仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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3.クズ路

 その名乗りを聞いて、一路は目をぱちくりと瞬かせた。

「……えーとつまり、お偉いさん?」

「というか、賓客だね。長官殿、つまり参議院議員のお墨付きだし」

「過分ながら、この国では特例的に警視待遇をいただいています。ある事件の捜査協力で、国家防衛局に派遣されました」

 

 しばし、一路は固まった。

 一秒、二秒、指折り順那が数えて四本目あたりに来た時、

 

「いやどーもどーも、失礼いたしました!」

 と、手を揉み摩り、腰を屈めて全力の愛想笑いを浮かべた。

「そのようなお方をは露知らず、このようなむさ苦しいところにお連れしてしまい恐縮でした! ……ほら、席とお茶菓子用意しろ、気が利かねーな!」

「いやそんなもんないでしょ」

 どこからともなく取り出した白扇で彼に向けて風を送りつつ、背後に控えていた警察官に怒鳴り散らす。

 

「あぁいえ、私が来たいとミス坂上に無理を言ったのです。どうかお気になさらず」

 と、ハンジ捜査官は遠慮した。

「それに、大層な肩書ですが、そうかしこまってもらうような立場ではありません。むしろ、ニッポンの警察には教えを乞いたいぐらいで」

 そのうえで謙遜しつつ、彼は再び腰を上げた。

 

「未確認たちによる大量殺戮事件。アンノウンによる不可能犯罪。地方都市におけるガイアメモリ犯罪に、機械生命体と重加速粒子よる特殊状況犯罪。そしてすでに廃棄された計画ではありますが、ヒューマギアも実現していれば、そういった危険分子に名を連ねていたかもしれない」

「えぇ、ロイミュードという無視できない前例がありますからね。行き過ぎた人工知能は、まだ人間には早すぎる。内部告発があって寸でのところで止められましたからよかったものの」

「この国では超法規的、超常的存在による事件、あるいは模倣犯に常にさらされて来ました。そしてその度、組織的に対抗してきた。私の所属するForest1は、その一つであったかつての特状課(とくじょうか)を、世界規模に拡大させたような機構です。つまりは、貴方がたニッポンの警察は我々の偉大なる先達、と言えるわけです。私個人としても、学ぶところはとても多い」

「あまり、褒められた気がしませんけど」

 と苦笑いを返したうえで、順那は言った。

 

「――では、ハンジ捜査官は、本件もそれら超常犯罪に類するものだと?」

「はい、その可能性が高いと私は見ています」

 鷹揚に、ハンジは頷いた。

「今回のケースは、アニマシステムで小田桐(おだぎり)正彦(まさひこ)教授が命を落とした事件と類似性が高い。もっとも、あちらは結果としては事故死でしたが、精神の電脳化ないしロイミュード絡みで何かしらの関連性があると、私は踏んでいます」

「……十年前の事件なのに、よくご存じで」

「言ったでしょう。学ぶべきところは、とても多い」

 

 そう言った彼の背後で、その直属の人間らしい制服組がせわしなく入り込んで遺体やパソコンなどを回収していく。

 

「なので、ご遺体や証拠物件は一旦こちらの方で預かります」

「……ダメだ、って言っても断れないんでしょうね」

「すみません、こちらも上からのお達しなんです。結果については後で報告しますので」

「そうだぞ、まったく」

 完全にハンジ側に立って、一路は同調し、順那を非難する。

 

「ささ、いつまでもこんなところに居ては体調が悪くなってしまいます。外に車回しておきますので、この先の喫茶店でお待ちください」

「いや、君が仕切らないでよ」

 

 などと一路は必死におべっかを使いつつ、頼まれもしない案内役を買って出て、順那と共にハンジ捜査官を誘導していく。

 

「……なんなんです、アレ?」

「アレってのは、どっちのことだ?」

「あのクソ刑事の方ですよ」

 国家防衛局の職員たちにお株を奪われ、手持ち無沙汰になった鑑識や刑事たちが囁き合う。

 

「ていうかアイツでしたよね? 二年前、銀行強盗に拳銃ぶっ放したって奴」

「あれ、オレが聞いた話だと、相棒撃ち殺したんじゃなかったか」

「バカ、それ仁良(にら)の方だろ……まぁ、似たようなもんか」

 訳知り顔の年配の刑事が、溜息交じりに言った。

 

「幸か不幸か、弾は外れてあらぬ方向に当たったんだが、それが刺激になっちまって、犯人に反撃してきてな。それに当たって、当時のバディの五乗刑事が負傷しちまった。犯人もその後、極度の緊張状態で脳の血管がプッツンしちまって、その場で死んでたってハナシさ」

「はぁ? それでどのツラ下げてまだデカやってんすか」

「もちろん、当時も薬物や精神異常を疑われたが、どっちも検査の結果は正常。イケイケだった同期に嫉妬してわざとやった、なんてウワサもあるにはあったが、確証もなかったんで、あくまでヒューマンエラーってことで降格と謹慎処分で済んだんだとさ」

「いやいや、そういうことじゃなくて、気持ちとか罪悪感の問題でしょ? くそっ……五乗さん、あいつのせいでまだ復帰できず入院生活なのに、あいつはロクに現場にも署にも顔を出さない……クズ路め」

 

 そう言って若手が憤ろうとも、怨嗟が本人に届くことはなかった。

 あるいは、それら悪感情は、明智一路にとっては既知の事実であったかもしれない。

 

「でも、アイツ……ここ一年妙に成績出してますよね。ろくに動きもしてねぇくせに。その前はおべっかだけが取り柄だったのに」

「さぁな」

 年配の刑事は顔を背けて言った。

 

「大方、上手く優秀な情報屋(イヌ)でも捕まえたんだろうさ」

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