いやぁ暑い暑い!暑過ぎる!………なんか今年の夏って暑過ぎん?もう溶解通り越して蒸発しそう。
(体内脳内口内冷却!アイス!アイス!アイス!)
ちょっとそこのお兄さんお姉さん!暇なら___肝心の語り部がアイス片手間になっちゃうんだけど___聞いてって聞いてって!
……なんかねぇ。今日マジ久しぶりにのっぴきならない事情___要するに我が
この
他のなによりタイパコスパが物を言う、この生産性至上主義時代に絶対遵守される社訓。それがまさかの人命救助最優先とかなにそれ素敵。……名も知らぬ
さもありなん。……今、こうして無事___無事?無事ではないな。十二分にしんどかったから___灼熱外界からの生還を祝し、1個単価税抜35円の棒アイスでうはうは出来てるこの現状は他の誰でもない飛田さんの、その胸に燃え盛ってたジャスティス・マインドのお陰って訳で。
(うむ。苦しゅうない。褒めて遣わす)
もちのろんこっちが手を差し伸べて貰った、所謂弱者側なので冗談半分ではあるのだけれど、こういうのは感謝の念が大事である筈だからして、帰宅後風呂直。速攻アイスターイムかーらーのー時間差だいぶ心中拍手喝采祭り。ただいま大絶賛開催中。
(ふぃー。あっつー)
値は多少張れど着心地抜群の、愛すべき我が部屋着達に身を包み、雫滴る濡れ髪そのままにわたしいつものルーティーン。……出掛けている間の株価変動チェックと、社用アドレスへの問い合わせ留守録に目を通せば、チカチカと点滅する【着信アリ】の文字。…その発信元を指し示す名前を見た直後わたしの表情筋はと言えば…。
「………げぇ…。バーボン…」
まさに秒。生理的拒絶を表すかの如く、ものの見事にひくついていた。
【己もまた未熟な人なれば、選り好みなぞ以ての外】
あー、そうそう。実はこれ、…俺の親父の親父の婆さんの、又従兄弟の婿入り先の妹の…。えぇっと、あとなんだったっけな。細かいとこ忘れたけどまぁいいや。とりあえずそのまたずーっと先の御先祖から、一応代々引き継がれてるっぽいウチの家訓的なやつ。凪もちゃんと覚えといて。じゃっ、後よろしくー。……って、いやいやいや!全体的におかしいとこだらけだろ父!なんでそんな物騒極まりない口頭伝承を、今日夜雨降るらしいから洗濯物入れといてー、みたいな軽ーいノリを持ってして、まるっと丸々記憶丸投げ。責任転嫁されにゃならんのだ!小学1年6歳当時のわたしにクーリングオフ!拒否権は!?
……っと、失敬。いかんいかん。つい熱が入り過ぎてしまった。深呼吸深呼吸。…それでは改めまして当代某、西嶌凪からお歴々へ魂の一言。
(万人を好きになるのはきっと!絶対!断じて無理!)
……いや、待って。聞いて。わたしの歴々御先祖。理由はちゃんとある。わたしみたいな若輩がそう思うに至った経緯。…からの根拠はちゃんと、順序立てて説明するから夢枕に立たないで!お願い!
(……だってあの人、口を開けば【会ってみたい】【なぜ会えない】【なぜ現場に顔を出さない】【なぜこの番号を知っている】【どこに住んでる】【家を教えろ】【通話に地声じゃなく、AI音声を使っている理由は】エトセトラエトセトラエトセトラ以下略。…要は大の知りたがり。かつコツコツ理屈ネチネチ正論厄介系クレーマーで、こっちのHPごりごりに削っていくんだもん…。やだぁ。陰キャには捌ききれなーい。……え?他に?どんないちゃもんつけられたことあるかって?うーんとねぇ【自分以外の幹部に渡りを___幹部ってなんぞ。意味分からん。出世したいから会社の役員クラス紹介しろってこと?___つけろ】とか【ライとだけは絶対組ませてくれるな】とか【ベルモットの散財癖は幾らなんでも酷過ぎる。カードを止めるなりなんなり、どうにかしようとする気はないのか】とか。…そりゃあもう色々ひと通り。てんこ盛りに言われまくった気がする……。疲れた無理貝になりたい…。バーボンたん限定で着拒にしたら、やっぱラムたん怒るかな…)
そんな邪推に思いを馳せていたら、神様仏様地獄の閻魔様。世界の因果律諸々云々から、天罰が下されてきてしまいました。……件のコツネチクレーマー社員。バーボンたんから粛々、折り返しの電話が掛かってきたのです。…はい。負け確ー。
◆◇◆◇◆◇
「……ハーイ…」
【…あぁ!やっと出た!……ちょっと!酷いじゃないですかキルシュ!まさかこの僕に、3度も掛け直させるだなんて!心外だなぁ!】
