仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー) 作:大島海峡
なんか前作の劇場版に出てきて数分単位で無双するあのパターンです
頭空っぽにして見ていただければ幸いです
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https://syosetu.org/novel/341273/
――気が付けば、ハートたちは遊園地にいた。
そうとしか、表現のしようがない。
改変された二〇三六年。
それを正さんとしたダークドライブとの共闘の末、力を使い切っての消滅。
最新の記憶はそれである。
辺り一帯は、一筋の星光さえ届かない漆黒の闇。
代わり、柵やアトラクションに巻かれたネオンや電飾が色とりどりに、まるで自分たちのテリトリーを分けるがごとくに明滅をくり返す。
「なんだ、ここは……?」
強靭な精神性を持つさしものハートも、浮き上がる当惑をそのまま口にのぼらせた。
見ればブレンもメディックも、一様に復活して同様に、困惑とともに左右を見渡している。
「また、誰かに呼び出されでもしたのでしょうか?」
悩まし気に、頬に手を添え嘆息するメディック。一方でブレンは懸命に知性と探知能力を総動員して眼鏡の下の眉間にきつめのシワを寄せつつ、
「いや……ここは現実ではなく、どうやらどこかのデータサーバーに構築された、仮想空間のようですね」
と推測を立てた。
なるほど、確かに確かに見た目それ自体は形を保ってはいるが、コアが剥き出しの状態のような心もとなさ、足下の不安さを感じる。
そして周りのオブジェにはなんらかのコードのようなものが刻まれ、絶えず川のように流れているのが照らされて見て取れた。
「いずれにしても、どうやら歓迎はされていないようだがな」
そう低く呟いたハートの視線の先、道化の姿に身を包んだ集団がにじり寄っていた。
ウイルス細胞を肥大化させたかのような、オレンジの頭部を持つ異形の軍勢。たしか先の世界の崩壊の時にも出現していた雑魚どもだ。
いずれも長短、種類統一されていない得物を手に、呻きながら、緩慢ながらも明確な排除の意志を示しつつ駆け出した。
ここが如何なる場所であれ、そして目前の存在が如何なるものであれ、そして己らがどのような状態であれ。
退くことは、許されない。
だがその怪人たちの向こう側に、ハートは孤影を視認した。
赤くライトアップされた観覧車。それは巨大な車輪か歯車さながら緩やかに回る。その内のゴンドラの一個に、それは直立していた。
頂点に至った瞬間飛び上がって、尋常ならざる飛距離、浮遊力でハートと怪人たちの間に割り入るように降り立った。
音も無く。
ただその着地点に、八筋の黒墨の痕を描きながら。
「ドライブ……?」
と、ハートが眉をひそめたのも無理はない。
部分部分、その目の前に現れた戦士は己が好敵手、仮面ライダードライブと、彼が扱うシフトカー類に似通うところがあった。
白い二筋のラインが入った、頭部は本来のそれよりさらに鋭利に角が尖り、その下に黄色いアイライト。
胴体部に斜にかかるのは、墨で引かれたような
そしてベルト。
これもまた特異な造形である。
丸みを帯びた方形のディスプレイを挟み込むのは、文字通りの『手形』。
タコの触手を模した指のごとき溝の刻まれた、『L+』という印字の施されたコマンドキー。それと対になるように設置された、車のドアのようなカバー付きの基盤に、割符のごとく噛み合っている。
一際目を引くのは、バックルの上にある、輪形のユニットだろう。
タイヤのような、ハンドルのような、あるいは何かのアーチのようなそれは、蛸足絡む観覧車という、異質、悪趣味極まりない造形となっており、その真上に『Octopus Wheel』というアルファベットがネオンで煌めく。
「バグスターの次はロイミュードのコアデータ? おいおい、また妙なデータが紛れ込んで来たな」
などと彼らの方を顧みつつ、甲高い声、呆れた調子でぼやく。
無防備にさらされたその背に、敵の鈍器が迫る。
それを難なくかわした未知の戦士の左の手中に、インクのような墨が零れる。
その中から引き抜いたのは、観覧車全体を模した巨大で分厚い戦輪だった。
