魔法少女育成計画Blue/Shift   作:皇緋那

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宿泊研修体験課題──はじけるレモンは強かに

 ◇トーチカ

 

「な、何事!?」

 

 ズドンと響いた轟音。トーチカたちが次の座標に向かうと、そこでは既に爆発が起きていた。入ると即始まるよ、と書かれた扉の向こう、部屋の中から、フラフラ現れる人影。煤だらけになって口から煙を吐くシン・ソニックがよろめきながら現れたかと思うと、そのまま倒れた。

 

「大丈夫ですか!? 何があったんです!?」

「シンソニちゃーん!? しっかりして、ぼへぇっ!?」

 

 呼びかけても反応はない、かと思いきやいきなり勢いよく起き上がり、マスカットはその頭で鼻を強打した。トーチカが慌てて彼女を受け止める。

 

「ふえぇ……鼻血出ちゃったよー」

「大丈夫?」

「うん、そんなに痛くはないからへーきだけど」

 

 トーチカは即座にポケットティッシュを取り出し、即席の鼻栓を作って処置。シン・ソニックは振り返りこそしたが、声をかけることもなく再び部屋の中に戻っていこうとする。もう一度挑むつもりだ。それを阻止したのは、レモネードが思い切って投げつけた檸檬だった。

 檸檬は扉に当たってバウンドし、シン・ソニックの顔にも当たって、彼女を怯ませまたバウンド。上空を舞いシン・ソニックの顔に戻ってきたところで、派手にレモン汁を散らして爆発した。レモン汁を顔面に浴びて悶えるシン・ソニック。その間に、マスカットにも協力してもらい、手足を押さえつけた。ここまでしないとダメだ。

 

「痛い凄く目に沁みるんだけど何これ何したの離して最速でクリアしなくちゃいけないのにこれじゃ先に進めないでしょ」

「ひとりで先に行かれたら困るから! こうしてるんです!」

「クリアできるならどうだっていいでしょどうせ一番になったらそれでいいんだから」

「……マスカットを傷つけておいて……何も言わないのも……許せない……」

「無事だったんでしょ」

 

 ここでついに、無言で睨み返したレモネードの視線に耐えられなくなったのか、シン・ソニックの言葉が止まった。止まったのも少しの間だけで、目を逸らした次の瞬間には口を開いている。

 

「言っておくけど普通にやったってここの仕掛けは無理だから私みたいに爆発するのがオチになるの目に見えてるんだからね」

「爆発か……どんな仕掛けだったの?」

「とにかく爆弾が降って来るけど私みたいに速くない人たちはただただ溺れてまるごと爆発して終わりかもね」

 

 ここでマスカットとトーチカは彼女を離した。とにかく独断専行はしてほしくないことをトーチカの方から何度も言って、納得がいった様子はなかったが、とにかく今回は皆で一緒に挑むことになる。ドアノブを捻り、何の変哲もないようにしか見えない扉を開き、中には確かに異様な光景が広がっている。情報には大量の爆弾らしきものが吊り下がっており、爆弾の表面には文字がひとつずつ書いてある。ここで……どうすればいい。

 問題文を探し、探しているうちに、電子音が鳴り、天井で吊り下げられた爆弾が点滅し始める。何をどうすればいいか理解するより先に、マスカットが武器を構え、引鉄に指をかける。彼女のライフル銃からは魔法のフルーツが飛び出す。威力と精密性は弾丸と同じかそれ以上だ。飛び出した小さく丸い緑の果実は爆弾を吊るすコードを撃ち抜き、落ちてきたものはレモネードが受け止めた。さらに即座に爆発に関係する機構がバラされ、無力化されたかと思いきや、レモネードはさらに上を指した。

 

「まだ……ある!」

 

 次々と起動し爆発のカウントダウンが行われる爆弾たち。マスカットが必死に連射、それでも正確に撃ち抜き続け、いくつも撃ち落としていく。呆然としている暇はない。レモネードが回収した爆弾を貰い、書かれている文字を繋ぎ合わせる。『まのたまうちぬけ』──中央にある『ま』の書かれた爆弾を、むしろこちらから起爆しなければならないということ。

 

