仮面ライダーラプラス(リクエスト作品:ドライブ+リバイス オマージュライダー)   作:大島海峡

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5.未知との遭遇

 ――『それ』と出会ったのは、今から一年前。

 失意と己の将来への諦観の中で生きていた彼が、ある時とある現場に踏み込んだ時のことだった。

 

 そこは特殊状況下防衛センタービルと呼ばれる、廃ビルの地下だった。

 かつて、そこでは何かがあったらしい。復興も叶わず今も破壊の痕跡が生々しく刻まれている。

 如何なる正義と悪とが衝突したのか、一路には知るすべはないし、興味もない。

 その名も知らず事前情報も仕入れず、ただ迷い込んだだけだった。

 

 そしてそこで視えたものがあった。

 すなわち地面を這う、あの血管がごとき線。暗い中で赤く発光するそれを、誘われるがまま追ったに過ぎなかった。

 

 そしてそれは、開けた場所に続いていた。

 そこだけは電力が通じていた。いや、おそらくは本来施設全体の意地に回されるはずだった電気系統が、そこに集中させられている。

 そのうえで用途不明の機械に配られている。

 分厚いケーブルを通じてそれが行われる様は、そのまま蛸足配線のようだった。

 

『――これはこれは、まさかここに気づくヒトがいたとはね』

 その部屋の中央に躍り出た瞬間、聴こえてきたその声が一路の総身を震わせた。

 

『それが視えてるってことはあんたには、数を掴むセンスがあるようだ』

「だ、誰だ!?」

 いつぞや耳にしたような物言いをする誰か。姿を見せないそいつの居所を探ろうと、目を左右前後に配る。

 ――拳銃は腰に在り、抜く意志はあったがどうしても手が動かなかった。

 

『あーちょっと待って。そのまま顔を動かさないで――ふぅん、なるほど』

「どこにいやがる!?」

『明智一路』

 その名を言い当てられて、右往左往していたその身体は凍り付いた。

『去年、英都銀行北五番支店の立てこもり事件の誤射。それがきっかけでドロップアウトした不良刑事。なるほどね』

 まさか、この一瞬で調べ上げたというわけか。どこかからしたらしい、顔の認証だけで。

「何を、知った風な口を……っ、いい加減正体を見せろ!」

 薄気味悪くなった一路の声は上ずった。だが、オブジェは多いものの、そこには人ひとりが隠れられそうなスペースはない。

 

『ほら、ここだよ。あんたの手元』

 そう促されて視線を落とすと、そこに件の端末があった。

 艶のある紅の上部。墨のような黒い下部。それらで構成された分厚いフォルムの中で、黒いパネルの電源が入り、そこに『赤ローブの怪人』のイラストが映り込み、奔放な動作、細やかな所作で画面内を動き回りながら、指を突き出し、そして誘った。

 

『こうして巡り合ったのも何かの縁だ……どうだい旦那、取引しないか? あんたにとっても、得なハナシだと思うけど?』

 ――それが、今もってなお正体不明の情報屋『クスミ』との出会いだった。

 

 ~~~

 

 彼、もしくは彼女の情報は、速く確かなものだった。こと、サイバー犯罪に対する情報収集能力は大したもので、一路による犯罪の検挙、防止率は跳ね上がった――もっとも、そのうちの何割かは、先日と同じように順那に上手いこと横取りされる形にはなったが。

 

 ただ、能力についてはともかく、完全に信頼したわけではない。特に、ろくに姿を見せずふざけたVtuberのナリと妙な端末一つでしか連絡を寄越さないところが気に食わない。

 

『Vtuber、というのは正しい表現じゃないね。オレ様、配信してるわけじゃないから』

 追及してもこんな風に、のらりくらりとかわされるだけだ。

 

 何より奇妙なのは、その貢献に対する、見返り。

 金銭ではなく、一つの約束だった。

 すなわち

()が来たら、言われた通りにして欲しい』

 という。

 それどういうことか、もう少し具体的な説明も受けてはいるが、あまりに荒唐無稽で、笑ってしまうような内容だった。

 

『そもそも契約は、こんな形で行われるもんじゃなかったんですがねぇ。気にならない? あんたが視ていたものが、なんなのか』

 今もって時は来ていないが、そのくせ折に触れてはこちらの振る舞いを遠回しに諫めるような口ぶりになる。

 

「ならないね。その『時』っつーのも、いつまで経っても来やしない。まぁ、俺はそれでもいいんだよ。タダで楽して手柄を立てられりゃ、なんだってな」

 ヒヒヒ、と公僕ならざる笑声を立てる一路に、呆れたような沈黙の間が空いた。

 しかし、いったいどのようなプラグラミングやソフトで操作しているものか。

 額に手を当て、首を振る所作など、まるで生きているようではないか。

 

『まぁ、今はとりあえず覚悟だけしておいてくれ――約束の時は、多分近いよ』

 この一年間、何度となく繰り返してきた小言を、あらためてクスミは背を伸ばして告げて来たのだった。

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