その重量感とは裏腹に、軽快な物腰で身近な敵を薙ぎ倒し、遠くにあってはそれを投擲して撃ち破る。
そして手首と得物とをつなぐワイヤーで巻き取り、引き寄せながらその道程でさらなる敵を巻き込んで昏倒させた。
だが、一掃してもさらに同じタイプの敵が沸いてくる。
「タコ、すなわち
誰にともなく嘯くや、自らのベルトから『手形』を引き抜く。
そして、今度は新しい符と取り替えた。
黒い基盤。先端には葉にも似たオレンジの足跡、その中心に目玉が半円形気味に描かれたそれは、差し込まれると同時に、
〈ナイトサファリ・ガンマ!〉
という音声が鳴り渡る。
瞬間、右往左往するブレンの背を、何かがすり抜けていった。
襲いかかる寒気を感じて恐る恐るその方角を見れば、半透明の一つ目のサイがのっそりと動きだしていた。悲鳴をあげて跳び退がった彼を、半ば透過したようなその巨体が通り抜け、その影が彼もしくは彼女へと重なった。
ただしオレンジ色の重厚にして
その足跡が、蛸足に代わり戦士の胸部プレートにも貼りついた。
目はオレンジに点灯し、肩のマントは萌ゆる黒き
ベルトのバックルは鬱蒼とした草木と、サイのシルエットを主軸とした無数の動物の目と影がひしめく、より不気味なアーチへと変わる。題字はずばりそのもの、『Night Safari γ』である。
その左肘から指先にかけて、額に単眼を取り付けられたクロサイ型のボットが装着され、その鋭い角を得物とした。
その八方から、またその敵……バグスターなる敵が躊躇なく襲いかかった。
しかし次の瞬間、ライダーの身体が消えた。否、煙がごときものになって敵の攻撃を空ぶらせ、その逃げる隙などないはずの間を掻い潜り、彼らの死角にて実体化すると共に、備えざる敵に腕の角を鈍器のごとく叩きつけ、杭のごとく彼らを穿つ。
『おいッ、まだそっち片付かねぇのか!?』
そして優位を確かなものとした時、別の男の、甲高い怒号が響いた。
見ればそのベルトの右端に取り付けられた、丸みを帯びた正方形のモニター。そこに、映し出された、デフォルメされたティラノサウルスの横顔が顎を動かし怒鳴り散らす。
「そうは言ってもねぇ、むやみやたらに数多いんだよ、こいつら」
『こっちもこっちで色々湧いてきた大変なんだよ! さっさと戻ってこい!』
へぇ、と低い声で相槌を打ちながら、誰ぞと通信をしているらしいその仮面ライダーは、
「じゃあ、交代しようか」
そう、事も無げに言った。
あ? と問い返すディスプレイの恐竜は、すぐにその意を察したのか、
『ちょっ、待て!? 今はマズいッ!』
目を丸くさせて口をせわしなく動かす。
だがそれを無視して、ベルトのバックルを手に。モニターに指を当てると、ランプのようにそれが点滅する。その状態で、バックルのカバーを、手動で左側から右側へスイッチ。
〈承認! シフトコウカン!〉
若い男の音声が、通り良く闇の遊園地に響く。
先とは機構の向きが逆となり、露わとなった右側のソケットにまた別の、恐竜らしき鋭い足跡のデバイスが転送されてくる。
〈バックドア! レックスサーキット!〉
そんな声が続いた瞬間、ライダーの姿が爆ぜるがごとくに消えた。そう鳴ったベルトだけをきれいに残して。そしてそのベルトを起点に、あらためて再構築された身体は、体格が異なり、色味が異なり、造詣も異なる。
どちらかといえば小柄で中性的だった体格は一転して明らかに男性と分かる長躯に変わり、その目の色は青くLEDが点灯している、どことなくドライブシステムの系統を感じさせるマスクには、恐竜が頭から齧り付いたかのようなメットが付属する。黒を基調としたアンダースーツの上から、流線型の、どことなく生物的なアーマー。その胸部の模様も対称となり、『R−』という記号とも、T-Rexの横顔ともつかないラフなエンブレムが、タイヤ痕で刻まれている。
そしてベルト上部のユニットはタコと観覧車でも叢のクロサイでもなく、ピンクのティラノサウルスが黒いタイヤを齧る、カートゥーンの風味が強い意匠のものとなっていた。
「だぁーッ! あのタコボーズ、ありえねーッ!!」
と、その直後にその新たなライダーは、身体を戦慄かせて憤る。その声は、先にディスプレイから響いていた怒鳴り声そのものだ。
