仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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本当は一話まるごと上げる予定でしたが、あまりの情報量の多さに難儀している状態なので、数話ごとにまとめてUPすることにします。


プロローグ:バックドア

 人生は、いくつもの道があり、それを前にした人々には無数の選択がある。

 一本道――止まるか。進むか。

 分かれ道――とりあえず右、次、左。

 過ぎた道、これから歩む道、目指す道、外れた道。

 だがその行動の結果刻まれた轍や足跡は、けっして消えることはない。

 特に、しくじりの烙印なんてものは。

 

 ――俺の場合は二年前、梅雨の英都(えいと)銀行北五番支店。

 その時、その場を支配していたのは、三人の男だった。

 一人は、立て篭もり犯。出口の見えない不景気の被害者、半ば突発的な犯行であったという。

 一人は、五乗(ごじょう)(かける)。警視庁の若手のホープ。

 そして最後の一人は、この俺。駆のいわばバディだった、明智一路。

 

 雨の昼下がりに、改造モデルガン片手に蜂起した犯人によって、現場はまたたく間に恐怖のるつぼと化した。

 その緊急時において、初動の対応を任せられたのが、当時別件で付近を警戒中だった俺たちだった。

 

 おそらく、そこから先のことはあまり深く思案していない犯人は行員や居合わせた客十数名を人質にとっていた。双方ともに極度の緊張状態にあり、増援は待っていられなかった。

 正面から五乗が説得に当たり、俺は裏口から侵入。もし説得が困難となった場合、俺が仕掛けて一気に確保。そういう段取りになっていた。

 

 五乗の奴はきわめて真摯に、いかにも優等生らしい口調と言葉選びで立てこもり犯に寄り添った。その間に俺は、奴が注意を惹く隙に、悟られず射程内に忍び寄る。

 投降か、確保か。事態がどちらに転ぶにせよ、順調にコトは進んでいた。

 

 俺にとっての事件は、そこからだった。

 人ならざる影が、俺の後ろを、身体を、通り過ぎていく。

 

 もう少し濃かったら目に痛いであろうと言う、絶妙なラインのパステルピンクの影。血管の如くそれを組成しているのは、意図不明、判読不能のコード、数式の羅列。

 その輪郭の大凡は、両の脚で立っている、人間の男のもの。

 だがその頭部や異様に膨れ上がり、頭頂は緩やかな曲線とともに、左右に分かれている。それはハート型か、あるいはトリケラトプスのようだ。

 でなければ――

 

 悪魔。

 というのが、漠然だからこそ近い気がした。

 

「おいおい、すげぇ場面(ところ)に出ちまったぞ。でも試運転は成功だな!」

 ノイズまみれの声で、妙に浮かれた調子で『それ』は言った。

「おいおい、初動の対応がコレか? 相変わらず進歩がねぇな、この国の警察は」

 

 悲鳴は、遅れてやってきた。

 犯人からの死角にいた俺は、それによってその存在を気づかれた。

 

「なっ、なんだテメェ!?」

「一路!?」

 

 犯人と相棒とが、一様に振り向く。

 だが、その視線は悪魔にではなく、尻餅をついて後ずさる、俺自身に向けられていた。本来、一番に目が行くはずのこの怪物を誰も見向きしない。

 

「へぇ、お前……見えてんのか」

 そして怪物もまた、大柄なその身を折るようにして、顔に当たる部分を俺の間近に寄せた。

 ク、ハハハ……と、ノイズが震える。

 だがそれさえも、周りには聴こえないかのようだった。

 

「面白ェ、センスあるよ、お前」

 一方で怪物の方は含み笑いで甲高く声を響かせ、

「良いね! 脳細胞と心臓が同時に沸いてきたぜッ!」

 自らのその状態を手でも表すかのように、焔に見立てた指先を胸の前で蠢かす。

 

「よしよし! じゃあ、ニイちゃんが良いモンをくれてやる」

 そう言うと、奴はおもむろに手を伸ばして、俺の身体を貫通した。

 通り過ぎた時と同じように。だが、干渉できるかどうかはあちら次第、というらしい。

 

 瞬間、心臓を鷲掴みされたかのように。

 俺の全身が緊張し、萎縮した。耐え難い激痛が襲った。

 そのくせ心臓が熱く、五月蝿い。まるで一気に、トップギアに切り替えられたかのようだった。

 

「あーあーあー、シーシーシーッ」

 悶絶しながら転がる俺から引き抜いた腕で、おどけたように己の口を封じてみせる。

「下手に抗うな、受け入れろって……ウン、良いぞ兄弟。やっぱお前は見込みがある!」

 などと訳もわからない上機嫌で、謳うがごとく言って立ち上がる。

 

「そっちは、どうかな?」

 などと、抜かしつつ。

 そっちの示唆するところは、言うまでもなく残された二人。犯人と、相棒。振り向けた頭は、後者に対してのものだった。

 

「え、なんなんだよコイツは、えぇ!?」

「待て、落ち着けっ、おい一路、なんで、お前!?」

 

 そしてやはり、二人の意識はどうあっても、自分たちに寄りつつある怪物に向けられていない。あの不思議な干渉が、ゆっくりと駆に近づいていく。

 到底信じられない光景だが、身をもって知った。

 あれは、あいつは、人が触れてはならないものだと。

 

 腰元に隠し持っていた官給された拳銃を、半狂乱になっていた俺は、咄嗟に引き抜いた。

「やめろォォッ!!」

 咽頭が裂けんばかりに声をあげ、セーフティーを外し、トリガーに指をかける。

 

 そして放たれた一発は、俺自身の全てを奪ったのだった。

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