前回までのあらすじ
「いや〜、クロヱが思ってたよりいい子でよかったでござる〜♪ソウゴ殿はちょっとまだわからないでござるが、これから知ればいいでござる。あれ?ソウゴ殿、バイト先見つかったでござるか?」
「……お前はいったい誰だ?」
真っ白な空間の中、目の前には青い目をした黒い鎧の騎士がいた。ドンムラサメとは違う……だが、自分はコイツのことを知っている。
同時に……自分はコイツに恐怖を感じている。
すると、黒騎士はこちらに向かってゆっくりと歩き始めた。
「来るな……!」
『思い出せ……記憶を失っても、お前の罪は消えない……』
逃げようにも身体が動かなかった。そうしてる間に黒騎士はどんどん迫ってくる。
『思い出せ……思い出せ……!!』
その真っ黒な手が、こちらの顔に覆いかぶさってくる……
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「やめろっ!!!」
ソウゴは思わず叫んでいた。今のは、夢だったのだろうか……と、自問した。
その時、ソウゴのいる押し入れの襖が開いた。
「ソウちゃん、どうしたの?大声出して……」
襖を開けたのはルイだった。ソウゴの声を聞いて、何があったのか気になったようだ。
「なんでもない……大丈夫だ。」
「怖い夢でも見た?そうだ!ホットミルク作ってあげる!」
そう言ってルイはソウゴの了解も取らずにキッチンへ向かっていった。
正直飲む気にはなれなかったが、せっかくのルイの厚意を無下にはできない。ソウゴはルイが作ってきたホットミルクを飲んだ。
「落ち着いた?」
「……ああ。」
「……やっぱり不安?明日、例の場所に行くの……」
明日、ソウゴはある場所へ行くことになっていた。そこには、自分の過去や色々なことを知っているかもしれない男がいる……
「……別に大丈夫だ。」
「無理しちゃダメだよ?慌てる必要なんかないんだから……おやすみ。」
ルイは一言そう言って寝る前の言葉を交わすと静かに襖を閉じた。
(……慌てているのか?俺は……)
夢を見てしまったからだろうか……自分でも気付かない内に焦っていたようだ。
ソウゴは焦りを振り払い、そのままホットミルクを飲み干し、毛布にくるまって眠りについた。
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翌日、
「ここか?」
「ああ……」
ソウゴとホロックス5人はとある喫茶店の前に来ていた。その喫茶店の名は、”喫茶どんぶら”。
ここに、ソウゴの過去やニンジャークソードのことを知る男がいる。
ソウゴ達は意を決してドアを開けた。
「……いらっしゃい。」
ドアベルが鳴るとともに、店のカウンターで本を読んでいた店のマスターと思われる男が静かに呟いた。
(ソウくん、あの人?)
(そうだ。)
ソウゴ達はマスターを凝視しながらテーブル席に腰掛けた。するとマスターは立ち上がり、皆にお冷を差し出した。
「ご注文は……」
「お前、ドンムラサメを知っているな?」
注文を聞こうとしたマスターに対して、ソウゴは単刀直入に尋ねた。しかし、マスターの反応は……
「……お決まりになりましたらお呼びください。」
全く意に反さず、ソウゴは軽く舌打ちを打ちながらメニュー表を手に取った。
「お前ら、何でもいいから頼むぞ……でないと問いただせない。」
「う、うん……」
ソウゴ達は黙々とメニュー表に目を通し、何を注文するか考えた。そして5分後、マスターを呼んだ。
「ご注文は?」
「えっと……沙花叉、ショートケーキとメロンソーダ!」
「こよりは抹茶ケーキと〜、ほうじ茶!」
「私は……フルーツタルトと紅茶を。」
「風真はシュークリームとアイスコーヒーをお願いするでござる!」
「俺はコーヒーだけでいい。」
それぞれ注文し、マスターはそれを伝票に書き留めていく。残るはラプラスの注文だが……
「我輩、コーラと……後、ハンバーグ食べたい。」
