仮面ライダーレジェンド外伝 ~盗まれた伝説~   作:大島海峡

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 仮面ライダーディエンド。

 数多のライダーの力を並行世界より写し取ったレジェンドライダーケミーカードにも、すでに同様のライダーの力は収めてあるが、実物を見たのは、まして侵入などされたのは、これが初めてだった。

 もっとも、目の前にいるのが如何なる性分、そして生業のライダーであるのか、それは知っている。

 

「カグヤ様に場所を案内をさせようとバトラーに化けたところを見ると、狙いはレジェンドカメンライザーか」

「言うまでもないな。僕が興味があるのは、この世界で一番のお宝さ」

 

 ほう? とカグヤは眉を吊り上げた。

 

「ではカグヤ様を奪うしかないな。カグヤ様こそ唯一無二。この世界に絶えず輝きをもたらす至宝だ」

 そして至極当然のごとく、そう言い放った。

「なるほど、聞きしに勝る思い上がりぶりだ」

 一度脱力したかのように腕を下ろし、肩の力を抜く。

 だが直後、跳ね上がった銃口から、弾が発射された。

 

 ――そのだまし討ちも、読めていた。

 

 黄金の門扉がごときバックル。そこから展開された半透明の障壁が、光弾を跳ね除ける。

 もちろん、相手も今ので不意を突けるとは思っていないだろう。

 これは言わば、手袋を叩きつけるが行為、挑戦だとカグヤは解釈した。

 そしてそれを避ける道理など、至上の男にはない。

 

〈Legendriver!〉

 そのバックル、レジェンドライバーを自らの玉体へ。

「挑まれたからには応じよう。カグヤ様の威光は、誰に対しても等しく注がれる」

 己が象徴たるカードを、その中心へ。

〈Chemy ride!〉

 自らの手に、そこに嵌められた指輪に敬意の口付けを。その上で儀礼に則り、極上の微笑をたたえながらその言葉を口にする。

 

「変身」

 

 そして、黄金の扉が開かれる。

 その中で波打つオーロラのカーテンより、呼び出されたあらゆるライダーの力が、カグヤの下に結集する。

 

〈Le-Le-Le-Legend!〉

 

 そうして出来上がった姿こそは、黄金の鎧。

 歴史を刻むバーコードと、獅子が象徴化され、一体化する。ターコイズの輝きがその目に宿る。

 あの日見た輝きを、より一層に引き立たせたその姿こそが仮面ライダーレジェンド。

 広く普く世界を照らす、生ける伝説。

 

 だが怪盗はそんな彼に対峙しつつ、

「気に食わないね、その姿」

 とディェンドは声を低めて言った。

 

 怪奇なるマスクに覆われたその表情を窺い知ることは難しいが、その声音で、彼の不興を買ったことは想像に難くない。

 

 転瞬、眼前からディエンドの身体が消えた。が、磨き抜かれたカグヤの眼力は、如何なる神速も見逃しはしない。背後へと回り込んだ襲いかかったディエンドの銃口を手の甲で弾き、その狙いを外す。そのまま組み打つ彼らは、

 

「君には、こいつらなんてお似合いじゃないかな?」

「ならば、貴様にはこのライダーたちを贈ろう」

 

 指先に挟んだ互いの手札を見せ合い、そして示し合わすまでもなく、自然に飛び退く。

 

〈Kamen Ride Caucasus!〉

〈Kamen Ride Beast!〉

 

 それはさながら西部劇が如く――

 

〈Blade Rider!〉

〈Ex-aid Rider!>

〈Saber Rider!〉

〈Legend Ride! Trio!〉

 

 弾ならぬカードを次々に銃型召喚機へと送り込み、相手に対して引き金を絞る。だが撃ち出されたのは弾丸ではなく、幻影たち。

 プリズムが重なり二つの金色の像を生み出せば、レジェンドたちの影たち三体、がバイクで疾駆しながら、その姿を変える。

 

 レジェンドから見て左から……

 不死の怪物たちとカードで戦う青き剣士のライダー、仮面ライダーブレイド。

 剣という名のメスで患者を治療する青き剣士のライダー、仮面ライダーブレイブ。

 水勢剣(すいせいけん)流水(ながれ)の青き剣士のライダー、仮面ライダーブレイズ。

 

 ディエンドが召喚したのは、青きバラとともに敵に死を贈る神速拳、仮面ライダーコーカサス。

 古代の魔法を操る野獣の魔法使い、仮面ライダービースト。

 

 互いの旗色(シンボルカラー)を入れ替えた形となった軍勢たちが、衝突する。

 当然、意志のあるオリジナルには及ばないが、その習性を踏襲した動きで、異なる世界観、世代のライダーたちが火花を散らし、鎬を削る。

 だが、カグヤの呼び出したそれは、剣閃や打撃、あるいは角のパーツなどに宝石や黄金の煌めきが付加されている。

 

