女先生虐待被害者概念   作:わー

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よろしくお願いします


プロローグ

「……生、先生!」

 

 時刻はお昼頃。先生の手伝いという建前、本音は彼女と時間を共にするために、シャーレを訪れたホシノ。

 そこで彼女が目にしたのは、一つの動かない白い物体であった。

 

 仕事用のスーツに身を包むきちっとした服装とは裏腹に、その身体は地面に投げ出されている。まさか過労死、と顔を青くして近寄ってみれば、聞こえるのは明らかな寝息。

 デスクを見れば大量の記入済み書類が乱雑に置かれており、恐らく仕事終わり、ベットに向かう前に力尽き、ぶっ倒れてしまったのだろう、と。

 

 色々あるが、昼寝が好きなホシノも、すぐさま寝たくなる気持ちはよくわかる。が、流石に硬い床で眠るのは身体に悪い。

 

 彼女の身体に触れられるのは役得である。なるべく手のひらの多くが接着するようにして、ホシノは先生の身体を揺すった。

 

"……ん、うえ、もう朝!?"

「おはよう、先生。今は昼の13時だよ」

"寝ちゃってたか……"

 

 起き上がり、伸びをする先生。身体の節々からはバキバキと中々な音が鳴っており、いかに彼女の身体が凝っているのかを理解させられる。

 ヘイローを持たず、且つそこらの獣人にすら力で負ける貧弱なフィジカル。そんな彼女の仕事は勿論のことながらデスクワークが主である。各学園の抱える面倒な問題も片付きつつある今、実地に赴く回数もかなり減っていた。

 

「おじさんが言うのもアレだけど、先生もたまには身体を動かさなきゃダメだよ〜?」

"うーん……そうだね。それじゃあ、ダンスでもやろうかな"

「普通は体操とかじゃないの……?」

 

 物凄くぎこちない動きで何やら踊りのようなものを披露する先生。過去の諸々を踏まえてもフィジカル自体は一般人の中だと強い方に分類されるのだろうが、どうやらそれと身体を操るセンスはまた別物のようだ。

 フィニッシュを決めたのか、指を天高く突き上げ、ドヤ顔を向ける先生。正論は、時にして人を傷つける。このまま放置していつか恥を晒す危険性もあるが、まあ、この場で指摘する必要もないだろう、と。ホシノは、いつもの曖昧な笑顔で応える。

 

「ちなみに、今のは何のダンス?」

"即興だよ。私のセンス"

「そっか〜」

 

 真面目に指摘した方がいいのかも知れない。ここはキヴォトス、神秘その他が渦巻く透き通った世界。今後、彼女が人前で即興ダンスを披露する機会がないとは言い切れない、はず。

 ……この場合、心配するのは先生と、そのダンスを見た彼女と関係の薄い生徒なのかもしれないが。笑って先生のプライドに傷をつけよう物なら、間違いなく何処かしらから風紀委員長やらSRTやらが飛んでくるし、何処ぞのハッカー集団が個人情報を丸裸にしてくる。

 

「……それはそれとして、先生、お風呂入ってきたら〜? 汗だくだよ?」

 

 夏だろうと冬だろうと関係なしに着用される長袖の服。袖の隙間なく、肌を一切露出させないようにピッタリとしている。

 室内は寒いほどに冷房が効いているとはいえ、それでも激しい運動をすれば汗はかく。

 

 加えて、前日から風呂に入っていないこともあり、特有の気持ち悪さもまとわりついている。髪はギシギシになっているし、汗で張り付いているのか、服も少し気持ち悪い。

 

"それなら、書類の整理を終わらせた後で"

「それって、機密の書類とか?」

"いや、今日のやつはそこまで秘匿性の高い物でもないけど"

「それなら、私がやっておくよ〜。だからほら、早く入って来なって」

"う〜ん……それなら、お言葉に甘えて"

 

 トテトテとシャワー室に引っ込んでいく先生を尻目に、ホシノはため息をついた。

 ワーカーホリックとでもいうべきか。生徒の為に身を粉にして働くその姿勢は先生として褒められるべきであるのだろうが、生徒側としてみれば、なんともこう、心臓に悪い。

 

 自分に限らず、キヴォトスの生徒であれば、先生に頼まれれば断ることはないのに……と。何処ぞのミレニアムオトフトモモや、ゲヘナシナシナシロモップも含め、事務仕事に長ける生徒は多くいる。それこそ、書類の処理であれば、アビドスの面々でもそれなりにこなすことはできる。

 

 もう少し頼ってくれないものか、と。そんなことを考えているうちに目に入ったのは、先生が置き忘れたであろう着替えの衣服。

 

「うへ〜……」

 

 届けるべきか。いや、勝手に人が入っているシャワー室に侵入しても良いものか。

 一瞬迷いはしたが、同性であるのだ。別にいいだろう、と。ホシノの心に住む悪魔が、天使を打ち倒した。その間凡そ二秒。

 

「先生〜、服忘れてるよ〜。全く、おっちょこちょいなんだから……」

 

 シャンプーを忘れた、等と声をあげながら。ホシノが扉を開いたタイミングで、先生が姿を現した。

 身に何も纏っていない、生まれたままの姿。思わず目を覆いそうになる。というか実際瞬間的に手で覆ったのだが、指を軽く開いて隙間から覗いている。流石としか言いようがない。

 

「……ッ!?」

 

 しかし、次の瞬間。息を呑む。

 

"……ホシ、ノ?"

 

 太腿に刻まれた火傷痕。腹の痣。強い力で絞められたような痕跡。エデン条約調印時に錠前サオリから付けられた銃痕すら目立たないほどに、多くの傷がその身体に刻み付けられる。

 キヴォトスにおいて、戦闘における傷はつきもの。それが戦闘行為によってのものか、人為的に傷つけられた物なのかぐらいは、ホシノにも判別できる。

 

 キヴォトスに来てから、先生が拷問にあったという話は聞かない。というか、仮にそういうことがあったのならば恐らくは、自分にまで情報が回って来ているはず。

 そして、ホシノは理解した。理解してしまった。

 

「虐待……?」

 

 先生に刻み付けられた傷。その、訳に。




次から生徒ごと、個別の話になります
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