凄腕ボディガードがTSしてお嬢様学校に潜入 作:カミアラエル
霧雨が降る東京の街。高層ビルの谷間に佇む古めかしいオフィスビルの一室で、世界屈指の警備会社「シールド・エリート」の社長、城島勝が困惑の表情を浮かべていた。
「まさか、お前が…」
城島の目の前に立つのは、幼い少女の姿をした人物だった。身長は140cm程度で、大人用のスーツは明らかに大きすぎて、袖や裾を何重にも折り返している。
「ああ、俺だ。柊 竜(ひいらぎ りゅう)だ」
少女は低く落ち着いた声で答えた。その瞳には、これまでに幾多の危機を乗り越えてきた凄腕ボディガードの鋭さが宿っていた。少女は、柊が肌身離さぬ親の形見のペンダントを下げていた。
城島は深いため息をついた。眉間に皺を寄せて指先で揉み込む。「状況を詳しく説明してくれ」
柊は小さな手で髪をかき上げ、話し始めた。「昨夜、いつもと変わらず就寝した。だが、目覚めると…この姿になっていた」
彼はポケットから一枚の紙を取り出した。高級な便箋に書かれた短い文章。
「そして、枕元にこれが置かれていた」
城島は紙を受け取り、声に出して読んだ。
「元の姿に戻りたかったら鷹宮奏を守り抜け」
部屋に重い沈黙が落ちた。
「これは…本当のことなのか?」城島が静かに尋ねた。
柊は頷いた。「ああ。そして、もう一つ深刻な問題がある」
彼の表情が一層暗くなった。「俺には家族がいない。この仕事場が唯一の居場所なんだ。このままでは…俺の存在意義が消えてしまうかもしれない」
城島の表情が厳しくなった。
「誰からも必要とされなくなったら…俺は完全に孤独になる。そうなれば、この世界から消えてしまうようなものだ」
その時、ドアがノックされ、若い女性が慌ただしく入ってきた。
「お呼びでしょうか、おじいちゃん」
「ああ、燈。来てくれて助かる」城島が答えた。
城島 燈は部屋に入るなり、ダボダボの服を着た少女を見て言葉を失った。
「え? これは…」
城島は短く状況を説明した。燈は困惑しながらも、徐々に理解を示した。
「分かりました」燈は深呼吸をして、プロフェッショナルな態度に切り替わった。「では、まず柊さんが本物かどうか確認しましょう」
一連の質問を経て、柊の正体が確認された後、三人は緊急の作戦会議を始めた。
「鷹宮家からの警護依頼を受けるしかないな」城島が言った。「それが唯一の手掛かりだ」
柊は無言で頷いた。
「でも、どうやって…」燈が心配そうに言いかけた。
「俺がやる」柊は毅然とした態度で言った。「この姿でも、俺は一流のボディガードだ」
城島は柊の肩に手を置いた。「分かった。我々にできることは全てやろう。お前の生活を守りつつ、鷹宮家の警護を完璧にこなす。そして…手掛かりを見つけてお前を元の姿に戻す」
燈も決意を込めて頷いた。「私も全力でサポートします」
「頭の整理は後だ。今は仕事の話をしよう」
城島は驚天動地の状況を飲み込むと、すぐさま普段の冷静さを取り戻した。彼は長年この業界で生きてきた。何が起ころうと、依頼は依頼。それが彼のモットーだった。
「実は興味深い依頼が舞い込んでてな。その手紙の主がどうやって嗅ぎつけたのか……」
その時、オフィスのドアが勢いよく開いた。
「失礼します」
声の主は、高級ブランドのワンピースに身を包んだ、凛とした雰囲気の少女だった。彼女の後ろには、威圧感のある体格の良い男性が2人、護衛として控えている。
「私、財閥令嬢の鷹宮 奏(たかみや かなで)と申します。父の命により、最高級の警護をお願いしに参りました」
鷹宮 奏は、颯爽と部屋に入るなり、目の前の光景に目を見開いた。そこにいたのは、世界的に有名な凄腕ボディガード・柊 竜はおらず、老人に幼い少女と事務員の格好をした娘がいるのみ。
「あの、失礼ですが…時間通りですよね?顔合わせに本人がいない理由をお聞きしても?これは何かの冗談でしょうか? 私が求めているのは、一流の警護です。遅刻や欠席をするような人はお呼びではありません。それになぜ職場に子供がいるんですか……」
奏の声には明らかな失望と苛立ちが滲んでいた。
城島は咳払いをすると、柊の肩に手を置いた。
「鷹宮お嬢様、ご心配なく。警護人はここにいます。彼女こそが、あなたの身辺警護を担当する最高の人材です」
「子供ではありません」柊は毅然とした態度で言った。「俺はれっきとした大人です。見た目に惑わされないでください」
柊の声音と態度には、長年の経験に裏打ちされた自信が滲み出ていた。
「俺……?」
見た目にそぐわない一人称を見かねた奏の疑問。助け舟を出そうとする城島だが。
「あ、ああ……この仕事は舐められたら終わりだ。少しでも強く出るために俺って言ってるんだよ」
「他に気にする事はいくらでもありますが。サイズの合わない服に、ボサボサの髪。どこから拾ってきた馬の骨か知りませんが、鷹宮を相手に失礼がすぎますね」
奏は理解不能と言いたげに鼻をふんと鳴らした。
「俺が、あなたを守ります」
その言葉には、絶対の自信が滲んでいた。
