仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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8.シフト交換

 空より、突如として現れた新たなる怪人。一路には、現世ならざる魔境にて見覚えがあった。

 

「こいつ……っ、あのハート野郎と一緒にいた……!」

「貴様、いったいどこのアルタールだ? 誰の差金だ?」

 

 取っ組み合い、装備をぶつけ合い、絡ませながら、互いの素性を探る戦いが始まった。

 もっとも、一路の方は敵の正体に見当をつけている。

 

 クスミよりの情報、そしてパンデモニウムでのやりとりを合わせて鑑みるならば、ガラーシュ一家の次子、ジィダ。

 だがこちらがそれを掴んでいることを知られてはならない。告発ないし逮捕するには、確証も力も足りなさ過ぎる。

 

 そもそも、すべてにおいて優先すべき対象が、それ以外にいる。

 

「プテラ、貴様は離脱しろ」

「Mr.バット、奴の処分は最後まで私めが……ッ」

「これ以上、手間をかけさせるな」

 

 だが、その対象たるプテラアルタールに、乱入してきた第二の怪物は命じた。

 それに不承不承、という体でその命令に従い、身を翻す。

 向かった先は、一路の取りこぼした彼の携帯。

 そして来た時と同様、画面の手前の空間に奔った亀裂に我が身を押し込むようにして、消えていった。

 

「逃がすかッ」

「貴様の相手は、僕だ」

 

 立ち塞がったバットを退かせるべく、突き出した車輪のガジェットをバットは己が爪でいなし、さらにその持ち手を上から抑えつける。

 そして捻り上げると一気に体重をかける。かけた力の分だけ、一路の身体が浮き上がり、その上下が逆転する。

 強制的に宙返りさせられたその身に二度、掌底が叩き込まれる。

 

 翼ともマントともつかない、腕の皮膜を翻すと、そこから湧いて出た黒く平べったいものが、吹き飛び、空いた両者の間の空間を、埋め尽くす。

 

 それは、見たことのない言語が濃緑で刻まれた、名刺ないしショップカードのような蝙蝠型の切り紙。

 暗黙の号令一下、主人の五指で操作され、一斉に一路のボディにまとわりつきそして鬼火と化して爆ぜた。

 

 地に転がりその残火を消した一路は、歯噛みする。勝てないことは問題ない。元より、アルタールとしての経験値は相手が上だ。それでも、ここは是が非でも、道理を引っ込ませてでも推し通らなければならない。

 この二年間欺かれ、それに甘んじて目を逸らし続けて来た、己の責任として。

 

『旦那、ヤツはパンデモニウムに逃げる。ここで見失えば、また姿を見せるかどうか分からない』

「分かってる! くそっ!」

 クスミに毒づくも、有効な手立ては見出せずにいる。今は手裏剣に変形させた武器を手の内で回転させて、それで迫り来る紙片を退けるので精一杯だ。

 せめて一手、天地をひっくり返すような奇手さえあれば。

 

『……その方法、あんたは知ってるはずだ』

 一路の心理を読み抜いたかのようにクスミは声をひそめて告げる。

 違いない。なにしろ、つい先ごろまで身をもって体験していたのだから。

 

「……もう一度、あの世界に行けってか」

『あぁ、今度は正当な手順を踏んで、オレ様と入れ替えることで再びあんたをここへ送り込む。それが唯一の方法だ』

 

 即答出来かねる提案だった。

 それすなわち、自身の質量(カラダ)をこの怪しきVtuberに開け渡すことに他ならない。ふたたび欺かれて……今度こそ、戻っては来れないだろう。

 

 敵の猛攻を凌ぎつつ、無言で逡巡する一路。そのベルトから、クスミの張り詰めた息遣いを感じる。

 

『…………()()()の目的はッ!』

 そのクスミが、鋭く音声を発した。

 

『自分の人生を取り戻すことッ! 家族に向き合うこと! でもそれはこんな姿(アルタール)としてじゃない! そのために悪魔(ギフ)の力が要る! あんたの助けが要る! けど、そのために自らに顔向け出来ないような道を歩むことは嫌だ……でも結果として犠牲者を出してしまった。そこについては、心苦しく思う』

「……お前」

『……以上が、今言えるだけのオレの本音であり、最大限の歩み寄りだ……どうする?』

 

 そのクスミを受け入れるか、否か。

 ふん、と一路は鼻で笑う。

 元より、意味のない葛藤だった。

 元より、惜しむべき身命などない。

 ならば、と。

 

 手の内に転送されてきたオクトパスホイールのチケットを、握りしめる。

 前へと進み出る。

 

「――だったらこの場は信じてやるよ。画面越しの相棒を、1%の真実(ホンネ)分な!」

 

 そう嘯くや、彼はベルトのカバーを、左右反転させる。

 開けたソケットに、そのチケットを装填した。

 

「何をブツブツ言っている……これで終わりだ!」

 

 その瞬間、蝙蝠たちの勢いが増した。

 一路へ群れて寄せて、覆い尽くし、埋め尽くし、そして焼き尽くす。

 

 だが、断末魔の一切は聴こえない。

 代わり、

〈承認! シフトコウカン!〉

 ――という、溌剌とした声が斜陽と妖炎の狭間で響く。

 

〈ナビゲーション・フロントドア! オクトパスホイール!〉

 と、焔の渦の内側より、膨れ上がった風が、蝙蝠たちを消し飛ばす。

 

「なにっ!?」

 怪人の貌から表情の変化は認められないが、声はあからさまに動揺を示す。

 

 だが、無理もないことではあった。

 

 炎と蝙蝠の包囲を破り現れたのは、彼の対峙していた仮面ライダーではなかった。

 基本的な構造は同じだが、身の丈は華奢で細身。司る姿は重装の恐竜ではなく、技巧とトリッキーさを感じさせる蛸の装いだった。

 

「姿が、変わった……!?」

「違う」

 ジィダの言葉に、そのライダーは甲高い声音で即座に否定を入れた。

 

「場所と受け持ち(シフト)が、変わったのさ」

 と。

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