仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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9.タコ・車輪・アトラクション

「さて、久々の現実(シャバ)だ。楽しむ暇はないけど」

 そう嘯きつつ、仮面ライダー態になったクスミは大きく伸び。その無造作に開け広げられた胴体目がけて、『ライオンアルタール』は突撃を敢行した。

 

 だが上に跳ね上がり、身を捻ったクスミは、石の鬣を掴んで飛び越えやり過ごし、そのまま彼の視界から消えた。

 激しく首を左右させる怪物だったが、その首根に、クスミは彼の身の裏より腕を絡ませた。

 反対の手に赤と黒の携帯端末、オクトフォン8が握り、撮影と解析を同時に進行させていく。

 

「えー、ケース029。物質世界・東京都内一角。被験体は既に確認されている『ゲゲルコロッセオ』により電脳体に変異させられたものと推察される。他にマリスチケットの精製ならびに併用が認められるが、とりあえずは便宜上『ライオンアルタール』と命名。内部の生体コードから先に逮捕された窃盗団のリーダー格と判明。おそらくは署内で留置中に、『連中』の直接的なアプローチにより……ホラ、ちゃんとこっち見てー」

 

 その拘束から逃れようとするもがく彼を抑え込み、なお記録を続ける。

 だがそれは不意打ちで成り立つことであり、単純な力を発揮するだけの余地を取り戻せば、力づくで抜け出ることは、容易だった。

 

 しかし、ほぼ本能と苦痛で動く彼とは異なり、クスミは理性で己の行動を選択する。

 その限界のタイミングを的確に見極め、自らライオンアルタールから身を剥がす。空振るその腕を掻い潜り、その姿の通りに柔軟に身体を捻って、次いで襲い来る二撃三撃をかわしていく。

 

 だが間を空けられた刹那、ライオンはその屈強な足爪と翼の展開でその巨躯を制動、石の羽片を無数に乱射する。

 一呼吸の後、ライダーは全速で駆けた。足下の地面を追尾する羽が穿つ。後頭部のすぐ裏を過った一部が、コンクリートの壁に突き立ち、散弾がごとく穿つ。

 

 軽やかな呼気とともに、クスミは壁を蹴り、音も立てず割ることなく、窓ガラスを渡り抜けた。

 そしてより高みへと跳躍する。

 吹き抜けの空の下、地表の敵に突き出した腕に、赤光の糸が絡み合って円盤を組成する。

 それは観覧車のゴンドラの如きもの。車輪が如きもの。それを、太きワイヤーがクスミ自身の手と繋ぎ合わせる。

 さながら、巨大なヨーヨーにも似た状態のそれが、伸び落ちて首根を絡めとる。

 その中継ぎをするホイールが滑車のように回転、巻き上げ。吊り出して二階の適当な部屋に投げ込む。

 どこかの捜査会議室らしきその室内の、長机やらモニターを砕き、転がり込んだ怪物が穿った穴から、

「いよっと」

 クスミも追って、乗り込んで来た。

 

 その余裕がためか、己の苦悶がためか。

 激しく猛り狂い、翼を広げて狭い室内を飛び回る。

 手にしたホイールで再び捕捉を試みるも、怪物はそれを掻い潜って決死の特攻を狙ってきた。

 

 クスミは、身体を低めて仰向けにして宙がえり。足裏でその勢いを逆用してオーバーヘッドキックで彼を失墜させる。だが、その破壊の痕に、溜息をつく。これでは署が倒壊する方が先になる。

 

「場所を移そう」

 と誰にともなく呟いたライダーの手には、青い地金に赤くムカデの這う姿が浮き彫りにされた欠片。

〈ワームホールエリアX!〉

 それをベルトに嚙合わせると、ベルトのバックルには赤い廃墟に、這うムカデの絵文字で、ペンキで青く染められた題字に変わる。それに合わせて壁を、床を、同じく青き痕跡がムカデ型に刻まれる。それが手の巨大車輪に吸い込まれ、データと化して取り込まれる。武器は解体され、そのパーツは色を変える、形を変える。

 その左腕に、武装となって再製される。

 

 そのままムカデの頭部と胴がごとき、紅殻のアーマー。銀色の牙を模した二本の鉤爪をかち合わせ、眩い火花を散らす。重く金を擦る音を室内に反響させる。

 

 起き上がるなり、地を掴み野獣は再び飛翔する。

 それを受け流すのか、それとも新しく精製した強力な武具をもって、真っ向から挑んで受け止めるか。

 

 ――否である。

 

 大きくスナップを利かせた左腕から、ムカデの首がぞろりと伸びる。

 鞭のようにしなり、そこからさらに長く。

 やがてその先端が、地面に潜り込んだ。穴をくり抜いた。

 だがそれは、ただの掘削ではない。その縁はきれいな円である。

 瞬間、飛翔する怪物の周囲に穴が浮かび上がる。一つどころではなく、無数に。

 そのうちの一穴より、消えたムカデの頭部が突き出てきた。銀閃を帯びた牙撃が、ライオンを切り裂く。

 穴を無尽蔵に駆け巡るは、細い紅の甲殻。

 そのアームこそが、彼の可動範囲を限定する新たな檻である。

 停まることなく、天地の穴から穴へと絶えずそれは移動し、繋げていく。

 勢い、そして神速。それらの威に押され、獅子は羽を背に萎えさせ、地に足をつけた。

 そんなライオンアルタールの算盤に、上手より牙が食らいつく。天井に開く穴の中へと、引きずり込む。

 

 転瞬、彼が放り出されたのは数フロアを跳躍した先、屋上だった。

 跳ね上がった身体が足場をバウンドし、転げまわる。そのままフェンスへ激突。虚空に躍り出て、外へと投げ出された。

 敵は手足で空を掻き、翼を打つも――すでに遅い。

 

 クスミもまた、自身の能力でもって作った穴を通り抜け、屋上に躍り出る。

〈オクトパスホイール!〉

 基本の形態に立ち返り、その上で、ベルトのハンドルを片手で回す。

〈必殺承認! オクトパス! スピードフィニッシュ!〉

 その音声と同時に、何処からともなく現れた蹄鉄が如きものが二個一対、前後からライオンアルタールを挟み込み、動きの一切を封じた。

 

 そしてその外縁から突き出たアーム。さらにその先に展開されたゴンドラが、上下左右に揺れながら回る。

 ……遠目から見ればそれは、突如として虚空に現れた遊具(アトラクション)であっただろう。

 

 その遊具の中に、クスミは戯れるが如く、我が身を投じる。

 回るゴンドラを足場に縦横無尽に空を駆ける。加速していく。折に触れ、中心にて身柄を抑え込まれた怪物に打撃を加えていく。

 そのダメージも、スピードも、最高潮(トップギア)に至ったタイミングに、紅蓮の光を帯びたクスミの爪先が突き出された。その光はライオンアルタールの内部へと送り込まれ、その熱量にてゴンドラをさながら機雷がごとく巻き込んで誘爆した。

 

 散らされたデータは、粒子となって寄り集まり、物質へと再変換される。

 すなわち、二枚のチケットと、窃盗犯の生身。

 それを交錯の間際にそれを両手でかっさらったクスミは、再び警察署の屋上に降り立ったのだった。

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