某外国酒輸入メーカーのリモートアルバイター   作:うにくろ

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とあるデイトレーダーの顛末

 

 

 

 

___安定した職探しに苦心している?

______それならわたしが属している組織、…会社の庶務を任されてはくれないだろうか?

_________もちろん、会社の心臓部。経理全般をお願いするからには一般企業以上の待遇を保証する。これにさしあたっての物品調達。金銭が発生したなら、必要経費として請求してくれて構わない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 線維筋痛症と慢性疲労症候群。併発することも多いとされているこの厄介極まりない2つの疾患の意味を正しく理解し、説明出来る人間が果たして、今世間に一体どれくらい存在しているだろう。

 ……なんて、自分から話題提起しておいて非常に虚しくはなるが、実質的人数はそう多くない。…はずである。

 え?なんでそんなことが分かるのかって?……聞く?それ。聞いちゃう?話し出せばもっっのすっごく長くなるから割愛するけど【経験者は語る】って言うじゃん。それだよ。それそれ。まさにそれ。

 

(別にさぁ、顔面蒼白死にかけ健気な若干10歳相手取って鼻息ハァハァに発情した変態クソ教師の謝罪文とか、無駄に長ったらしくて如何にもそれっぽい。クソ言い分並べて白昼堂々と、人の身体にメス入れようとしてくるようなサイコパス大学病院クソ教授の裁判結果なんか、わざわざ聞きたくなくない?)

 

 と、まぁそんなこんなすったもんだの末。忘れもしない11歳の夏。セカンドオピニオンの3乗先ぐらいに訪れた都内某所の病院で、めでたく上記2つの病名を告げられたのがわたし。西嶌凪(さいとうなぎ)の顛末なのである。

 

(…まっじっで大変なのはここからなわけで……)

 

 ……であるからして、ぜひとも想像してみてほしいのだがそこからの人生、まさに苦悩・苦難・躓き・諦めの連続であったのだ。

 新しい知識を得るどころか、座り続けることさえ狂気の沙汰な授業✕6。月金計算で基本これを5セット。増える欠席。減る交流。無論崩壊していく友達関係。測定不能斜線ずくしの成績表に、いつの間にか過ぎ去っていた学校行事の数々。…悲しきかな。運動会のハチマキをこの額に巻いた記憶は最早遥か彼方だし、宿泊学習のしおりに至って言えばページを開くどころか、目にしたことすらない。

 通った学校歴々の教師陣は、多感な思春期を少しでも楽しく心穏やかに。…うん。違うな。もっとはっきりキャッチーに言おう。ただでさえ短い学校生活。折角の未成年期間。そこそこの思い出作りすらままならない【心底可哀相なわたし】に生暖かい、同情の眼差しを向けてくれていたとは思うが、同情と理解。歩み寄りの精神。信頼関係の構築は全くの別物である。

 

(そんでもって、ここからさらに……)

 

 年齢相応に厨二病拗らせ窓ガラスを割り、例の如く学校サボってゲーセンに入り浸るような素行不良エトセトラなんて軽く足蹴に出来る程の特殊問題児。…その代表格だった15歳。裏で進路指導泣かせという、全くもって嬉しくない異名を欲しいままにしていたらしい当時のわたしにカミサマは、またも新たな試練を用意していた。

 

 

 

 

 

 親が死んだ。

 

 

 

 

 

 親が死んだのだ。親1人子1人。いわゆるワンオペ父子家庭という状況下にあったわたしの箱庭は、誰ぞクソじじぃの信号無視によっていとも容易く崩れ去ってしまう。

 雑居ビルが建ち並ぶその小さな片隅で、慎ましやかにカレー屋を営んでいた父。気持ちばかりの寛解が見込まれるような治療法も、明確な発症原因でさえも不明な奇病を告げられた娘に対し【まぁそういう星の下に生まれたんだからしょうがない】という、実に無責任かつ能天気極まりない言葉をかけ続け、馬鹿のひとつ覚えみたくケタケタ笑い続けていた父は、___葬式時、初めて発覚するのだが東南アジア系のクォーターだったらしい。ってことはわたしはワンエイス___恒例行事と化していた、月に1度の宝くじ購入を済ませたその帰り道。同じく腰痛体操の帰り道だったというクソじじぃの判断ミスに巻き込まれ、呆気なく死んでしまうのだ。

