仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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10.悪夢は続く

 空中にて敵を撃破し、人間態に戻った『被害者』を確保し、ふたたび屋上に降り立つ。

 これといったダメージも受けておらず、チケットは二枚どり。

「完璧な成果だ」

 再びその手に端末、オクトフォン8を再転送し、映像、そして音声で、記録を始める。

 

「――戦闘はほぼ無傷で終了。現実に転用したライダーシステムも、アルタールと同等以上の戦力を発揮することがこれで証明された。また、戦果としてマリスチケットを二枚入手。ロンダリングと解析をすれば、『あの男』のトラッキングできる可能性がある。よって」

 ……が、そう言いさしたライダーの側面を、

〈アッシュゴーランド!〉

 電磁気を伴う突風と衝撃が襲った。

 

「ぐっ!?」

 地を舐めることは避けられたが、転がり、膝をついた。

 そんなクスミの眼前に、同じく異形の影がある。

 

 広く幅をとった帽子。その鍔には、馬や翼竜の小物がとりつき、まるで赤子のための遊具か、メリーゴーランドのようだった。

 その顔面の中央は異様に突き出ているさまは、鳥の嘴か、あるいはプテラノドンかペストマスクか。

 道化じみた装束はしかし、その造形と裏腹に濃淡様々な灰色で色調がまとめられ、赤い血管がごときコードが全身の表皮を巡る。その右手には似つかわしくない肉厚の両刃の剣が握られていた。

 左手には――ライオンアルタールの本体である男の首根が掴まれていた。

 

 生死は不定。まともな精神が残されているか確認する間もなく、また与えずに、その胸にはノーモーションで刃先が突き立てられた。

 血は流れず。ただ必要な生体情報や記憶、あるいは肥え太った自我――悪意(マリス)のみを効率的に抽出する。ただしそれを抜き取られた()()は、余計なものとしてパージされる。

 

 声も立てず灰となって肉体の大半が消滅していく男が、現世に残すもの。それは彼の悪意から構成される一枚のチケット。

 毒々しい紫色、大蜥蜴の背景とは裏腹に、透明感あるフォントで『Mirror House Venom』と銘打ってある。

 だが目的の本命はそれではなく、あくまで口封じといったところか。

 

「今は見逃してやる。だがいずれ、その二枚ももらい受ける」

 甲高い声でそう宣うや、その背に翼竜の翼を生やす。そして両脚の力で翔び上がるや、待ったをかける間もなく天空を直線的に雲を突き破って駆け去っていった。

 

「――しくった、な」

 軽く舌打ちするクスミだったが、その右手が小刻みに、意図せず震え出した。

 画竜点睛を欠いたことによる悔しさに由来するものか。それとも生理的な痙攣か。

 

『ふざ、ける、な!』

 ――否、である。明確に、クスミの意志に抗う者の思惑が働いていた。

 それが誰かは、言うまでもない。その立ち位置を反転させられた、明智一路が、その内で抗っている。

 

 その彼の『右手』が震えながら伸び、ベルトのバックルを掴んだ。強引に、引き剥がそうとしている。

「おいっ、やめろ! 今そんなことをしたら」

『うるせぇっ、さっさとここから出しやがれ!』

 左手でその無茶を抑え込み、あらためて説得を試みるも、怒り心頭の彼は聞く耳持たず。クスミの左手の妨げを破り、ドライバーを力づくで外したのだった。

 

 〜〜〜

 

 かくして、悪夢のような、茶番は幕切れとなった。

 ドライバーを外し気がつけば、その姿は彼のものへと戻っていた。

 今まで混乱を極め、自分がどういう状態かだったかさえ分からない始末だったが、とにもかくにも自分の肉体は取り戻せた。

 

「やった……!」

 安堵と歓喜の呼気を漏らす彼の手元でドライバーが、その中央のディスプレイから、

『あーあ』

 と抜けたような嘆きが聴こえてくる。下がり気味に目を細め、触手を上下させる様は、人間で言うところの肩を竦める所作なのか。

 

「何が『あーあ』だ! もうテメーの口車には乗らねえからなっ」

 元通りとなれば、相手に気後れする必要はない。一転して強気に出た彼は、

「大体、なんだこんなモン! こんなもの、こうして……っ!」

 と持ち手を掲げたまま、助走をつける。出来る限り強く放り投げようと、細まった通りから大通りに駆け出そうとした、その矢先だった。

 

 眩い輝きが、彼の視界を潰す。

 その光の帷が開けた時、現れたのは昼の首都の街並みではなかった。

 今まで個人的な捜査とサボりで街中を把握している一路でさえ、見覚えのない。あってはならない光景が、そこには広がっていた。

 

 そもそもに天を包むは闇。

 太陽は無く、星月は昇らず。薄くかかる雲の一端さえない。

 

 では何に目が眩んだかと言えば、それは地上で明滅をくり返す、無数のネオンだった。

 建築法など知ったことかと言わんばかりに無造作に建ち並ぶ、観覧車やジェットコースター、ゲームセンター、カジノ、メリーゴーランドにレース場、あるいはお化け屋敷チックなアトラクション。巻かれた電飾。それが施されていない施設の外壁の面にも、何かしらのコードらしきものが垣間見えた光線の綱が、蠢いている。

 

 この混沌とした有様を、あえて既知の概念で言い表すとすれば、

『遊園地』

 である。

 

 そしてこの尋常ならざる空間には、無数の来客が往来をしている。

 それはかつて銀行で視えた影、あの署内で暴れていた怪物。それらに類するモノたち。

 

「何処だよ、ここぉ……?」

 愕然と呟く一路。その垂れた手の中で、ベルト越しに悪魔は溜息を吐く。

 

『……いつかは説明するつもりだったけど、直接見てもらった方が理解は早いか』

 そう己自身を納得させるようにぼやいたクスミは、わざとらしい咳払いと共に続けた。

 

 ――ようこそ旦那。

 ――電子の魔界。仮想空間『パンデモニウム』へ。

 

 そして悪夢は、まだ続く。

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