 そしてレジェンド、ディエンド自身も参戦し、戦闘は混迷を極める。

 大将同士の一騎打ちといった塩梅だが、それぞれの攻めを

 だが、単純な頭数で言えば、レジェンド側の方が上だ。

〈ライトニングスラッシュ〉

 フリーとなったブレイドが、ブレイライザーを水平に構えて、首魁たるディエンドへと斬り込む。

 

 ディエンドはその頭上を飛び越え、空中から背に回るや、銃口を押し当て、新たなカードを挿入した。

 

「痛みは一瞬だ」

〈Final Form Ride B-B-B Blade!〉

 

 濁った断末魔と共に、ブレイドは人型ならぬ姿へと変わる。

 力を注がれた背にはカードデッキが花咲くように広がり、逆さまになった脚は剣に。すなわち、彼が手にしていた武器を巨大にさせた異形の武器となって、ディエンドの手中に収まる。

 

〈Final Attack Ride B-B-B Blade!〉

 それを片腕で振り抜いた大振りの一閃は、雷電を帯びて敵味方を問わず薙ぎ倒す。

 だが、狙いは殲滅それ自体ではない。

 

 切り裂かれた、カグヤの城。その壁に大きく亀裂が入っている。

「お客様だよ」

 ぞんざいにブレイドを投げ捨てたディエンドが言えば、その亀裂、黒煙の帳の向こう側で、顔のない、鋼の槍兵たちがひしめく。

 

「レジェンドよ、今日こそ貴様の命日だ!」

 と、変わり映えのしない月並みな口上と共に現れたのは、カッシーン。

 ハンドレッドの尖兵だった。

 

〈Attack Ride Invisible〉

 そして自身はその傍らから、幻のようにかき消えた。

 

「やれやれ……選ばれし者の宿命だな」

 尊大な嘆きと共に、レジェンドは新たなるカードを、横向きにした自らのバックルに装填する。

 

〈Chemy Ride! Go-Go-Go-Gorgeous! Ziin!〉

 

 黄金の門がふたたび開き、新たなる世界が接続した時、荘厳な肩のベルトはそのままに、今度はカグヤ自身が別の仮面ライダーの姿となる。

 狛犬の頭部にディスクが挟まった独特な姿を持つ、推し活のために3.5次元からやってきたサポートライダー、仮面ライダージーンへと。

 

 迫り来るカッシーンを見向きもせず、急所に的確に未来のデバイス、レイザーレイズライザーからの光線を叩き込んでいく。

 

 それならばと押し包んで槍衾を叩きつけてくる。が、すでにそこにジーンもといレジェンドの姿はない。彼が立っているのはそのすぐ頭上。天井に二本の足で取りついている。

 

 そしてそのまま地面に向けて斉射。

〈Chemy Ride! Go-Go-Go-Gorgeous! Kyuun!〉

 着地ゾーンを確保してから降り立った時には、彼はまた別の未来ライダーとなっていた。

 

 ――それを、仮面ライダーに当てはめて良いものか。

 その姿は四足で地を掴む、巨大な獅子そのもの。否、翼を生やし、それをダイナミックに振るう所作は、太古の時代のキマイラである。

 仮面ライダーキューンの力である。

 

 その胴長の巨躯を旋回させれば、それだけでカッシーンたちはめいめいに吹き飛び、あるいは壁にめり込んで前衛的なオブジェへと早変わりしてしまう。

 

〈Finish Mode, Lazer Victory〉

 口に咥えたライザーから、煌々とした光の柱が発射された。

 それは余さず敵兵たちを呑み込み、そして爆散せしめる。

 

〈Le-Le-Le-Legend!〉

 ケリがついた以上、さすがにその姿で留まるには窮屈に過ぎる。

 レジェンドの姿に戻ったカグヤの眼前に、あの男は再び姿を見せた。

 戦いによって大きく穿たれ、外気が流れ込んでくるその穴の手前に、ディエンドは立っている。

 

「仮面ライダーレジェンド、聞いていたよりずいぶんとヌルい」

 ――その手の中で、未だ調整段階の黄金の装置、レジェンドカメンライザーを弄びながら。

 

「貴様……」

「まぁ、無理もないか」

 

 揶揄、というよりも諦観に近い調子で冷たい笑いを滲ませながら、賊は続ける。

 

「君はただ他のライダーの、あいつや僕の姿や力を盗んでいるだけ。いくら外面を取り繕っていようとも、所詮はイミテーション。本物には遠く及ばないよ」

 

 そう一方的に断ずるや、そのまま外へ通じる亀裂に、背中から我が身を投げ込んだ。

 レジェンドが急ぎそれを追って止めんとするも、またしても彼の姿は消えていた。

 

 後に残されたのは、カグヤ自身と、その彼が抱く、

「してやられた」

 ――という、普段の彼らしからぬ悔いのみであった。

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