わるまで待ってるからな。」
ソウゴの後ろには大也と巨大な車に変形したブンドリオがいた。2人は他のスーパー戦隊が帰っていく中で最後まで残った。
ソウゴのことを送ってやるつもりだったのだ。2人を背に、ソウゴは目の前にラプラス達に別れを切り出す。
「今まで、本当にありがとう……」
「そのセリフ、昨日から何度も聞いたよ!」
「ソウちゃん、これからまっすぐ自分の世界に帰って、妹さんに会うの?」
ルイの言葉にソウゴは首を横に振った。
「いや……まだだ。やりたいことがあるからな。」
「やりたいこと?」
こよりの疑問の声にソウゴはコクリと頷いた。
「ああ……俺は、色んな世界を見て回ろうと思っているんだ。俺は、お前達と出会うまで……ロクな人間じゃなかった……」
ソウゴは自分の今までの人生を悔いるように顔を下に向けて俯く。しかしすぐに顔を上げる。
「だが、俺はドンモモタロウに打ちのめされて、お前達と出会って……自分がどれだけ小さい人間なのか分かった。」
ソウゴは語りながら、今度は顔を上に上げて空を見上げた。
「世界は広い……俺より経験を積んだ奴や、ドンモモタロウより強い奴だっているはずだ。だから、俺は色んな世界を見たい。色んな人に会って、そして考えたい……俺自身がどんな風に生きたいのかを。」
ソウゴが出した答え……それは世界中を旅することだった。旅先で様々な物を見て、感じて……その果てにまた答えを出す……
その旅に同行するのは、ソウゴだけじゃなかった。
「ムラサメ……いや、ソウイチ。お前は来なくてもいいんだぞ。」
「いえ、ぼくも行きます!」
ソウゴの旅に同行するのは、ニンジャークソード……ソウイチだった。
最初、ソウゴはソウイチを連れて行くつもりはなかった。だが、ソウイチの強い希望で旅の同行を頼んだ。
「ぼくも、色んな物を見て、体験したいです。『ダメ』と言われてもついていきますから!いいですよね、マザ……母さん!」
『ええ、あなたの好きにしなさいソウイチ。』
「しかたない……」
呆れたようにフッと笑うソウゴ。名残惜しそうにラプラス達の方を見て、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「ラプラス……お前は総帥のクセにクソガキだった……だが、そんなお前だからこそ、チームはまとまったんだ。」
「クソガキは余計だ!」
まずはラプラス、つづけてルイ……
「ルイ、お前の作った飯は美味かった。またいつか食べたいくらいだ。」
「……来る時は連絡して?好きな物作って待ってるからね。」
次にこより、
「こより……お前の発明には困らされたし、助けられた。またお前の発明を見てみたい。……迷惑にならん範囲でな。」
「ソウきゅんが望むなら、どんな物だって作っちゃうよ〜♪」
次にいろは、
「いろは、お前とはあまり手合わせできなかったな……次に会った時は……」
「その時は全力でお相手するでござる!」
そして最後にクロヱ……
「クロヱ……」
「ソウくん……」
「俺は……お前に会えてよかったと思ってる。お前が俺を拾ってくれなければ、今の俺はなかった……正直言うと、俺は……」
「離れたくない」……そう言いたいのを必死に堪えた。言ってしまえば、せっかく決めた決心が揺らぎかねない。
そんな時、クロヱはある物を取り出した。
「これ、お弁当……弁当箱は返さなくていいから。」
クロヱが差し出したのは弁当……とは名ばかりの三段重ねの重箱だった。
「これは……」
「ソウくんの好きな物しか入ってないから!これ食べて……いってきて……」
クロヱは目に涙を浮かべながら弁当箱を差し出した。それをソウゴは受け取った。クロヱの泣きそうな顔に釣られて泣きそうになるが、必死に耐え……5人から背を向ける。
「……いってくる!」
背を向けながらソウゴは手を振った。
その時、5人は最後の別れに叫んだ。
「おーい!!いつでも戻ってこいよー!!」
「寝床欲しかったら用意しとくからー!!」
