昼食時、ルイは昼食に使う魚を捌いていた。ブレのないキレイな包丁捌きで魚を三枚おろしにしていく。
「すごーい!新鮮〜!ルイ姉マジで目利きいいね!」
クロヱは思わず声を上げた。ルイの包丁捌きだけではなく、魚の新鮮さにも注目していた。
すると、ルイはニコニコと笑いながら答えた。
「行きつけの魚屋さんがスゴイんだよ。どれもこれも新鮮なのばかりだし、女将さんも大将さんもすごく親切なの。」
魚の新鮮さは魚屋の目利きによるものだった。そのことを話したルイだったが、すぐに浮かない顔になった。
「でも、最近できた大型商業施設の影響で客足が遠のいてるんだって……」
「こんなに良い魚売ってるのに……?なくなったら嫌だなぁ……」
「……なにかできることがあればいいんだけど……」
魚屋がなくなってしまうことを憂うクロヱとルイ……その時、クロヱはあることを思いついた。
「そうだ!ルイ姉、それ次の任務にしない?」
「えっ?」
「魚屋さんのお悩みを解決して、holoxの輪を広げる!一石二鳥!!どう?」
「クロヱ……名案だよ、それは!」
クロヱの提案はまるで鶴の一声にも思えた。確かに魚屋を助ければ、holoxの宣伝にも繋がる。まさに一石二鳥だった。
「いいでしょ、ラプラス!」
「まぁ、それがholox拡大に繋がるなら悪くないな。暇だし。」
「いいでござるな、人助け!腕が鳴るでござる!」
クロヱの案にラプラスといろはも賛同した。ソウゴは何も言わなかったが、コクリと頷いた。
しかし、ただ一人こよりだけはパソコンを眺めながら、にやりと笑っていた……
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そしてholoxの面々は現在……海の上にいた。
「……って、どういうこと〜〜〜〜!!?」
6人は船の上にいた。他の皆が船の上で涼む中、クロヱだけは今の状況の意味がわからず声を上げていた。
すると、こよりがクロヱの前で仁王立ちする。
「みんなどうよ!いいでしょ、この!holox丸!!」
乗っている船はこよりのお手製だった。黒く巨大で、ラプラスのツノを模した飾りがついている。
「……いや、なんで私達船にいんの?」
「だってお魚屋さんを助けるんでしょ?だったら珍しい魚を釣りまくって、お客さんを呼べばいいじゃ〜んって思ってさ〜〜!」
こよりはそう言って、どこからか釣り竿を取り出した。
「まぁ……たまたま?このholox丸を試したかったってのもあるけどもぉ……」
「あーー!今試したかったって言ったーー!!本音が出たぞ!!」
結局実験したかっただけ……というこよりの魂胆に、クロヱは声を上げた。すると、
「いやいや、沙花叉。これがあながち間違いではないでござるよ。」
「おいおい、どしたぁ?いろはちゃん……」
いろはがこよりの意見に同調することを言ってきた。何故なのか尋ねると、いろはは答え始めた。
「ここはおそらく”アトランティス海域”!止まると爆発を起こす魚『ニトマグロ』。巨大なクラゲ『海洋プリン』……めっちゃ珍しい魚が獲れることで有名でござるよ!本来、釣りなんてここでは危険極まりない行為でござるが……この安定航行!流石こよちゃん頭脳でござるな!」
「自動操縦機能もついてるからね♡」
いろはの言う通り、海の方を見ていると、海自体は穏やかだが、凶暴そうな鮫が泳いでいるのが見える。
「なるほど……これは確かに頑丈そうなこの船でないと無理そうだな。」
「……だとしてもさぁ、水着を着せられたのはなんで?」
クロヱの言う通り、ソウゴ以外の全員が水着を着せられていた。
その理由を問うと、こよりはニヤニヤと笑っていた。
「ムフフ……それはもちろん……趣味でーーす!!」
(やっぱりか……)
「脳内ピンクになれるのは、こよちゃんの特技でござるからな。」
やはりと思う中、こよりはソウゴの方に近づいてきた。
「えへへ、ソウきゅん〜♪女の子5人の水着姿見れて幸せ〜?」
「別に……興味はない。」
迫ってきたこよりに対し、ソウゴは興味なさげにプイッとそっぽを向いた。
「さっさと釣りするぞ。」
「よし、せっかくだから対決するか。もっとも最強を釣り上げた奴が……勝者だ!!」
その時、ラプラスがニヤリと笑って言った。すると、他の皆もそれに賛同した。
「いいねー!ボコボコに負かしてやんよ!」
「よーし、じゃあみんなで……」
『釣りスタート!!』
全員一斉に竿を持ち、海に糸を垂らした。
クロヱはチラッと周りを見て、それぞれどんな釣り方をしているかを覗いた。
ルイの方は……
「……ホークアイ!」
ルイはカッと目を見開いた。“鷹嶺“の名の通り、鷹のような目を持つルイは、その目で釣るべき魚を捉え、確実に釣り上げた。
「順調順調!」
(さすがルイ姉……)
いろはの方は、その場で正座し目を瞑っていた……しかし次の瞬間、カッと見開き竿を握りしめた。
「お〜さ〜か〜な〜!よいしょーーー!!!」
いろはは渾身の力で釣り竿を引き上げた。すると海面からカマボコに魚の頭やヒレがついた巨大な魚が釣り上げられた。
(でかっ!!つーかアレ魚か!?)