『は?』
ラプラスの注文にマスター以外の5人が声を上げた。何故なら、この店のメニューにハンバーグはないからだ。
「ラプ殿〜、メニューにないものを注文するのはどうかと思うでござる〜」
「でも我輩は食べたいんだ!」
「だから、メニューには……」
「あるよ。」
『はい?』
返答したマスターの一言に、皆は声を上げた。
「喫茶どんぶらにないものなんてない……」
マスターはそう言うと、店の奥の方へ消えていった。
それからしばらくして……
「おまたせしました。」
マスターは注文された料理を次々と運んできた。沙花叉にはショートケーキとメロンソーダ、こよりには抹茶ケーキとほうじ茶、ルイにはフルーツタルトと紅茶を、風真にはシュークリームとアイスコーヒー、ソウゴにはコーヒーのみとラプラスにはコーラと鉄板に乗ったハンバーグを出した。
「お〜っ!ホントにハンバーグきたっ!!」
「ごゆっくりどうぞ。」
マスターは軽く一礼してカウンターの方へ戻っていった。
「……な、なんか変わった店だね。」
「もしかしてハンバーグ裏メニューとか?」
「そんなことはどうだっていい。」
ヒソヒソと話す沙花叉達に対し、ソウゴは立ち上がり、マスターの方に近づいた。
「おい、俺の名は鮫山ソウゴだ。この名前……いや、俺の顔に見覚えはないか?」
マスターは何も答えない。しかしソウゴはめげずにもう一度尋ねた。
「俺の元にくるあのニンジャークソードってのはなんだ?お前は知ってるんだろう!?」
「………」
しかし、それでもマスターは答えなかった。その態度にソウゴは怒りを感じ、拳をドンとテーブルに叩きつけた。
だが、すぐに落ち着き、ある物を取り出した。
「……これならどうだ。」
マスターの前に突き出したのは、面接に出す履歴書だった。
「ここで働きたい。」
「……いいよ。」
『いいの!?』
即答したマスターに皆声を上げた。
それからというもの、ソウゴは喫茶どんぶらで働くことになったのだった。
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それから1週間後……
「あれから1週間経ったけど、ソウくんちゃんと仕事してるかな?」
「雑用の仕事ぶりを見にいくか。」
その日、ホロックスの5人はソウゴの仕事ぶりを見るため(からかうため)、どんぶらに向かっていた。
「……なんだこれ?」
どんぶらにたどり着くと、そこで見た光景に声が上がった。
喫茶どんぶらに行列ができていたのだ。しかも全員が女性客。横入りするわけにもいかないため、沙花叉達は列に並ぶことにした。
それから数十分後、
「いらっしゃいま……あっ。」
「す、すごい繁盛してるね。」
店の中も女性客で埋まっていた。ソウゴは沙花叉達をテーブル席に座らせ、お冷を出した。
「なんでこんなに女の子が……?」
「分からん……俺が働き始めてから3日でこうなった。」
「すいませ〜ん♡注文いいですか〜♡」
その時、客の一人がソウゴを呼んだ。ソウゴはその席へ向かい、伝票を取る。
「ご注文をどうぞ。」
「ダージリンお願いします♡」
「私、アイスコーヒー♡」
「ダージリンはファーストフラッシュとセカンドフラッシュがございますが……」
「ファーストで♡」
「かしこまりました。」
ウットリと見とれている女性客を横目に、ソウゴはカウンターのマスターの元に向かった。
「ダージリンのファーストフラッシュとアイスコーヒー。」
「はいよ。」
「……おい、いつになったら知ってることを……」
「あっちを向いて。」
ソウゴは言われるまま後ろを振り向いた。振り向いた先にはたくさんの女性客。同時にマスターもその方向に向かって微笑みを浮かべた。
『キャーーーーッ♡イケメンのツーショットーーー♡』
マスターは絵に描いたようなイケメン、ソウゴもどちらかといえばイケメンな方だ。
「あー……店が混んでる理由、なんとなく分かってきたぞ。」
『同意』