その余りに大き過ぎる隙に、背を鈍器でバグスターが殴りかかる。
だが、鋭い爪を伸ばしたそのライダーの右手が、それを妨げる。
そう嘯くと襲撃者の一人を掴む。互いに互いを巻き込ませながら一絡げに地面へと叩きつける。入る亀裂が、恐竜の足跡のようだった。
それから大きく首をのけぞらせると、その鬱憤をバネとするかのように、ダイナミックな動きで敵に飛びかかり、力任せに我が身を旋回させて、敵を吹き飛ばす。
「しゃあねぇ、とっとと片付けてこんなトコとはおさらばだ」
毒づくように宣うや、自らの苻をさらに強く押し込んだ。
〈必殺承認!〉
という軽快な声音と共に、爪先で大地を小突けば、光とともに形成された高架が、道路が縦横無尽に伸び上がり、バグスターたちも進路を奪い、退路を断つ。
そして自身の横にはアーチ状のゲートと、信号機。恐竜の姿が二頭身で表現されたそのシグナルは、赤から黄へ、黄から青へ。
彼の足下を走る道路は、レーシングさながらのけたたましいスタート音と共にその身を運び、高速で敵を翻弄する。尾を引く閃光は、ハイウェイを駆けるテールランプのようだ。
〈レックス×オクトパス! スピードスクランブル!〉
自らのバックルのタイヤを大きく回し、その速度も高度もピークに至る。
滑空するライダーは、ダメージと拘束とで身動きの取れなくなった怪人たちの中央を、その勢いがままに穿ち抜く。
膝を杭のように食い込ませ、その腕で薙ぐ。
ただ単純な動作だが、実態の何倍にも膨れ上がったエネルギーは、直撃を受けた単体のみならず、その周囲の群体ことごとくを焼き尽くす。
〈3・2・1……フィニッシュ!〉
戦闘の緊張感とは程遠いその音声と、それとともに吹き飛ぶバグスターたちを背に、地を掴むように両手をつき、ドリフト音で空気を引き裂いて旋回する。
その軌跡に、赤熱したタイヤ痕と足跡とを残して。
その爆発を掻い潜って、粒子の火の粉として散った粒子たちが、あるい程度の指向性を伴ってハートたちの掌に落ちて、その独自性に影響されかのように形となった。
すなわち、同じく符に。
ハートの手に落ちたものには、紅きボクシンググローブの装飾とメカニカルな質感が宿り、そして片隅には、
『Punching Machine Heart』
と銘打たれていた。
「ハイ回収」
その符に、着地したライダーの手が伸びた。
元より拾い物ゆえ、執着はないし、状況もまだ呑み込めていない。抵抗する間もなく、それは奪い取られていった。
「どこのポンコツAIかハッカーだか知らないが、この『パンデモニウム』に厄介事を……ん? あんたの顔、たしか署の資料、で」
横柄な態度で首を上下に動かしてハートたちを見ていた彼ではあったが、ややインターバルを挟んで、低いうめき声をあげて飛び退いた。そして、
「――これはこれは! どーも失礼いたしましたです、ハイ! お噂はかねがね……」
身を屈めながら膝でスライディング。ハートたちの膝下でペコペコと頭を提げながら、どこからかともなく取り出した扇子で彼らに風を送る。
『なにやってんのさ』
と、呆れ声が彼のベルトから聴こえて来た。見れば、今度は蛸の絵文字が、ディスプレイ内に表示されて、所在なさげに八本足を遊ばせている。
「バカ、バカ! あいつら、たしか上級ロイミュードだ……ホンモノなら、俺ごときが勝てるわけねーだろ、劇場版の初登場補正じゃねぇんだから……! ここはテキトーに持ち上げてやり過ごすんだよ……!」
などと、その仮面ライダーは自らのベルトに囁くも、距離をそれなりに置いていても丸聞こえである。
「聴こえてるぞ」
あくまで事実として、ハートは伝えたつもりだったが、彼は大仰に我が身を跳ねあがらせて、
「ヤベッ、バレた! ズラかるぞ!」
と、自身のドライバーをおそらくは正式な手順のもとに解除し、
『相も変わらず、小者だねぇ。旦那は』
と、相棒らしき存在の嘆息を最後に、『彼ら』の姿は忽然と消滅した。
「なんですの? アレ」
とメディックが憮然と口を開いたが、その場に堪えられる
「ただ……なんとなくどこかの誰かを思い出しますね……」
と、ブレンが所感をこぼした。
「……ま、良いんじゃないか。たまにはああいうのがいても」
ハートとしては己の信条の下に、その個性を認めるのみであった。