某外国酒輸入メーカーのリモートアルバイター   作:うにくろ

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サイエンティストは天誅を喰らわせたい

 

 

 

 

 

 

 どうも。___実は最近やっと呼ばれ慣れてきた___自称流星の如く現れし敏腕経理アルバイターことキルシュです。皆さま、近頃は如何お過ごしでしょうか?

 ……わたし?わたしの近況はねぇ、いっそがしいの!なんだか!とっても!バイト業務の一画を担ってる電話番が特に!抜きん出て!

 別に、誰彼頼まれて嫌嫌でもせにゃならん自宅警備員って訳じゃ断じてないし、こちとら年季が入りすぎて、化石キノコ自生レベル完全昼夜逆転デイトレーダーなので、電話の応対ぐらいいつでもいいんだけどさぁ…。なんかラムたん経由で受け取った、わたしの社用アドレスが【あなたのお悩み相談室的フリーダイヤル】とかなんとか適当に銘打たれ、内々出回ってるらしくって。もう鳴り止まない鳴り止まない。

 毎日毎日飽きもせず、21時きっかりから5分おきに5回。ワン切り電話掛けてきやがる余程の暇社員A。【死ね】とだけ言い残してぶち切るB。ジンニキ。アイツやだ。嫌い。だったら人間なんか止めてやらぁ!とかなんとか泣き縋ってくるCに是が非でもベルモットたんの美脚をこの目に焼き付けたいから、バッティングさせてくれ。させてくれたら100万払うとか変な商談持ち掛けてくる犯罪者予備軍D。エトセトラエトセトラエトセトラ。以下略。

 あっれれー?おかしいぞぉー?……社員の皆さん、揃い揃ってわたしのこと、全出張先最終決定権保有者か何かと勘違いしてません?そんな強権持ち幹部だと思われても困るんですけど…。正直…。マジで……。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 どこぞの極端に口数少な系茶目っ気たっぷりぽんこつスナイパーとは違い、己の引き際、…というか不可侵領域を十二分に理解しているいつものわたしならホウ・レン・ソウ。社会人鬼の鉄則に基づいて秒速直ぐにでも、我が愛しの心友ラムえもんヘ救難信号を出したことだろう。

 だが、この【四方八方四六時中イタ電が止まらない後門の虎前門の狼問題】だけに関してだけは、未だラムたんの指示を仰いでいない。……なぜなら。

 

 

 

【ちょっと!ちゃんと聞いてるのキルシュ!?】

 

 

 

 マイ・リモートフレンドシェリーたんが、気持ち前より密かつ向こうから連絡くれるようになったからさ!やったね!ヒャッハー!

 

【キルシュ?】

 

 ……ってやべーやべー。あまりにリア充至福過ぎて眼福ならぬ耳福(じふく)案件。ちみっと昇天しかかってた…。南無阿弥陀仏心頭滅却急急如律令悪霊退散悪霊退散。

 寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助……。

 

【キルシュ!】

「アッ、ハイ」

【………貴方ねぇ、いい加減にしなさいよ!】

「へ?」

【睡眠不足は万病の元だから、夜更かし・徹夜は程々が理想的。…程度ってものが分からないのなら今後は一切認めないって私前に言って聞かせたわよね!?なに!?一過性全健忘の診断書でも貰ってるわけ!?】

「…イイエ。…ワタシノ大脳側頭葉海馬クンハ、今日モ今日トテ元気二働イテクレテイル筈デス…」

【じゃあそんな、気のない生返事が続く理由は!?】

「………チュ…」

【ちゅ?】

「………………注意力散漫?」

【…末期的睡眠不足の症状。その典型じゃない。自覚があるなら、さっさと布団に入って寝る!分かった!?】

 

 果て遠き新薬開発の道が、余程彼女を孤独という無言の牢獄へ誘うのだろう。……気分転換の一環。健全なるメンタルケアカウントで5日と間を空けず電話が掛かってくるのは全然いい。…むしろこちら側から、オプションの1つとして課金したいぐらい大歓迎なのだけれど。

 

 

 

【…べ、別に心配してる、とか、そういうんじゃないんだから!勘違いしないでよね!?】

 

 

 

 それこそ六道輪廻転生前から。デオキシリボ核酸由来のクールビューティーサイエンティストだと信じ、1ミクロンも疑っていなかったシェリーたんがまさか、これ程の隠れ世話焼き好き個性持ちだとは…。驚き桃の木山椒の木。不意打ちツンデレギャップ萌え……。どうしようこうかはばつぐんだ!

 

「纏マッタ睡眠時間ハシェリーサントノコノ、楽シイ電話ガ終ワッタラ。マジデガチデチャントホントニ確保スルッテ誠心誠意誓ウノデ、……ソロソロ本題ニ戻ッテモイイデスカ…?」

【マジで?ガチで?ちゃんと?ほんとに?】

「マジデ。ガチデ。チャント。ホントニ」

【………そこまで言うのなら信用するわよ…?】

「合点承知ノ助」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

【…じゃ、えっと…。一体どこまで…】

「シェリーサンノオネイサン、明美サンノ彼ピッピコト諸星大コトライガマジクソ過ギテ困ッテル。ドウシテクレヨウコノ仕打チ。ッテトコロデス」

【………そう!そこよ!何をしてても仏頂面なあの男!お姉ちゃんが気を利かせてちょーっと黙ってれば、すぐ仕事だなんだって飛行機に飛び乗って!……ついこの前も【大くん、急ぎの任務が入っちゃったみたいでイギリスに行くみたい。水族館はまた今度。志保へのお土産もそれまでお預けだね】とかなんとか!】