なんのことはない。イケメンの店員2人を見たいがために女性客が集まっている……というだけの話だった。
「……閉店まで待とうか。」
ルイの一言に皆、コクリと頷いた。
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夜になり、閉店の時間が訪れた。
「ようやくだ……」
片付けを終え、ソウゴはマスターの前に立ち、睨みつける。
「さぁ、答えてもらうぞ。お前が知ってることを……」
「……いいよ。」
マスターは静かに呟くと、客席の方に座った。
「……君が戦っている鬼は、”ヒトツ鬼”という悪鬼。意思あるものの内なる欲望に反応して取り憑く怪物だ。」
「ヒトツ鬼……」
ようやく判明したことがひとつ……敵の正体は”ヒトツ鬼”という怪物……
「その、ヒトツ鬼を発生させるのを抑えることはできないのかな?ほら、ウィルスとかは元を絶つ必要があるよね?」
こよりが意見を述べると、マスターはそれに答え、首を横に振った。
「それはできない。ヒトツ鬼は自然発生するもの……加えて、意思のあるものは総じて欲望を持つ。それを止めることはできない。」
「うーん……確かに人から欲望を取り除くのは不可能でござるなぁ……」
欲望がある限りヒトツ鬼は現れる……いろはの言う通り、人間から欲望を取り除くなどできはしない。
「……なるほど。とりあえず敵の正体は分かったな……なら、あのニンジャークソードはなんだ?」
「……あれは……」
次の謎であるニンジャークソード……そのことを語ろうとした瞬間、店の窓に何か投げ込まれ、ガラスがパリンッ!!と音を立てて割れた。
「キャアッ!!?」
「なんだ!?」
投げ込まれたのはレンガだった。それを見てソウゴはすぐさま店の外へ飛び出した。店から出ると、そこにいたのは、そこそこ男前の青年だった。
「お、お前だな……!?最近店に入ったスカしたイケメンってのは……」
「別にスカしてはいない。なんの用だ?」
(イケメンであることは否定しないんだ……)
青年はソウゴに向かって指を差したかと思うと、拳を握り、プルプルと震えた。
「き、今日は彼女とデートだったんだ……なのに、なのに……!この店に入ったイケメンが気になるって言って、デートドタキャンされたんだぁぁぁぁぁぁ!!」
青年は滝のように涙を流しながら雄叫びを上げた。すると、青年の身体が光に包まれ、ヒトツ鬼へ姿を変えた。
ファラオ、土偶、ピラミッド等、古代文明をこれでもかと盛り込んだ金色の鬼、超力鬼の出現だ。
「オーレだってイケメンなのにぃぃぃぃぃぃ!!」
超力鬼は雄叫びとともに両腕をブンブンと振り回しながら、ソウゴに向かって突進してきた。
しかし、ソウゴは突進してきた超力鬼を踏み台にして飛び越えた。
《ニンジャークソード!》
その時、同時にニンジャークソードがソウゴの元に飛んできた。ソウゴはそれを手に取り、着地と同時にギターのように構えた。
《what's up!》
「アバターチェンジ!!」
《ドンムラサメ!切り捨てソーリー!!》
ドンムラサメに姿を変え、”霞の構え”で剣を構えた。
「ドンムラサメ、参る!!」
「ぐぬぬぬ……!!カッコつけやがって〜〜〜!!」
超力鬼は怒りのままに突進し、ラリアットを繰り出した。しかし、ムラサメはそれをスライディングでよけ、剣で超力鬼の背中を斬る。
「ぐおっ!?」
「戦いにおいては素人だな……」
「ふざけんな!こっちだって週一でジムに通ってんだ!!」
超力鬼はムキになりながらボクシングの構えを取りながら、またも考えなしに突進していった。
《
ムラサメはギアを一回転させてトリガーを押し、剣を地面に突き立てた。
ムラサメの身体がまるで潜水するかの如く地中に潜り込んだ。
「あ、あら!?」
「こっちだ!」
足元から突然飛び出し、超力鬼を蹴り飛ばす。
「……見事だ。ニンジャークソードを容易く操ってる。」
ムラサメの戦いぶりを見て、マスターは感嘆の声を上げていた。