「妹さんにもよろしく伝えてねー!!」
「次に会ったら、いっぱいパーティーするでござるよー!!」
「ソウくーん!!沙花叉も……ソウくんに会えてよかった!!大好きだよーーー!!」
別れの叫びを背に受けながら、待っていた大也の元にたどり着いたソウゴ。
「……もういいのか?」
「ああ……乗せてくれ。」
その言葉に大也は頷き、ソウゴをブンブントレーラーに乗せた。
「よっしゃ!いくぜ、大也、ソウゴ!!ブンブンブーン!!」
トレーラーに変形したブンドリオはアクセルを吹かしながら走る。すると目の前にワームホールが現れ、ソウゴ達はその中に消えていった……
「……行っちゃったね……」
「うん……でも、また会えるよね……」
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ワームホールに入り、ブンブントレーラーは異空間を走る中、ソウゴは助手席に座ってため息を吐いていた。
「よく泣かなかったな。」
「俺は大の大人だ……泣くわけにはいかんだろう……」
その言葉に大也はフッと笑った。
「その弁当箱、中身はどうなってるんだ?」
大也にそう言われ、ソウゴは重箱の蓋を開けた。中身を見た瞬間、ソウゴは吹き出した。
「プッ……あははははははは!!なんだこれは!!」
重箱の中身は、ギチギチに詰められたタコ焼きだった。クロヱは「ソウゴの好きな物を詰めた」と言っていたが、まさかこうなっているとは思わずソウゴは笑った。
「まさか、全部タコ焼きか!?あははははははは!!」
ソウゴは笑いながら2段目も確かめてみると、やはりタコ焼きだった。だが、3段目は違った。
「ん……?」
3段目に入っていたものを見てソウゴは笑うのをやめた。中に入っていたのは、タブレット端末だった。
ロックはかかっておらず、簡単に開くことができた。アプリは入っておらず、あるのは動画ファイル一つだけだった。
ソウゴはその動画を開いた。すると……動画に映ったのはランニングウェアに身を包んだ細身の男だった。その男にはどこか見覚えがあった。
「こいつ……どこかで……」
『えーっと、僕あんまり覚えてないんですけど、あなたは僕を助けてくれたんですよね?ありがとうございます!!』
その言葉に、ソウゴは動画に写っている男が誰なのか思い出した。その男は以前、烈車鬼となってしまい暴れていた男だった。
ソウゴが気づくと同時に次の場面に映った。次に映ったのは何回かヒトツ鬼になった忍者男だった。
「我が生涯のライバルよ!俺は貴様に負けたつもりはない!いつかお前に再戦する!!」
また場面が変わり、今度は行きつけの魚屋の夫婦が映る。
「兄ちゃんとホロックスのおかげで魚屋が大繁盛だよ!」
「本当にありがとうねぇ……」
それから何度も場面は変わり、その度に別の人物が映ってソウゴに礼を言っていく。
「これ、もしかして……」
ソウゴは気づいた。もしかしてこの動画はソウゴが今まで会ってきた人々が映っているのではないかと。
動画にはどんぶらのマスター、ソノセン、脳人3人衆……さらには他のスーパー戦隊達からも、そして……ホロックスからも。
「雑用!その……お前がどこ行ってもホロックスの一員なのは変わらないからな!」
「ソウちゃんは真面目だから、きっとどこ行っても受け入れてくれる人いるよ!」
「ソウきゅん!こよ達、ずっと応援してるから!ソウきゅんの無事を願ってるから!!」
「ソウゴ殿は強いでござる!どんな世界に行っても、どんな相手でも大丈夫でござる!!」
流れてくるホロックス達の言葉に、ソウゴの涙腺は緩んだ。
そして、
「ソウくん、君は……たしかに“ここ“にいたよ。」
最後のクロヱの言葉に涙腺が一気に崩壊した。
目からとめどなく涙がこぼれ、タブレットの画面が見えなくなる。情けない声も出そうになるが、口にタコ焼きを突っ込み嗚咽を隠す。
クロヱ達がくれたそれは、ソウゴがこの世界にいたという証……もっと言うなら、“生きた証“だった。