「………ソレハソレハ。オ手数オ掛ケシテシマッテイタミタイデ非常二申シ訳…、ッテイウカアレ?今日ハ有給取ルカラ領収書対応出来ナイッテ通知メール、届イテナイデスカ?ワタシチャント送ッタヨウナ…」
【それはそうですけど!僕と貴方の仲でしょう?……僕からの電話1本ぐらい、出てくれたっていいじゃないですか】
「……有給取得宣言メールヲ一斉送信シタ意味…。…マァモウイイヤ。後ノ祭リ。…スミマセンネェ。…幾許カ家ヲ空ケザルヲ得ナカッタモノデ」
【えっ】
「エ?」
【…生きとし生ける人間のそれとして、健康で文化的な最低限度の生活を、五体満足送っているかすら怪しい貴方が空けたんですか?家を?ほんとうに?】
「ホントウニ」
【…それってちゃんと身なり整え靴を履いて、玄関の、その扉の先に足を出して、太陽光を直浴びしたって意味で合ってます?間違ってたら遠慮なく言ってくださいね。僕の解釈】
「…………間違ッテハ、ナイデスケド…」
【けど?】
「ソモソモノ大前提トシテ、ワタシガワタシ二割リ振ラレテル業務時間以外ノソレヲ、一体絶対ドウ使オウト、バーボンサンニハ1ミクロンモ関係ガナイ疑惑急浮上」
【……】
「労働基準法第39条第7項。ソコニ書カレテル概要ノ全文ッテゴ存知デス?読ミ上ゲテ差シ上ゲマショウカ?」
【……年に5日分の年休を取得させる義務…】
「分カッタラ、何デモカンデモ根掘リ葉掘リ。矢鱈滅多。此レ見ヨガシ聞イテキタリシナイデ。不肖雇ワレアルバイターナワタシニダッテ、守ラレルベキプライベートッテモノガアルンデス!……反論ハ?」
【…ありません。裁判長…】
「ヨロシイ。ナラバ続ケマス」
◆◇◆◇◆◇
「デ?……結局バーボンサンハ一体何ノ用ガアッテ、ワタシニ電話掛ケテキテタンデスカ?…領収書ノ再提出ナンテオ願イシテナイ筈デスヨネ?ドコゾノ金クレクレリフレイン男ジャアルマイシ」
【…あ、いや。実は、特にこれと言った特別な用事はないんですけど】
「エッ」
【え?】
「……………話ノ腰ヲ折ッテシマッテスミマセン。トリアエズ続キヲドウゾ…」
【でもほら!最近、…っていうかここ連日都市部、災害級に暑い日が続いてるって言うじゃないですか。キルシュが今どこに住んでるのかは、まだちょっと調べてる最中なんでなんとも言えないんですけど部屋の中で倒れたりしてたら大変だなぁ、と思って生存確認を。つい】
「ツイ?」
【つい】
「……ジャア、不肖ワタシノ貴重ナ有給ッテバ、バーボンサンノ、ソンナ【ツイ】ニヨッテ、唐突終ワリヲ告ゲラレテシマッタ感ジデスカ…?」
【そう、みたいですね…?貴方のその、酷く残念そうな声色を聞く限り……】
「エェェェェエー………。ソウイウ、相手ノ体調気遣ウ的唐突看病イベントヲオ望ミナラ、ワタシジャナクテ、ソレコソスコッチサントカト繰リ広ゲテクダサイヨォ。…ソノホウガ絶対需要アルッテェ…」
【………】
「………」
【………】
「……………ヤッダァ。バーボンサンッテモシカシテ、コウイウ薄本展開二免疫ナイ感ジデス?怒リ心頭一切無理解拒絶系?」
【怒ってないです!怒ってはない!…っていうか別段人の好き好きに口出すつもりもないですけど、……キルシュ。一応念の為に、1つ質問いいですか?】
「ハイ?」
【…確かに、スコッチとは何度か同じ仕事に就いたことがあるので知らない間柄ではないですけど。…何故今、このタイミングで彼の名前が出てきたのか、その理由をお教え頂いても?】
「エ?……ダッテオ二人ッテ某日某所。トアル神社ノ境内デリアル夜通シクッチャベリ。ヒッソリコソコソ作戦会議ヲ、弾丸開催出来ウルグライニハ仲良シサンナンジャナインデスカ?」
【………え…】
「エ?」
【………………ちなみにその情報、発信元は?】
「実ハワタシ彼処ノ先代宮司サント、偶然タマタマLINE友達ナンデスヨネェ。…ソノ人、ダーイブ不思議ガッテマシタヨ?【大層目鼻立ちの整った2人組がドの付く深夜ウチに来た。帽子を目深く被ってはいたが、あんなのは逆に悪目立ちするだけだ】」ッテ」
【…………………………そうですか。貴重な意見、ありがとうございます。以後機会があれば、参考にさせてもらいますね…】
「ハイ!スコッチサンニモ、是非ソノ旨伝エテ下サイ!」
【……じゃあ、僕はこの後予定があるので、今日の所はこの辺で…。…また電話します…】
「エッ?…アッ…、…チョッ……」
◆◇◆◇◆◇
不肖わたし人生初の有給休暇はこんな風。……クソ陽キャ発案の生存確認とかいう、傍迷惑極まりない妨害イベントの強制発動によって、唐突終わらせられてしまったのであった…。…残念無念また来年…。