「…ハ、ハァ…」

【…………私へのお土産なんて心底どうでもいいの!…問題は!あの男が!お姉ちゃんとの約束を電話1本でほっぽって、その後ゴメンだのすまないだのの、たった一言のメールすらないこと!分かる!?】

「…トッテモヨク分カリマスデス。ドタキャンハ、ソノ後ノ謝罪ナリナンナリ。アフターケアガアッテコソ成リ立ツ諸刃ノ剣デスカラ」

【でしょ!?そうよね!?】

 

 …よし。おけまる水産。ほぼほぼ常世総てのありとあらゆる男女すったもんだを、ほぼほぼ常世総てのありとあらゆるNL・BL・GL系ラノベを熟読読破することで網羅した、自称恋愛マスターはとりあえず現状を理解した。シェリーたん一旦落ち着いてみ?……深呼吸出来る?トゥギャザーしようか?…それじゃあさんはい。ひっひっふー。ひっひっふー。

 

「……ノルアドレナリンノ過剰分泌ハ身体二毒デス。…取リ敢エズ深呼吸ヲ深クシテ、落チ着イテクダサイ」

【……でも…】

「人ノ心ガ分カラナイ、ポンコツ諸星ヘノ対応策ヲ練ルニシロ恋ハ盲目状態。戦後スグノ大和撫子ト化シテシマッタオネイサンノ目ヲ醒マサセルニシロ。…ソコニハ建設的ナ作戦会議ガ必要不可欠。精彩ヲ欠キ、オーバーヒートシタ思考回路ナンテゴミ箱ニ棄テテキテナンボ、デス」

【………そうね。確かに…】

 

 はい!じゃあ気を取り直してもう1回!……大きく息を吸ってー吐いてー、吸ってー吐いてー。ひっひっふー。ひっひっふー。

 

【……で】

「デ?」

【…凄く今更な質問かもしれないんだけど、…キルシュ】

「ハイ?」

【貴方って、あの男と一応面識はある、…のよね?】

「……意志ノ疎通ヲ図ッタコトガアルノカ、トイウ意味デノ問イナラ答エハイエスデス。直電経験モ何度カアルシ」

【…どうだった?】

「ドウダッタ、トハ?」

【どういう印象を抱いたかって聞いてるの!】

「…ウーン。如何センワタシッテバ事務手続キ上、必要最低量ノ会話シカ成立サセテコナカッタハイパーチキンナノデ…。彼自身ノパーソナルナ部分ニ関シテ聞カレタトシテモ、オ役ニ立テルカドウカ……」

【………あのねぇ】

「?」

【どんな理由があるにせよ貴方はどうせ、私を含めた他の誰に対してもその、巫山戯半分としか思えないAI音声越しに喋ってるんでしょ?】

「ハイ」

【そんな珍妙な趣味嗜好を持ってる相手にあの男が、パブリックとプライベートを使い分ける?…たとえ地球がひっくり返ってもあり得ないわ。……さっさと答えて】

「アッ、ハイ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!

 ……はい。ということでね。まさかの禁じ手。本日2度目類似登場法を強行採用した、珍妙嗜好持ちの変態ことキルシュです。皆さまどうか___飽きた思っても決して口には出さず___最後までお付き合いください。

 現在の時刻を明言してしまうと、シェリーたんにマジバチクソ怒られるかもなので秘密。対クソピッピ天誅作戦会議に全神経を集中させようと思う。…あぁ。神様仏様ライたん様!シェリーたんとの貴重な話題提供ありがとうございますでするるる!

 

「…マァ彼自身、オ世辞デモ人トノコミュニケーション二喜ビトカ、ソウイウ感情ヲ見出ソウト、日々努力シテルタイプトハ言エ無サソウデスヨネ。……決シテ」

【酒とタバコと銃さえ自分の手元にあれば、それで十分なのよ。きっと。……だからお姉ちゃんのことなんて、二の次三の次なんだわ】

 

 うわぁ。なにそのアルコール・ニコチン・サバゲー中毒の三段活用。心底笑えん。……さっきちらっと写真データ覗き見たけどさぁ、あーんな黒髪美人とのデートブッチするとか貴殿ほんとにNL担キャラ?もしそうなら正気の沙汰じゃない。神経疑うレベルだぞライたん。

 

「……ソ、ソレナライッソノコト、目ノ前デギャン泣キカマシテヤルッテイウノハドウデスカ?」

【ギャン泣き?お姉ちゃんが?】

「ソシタラ流石二、アノ銃好キロン毛モ事ノ大キサニ気付カルヲ得ナイノデハ」

【…着眼点自体は悪くないけど却下】

「…………ソノ意味スルトコトハ」

【デート当日。しかも待ち合わせの30分前。まさか数十秒の電話1本でドタキャンしようとしてくるクソみたいな彼氏相手取ったとしても、恨み言の1つ満足に言ってやれない女がギャン泣きなんて出来ると思う?】

「……アァ…」

 

 くーぅ!奥ゆかしさが過ぎるぞ!黒髪の乙女ー!

 

「無理デスネェ」

【でしょ】

「…………」

【…………】

「【………ハァ………】」

 

 意図せず重なりしその深い深いため息は、まだ見ぬ次回の天誅作戦会議。その二次開催内定を意味していた。

 今度、シェリーたんが居てる研究所宛に菓子折りでも贈ろう。そうしよう。菓子パしよう。そうしよう。

 リモート菓子パじゃあ!

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