それを見かねて、ラプラスは声をかけた。
「お前、やっぱり知ってるんだな。」
ラプラスはそう言いながら、マスターを軽く睨みつけた。すると、続けてルイが声を上げた。
「何か知ってるなら話してくれないかな?」
さらに続けてこよりが口を開く。
「こよ、あの剣とサングラス解析してみたけど……二つとも、この地球には存在しない原材料で作られてたの。」
さらに続けて、いろはが……
「そのことも含めて教えて欲しいでござる!」
そして最後にクロヱが声を上げた。
「ソウくんの……仲間のためなんです!教えてくれませんか……?」
ホロックス5人からの心からの訴えだったが、しかしマスターは……首を横に振った。
「悪いがそれはできない。」
「だから……なんで!?」
マスターの返答に、クロヱは掴みかかった。
しかし、マスターは顔色も表情も変えずにその問いに答え始めた。
「……君達のためでもある。」
「え……?」
「真実を知った時……君達は彼のことを”仲間”とは呼べなくなる。それに……真実を知ったら、彼は正気じゃなくなるかもしれない……」
マスターの突拍子もない言葉に、5人は驚きのあまり何も言えなかった。
「……君達は、彼と出会ってまだ日が浅いだろう。君達に真実を受け止められるだけの度量があるとは思えない。」
悔しいが、マスターの言う通りだった。ホロックスとソウゴが出会ってから、まだ一ヶ月ほどしか経っていない。
真実を知り、全てを受け入れられるかと言われたら、自信がなかった。
《what's up!》
《タイムファイヤー!!》
ドンムラサメは、燃える炎のような赤い身体に赤と黒のバイザーをつけた戦士「タイムファイヤー」へと姿を変えた。
「DVディフェンダー!!」
腰に携帯した、恐竜の頭部を模したビームガン「DVディフェンダー」を抜き、光線を超力鬼に浴びせる。
「ぬあぁぁぁ!!こ、このぉ……!!」
もうフラフラになっていたが、超力鬼は最後の足掻きとばかりに飛びかかってきた。
しかし、タイムファイヤーはビームガンを剣へと変形させ、刀身を青く発光させた。
「DVリフレイザー!!」
青く発光する剣を振るい、飛びかかってきた超力鬼をXに切り裂いた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ……!!」
「ジ・エンド……!」
超力鬼の断末魔とともに、背を向けながら武器をホルスターに戻して決め台詞を吐いた。同時に背後で超力鬼が爆散し、青年は元に戻って倒れたのだった。
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「……アイツ、結局大した情報をよこさなかったな……」
帰り道、ヒトツ鬼の情報しか手に入らなかったソウゴは不満気にため息を吐いた。
そんなソウゴを慰めるように、ルイは頭を撫でてきた。
「少しづつでいいと思うよ?」
「そうでござるよ!時間はたっぷりあるでござる!」
「それまで〜、ソウきゅんのことた〜っぷり調べさせてね〜♪」
3人からの優しい言葉に、ソウゴは呆れながらまたため息を吐いた。
その後ろ姿を、ラプラスとクロヱは見守っていた。
「……ねぇ、ラプラス。」
「あん?」
「もし真実を知ったら、どうなるのかな……?」
「……さぁな、アイツ次第だろ。」
ラプラスのその言葉に、クロヱは何も言えず、ただコクリと頷いた。
ラプラスはどう考えているか分からないが、クロヱはマスターの話を聞いてふと思った。
もし、真実を知っても自分達は受け入れられるのか……いつ真実を知ってもいいように、できるだけ……彼の側にいよう、と思ったのだった。
クロヱ「じかーいじかい。ラプラス、ホロックスのファンをいっぱい作りたいんだって。でも上手くいかないみたい……ソウくん手伝ってー!え、興味ない?んもうっ!少しは協調性持てーっ!!ドン7話『いらいらラプラス』というお話し。」