過ごした時間は短くても、ソウゴはたしかにそこにいた。タブレットに収まった動画がそれを物語っていた。
「クロヱ……!みんな……!!俺は、お前達に会えてよかった……!!」
泣きながら食べるタコ焼きの味、大好きな皆が作ってくれたタコ焼き、そして、仲間がくれた最高の贈り物……
これ以上、何を望むのか……
「ありがとう……!!」
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「ここでいいのか?」
「ああ、すまないな……運び屋。」
異空間への移動の果て、ソウゴは次の世界へとたどり着いた。
そこはパッと見ではクロヱ達がいた世界と変わらないように見えた。
「この先何があるか分からないが……がんばれよ、ソウゴ。」
「ああ……ありがとう、運び屋。」
2人は互いに握手をし、その後は何も言わずに別れた。
ソウゴは先へと進んだ。この先、何があるかは誰にも分からない……
だが、不安などなかった。
「おっ、変わった店があるな……後で行ってみるか。いや、まずは寝床と金をなんとかしないとな……」
ソウゴは色んな人々と出会った。強敵と戦った。過去を乗り越え、困難に打ち勝った。
今ならなんだってできる。どんなところでもやっていける。
「おっと!すまん……ぶつかってしまったな……」
「いや、俺の方こそすまん。」
そして、行く先々で……
「お前、名前は?」
「鮫山ソウゴ、だが……」
「俺は桃井タロウ!!また“縁“があったな!!」
そう、“縁“を作っていく───
「ドン!ホロックスみーてぃんぐ!」……めでたしめでたし
エピローグ「ただいま」
とあるマンションの一室、そこには1人の女性がいた。
「お兄ちゃん……私ね、たくさんの人に助けられた……本当にいろんな人に……」
1枚の写真を前に、女性はにこやかに話しかけている。
しかし、話していく内に悲しげな顔を見せる。
「でも、まだ一人だけ……お礼を言えてない人がいる……お兄ちゃんだよ。お兄ちゃんは私を拾ってくれた……私を助けてくれた……お兄ちゃんがいなかったら、私……みんなと会えなかった……」
女性は写真に映る兄に話しかけながら1枚の手紙を取り出した。
「この手紙が来て、私……本当に嬉しかった。生きてたこと、知ることができたから……」
その手紙は死んだと思われていた、行方不明の兄からの手紙だった。その手紙を読んだ瞬間、例えようのない喜びがこみ上げた。
「待ってるから。私、お兄ちゃんが帰って来るの待ってるから……」
その時、インターホンが鳴り響き、女性はドアを開けた。
「あ……」
「ただいま、ノエル。」
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「ドン!ホロックスみーてぃんぐ!」はいかがだったでしょうか。
これで本当に終わりになります。外伝とか続編は特に予定しておりません!
全体を振り返って……
最初こそ前作の「SPY×AGITΩ」と同じノリでやろうと思ったんですけど、やはりライダーと戦隊ではかなり勝手が違いました。
前作には「スパイファミリー」という舞台が土台となったのでストーリーが作りやすかったのですが、ホロライブひいてはホロックス側はvtuberということで土台となる話が特にない(コミカライズはあるけど)ので、ややストーリーは作りづらかったかな……また、戦隊とホロライブは人数が多かったので全員出すことができなかっし、活躍させられませんでした。
次があるならもっと上手く活躍させたいです。
後、読者が少ないのもあって心が折れかけたこともありました。
でも、それでもお気に入り登録してくれる人や毎話コメントしてくれる人がいたおかげでエタることはありませんでした。
最後になりますが、読者の皆様……最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!!