本物のバトラーが見つかったのは、ハンドレッドの攻勢を退け、夜も更けた頃合いだった。
適当なロッカーに押し込められていたのを数人がかりで引きずり出された彼は、口からテープを剥がしながら陳謝するとともに、執務室にて戦いの疲れを癒している主人の面前に立った。
「仮面ライダーディエンド、
と、カクヤにとってはあえて今更聞かされるまでもない前置きと共に、バトラーは不可思議げに首をひねった。
「ただ、ディケイドが消息を絶った後、彼もまた忽然と姿を消し、各世界からの様々な被害……もとい目撃情報も途絶えました。それがなぜ、今になって現れ、そしてレジェンドカメンライザーを盗むようなことを……」
カグヤはその手で、黄金の指輪を弄ぶ。
この世界の混沌期、その戦乱がためにやや煤けてはいる。が、そのゴージャスは失われてはいない。少なくとも、彼の審美眼から見れば。
――祖父の、形見だった。
そしてこれこそが仮面ライダーとの出会いの象徴。
ディケイドとのつながり。
生ける伝説の始まり。
仮面ライダーレジェンドの原点だ。
『いくら外面を取り繕っていようとも、所詮はイミテーション。本物には遠く及ばないよ』
というディエンドの捨て台詞が、同時に反芻された。
「いえ、彼の思惑はともかくとして、レジェンドカメンライザーの奪還こそが最優先。もしハンドレッドの手に渡るようなことがあれば一大事です。幸い、彼がこの世界を出たという報告は未だあがっては来ていません。総動員で、その行方を捜索させます」
という言葉を聴きながら、カグヤは指輪を手の内に納めた。
「無用だ」
と、短くその進言を退かせる。
「本物の輝きとは常にカグヤ様と共にあるもの。レジェンドカメンライザーが真にゴージャスな存在であれば、何者に盗まれようともいずれカグヤ様の手に戻ってくる」
「しかし……」
食い下がろうとしたバトラーだったが、主人の横顔を見て押し黙る。
その切れ長の目の中の、揺らぎの無い輝き。そしてそこに秘められた遠大な志を見出したがゆえに。
「失礼しました」
よって己のそれを杞憂と払拭し、敬意と共に一礼する。
静かな決意と共にカグヤが導いた答え。その判断に誤りなどあろうはずもない。それを誰よりも知るがゆえに。