「今日はレバニラ炒めの気分よ!」
ある日の夕方、日課である銃のメンテナンスの最中、突然ユニは独り言を呟く。
「天啓を得たと言ったところかしら。まぁアタシは女神だから天啓を得るより与える側なんだけど」
レバニラ炒め。その名の通りレバーとニラを炒めた料理である。ニラレバ炒めともいう。レバーに豊富に含まれる「ビタミンB1」とニラに含まれる「アリシン」を一緒に摂取することでビタミンB1の接種率が高まり疲労回復に大きな効果があるといわれている、栄養価の高いスタミナ料理だ。
「というわけで今日の夕飯はレバニラ炒めに決定よ。さしづめ、今日のアタシはレバニラ炒めの女神候補生ね」
善は急げ、ということでユニは早速食材を買いに出かける。
食べたいと思ったものは食べたいと思った時に食べるのが一番美味しいのだ。
「まずレバーとニラ、ニンニクもこの前唐揚げ作ったせいで減ったから補充しとかなきゃ。ニンニクを入れれば何でも良い感じになるのよね。まるでネプギアみたいなやつよね」
ユニは行きつけのスーパーで、適当に食材を調達し、帰宅してキッチンに立つ。
「……もやしを忘れたわね」
買ってきた食材と使用する調味料を並べたユニは、一つの買い忘れに気づいた。
「まぁ……無くてもいっか」
しかし特に気にすることなく、調理が開始される。
まずはレバーの血抜き。
今回は簡単に水で洗うだけ。臭み取りは徹底しない。ある程度血を抜けば調理の過程であまり気にならなくなるし、そもそもレバーの臭みはあまり嫌いではない。臭みというのは逆をいえば風味であり、ユニはそういったものが好きなのだ。
「ニラが多いわね……余らせても嫌だししょうがない」
血を抜いたレバーをキッチンペーパーに包んで水気を取る間に、次はニラを刻む。
葉の先は長め、根に近い太い部分は短めに。
ついでにニンニクを薄くスライスし、次は合わせ調味料を先に作っておくようだ。
「えーと……まぁ適当でいいでしょ」
明確なレシピを参照するのではなく、自分の中の味のイメージに近づくように調味料をそれぞれ適量入れ、少量のお湯で溶かし混ぜる。
「……頃合いね」
水気を拭き取ったレバーをボウルに入れ、塩と胡椒、酒を入れて揉み込んだ後、片栗粉を多めに塗す。
「多めの油と強い火で一気に仕上げる、これが鉄則ね」
言葉のとおり、炒めもの用の鉄鍋に多めの油をひいて加熱し、油が温まった頃合いを見てまずはレバーを揚げ焼きにする。
「ここからが勝負よっ!」
レバーに火が通ったことを確認し、ニンニクとニラを投入、すぐさま鍋を振るう。
その手捌きに一切の迷いはない。もたつけば焦げる。かと言って火力を下げるわけにもいかない。炒めものは火力が要なのだ。
ある程度炒めたら最後に合わせ調味料を投入。そして鍋をとにかく振るう。
「ふーっ……!」
キッチン中に調理器具同士がぶつかる音が響く様は、まるで武器をぶつけ合う戦場の如し。
「完成……っ!」
その言葉と同時に、事前にセットしておいた炊飯器からご飯が炊けた音が鳴る。
「完璧な時間配分、流石アタシね」
皿に盛られたレバニラ炒めの山。
好きなだけ調理した料理を好きなだけ食べる、それは自炊の特権である。
「……何でいるんですか?」
しかし、その特権は破棄されそうになっていた。
「ネプテューヌさん……」
気付かぬうちに食卓に現れた者によって。
来訪者ネプテューヌは、何食わぬ顔で食卓の椅子にドンと座り込んでいた。
「ウキウキしながらスーパーに入るユニちゃんを見かけてね。これはついていけば美味しい料理にありつけるんじゃないかと思ったんだよ!」
何の悪びれもなく満遍の笑みでサムズアップするネプテューヌに、ユニは呆れてものも言えず「マジかこの人」と心の中で嘆くのみだった。
何の躊躇もなく後輩にタカりに来やがった、と。
「……そのつもりなら声かけてくださいよ。そしたら二人分作ったのに」
呆れはしたが、悪い気はしなかった。
ソロ飯も良いが、二人で食卓を囲みながら箸を進めるのも悪くはない、ユニはそう思った。
「お姉ちゃんの箸で良いですか? 来客用の用意するの面倒なので」
「えー、それじゃノワールと間接kiss❤️になっちゃうじゃん」
「別になればいいじゃないですか」
「まぁなってもいいか。わたしノワールのこと割と好きだし、多分ノワールもわたしのこと割と好きだから平気だよね。ていうか洗うし」
「そういうことです。じゃ、食べますよ」
「「いただきます」」