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鷹宮 奏が立ち去った後、柊と城島は事務所の奥にある小さな会議室に移動した。
「さて、説明してもらおうか」城島は腕を組み、柊を見つめた。
柊は深いため息をついた。「さっき説明した通りだ。正直、俺にもよく分からない。昨日の夜、目が覚めたらこうなっていた」
「ふむ」城島は顎をさすった。「そういえば、その服装は?」
柊は自分の姿を見下ろした。スーツはだぶだぶで、明らかに大人用のものだった。
「急遽、近所のコンビニで買った子供用の下着とTシャツを中に着ている。外出するのに精一杯だった」
城島は突然立ち上がると、携帯電話を取り出した。「心配するな。すぐに手配する」
数分後、ドアがノックされ、20代前半の女性が入ってきた。
「お呼びでしょうか」
「ああ、香取くん。急な話で悪いが、この人に合う服を用意してくれないか」
香取 燈は、柊を見て目を丸くした。「えっ、どちら様で …」
柊は無表情のまま頷いた。
燈は驚きを隠せない様子だったが、すぐに仕事モードに切り替わった。「分かりました。サイズを測らせていただきますね」
30分後、本人の要望(曰く、実用性を兼ねろ)と打ち合わせを終えて、柊は完全に子供らしい装いに変わっていた。可愛らしいワンピースと、ナイフを携帯するホルスター、歩きやすいフラットシューズ。
「ありがとう、香取くん」城島が言った。「それと、彼女の身元について、必要な書類を準備してくれ。柊 竜華(りゅうか)、年齢不詳。私の遠縁の孫という設定で」
燈は疑問を差し挟まず「はい」と答え、さっと部屋を出て行った。
城島は再び柊に向き直った。「さて、任務の詳細だが…」
彼は机の引き出しからファイルを取り出した。「鷹宮財閥の令嬢、奏の護衛だ。彼女の通う女子高に転校生として入学し、24時間態勢で警護する」
柊は眉をひそめた。「なぜそこまでの警護が必要なんだ?」
「最近、鷹宮財閥に対する脅迫状が届いているらしい。娘を狙うという内容だ」
柊は腕を組んだ。その仕草は、まるで元の姿のままだった。「分かった。だが、肝心の鷹宮からは依頼を取り下げられてしまったぞ…」
城島は柊の肩を叩いた。「手紙は鷹宮 奏を守り抜け、としか書かれていない。依頼じゃなかろうと、警護すればいい話だ」
柊は城島の厚意をそのままには受け取れない。「仕事を通さずに?でもそれじゃ、会社のバックアップを受けることは……」
その時、再びドアがノックされ、燈が顔を覗かせた。
「書類の準備ができました」
「余計な事を気にするな。柊 竜がいないままだと社の損失になる、こっちも何か手を打っていないと落ち着かないんだ。それより依頼人だ。目を離すと不味いぞ……」
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鷹宮 奏は、警備会社「シールド・エリート」のオフィスを後にした。彼女の表情には明らかな不満が滲んでいた。
「あんな子供に何ができるって言うの」
彼女は運転手に向かって言った。
「早く帰りましょう。無駄な時間を過ごしてしまったわ」
黒塗りの高級車が静かに発進する。
街角の陰から、その様子を見つめる男がいた。彼は小型の無線機に向かって囁いた。
「ターゲット、移動開始。予定より早い。ボディガードなし。今がチャンスだ」
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車は閑静な住宅街を走っていた。突然、前方から大型のSUVが現れ、鷹宮家の車の前に強引に割り込んできた。
「なっ!」
運転手が急ブレーキをかける。その瞬間、後ろからもう1台の車が接近し、鷹宮家の車を完全に封じ込めた。
「何なの、これ!」
奏が叫ぶ。
黒マスクの男たちが両方の車から飛び出してきた。
「おとなしく来てもらおうか、お嬢さん」
リーダーらしき男が、銃を構えながら近づいてきた。
その時、どこからともなく小さな影が現れた。
「はっ!」
鋭い蹴りがリーダーの手を直撃。銃が宙を舞う。
「誰だ!?」
男たちが叫ぶ。そこに立っていたのは、幼い少女の姿をした柊だった。
「さっきの…子供?」
奏は信じられない様子で目を見開いた。
柊は無言で男たちに向かっていく。体格差を物ともせず、巧みな動きで次々と男たちを倒していく。
「くっ…この小娘…!」
男たちは必死に抵抗するが、柊の動きは予測不能だった。
数分後、警察のサイレンが聞こえてきた。男たちは慌てて逃走を図るが、すでに遅かった。
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事態が収束し、パトカーのライトが点滅する中、奏は呆然と柊を見つめていた。
「どうして…ここに?」
柊は淡々と答えた。
「万が一に備えて、後をつけていました。直感です。あなたの周りに違和感を感じたんです」
奏は柊をじっと見つめた。
「どうやら…実力はあるみたいね?常識はともかく」
柊は頬をかいて頷く。
「あなた、名前はなんだったかしら?」
柊が手を差し出す。奏はその手をしっかりと握った。
「柊 竜華です」