「終わったみたいだね、リーダー」
最後に愛央がやってきた。愛央はあっけらかんと笑っていて、なんだか皮肉のひとつも言ってやりたい気分だ。
「なんとかね。どうかな、今度の束は使えそう?」
「正直かなり分が悪い。まあ来周に期待ってところだねー」
「ループを知覚できない人にとって命は一度きりのものだから、ちゃんとケアしてやってくれよな」
「もっちろん!」
そう言って愛央は屈託のない顔で笑って親指を立てた。
「愛央はみんなの思いを束扱いしても全然平気なんだな」
「だって事実だから。私はその束で戦わなくちゃいけない。弱い束じゃ負けちゃうんだよ。この束を強くするならなんだってする。束扱いしたくらいで恨まれても別に構わない」
「いい加減な気持ちで言ったわけじゃなかったんだな」
「当たり前だよ。わかってもらえてよかった」
「悪かった。八つ当たりだなんて、俺も情けないな。とにかく、みんなのことは任せたからね、愛央」
「うん。この愛央ちゃんにまかせとけ!」
「またそうやって茶化すみたいな態度取るし。心配だなあ」
「いいじゃん。だってずっと張り詰めてたら大事なところで失敗しちゃうよ」
なんだか頼りない気もするけど、何度も負けているのにこれだけ明るくリトライできるメンタルはさすがだ。もしかすると、これならいつか、と思わせるパワーがある。
「ところで俺はどうなる」
「どうもならないよ。世界を再構築し終わった後の雫世界は、現実とコモンの狭間に漂ったまま。それを次の周回の軸にするから」
「次がある前提か」
「うん。今回はきっと負けるけど、次はもっとよくなる。だからリーダーは果報を寝て待っててよ。たまには遊びにくるからさ」
「そのときはなにかお土産を頼むよ」
「いいけど、ここは願えばなんでも手に入る世界なんだよ。おやつでもゲームでも、好きなものを出せばいいじゃん」
「だからだよ。人からもらうものはそれだけで特別なんだ」
「うん、わかった。リーダーが思いつきもしないような愛央ちゃん特製のなにかを考えておくから。じゃあもう行くね」
「いってらっしゃい。俺もちょっと眠ろうかな」
「起きたらきっと全部解決してるよ」
「全部終わった後で、俺はそこにいるのかな」
「……」
「そこにいてもいいのかな」
「当たり前。いなくてもいい人なんかいない」
「そっか」
「リーダーも連れて行くから、大船に乗ったつもりでいてよ」
「まあ期待しないでおく」
「愛央ちゃんに任せておきなさい」
「もし俺が邪魔になったら、置いていっていいからね」
「……」
愛央が口ごもる。すべてを元通りにするなんて簡単に約束できることではない。けれど、もし決断の時が来たら、選ぶのは愛央だ。
「そんなことするわけ……」
――そんなことするわけない。リーダーのことも切り捨てたりはしない。そんな軽薄な約束はさすがにできないらしい。わかってはいたことだけど、少しだけ残念に思う。すると愛央は急に笑い出した。
「あはは。そしたら自分の足で走って来い!」
「厳しいなあ」
「じゃあ、今度こそほんとうにいってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
「いってきます」