某外国酒輸入メーカーのリモートアルバイター   作:うにくろ

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スーパースナイパーの暗躍

 

 

 

 

 

 目に映る世界の総てが青白色の靄に包まれていた、世にも珍しいその日の昼下がり。___某巨大犯罪組織の忠実なる下僕【ジン】に楯突く唯一の男___【ライ】がその存在を改めて意識したのはなんてことのない、枝葉末節な噂話を耳にしたからだった。

 ……曰くそれは【組織内将来安泰株の大台頭【シェリー】と最近ラムがどこからか、自身で見つけ招き入れた懐刀【キルシュ】がなかなかどうして有益な、協力関係を構築し始めているらしい】というもので。

 普段なら。……そう。普段通りの___血も涙もない冷酷無比さが、第2のジンニキと呼び声高い___彼であったなら、そんな噂話なんて気に止める価値もない瑣末事だろうが…。今回の件だけに限って言えばそういう訳にも断じていかぬ、海より深い事情が彼にはあったのだ。

 なんてったって今、組織中を駆け巡っている噂話の中心には他の誰でもない【彼女】が鎮座しているのだから。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 こうして始まった、男の私情挟みまくり___というか寧ろ、そこには最早私情しか入る余地がない___噂真偽確認調査。日々ほんの少しずつでも、その真相に近づかんと弛まぬ努力を続けていた彼。そんな彼の不意を見事突き出し抜いてみせたのは、予想の遥か斜め上を行く超大穴重要人物。……現存す【彼女】唯一の肉親であり、自身愛しき恋人でもある筈ほぼほぼパンピー黒髪美人【宮野明美】その人だったのだ。

 

「……え?キルシュ?もちろん知ってるよ。…最近組織に鳴り物入りしたっていう年齢不詳・性別不明な自称リモートアルバイターさんのことでしょ?」

 

 男が一昼夜掛かけてでも、手に入れること叶わなかった(くだん)の詳細。それを女は何の気なしに。……まるで昨夜の夕飯おかずを知らせるかような軽口で、声高らかに語ってみせる。

 

「あの2人なんだかんだ言って、結構密に___仲睦まじく___連絡取り合ってるみたい。……ついこの間も、ほんっとひっさしぶりあの子と逢えて一緒にご飯食べた時なんか予約待ちは基本___驚異の___100件超えが当たり前。実店舗を持たないパティシエさんが1から。全部1人で作ってるっていう通信販売限定の、すっごく美味しいブルーベリータルトがあるんだけど、…それのホールを丸々キルシュに、先払い冷凍便で贈ってもらったとかなんとか延々鼻高々語っちゃって、わたしその自慢話の間中、ずうっと写真だけ見せ続けられてたんだから!」

 

 もう!失礼しちゃう!……可愛らしくも不満げに、そう口を尖らせる大和撫子の隣で男の思考回路は、これぞまさしく棚からぼた餅的新情報。その吸収処理に大多数の労力を割いていて。

 

(……飲食物を贈り合うような間柄になっている、だと?キルシュと【彼女】が?もう既に?)

 

 ___これはあくまで組織随一スーパースナイパー【諸星大】改め、只今絶賛潜入捜査中【赤井秀一】の突貫特急プロファイリングが、少なからず的を射ていた場合の机上空論___あの2人のコミュニケーション下手(べた)レベルは揃い揃って()()()。かなりの重症重篤段階にあるだろうと踏んでいたのだがしかし…。

 Fact is stranger than fiction。……類は友を呼ぶ、という表現語句もどうやら強ちオーバーではないらしい。

 

(……これで尚且つキルシュの精神性が、ある程度善にあるとするなら___もちろん俺自身の真たる所属を明かした上で___司法取引。ひいては証人保護プログラム類の特別応対。その可能性有無を提示してみるのも最早悪手ではない、か…?)

 

 そしてゆくゆく。……ゆくゆくは、あの貴重極まる高純度クラッキング技術を自分達。…FBI大義の為に、思う存分発揮して欲しいものだと策士赤井の思惑は人知れず、どんどん膨れ上がってゆく。

 ……あぁ恐ろしや。恐ろしや。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

【……ア。モシモシ?ライサン?…ワタシデス。経理担当リモートアルバイターキルシュー】

「着信画面を見たからな。それは知ってる」

【今ッテオ時間、大丈夫デス?】

「あぁ。問題ない」

 

 

 

【……イヤハヤ流行淘汰激シイコノ時代ニ、生キトシ生ケルリアル伝説黒髪乙女。大和撫子宮野明美サントノ、マジ幾分カブリブリ水族館デート。ソノ帰リ道中ホヤホヤライサントッ捕マエテマデ、早急シナキャナラナイオ願イ事カッテ聞カレルト、ブッチャケチョット微妙ナラインデハアルカモナンデスケドー…】

 

 

 

「!」

【……如何セン当方事務方。不肖某ノ、危機的状況事前察知センサーガモウ既ニ、ビッシビシ危険ヲ報セ始メテシマッテイル異常事態宣言案件ナノデー…。ココハモノノ総テガ後ッ手後手。後ノ祭リニ前ニ是非トモ貴方サマノ御力、頼リニサセテ頂キタクー…】

「………」

【…ッテ、ライサン?ワタシノ話、真剣真面目聞イテクレテマス?】

「…………あぁ、いや…。なに…」

【?】

「…………今日は久方特段何時になく、饒舌多弁な口じゃあないかと思っただけだ」

【…エエッ…。…アッ、ソッカ。………誰ダッテコンナ矢継ギ早機械音声超長文___例エモシ仮ニデート終ワリジャナクッタッテ___自分ノ耳元、ワーキャーワーキャー聞キ続ケタクナンカナイデスヨネ。…ナンテ無遠無配慮ナ、自己満KY糞野郎ナンダワタシハァ…。…スミマセン…。猛省シテマタ何時モノド深夜。丑三ツ時ニデモ掛ケ直…】

「その必要はない」

【エ?】

「……そもそもの大前提、反省の弁が聞きたくて指摘した訳じゃないしな。…………で?こんな陽のある内。キルシュ直々俺指名。その依頼内容は?」

【……】

「………」

【……ジャアソノゴ厚意ホントニ悪用。甘エマクッチャイマスヨ?イインデスネ?】

「あぁ。そうしてくれ。……俺の出来うる限り。全力を持ってして問題解決に取り組むと約束しよう」

【………】

「………」

 

 

 

【……バーボンサンノオ尻___気持チ強メニ___蹴リ上ゲテモラッテイイデスカ?……所謂俺達ズッ友ダヨネ的確認電話回数ガ、モウアノ人最近カナリヤバクッテ…】

 

 

 

「……………は?」

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