仮面ライダーレジェンド外伝 ~盗まれた伝説~   作:大島海峡

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1.

 ここは数多に枝分かれした時間軸、いくつもに分かれた世界の一つ。

 その護り人、鳳桜(ほうおう)・カグヤ・クォーツの朝は、ゴージャスに始まる。

 

 世界の中枢たる黄金に輝く塔。

 その私室で、天蓋付きのベッドで夜明けと共に目覚め、宝石をちりばめたゴージャスなバスタブに身を清めたあと、シルクのバスローブをまとってくつろぎ心身をゴージャスに整える。

 

 そして、一流の食材を厳選し一流の腕前によって調理された朝食を、一流の作法にのっとり、時間をかけて口に運んで吟味する。

 

 だが、その優雅なモーニングルーティーンにそぐわない、けたたましいアラームが響き出した。

 その騒々しさに眉を顰める彼の下に、濃い顔つきの、燕尾服の執事が走りながら近づいてきた。そのまま『バトラー』と呼ばれる、彼の忠臣である。

 

「カグヤ様、ハンドレッドの襲撃です。急ぎ迎撃の準備を」

 そう早口で言う彼に、

「やれやれ。ゴージャス暇なしだな」

 などという即興の格言を口にしつつ、きちんと朝食を完食してから椅子から立った。

 

 それからプリンス然とした召し物に着替えて、その『戦装束』と今の気分とに相応しい指輪を、細い指に通していく。その間の敵の攻勢は、都市の防衛システムに一任する。

 

「お早く!」

 わずかに振動が届く施設内の中、声を荒げて、バトラーは必死の形相で急かす。

「おそらく敵の狙いは開発中の超兵器、レジェンドカメンライザー。それに先んじて、確保しなければなりません。その保管場所までお急ぎください」

 

 万端準備整えば、出座である。

 マントをはためかせて宝石を輝かせ、悠然とした足取りで、バトラーの横を通り過ぎる。

 

「その前に、訊いておく」

 ……そして、その手前で足を止め、カグヤは自らの従者を顧みた。

 

 

 

「貴様、何者だ?」

 

 

 ――と。

 『バトラーの顔』が、わずかに軋んだ。

 

「……おっしゃる意味が、解りかねますが」

 首を傾げながら愛想笑いを貼りつかせる彼に、冷ややかかつゴージャスな声色で、カグヤは告げた。

「バトラーはカグヤ様に相応しい、ゴージャスな執事だ。敵の襲撃だからと取り乱して食事や妨げたり、着替えを急かしたりなど決してしない。主人に前を歩かせるなどということもしない」

 

 バトラーは彼のそうしたサイクルが何にも代え難い、至高の時間であることを知っている。

 カグヤがゴージャスであること。

 それは輝きで敵の目を自分へと集中させる、陽動。

 それは他を寄せ付けないための、牽制。

 それは救いを求める人々にとっての、燦然たる希望。

 

「ここまでの貴様の行動からは、ゴージャスさなど欠片も感じない」

 そう言い切るや否や、『バトラー』の蹴りがカグヤの尊顔目がけて飛んだ。

 それが避けられると、普段の彼らしからぬ荒々しいハイキックの連打が見舞われる。

 

 だが、それらはカグヤの身に一掠りもしない。洗練された、無駄のない所作と審美眼とで躱し続け、その蹴りが焦れと消耗で大味になったところを見計らい、偽りの顔に手をかけた彼は、一気にそれを剥いだ。

 

「言ってくれるじゃないか」

 顔も、返す声音も、すでにバトラーを真似たものではなくなっている。

 神経質で若いようでもあり、どこか老練で余裕のある感じにもとれる、年齢不詳の端正な顔立ちと不思議な声色。

 

「貴様は……」

 面識はない。だがその顔と、手にした装置を見た瞬間、泰然としたカグヤの顔に当惑が浮かんだ。

 

 ――その青く長い、銃型のデバイスを。

 

〈Kamen ride〉

 回転させながら展開したその装填口に、男は自身のカードを読み取らせる。

 

「変身!」

〈Diend!〉

 天を衝かんばかりに掲げた銃口から、掛け声とともに発せられたのはいくつものプリズム。

 それが彼の肉体を交錯し、合わさりながら別の姿――仮面ライダーとしての姿に変わっていく。

 

 当代となっては比較的シンプルな方だが、バーコードを想わせる、独特のフォルムの上半身。四角の頭部。どこで視覚を確保しているか分からないマスク。

 マゼンタとは対照的に、シアンを主体とした、その色味。

 

 その形態にこそ、カグヤの記憶と、自らの懐より抜き出した一枚のカードの図柄と一致する。

 

 

 

「ディエンドか」

 

 

 そしてその賊の名を、口にした。

 

 

 

【仮面ライダーレジェンド外伝 ~盗まれた伝説~】

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