 ___幼心になんとなく。若干そんな気がしないでもなかったが___実は聞くも涙。語るも涙な壮絶半生を生きてきていて、かつ天涯孤独の身の上だったらしい父。そんな素振りを全く見せなかった、ある意味天才詐欺師な通年脳内花畑満開男は最期の最期に、とんでもないものを遺していきました。……それは…。

 

 

 

 

 積もり積もったキャリーオーバーの総額がなんと、十数億まで達していたまさに禁断の当選くじです。

 

 

 

 

 人1人が死んだことによって自然発生する諸々の役所手続きに突如として+α。追加された面倒くさいことこの上ないすったもんだ第2章。その要所要所と結末を掻い摘んで説明すると端的にはこうなる。

 

 ①幸いにも性根が至極善良な大人達が揃いに揃い、積み重なった各届け出作りをせっせせっせ。実に甲斐甲斐しく世話してくれたので、無事十数億なる大金がわたしの懐に転がり込んでくる。

 ②まっくろくろすけブラック企業勤めの、過労死ラインすれすれリーマンでもあるまいし寝食の類。その一切合切を忘れ 、こなさなければならない書類の山やらなんやらに惑わされていた訳では断じてないが、___何しろ時期が悪かった___現代に生きとし生ける15歳。中学生の最優先事項。高校受験という、超一大イベントを完全にすっぽかしてしまう。

 ③1親等である父の忌引は追検査。所謂試験の泣き寝入り的救済措置。その発動条件をもちろん満たしていたのだが、結果としてわたしがその制度を利用することはなかった。………ドクターストップがかかったのだ。11歳頃からの我がメシア、…改め神様仏様主治医様からの、それはそれは有無言わさぬ形相の思し召しであった。曰く【良識ある医者なら40℃近い熱を出して、ぶっ倒れた患者相手に受験許可なんて出せる訳がない。君、地頭がいいんだから高卒認定でも何でも後からとればいいでしょ。命あっての物種って言葉知ってる?】だそうである。うぅん。今思い返しただけでも、耳がめちゃ痛むド正論。

 ④この世唯一の肉親が死のうが自分が死にかけようが、等しく太陽は昇って月は沈む。ついでに言うなら腹も減るらしい。……億万長者(仮)兼受験浪人生(仮)という世にも珍しき2つの諱を手に入れたわたしは、とりあえず纏まった額の金銭、…もとい当面の生活費を求め向かった銀行の有人受付口で驚愕の事実を知ることとなる。

 

 

 

 未成年でも、株式投資って始められるんだって!知ってた?わたしは知らなかった!

 

 

 

 もちろん金額に見合ったリスクは存在するし、国税庁経由自分宛名義の、金融商品取引法違反通知なんて目にしたくなければ確定申告。その他諸々の公的手続きを過不足なく100%。それこそ泣く子も黙るのクオリティーで熟しきらなければならない。投資という底なし沼に、身を投げる限り永遠に。

 だがしかしそれでも。だがしかしそれでも【おツムさえあれば学歴不問】を不言のモットー。暗黙の了解にしているらしい投資の世界は、親という絶対的庇護者を失ったばかりな当時のわたしにとって、酷く魅惑的な弱肉強食ルールに映ったのだ。

 

 はーい。ここらへんで、すったもんだ第2章の説明終わり。みんな分かったかなー?……ちなみに異議は認める。中卒路頭に迷った挙げ句まさかの株式投資。ゆくゆくはデイトレードで生計立てて行く綱渡り人生なんて、良い子は歩んじゃダメだぞー?

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……え?今までの話のどれもこれもが【そもそもどうして杯戸町屈指億ションの最上階なんぞに、難病持ち中卒デイトレーダーが住めているのか】っていう設問の答えになってない?マジで?

 マジかぁ…。でもさぁもうこれ以上、上手く説明出来る自信/zeroだからぁ…。次行っていい?次。

 肉体労働ゼロで稼げる個人事業主と言えば聞こえは良いけど、その実心寂しきぼっちしか経験してこなかったわたしが【ラム】っていう知り合って年単位の古株ネッ友。マイ(セイント)フレンズからヘッドハンティングされた話!

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