「ねえ! 天井の奥! まだまだいーっぱい手榴弾見えるんだけど!」

 

 こちらから飛び込まなければ答えはない。皆の目線がこちらに向く。トーチカは皆に任せることを選ぶしかなかった。こちらから出せる指示は、謎解きとして提示されたものだけだ。

 

「マスカット! あの爆弾を撃って起爆して!」

「いいの、そんなことしちゃって!?」

「たぶん……大丈夫!」

 

 レモネードが続けて背中を押したことで、マスカットは決心して引鉄に力を込めた。中心を抉り、衝撃が一挙に伝わり、起爆せず残っていた爆弾たちが一斉に連鎖して破裂。それによって吊るしてあった金網が外れ、その向こう側から今度は手榴弾の群れが溢れだしてくる。炎と煙の向こうから現れる次なる刺客に、思わずシン・ソニックと一緒になって身を守る体勢に構え、そこにレモネードが飛び出したのに気づくのが遅れた。

 

「えい……っ!」

 

 彼女が投げ放ったのはメロンだった。レモネードの魔法によって作られたメロン型爆弾が破裂。しかし今度は連鎖的に爆発するのではなく、中からメロンの皮のような網目が展開され、壁にくっつき、降り注ぐ手榴弾を受け止めてみせた。溢れて降ってきたのは複数個。レモネードはそのうち、ひとつだけをキャッチし、残りはそのまま地面に落とした。見れば、レモネードの手の中にあるものだけピンが抜けていて、他は刺さったまま。起爆しない状態だ。

 

「残りのあの中から……ピンがないやつだけを取らなきゃ」

「あんなにあるのにーっ!?」

「うん……それができるのはきっと……」

 

 レモネードはわざとらしく、目線を向けた。

 

「速さ自慢な人、くらいかな」

 

 ──そこからはシン・ソニックの独壇場だ。大役を任された彼女だが、メロンの網が切れるその寸前から壁を駆け上がり、手榴弾の群れの中に飛び込むと、次々と掴んではこちらに投げ渡してくれる。捉えきれなかったのはひとつだけ。そのひとつはマスカットがちゃんと回収し、手榴弾の雨はじきに止んだ。

 床は埋め尽くされたが、どうやらほとんどがハリボテらしかった。

 

「ありがとう。これで謎クリア、かな?」

 

 今度こそ、ピンのない手榴弾に書かれた文字を繋げてみる。『こ』『た』『え』『は』──ここまでは定番の文字数稼ぎだ。残りは『ふ』『た』『ご』の三文字。これが答えの文字だ。よしこれで謎解き完了、なんて思っていると、トーチカは自分の頭に重めの衝撃を食らう。思わず大きな声で痛いと叫んで、降ってきた何かを確認すると、前回と同じ宝箱であった。魔法の端末を近づけると答えの入力欄が出るらしく、そこに『ふたご』と入力。無事に解錠が完了し、宝箱の中から緑色のガラス玉を入手した。

 

「これで2つ目……! いや、今回はダメかと思ったよ。ありがとう、みんな」

 

 トーチカは指示を出そうとしただけ、どころか今回は指示もほとんどレモネードだった。今度こそ、班員みんなの力を合わせたと、胸を張って言えるのではなかろうか。

 

「みんなのおかげだねー! レモネー、よかったね! トーチカくんにいいとこ見せれて!」

「……べ、別にそういうつもりじゃ……ない、けど……」

「まあ私の力があれば攻略できるのは当然ねもっと速くできるところもあったんじゃないかなと思うけどまだまだ走り込みが足りないわ」

「……シンソニさんも、ありがと……!」

 

 本当に、一時はどうなることかと思ったが。

 

「次の謎は──あ、いや、そろそろ休憩時間だ。お昼ご飯に戻らないと」

「あー、そんなのもあったね!」

「あと十五分あるから十五分あればもうひとつくらいクリアできるのでは私ならできる移動時間に2分謎解き10分戻ってくる時間3分ほら丁度できそうなら行ってきます」

「……それをやめてって言ったばっかり……」

 

 レモネードが引っ張ってシン・ソニックがギリギリ引き止められたところで、一旦、定められた休憩時間のためにスタート地点に戻ることにした。

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