仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー) 作:大島海峡
1.スタンピングフィニッシュ
休止中の遊園地。
開演中の賑わいが嘘のように、そこは静まり返っている。
停止したアトラクションが、まるで巨大な怪物か悪魔の影のようにそびえている。
男達が、そのフェンスをよじ登って侵入した。その表情はいかにも切羽詰まったようであり、それらを追い立てるように、サイレンの音が鳴り響き、遠くでパトランプが明滅する。
「くそっ、なんでバレた……!?」
男たちは、連続窃盗グループだった。そのターゲットは宝石、貴金属から自動車部品まで、無差別かつ無作為。
だがそれゆえに警察側は次の狙いを絞り切れず、かつ計画そのものは反して緻密であるゆえに後手に回っていたのが現状だった。
しかし、そのイタチごっこの状況が一変したのは、この夜のことだった。
いつものようにグループ内の秘密の通信網で打ち合わせのうえ、当時の警察内情さえもハッキングで入手。念密な計画を立て、犯行に及ばんとした。
ところが踏み込んだその時に、待ち受けていた警官隊が一斉に彼らを包囲。
リーダー格含むその内の何人かはその場で現行犯逮捕され、決死の抵抗の末抜け出た残りが彼らだった。
「こうなってはどうしようもない。ここで解散だ! 落ち合う先はまた連絡する」
そう副リーダー格が指示を飛ばす。夜陰に紛れアトラクションを遮蔽物として利用しながら、一人でも多く警戒網を抜けると言う算段だった。
……が。
「残念だが、そうはいかないんだなァ」
得意げな声と共に、無人の遊園地が一斉にライトアップした。
その盗人らの網膜を焼かんばかりの光明は、彼らの姿を遍く照らし、長い影を浮かび上がらせる。
そして前には、一人の男が立っている。
新米ではないが、若手の範疇にはいるだろう。どことなくシャープな印象を与える細面の男で、顔の面積に比してやや大振りの口端を、優越に吊り上げている。
その手が、余裕たっぷりに、
「お前たちの動きは、完全に見切っている。俺の情報網に隙はない。さぁ、大人しく投降を」
「確保ーッ!」
……と次の瞬間、乗り込んできた警官隊が彼を押しのけ踏み潰し、今度こそ逃げる隙を与えず、窃盗団の残党を捕まえた。
「ふぉぉッ!?」
彼らに
「ハーイ、みんなお疲れ様ー」
小さな手を打ち鳴らし、彼と同じ年頃の女刑事が参加していた部下たちを労う。
「お、生きてた生きてた」
と、スカートを抑えながら屈み、倒れ伏していた同輩を無邪気に見下ろす。
「あーあー、見事にスタンプ押されちゃって」
と、くっきりとその背に刻まれた無数の足音を眺めながら、妙に感心した調子で言う。
「生きてた生きてた、じゃねーよ……! 人の手柄横取りにしやがって……!」
「得意げに進路に立つ方が悪いでしょ? ほら、邪魔だから立った立った」
畜生。切歯しながら呻く男など、かの女傑はまるで相手にしておらず、テキパキと事後作業を推し進めていく。
~~~
さてここで、クイズです。
ここにいる内で、ヒーローの資質があるのは、誰か?
……いやぁ、愚問だった。
多くの人間が挙げるのは、言うまでもなく彼女、坂上順那だろう。
嗚呼! だがしかし、何たることか。
この男。
警察官でありながら、私欲に溺れ出世に目が眩み、上にへつらい下に当たる最低の男。
本来であれば、とてもとても……『彼』の後に続けるような器じゃない。賑やかしの道化がせいぜいだろう。
これは、そんなクズみたいな男が数の悪魔に魅入られたことで、一瞬一秒だけ、正義の味方……仮面ライダーに変身するお話だ。