ラプラスの方は……
「我輩こそ、最強……むっ!きた、これは大物……!うおぉぉぉぉ!!」
雄叫びを上げて竿を引くが、魚に逃げられてしまった。
「おっ!またしても!ぬおぉぉぉぉ!!」
再度アタリが来て、竿を引くものの力が足りず、また逃げられてしまう。
そうこうしている内に数分が経ち……
「ハァ……ハァ……ビクともしねぇ……腕いてぇ……」
(あれはザコだ。)
ついにラプラスは疲れ切って横になってしまった。
ソウゴの方は……
《what's up!?》
「アバターチェンジ!」
《ドンムラサメ!切り捨てソーリー!!》
ソウゴはドンムラサメに変身し、さらにギアを2回転させる。
《
剣の先から光のアンカーを発射し、釣り竿のように海に投げ込む。
「……せいっ!」
少し間を置いて、ムラサメはそれを一気に引き抜いた。アンカーの先には大量の魚が釣られており、それをクーラーボックスに放り込んだ。
「えー、ソウくんそれズルくなーい?」
「それを言ったら……博衣の方はどうなんだ?」
ムラサメはチラリとこよりの方を見た。クロヱも釣られてそちらの方を見た。
「いや〜、釣りって楽しいね〜♪」
こよりは機械を使って魚を釣っていた。コヨーテの形をした機械の口から舌のように伸びるコンベアで海から直接魚を釣り上げ、そのまま背中にあるデカい籠に放り込まれていく。
(……釣りってなんだっけ……)
こよりの釣り方に呆然としながらも、クロヱは自分の竿を見た。
「やばっ!沙花叉のもめちょ引いてる!」
クロヱは慌てて竿を掴み、グイッと竿を引いた。
「わわっ、すごーい!釣れた釣れた〜!」
自分もようやく魚を釣り上げ、嬉しそうに魚に触れようとするクロヱだったが、その時魚がビチビチと跳ねた。
「ひっ!?ちょっ、これどうしたらいいの!?うーわ、めちょヌルヌルしてる!きもっ!」
(一応、シャチだよなお前……)
「はぁ……貸せ。」
魚が触れないクロヱを見かねて、ムラサメはため息を吐きながら代わりに魚を持ち、バケツに入れてあげた。
その時だった。
「ようやく見つけたぞ!我が宿敵!!」
「?」
海の方から声が聞こえ、そちらに顔を向けると、そこにはヒゲを生やした忍者装束の男がイカダの上に立っていた。
「お前、どこかで……あっ!」
ムラサメは声を上げた。イカダに乗っている男は、以前公園で鬼になった忍者男だった。
「あの時のか……」
「というか、ここ危険海域なんですが……」
このアトランティス海域は普通の船では航行できないのだが、そんな話など聞こえていないのか、忍者男は構わず続けた。
「今日こそ貴様を倒し、俺が最強の忍者だということを知らしめてやる!!」
「バカなことを言ってないで働け!!」
「変化の術!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
忍者男は雄叫びを上げた。すると、男の身体が変化を始め、忍者の様相をした忍者鬼へと変身した。
「また鬼になったか……だが、何度でも倒してやる!」
《
ギアを2回転させ、剣の先からワイヤーを発射し、イカダの上にいる忍者鬼に向かって撃ち込んだ。しかし次の瞬間、忍者鬼の姿が消えた。
「何ッ!?」
「ふはははははっ!!見たか、我が宿敵!!」
忍者鬼はなんと、水面の上を自由自在に走り回っていた。
「これぞ水遁の術〜〜〜!!」
「……水遁じゃなくない?」
「ついてこれるか宿敵〜〜〜!!」
忍者鬼はあっという間に遠くまで駆け抜けていってしまった。
「クソ…!船の速度では奴に追いつけない……!」
「フッフッフッ……」
追いつけないことを歯がゆく感じているムラサメをよそに、こよりは笑い始めた。
「こんなこともあろうかと!」
こよりは船の甲板についているレバーを引いた。すると、甲板が上に開き、そこから1台のバイクが現れた。
「これは……?」
「こよ特製、ドンムラサメ専用バイク『シャークチェイサー』!!」
現れたバイクはフロントカウルがサメの頭になっておりドンムラサメの色である紫色に染められていた。
「水面を走ることもできるよ!」
「シャークチェイサーか……いくぞっ!!」
ムラサメはシャークチェイサーに跨り、アクセルを思いきり捻って発進した。
シャークチェイサーは海へ飛び出した。こよりの言う通り、シャークチェイサーの車体は海へ落ちることなく水面を地面同様に走る。
「なにぃ!?」
「追いついたぞ……!」
シャークチェイサーの速度は速く、あっという間に忍者鬼に追いついた。
「くっ……くらえ!」
「シャークミサイル!」
忍者鬼は手裏剣を投げて抵抗を始めた。しかし、シャークチェイサーのサメの口が開き、中から小型ミサイルが放たれ手裏剣を撃ち落とした。
「シャークアタック!!」
ムラサメはさらにアクセルを捻りスピードを上げ、忍者鬼を体当たりで跳ね飛ばした。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ?!」
「今だ!」
忍者鬼が空中に跳ね上がったところで、ムラサメはシャークチェイサーから空高くジャンプした。
「タァァァァァァァ!!」
雄叫びを上げて剣を振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろして忍者鬼を真っ二つに斬り裂いた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
忍者鬼は爆発を起こし、元の忍者男の姿に戻った。気絶した忍者男はそのまま真っ逆さまに落ちたが、ムラサメは男を回収して船に戻った。
「まったく……とんだ釣り日和になったな。こいつは拘束して倉庫にでも閉じ込めておけ。目を覚まして、また暴れられたら困る。」
「はいはい。」
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昼過ぎ……釣りの結果は、
こより∶超大量
ルイ∶クーラーボックスいっぱい
いろは∶特大一匹
ソウゴ∶10匹ほど
クロヱ∶2匹
ラプラス∶0匹……
という結果になった。
「あれ?ラプラスは?」
ラプラスはすっかり船酔いでグロッキー状態になっており、死んだ魚のような目になっていた。
「へ、へへっ……部下に花持たせんのも、楽じゃねーな……」
「ボーズじゃん。」
結果として、大量の魚をゲットしたホロックスだったが……
「んー……これじゃなんか勝負つかないね。」
「いいんじゃない?勝ち負けつかなくても。元々魚屋さんへの贈り物なんだし……私は楽しかったよ!」
「わかる〜!初めてだったけど楽しかった!」
「普段味わえない手応えがバッチバチだったでござるよ!」
「船とシャークチェイサーの改良点も分かったし、こよも最高だったよ〜!」
結局勝負はつかなかったが、楽しむことができた5人。そして、ソウゴも、
「ねっ、楽しかったよねソウくん!」
「まぁ……暇潰しにはなったか。」
口ではそう言ったが、ソウゴもソウゴで楽しむことができた。
すると、ルイが言った。
「そうだ!いいこと思いついたよ!!」
『?』
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その後、ルイは行きつけの魚屋に大量の魚を贈った。それだけでなく、「企画」もプレゼントした。その企画とは、「holox丸 珍魚ツアー」。
珍しい魚が店に並ぶという真新しさも手伝って、その日は行列ができるほどの客が来たのだった。
「ありがとうねぇ……!」
「いえいえ〜」
魚屋の大将と女将には泣くほど感謝された。それを見て、ルイはホッと胸を撫で下ろした。
その様子を、クロヱ達はこっそり覗いていた。
「お魚といっしょに企画もプレゼントとか、着眼点がスゴイんよ!」
「holoxの宣伝にもなるとはな。」
「データ収集がはかどって、こよも嬉しいよ〜♪」
「これで、魚屋も征服できたってことだな?」
その後、魚屋に感謝されたholoxはお礼の魚を貰って帰路についたのだった。
ちなみに、いろはが釣り上げた巨大なカマボコ魚は「喫茶どんぶら」にお土産として贈られたのだった。
「……これ、どうやって食べればいいのかな……?」
「よし、アジトに戻ろうか!ルイ姉に魚の捌き方教わったから、今日は沙花叉が包丁を握りますよ!」
「…ほ〜ぉ?」
その時、ルイはいつもより低い声を出した。
「じゃあ今日こそ掃除してくれるんだろうなぁ?クロヱ〜〜?」
「お前も掃除の習慣をつけるんだな……」
「ぽえぽえぽえ〜……」
いつも掃除をしないクロヱに、怒りを滲ませながらルイとソウゴはクロヱを睨みつけた。
「あ、ちなみに我輩魚介食えんからよろしく。」
「そんなんで海に行ったん
一歩ずつ、しかし着々と侵略を続ける秘密結社holox。しかし、まだこの組織が大きな爆弾を抱えていることを……この時は誰も気づいていなかった……
「……ソノニとソノザの報告通りだったな。ドンムラサメ……何故別の世界にアイツが……それに、あの男……いったい何者なんだ……?」
ソウゴ「じかーいじかい。なに?のど自慢大会?俺は興味はない……なに?応援しろだと?仕方ない……なんか青い奴とか鬼とか出てきたが、俺は応援に徹するぞ!歌え、沙花叉っ!!ドン10話『うたごえリンク』というお話し……さ・か・ま・たっ!!」